福岡医健・スポーツ専門学校
-InBodyを用いた専門教育-
✓InBodyを活用する目的
● 理学療法士の養成課程で、体成分を評価するという視点を養うため
✓InBody270導入の決め手
● 将来学生たちが患者やアスリートと向き合う際に、体成分を数値で説明できる力が必要だと感じた点
✓得られた効果
● 学外実習の中学・高校部活動のメディカルサポートでInBodyを活用することで、具体的な指導ができるようになった
● 学生たちも体成分の評価の仕方を習得し、運動療法や栄養指導などと絡めたアプローチ方法を学べる
機種モデル:InBody270
福岡医健・スポーツ専門学校は2002年に創立された専門学校で、健康・スポーツ・医療・リハビリ業界の学科を複数持つ総合校です。多職種連携教育を通して幅広い知識と、資格取得や就職に強い専門性を学ぶことができます。理学療法士・スポーツトレーナー・看護師・歯科衛生士・柔道整復師などを目指すことができる9もの学科が設置されており(2021年10月現在)、実習や講義を通じて、なりたい専門職のスキルを身に付けることができます。
InBodyで客観的な評価指標を得る
▲ 田中 俊光先生
理学療法科の田中 俊光先生は総合病院に約7年勤務した後、理学療法士の面白さを学生に伝えて即戦力となる理学療法士を育てたいと思い、2008年の理学療法科の立ち上げから携わっています。理学療法科では現在、約320名の学生が学んでいます。
田中先生:
「これまで勤務してきた病院では、InBodyのような体組成計を使っておらず、体重のみで評価していたので客観的な評価ができていませんでした。学校で指導していくうちに、学生たちがこれから出会うであろうスポーツ選手や部活動をしている学生、患者に対して数値で客観的に身体の状態を説明できる力が必要になってくると感じていました。体成分を確認して、栄養指導のアドバイスも含めどこにアプローチすればいいのかを説明できるように教えたいと思って、InBodyの導入を決めました。」
InBody270は2020年3月に導入されましたが、理学療法科卒業生からの紹介も導入の後押しになりました。InBody270のユーザーである株式会社New Support代表の塩生 好紀さんは理学療法科初年度の卒業生で、田中先生とは卒業後も親交がありました。田中先生は塩生さんからInBodyの活用法や導入のメリットなども聞いており、InBodyの導入は先生自身や学生にとってプラスしかないと感じました。コロナ禍で実習が軒並み中止となった際は、”地域理学療法におけるInBody活用法・地域高齢者へのアドバイスや指導法” を学ぶ学内実習を塩生さんが行って、学びの場を設けることができました。
※株式会社New Supportの活動内容については、こちらの記事からご覧ください。
▲ 授業中の測定風景
理学療法は外的アプローチとしてマッサージなどの施術が主になるため、身体の中への内的アプローチがどうしても弱くなりやすいですが、患者さんの身体の中からも変えることができればより治療の効果を高めることができます。最近の理学療法では身体の中へ目を向けつつあり、InBodyで体成分を知ることは正に身体の中を知ることに繋がります。
田中先生:
「例えば、逆流性食道炎などの方に対して胃や腸の位置を正常に戻すマッサージを行うと、不思議なことに首の痛みや肩こりが解消されます。他にも肝臓へのマッサージを行うと首の痛みが取れるなど、痛みのある部位に直接施術を行うことだけが痛みを緩和する方法ではないことが徐々に明らかになってきています。理学療法の最新情報を学生に教えられるよう、私自身も常にアンテナを張って新しい情報を集めています。」
授業ではInBody以外にも、三次元動作解析装置・重心動揺計・VO₂max測定・筋電図など、実務で必要な検査や機器の使用方法を勉強します。新カリキュラムには、画像読影が入っているので、超音波検査も今後導入する予定です。他にも2年生で栄養学が新たに追加され、外部の管理栄養士にも協力を仰ぎ、InBodyの測定結果から体水分・タンパク質・ミネラルなどの体成分にも着目して栄養指導のアプローチ方法を学べるようになります。このように、理学療法士の勉強内容は益々多様化しています。
田中先生:
「授業中の測定ですと、筋肉の左右差に着目する学生が多いですね。筋トレをしていて全身筋肉量は多いのですが部位別に見ると腕の筋肉量に左右差があり、今後どこを鍛えるべきか認識できるようになります。理学療法は『首の痛みが和らいだ』『膝が曲がり易くなった』など、どうしても主観的な評価になりがちですが、理学療法士は意外と数字好きが多いのでInBodyで客観的な数値が分かると、治療を通じて何とかして数値を改善したいと強く思う人が多いと思います。」
部活動サポートプログラム
福岡医健・スポーツ専門学校では学外実習の一環として、中学・高校部活動のメディカルサポートを行っています。コロナ前は地元の強豪バスケットボール部や甲子園出場経験のある野球部と連携して、中高生のメディカルサポートを行っていました。InBodyを持ち出して測定を行い、測定結果を基に栄養指導も行います。InBodyをきっかけに繋がりが出来た高校もありました。
時には、部活動の大会のメディカルサポートも行います。これまでに柔道・剣道の武道大会やバレーボールの大会、少年野球の大会のメディカルサポートなどを行ってきました。理学療法科の学生だけでなく他学科の学生も参加し、学んだことを活かして様々な面から中高生のサポートを行います。メディカルサポートに加えてInBodyの測定会も併設します。理学療法科の2年生がボランティアでInBody測定の補助に付きますが、現在のカリキュラムではInBodyの実習授業は3年生からなので、2年生は事前に塩生さんのInBody研修を受け、測定時の注意事項や結果用紙の説明方法などを勉強します。
田中先生:
「以前から大会を運営する企業の依頼を受けて、産学連携教育の一環として部活動や大会のメディカルサポートは行っていました。しかし、InBodyのような測定器はこれまで用意しておらず、試合中のメディカルサポートや試合間のマッサージなどがメインでした。これからのメディカルサポートではInBodyも活用して更に踏み込んだサポートができると考えていました。様々な学外実習でInBodyを持って行き、測定会も行う予定でしたが、残念なことにコロナ禍で大会自体が開催されないなど学外実習の場はかなり限られてしまいました。今年唯一参加できた高校バスケットボール大会では、2日間に多くの高校生がInBody測定に来られ、大会期間中の測定人数は100人にも上りました。」
▲ 福岡医健・スポーツ専門学校のYouTubeチャンネルで紹介されている実習風景
実習に参加した学生の声
高校バスケットボール大会にボランティアとして参加された学生さんのお話を伺いました。コロナ禍のため通常行われるはずの学外実習が中止となり、例年以上に貴重な経験の場となりました。 ▲ 大会中のInBody測定風景
理学療法科2年生 田嶋さん:
「学内の希望者は、高校部活動の選手をサポートするボランティア活動に参加できます。通常の授業では実習相手も同じ科の学生なので、指導内容や治療内容が予め分かっている人です。専門学校を卒業する前に、指導・治療のことをよく分かっていない人への対応を経験してみたいと考えたのが参加のきっかけです。InBodyを大会会場に持っていき、大会中の空き時間に希望者を測定しますが、男女問わず自分から進んで測定を希望する人が多かったです。中には高校内でInBody測定を定期的に行っているという生徒もいました。女子選手は体脂肪率を、男子選手は筋肉量を気にする人が多い印象です。数秒乗るだけなのにいろんな値が分かるのでとても助かります。」
理学療法科2年生 朝妻さん:
「授業だけでは分からない、指導法・治療法・スポーツの知識が身に付くと思い、この活動に参加しました。InBodyの研修では、体内に電流を流すだけでいろんなことが分かるということに驚きました。高校生への説明で部位別筋肉量と栄養評価は必ず使う項目です。部位別筋肉量では、左右差が大きくないかや体幹筋肉量が低くないかもチェックします。筋肉量の左右差は怪我にも繋がりますし、バスケはプレー中のあたりで負けないためにも体幹筋肉量が大事になってきます。栄養評価のタンパク質やミネラル量が不足になっている選手が稀にいますが、スポーツ選手がこのような主要項目で不足になることは良くないので、栄養や食事についてお話します。」 ▲ 部位別筋肉量と栄養評価
終わりに
2022年4月には、スポーツマネジメントテクノロジー科が新学科としてスタートします。新学科ではスポーツアナリストやスポーツトレーナー、スポーツチームの運営に関係するマネージャーやフロントなどスポーツチームに関わる様々な役割について学ぶことができます。今後、スポーツマネジメントテクノロジー科をはじめ、様々な学科でInBodyを使用したカリキュラムが導入されていく予定です。今年の夏に開催されたオープンキャンパスでもInBody測定会を行っており、多くの高校生が興味を示しました。
田中先生: 「InBodyは多くの病院・クリニックに導入されているので、使い方が分かるだけでも十分即戦力になると思います。学生へのメッセージとして、これまでの実務経験から、患者さんの治癒力は感情に大きく左右されると感じています。患者さんが回復に向かってポジティブな気持ちになれるよう、施術の技術向上はもちろんですが患者さんの気持ちに寄り添える理学療法士になってほしいです。国も予防医学に力を入れており、今後理学療法士が活躍するフィールドは更に広がっていくので、様々なフィールドで活躍できるように今後も学生に色々教えていきたいと思います。」