なぜ冬は太りやすい? 冬と体成分の関係

寒さが厳しくなり、日が短くなる冬がやってきました。気温の低下や日照時間の減少、生活習慣の変化など様々な要因が重なり、体成分に影響が出ることがあります。一般的に冬は体脂肪量が増えやすく、筋肉量が減少する可能性が高まります。健康的な生活を維持しながら、理想の体型を保つためにも、季節による体成分の変化に対する知識を深め、効果的な対策を行うことが重要です。今回は、なぜ冬に体脂肪量が増えやすいのか、その理由と対策について詳しく解説し、冬の運動のコツについてもお伝えします。


なぜ冬は体脂肪量が増えやすいのか?

冬になると体脂肪量が増えやすくなる理由には、複数の要因が影響しています。

●体温維持のために体脂肪が蓄えられやすい
寒さが厳しい冬には、体温を維持するためのエネルギーが必要となります。脂肪は、そのエネルギー源の一種として体内に蓄えられており、寒い環境にさらされると体温を維持するために脂肪が燃焼され、その働きが活性化されます。一方で、エネルギー源を確保するために体が自然と脂肪を溜め込むメカニズムが働き、脂肪を蓄えやすい傾向も見られます。そのため、食事量などを特別変えていなくても、気づかないうちに体脂肪量が増えてしまうこともあります。

●気温の低下による運動不足
先述のように、冬は体温維持のために多くのエネルギーを消費するため、基礎代謝量が上がりやすい季節です。しかし、寒さから外に出るのが億劫になり、気づけば運動不足に陥ってしまうことが多い季節でもあります。その結果、意図せず活動量が減少し、痩せるどころか逆に体脂肪量が増加してしまうこともあります。

●日照時間の短縮が心身の状態に影響
冬は日照時間が短くなるため、日光を浴びることで合成される「セロトニン」と呼ばれるホルモンの分泌量が減少します。セロトニンは別名“幸せホルモン”とも呼ばれるものですが、セロトニンが減少すると、気分が沈みがちになり、それに伴って運動意欲が低下することもあります。これを「冬季うつ(ウインター・ブルー)」と呼びます。

●冬のイベントによる食事量・摂取エネルギー量の増加
冬は、クリスマス、忘年会、お正月などイベントが盛りだくさんの季節です。友人や家族との食事、飲み会などでたくさん食べすぎてしまう方も多いのではないでしょうか。寒い季節に運動不足の状態が続き、短期間で高カロリーな食事摂取、所謂「ドカ食い」が続くと、消費できなかった余分なエネルギーが脂肪として蓄積され、体脂肪率が上昇する原因となります。

実際のデータを見ても、冬には体脂肪率が増加する傾向が確認されています。世界17か国の体成分情報を分析したInBody Report ¹⁾では、測定結果をもとに北米と南米での季節ごとの体成分の変化を比較した結果、冬には他の季節と比べて体脂肪率が高くなる傾向が見られたと報告しています。南米は「5月~8月」、北米は「12月~2月」が冬の季節に該当しますが、図を見るとそれぞれ冬に体脂肪率が上昇傾向にあることが確認できます。このことから、体脂肪率の増加が寒さの影響を受けやすいことが分かります。

また、日本国内の女子大学生を対象にした研究²⁾でも、春夏秋冬における隠れ肥満の有病率を調査した結果、冬に隠れ肥満が増えることが確認されています。隠れ肥満とは、一見体型が標準的もしくは痩せて見えても、実際には筋肉量が少なく体脂肪量が多い状態を指します。体脂肪が蓄積しやすく、活動量も減少する冬ではこの隠れ肥満がより多くなると考えられます。


冬でも体脂肪量を増やさないポイント

冬場に体脂肪をコントロールし、筋肉量を維持・増加させるには、適切な運動と食事が欠かせません。運動不足は筋肉量の減少を招き、基礎代謝量の低下に繋がるため、結果的に体脂肪量が増加するリスクが高まります。体脂肪量の増加を防ぐため、冬でも無理なく続けられる運動や食事管理のコツをご紹介します。

➤日常生活の中で動きを増やす
寒さを理由に動く意欲が低下しがちな冬ですが、日常の中でも意識して体を動かすことでエネルギー消費を増やすことができます。例えば、大股で早歩きをする、エレベーターやエスカレーターではなく積極的に階段を使う、バスや電車に乗らず一駅分歩いて移動するなど、日常生活の中で少しでも体を動かすよう心掛けましょう。

➤簡単な運動から始める
寒いからといって外に出ず動かないのではなく、ストレッチや軽い筋力トレーニングなど、室内でもできる簡単なものから取り組んでみましょう。例えば、階段を上がり下がりする、ストレッチで体を伸ばす、軽いスクワットや腹筋運動などであれば、手軽に運動不足を解消することができます。

➤室内でのエクササイズを取り入れる
冬は室内で行えるエクササイズを活用しましょう。ヨガ・自荷重の運動・有酸素運動など、室内でもできる簡単な運動を行いましょう。エクササイズを取り入れたゲームを活用するのもおすすめです。動画やゲームなどを活用して、自宅で楽しみながら運動を続けられるため、寒い冬でも継続的に運動を行うことが可能になります。

➤定期的に体成分を測定する
自分の体成分(筋肉量・体脂肪量など)を測定することは、冬でも健康管理のモチベーションを維持するために効果的です。InBodyなどの体成分を測定できる装置を活用し、定期的に筋肉量や体脂肪量を確認することで、運動や食事改善などの成果を実感でき、継続する意欲に繋がります。また体成分が悪化していたとしても、改善のために取り組みを見直すきかっけにもなります。

厚生労働省では、週2回以上、1回30分以上の「少し息がはずむ程度の有酸素運動」(ウォーキングや軽いジョギングなど)や、週2回以上の筋力トレーニングが推奨されています。まずは、無理のない範囲で普段の生活にプラスして動くようにしたり、簡単な運動をするようにし、徐々に運動の頻度や強度を増やしていきましょう。


冬の食事管理のポイント

食事の内容も冬の体成分に大きく影響します。寒い季節には体を冷やさないよう、積極的に温かい食事をとることは効果的です。しかし、脂肪分や糖分が多い食事が続くと、体脂肪量の増加に繋がるため注意が必要です。

➤温かい食べ物を摂取する
寒い冬には、鍋料理やスープなど、体を温める食べ物が最適です。特に鍋料理やスープは、寒さで冷えた体を温めるだけではなく、様々な種類の野菜やタンパク質をバランスよく摂ることができ、消化が良いため、体に負担をかけずにエネルギー補給ができます。さらに、具材として根菜や豆類、魚介類を加えることで、不足しがちなビタミンやミネラルも豊富に摂取でき、免疫力アップにも繋がります。

➤栄養バランスの取れた食事を意識する
タンパク質をしっかりと摂り、筋肉の維持をサポートしましょう。また、冬は体内で熱を作り出すために必要なビタミンB群が不足しがちになります。ビタミンBが豊富な食品(豚肉、マグロ、サバ、大豆製品など)を積極的に摂ることで、代謝をサポートし、体温維持にも役立ちます。

➤甘いものや脂っこい食べ物は控えめに
甘いものや脂肪分が過度に多い食事は体脂肪量を増やしやすいため、できるだけ控えめにしましょう。イベントでどうしても高カロリーな食事をとる際は、前後の食事で調整するなど、工夫をすることも大切です。また、脂肪を取る際は質の良い脂肪源を選ぶことが重要です。アボカドやナッツ類、オリーブオイル、サーモンやイワシなどの魚の脂は、体に良い影響を与えるオメガ-3脂肪酸を豊富に含んでおり、健康的な体作りをサポートします。


終わりに

冬は体脂肪量が増えやすく、筋肉量が減少しやすい季節です。さらに、冬は厚着をする影響で体型の変化に気づきにくく、イベントが重なるとついつい食べ過ぎてしまうこともあるかもしれません。しかし、そんな冬にこそ太りやすい原因やポイントを知り、適度な運動と食事管理を組み合わせることで、筋肉量を維持して理想的な体型を保つことができます。寒さが増すこれからの季節、健康的な生活習慣を意識して体成分の変化に気をつけ、健康的な体を手に入れましょう!

参考文献
1) Rami Lee, et al. (2024). 2024 InBody Report. InBody Co., Ltd. (p. 18)
2) Yamashiro, Kaito et al. “Relationship of masked obesity to self-reported lifestyle habits, ideal body image, and anthropometric measures in Japanese university students: A cross-sectional study.” PloS one vol. 18,2 e0281599. 21 Feb. 2023,