体型改善
Part1: 基礎代謝量とは

理想の体型になりたいと思ったとき、第一にとる行動はジムに行くことです。初めのうちはとてもやる気がある状態で、毎日トレッドミルやウエイトトレーニングを頑張ろうと決意します。しかし、変化が何も見えない状態では、その熱意は徐々に失われてしまいます。気付けば、毎日が週3日になり、週3日が時間のあるときになり、運動の頻度が落ちてしまいます。このように、体型の変化を知る前に運動を諦めてしまった経験はありませんか? ジムに行くことを途中で止める理由はたくさんありますが、最も一般的な理由は結果がすぐには現れないことです。そして、理想の体型を目指してジムに通うことだけに夢中になっている人は、最も重要で基本的なことを忘れてしまっています。

「腹筋はキッチンで作られる」という話がありますが、これは事実です。ジムでは運動を行い筋肉に刺激を与えることができますが、悪い食生活の下では十分な運動効果を得ることはできません。適切な食事無しでの運動は、逆に筋肉の破壊につながりかねません。では、適切な食事はどのように取れば良いのでしょうか? 摂取する栄養素の種類・食事の頻度・摂取するタイミング・断食の選択など、食事に関して考えるべき要素はたくさんありますが、食事メニューを考える上でも1日の総消費カロリー(TDEE)を知ることは最重要事項です。
※Total Daily Energy Expenditure (TDEE)とは、身体活動量分のカロリーも含んだ1日の総消費カロリーです。


基礎代謝量(BMR)の求め方


体が1日に消費する総消費カロリーはどれくらいでしょうか? TDEEは基礎代謝(70%)・生活活動代謝(20%)・食事誘発性熱代謝(10%)に分けることができます。基礎代謝は、毎日の生命維持のために体を動かさなくても使われるカロリーを指します。生命維持とは、呼吸・血液の循環・体温維持・脳の活動・内臓の活動などによる代謝活動です。生活活動代謝は、歩いたり走ったりするときに使われるカロリーを指し、食事誘発性熱代謝は、摂取した食物が消化・吸収される際に発生する熱によって消費されるカロリーを指します。

TDEEを求めるためには、まずBMRを求める必要があります。BMRと一言でいっても、ハリスベネディクト式やミフリンセントジョール式などBMR算出に用いられている公式は様々です。これらの式は体重を用いてBMRを計算しますが、身長・年齢・性別による補正が掛かっています。つまり、同じ身長・年齢・性別の平均から外れている人がこれらの式を使用すると(例えば、アスリートや疾患者の場合)、算出されたBMRは正確ではない可能性があります。平均から離れている人には、除脂肪量を用いて算出する、カニンガム式のBMRを使用することをお勧めします。BMRを除脂肪量だけ用いて算出することには、次のようなメリットがあります。

カニンガムの式 BMR=除脂肪量×21.6+370¹⁾
➀年齢・性別の統計から得られた情報による補正の影響を受けません。
➁カニンガムの式は運動によって鍛えられる筋肉量の変化を反映するので、筋肉量が増えるとBMRも増えます。
(除脂肪量には筋肉量が含まれており、筋肉量の増加は除脂肪量の増加につながります。)
※除脂肪量(kg)=体重(kg)-体脂肪量(kg)

現行販売している全てのInBody機種で、カニンガム式により算出されたBMRを提供しています。自分のBMRが把握できたら、次のステップに進みましょう。


BMRから1日の総消費カロリー(TDEE)を計算する方法

BMRは安静時に消費されるカロリーであり、歩行・会話・家事・仕事・運動など、生活活動に関わる消費カロリーは含まれていません。そのため、食事プランを立てるために必要なTDEEは、BMRに身体活動レベルを表す係数を掛けて求める必要があります。TDEEの算出方法は次の表をご参照ください²⁾。

身体活動レベル説明TDEE
低い(Ⅰ)静的な活動(生活の大部分が座位)TDEE=1.5×BMR
普通(Ⅱ)中強度な活動(通勤・買い物・家事・軽いスポーツなど)TDEE=1.75×BMR
高い(Ⅲ)高強度な活動(スポーツなどの活発な運動習慣・肉体労働など)TDEE=2.0×BMR

身体活動レベルが普通(Ⅱ)である男性のTDEEを計算してみましょう。この方の体重は77.6kgで、除脂肪量は60.6kgです。カニンガムの式を用いると、この男性のBMRは1,679kcalとなります。これに適切な係数(1.75)を掛けると、体重を維持するためにこちらの男性が必要なTDEEは、2,938kcalになります。

ここまでは、主に基礎代謝量の種類と計算方法について説明しました。次のトピックではこれらをどのように活用できるのか、実践方法をご紹介します。☞「体型改善 Part2: 基礎代謝量の活用法」

参考文献
1. Cunningham JJ. Body composition as a determinant of energy expenditure: a synthetic review and a proposed general prediction equation. Am J Clin Nutr. 1991 Dec;54(6):963-9.
2. 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 厚生労働省