群馬県済生会前橋病院
-治療や病状悪化の防止に不可欠な栄養食事指導とInBody-

✓InBodyを活用する目的
● 体重・採血だけでは見えない体の中身を体成分で可視化するため
● 糖尿病教育入院や外来栄養食事指導において、患者のモチベーション向上・継続支援を行うため

✓InBody770・S10導入の決め手
● 体重の変化だけでは追いきれなかった筋肉量・体脂肪量・水分状態の「見える化」が可能な点
● 患者が自分の体を数値で確認でき、治療継続のモチベーションになる点

✓得られた効果
● 体成分という新たな評価軸が加わり、より個別化した栄養食事指導が可能になった
● 患者自身が「頑張った分だけ結果が出る」と実感し、リハビリや栄養食事指導からのドロップアウト防止に繋がった
● InBodyの結果を多職種で共有し、共通の指標をもとに患者の今後の方針について相談・検討できるようになった

機種モデル:InBody770InBody S10

群馬県済生会前橋病院(以下、前橋病院)は1943年に診療所として発足し、現在は全国規模を誇る社会福祉法人恩賜財団済生会が設置・運営する公的病院です。高度救急医療から専門性の高い急性期医療まで幅広く対応しており、群馬県がん診療連携推進病院や災害派遣医療チーム(DMAT)指定病院にも認定されるなど、地域における重要な医療拠点としても信頼が厚い病院です。地域の医療機関との密接な連携を推進し、誰もが安心して暮らせる地域社会の実現に貢献しています。InBodyが導入されている栄養科は管理栄養士12名、事務員1名が在籍しており、詳細な栄養アセスメントに基づいた、一人ひとりに寄り添う栄養食事指導に力を入れています。

栄養士長の宮崎 純一さんは専修大学経済学部を卒業後、桐生短期大学で栄養士資格を取得し、実務経験を経て管理栄養士を取得されました。群馬循環器病院で6年間勤務したのち、2010年に群馬県済生会前橋病院に入職し、現在は栄養士長として外科やがん患者の栄養管理を中心に、外来の栄養食事指導まで幅広く活躍されています。

▲ 宮崎 純一さん

宮崎さん:
「大学で一人暮らしをしていたとき、風邪などをきっかけに食事や栄養の重要性を実感しました。経済学部は特定の職業に直結するわけではなく、公務員や一般企業に就職する同期が多い中で、私は専門職の魅力を強く感じていました。文系出身でも取れる資格を調べたとき、栄養士・管理栄養士に出会いました。食品学や栄養学は身近な話題で一生ついて回るものですから、その専門家になることに魅力を感じて方向転換を決意しました。」


栄養食事指導に活用されるInBody

▲ 栄養相談室に設置されているInBody770とInBody S10

前橋病院ではInBody770とInBody S10を用いて、栄養食事指導や患者管理を行っています。導入前は体重・血圧・採血結果が主な評価指標でしたが、InBodyの導入によって体成分という新たな視点が加わりました。InBody770は主に術後退院患者や糖尿病患者の外来栄養食事指導時、InBody S10は主に透析患者や心臓リハビリの患者を測定しています。このような浮腫が生じやすい患者へのInBody測定は、診療報酬の対象となります。実際に、前橋病院では月約90件測定しており、そのほとんどで診療報酬を算定しています。

宮崎さん:
「栄養食事指導では食事の内容を患者さんから聞き取りますが、食事は 『見えない部分』 が多く、食事を記録していても正確な量までは把握しきれないことがあります。体重の変化だけでは追いきれなかった部分を、体成分という形で見える化できることが大きなメリットです。体重が前回と変わらなくても、実は筋肉と脂肪の割合が変わっていることもよくあります。その変化をしっかり捉えて数値で示すことが、継続して指導を受けたいという患者さんのモチベーションにも繋がっています。InBodyや採血などそれぞれ単独では分からない部分もありますが、指標を組み合わせて評価することで、より詳細に、より正しく患者さんの状態を把握できるようになりました。InBodyがあることで、個人に合わせた指導に繋がっていると感じています。」


糖尿病教育入院での活用

糖尿病の教育入院でもInBody測定が実施されます。水曜日から翌週火曜日までの1週間の入院期間中、入院初日と週明け月曜日の2回測定しており、併せて栄養食事指導も実施しています。

宮崎さん:
「まずECW/TBW(細胞外水分比)を説明し、そこから筋肉量・体脂肪量の話へと繋げていきます。1週間という短い期間でも、リハビリなどで筋肉量がどれくらい変化するかを確認するようにしています。また、筋肉量が減っていたとしても、ECW/TBWも同時に低下していれば浮腫が改善した良い変化ですから、そこも丁寧に説明するようにしています。」

ECW/TBW(細胞外水分比)とは、TBW(体水分量)に占めるECW(細胞外水分量)の割合を示す項目です。人体におけるTBWに対する標準的なECWの割合は38%前後とされていることから、ECW/TBWの標準値は0.380です。しかし、浮腫が生じた場合は、余分な水分が主にECWへ蓄積するためにECW/TBWが上昇します。

※ECW/TBW(細胞外水分比)に関しては、ぜひこちらのトピック「体水分均衡の特徴と重要性」もご覧ください。

宮崎さん:
「教育入院の1週間のうち土日は外泊となります。教育入院中は病院食によって食事管理をし、栄養食事指導も行われますが、土日の外泊では自分で自由に食事をすることができるので、食事が乱れることがあります。その場合、外泊後のInBody測定でECW/TBWが高くなりますので、そこからも患者さんの行動が推測できるわけです。食事による体の変化がInBodyの測定結果にはっきりと表れるので、患者さんも納得して 『自分の食事を見直そう』 と改めて思えるきっかけになります。」


外来栄養食事指導での活用

外来での栄養食事指導では、前回の測定結果と比較しながら体成分の変化を評価します。がん患者の場合は入院1〜2週間前と退院後にも測定を行い、測定データは電子カルテにも入力して経過を追えるようにしています。

▲ 外来栄養食事指導の様子

宮崎さん:
「栄養食事指導ではエピソードだけでなく、InBodyによって数値での変化が確認できることが大きな強みだと感じています。ある患者さんは、いつもより脚の筋肉量が落ちていたのですが、よく聞いてみると実は家でのリハビリをさぼっていたことが分かりました。取り組んだ分だけ結果に出て、逆にサボってしまうとその分が数値に反映されることが、患者さんの実感に繋がるのだと思います。」

InBodyでは、こうした変化を全身だけでなく、腕・体幹・脚の部位別にも確認できます。例えば、部位別筋肉量を確認し、上肢の筋肉量が低い患者には歩行運動の際に腕に重りをつけるよう指導したところ、次回のInBody測定でECW/TBWには変化がなく、上肢筋肉量が増加していました。また、下肢筋肉量が低い患者には足首に1kgの重りをつけて足上げ運動をするよう指導したところ、次回測定で下肢筋肉量の増加が数値に表れました。部位別に状態を把握できるからこそ、一人ひとりに合った具体的な指導が可能になっています。

▲ 1型糖尿病患者Nさんの約1年間の体成分の推移

宮崎さん:
「Nさんは1型糖尿病でリブレ(持続血糖測定器)を装着し、食事・運動制限を行っている患者さんで、月1回のペースでInBodyを測定していました。約1年にわたってInBodyで体成分をモニタリングし続けた結果、筋肉量をほとんど落とさずに4.1kgの体重減少を達成することができました。体脂肪率も32.0%から27.7%まで低下しています。InBodyで自分の変化が数値で確認できることが、患者さんのモチベーション維持に大きく貢献し、順調に管理を続けることができました。」

▲ 左から飯田 奈々絵さん(管理栄養士)、小坂 葉子さん(管理栄養士)、宮崎 純一さん(管理栄養士)、荻原 貴之先生(内分泌・糖尿病内科医)

管理栄養士の飯田 奈々絵さんは、主に透析や心臓リハビリテーション患者の栄養管理・栄養食事指導を担当しています。

▲ 透析患者Oさんの測定結果

透析後に定期的にInBody測定を行っていたOさんの場合、8月に体重が急増しました。体重増加の内訳をみると筋肉量もECW/TBWも増加しており、浮腫が悪化していることが分かります。

飯田さん:
「Oさんは体重が増えたことから食べすぎを心配され、いつもの減塩に加えて食事量やカロリーを制限していました。ところが詳しく聞いてみると、きゅうりやお浸しなどの水っぽい野菜やゼリーをたくさん食べていたことがわかりました。体重増加の原因は塩分の摂りすぎによる浮腫ではなく、水分が排出されず水太りのような状態になっていたことだと考えられます。透析患者の場合、塩分制限はもちろんですが1日の水分摂取量も厳密に管理が必要です。この水分は、飲水だけでなく食事に含まれる水分も含んだ量となるため、注意が必要です。」

その後は食事量ではなく、水分摂取の観点から食生活を見直した結果、体成分の緩やかな改善が見られました。InBodyによる体成分の 「見える化」 が、誤った自己判断を防ぎ、適切な指導に繋がった例です。

飯田さん:
「当院の患者さんはECW/TBWの概念をよく理解してくださっています。減塩ができているかどうかを客観的な観点から確認できるので、透析患者さんの指導においてとても有用だと感じています。また、『体重だけでなく、体脂肪量がどんどん下がっているのが目に見えて分かるのがとても嬉しい』 とInBodyの結果を毎回楽しみに待っていらっしゃる方もいます。実際にこの患者さんは以前、栄養食事指導やリハビリだけではドロップアウトしてしまった過去がありました。しかし、栄養食事指導にInBody測定が加わったことで数値の変化が成果の証明となり、継続の原動力になっています。」

管理栄養士の小坂 葉子さんも透析患者の担当として、InBodyを活用しています。

小坂さん:
「透析患者さんの中には、医師のオーダーで測定する方もいれば、ご自身の意思で毎月測定したいという方もいらっしゃいます。医師は除水後の理想体重を表すDW(ドライウェイト)算出の指標として、InBodyのデータを活用しています。患者さんご本人もInBodyの結果を楽しみにしていて、データに強い信頼を寄せています。もともと設定されていたDWで除水中、体調不良を訴える患者さんがおり、InBodyの測定データからDWを算出し直してみると、DWの設定が低すぎた(除水量が多すぎた)ことが判明したケースもあります。患者さんも、自身の体調とDWの基準がリンクしていると実感できるようになっているようです。さらに、測定結果を栄養食事指導にも活用することで、透析患者さんの自己管理の意識向上にも繋がっています。」


内分泌疾患でも活用されるInBody

内分泌糖尿病内科の荻原 貴之先生は、糖尿病患者や肥満症の診療を担当しています。薬物療法の普及が進む中で、InBodyが治療判断や患者指導に大きく役立っています。

荻原先生:
「糖尿病患者さんはただ単に体重を減らすことが目的ではありません。その中で筋肉量が落ちていないか、リハビリによって筋肉量が上がっているかを確認することが大切です。SGLT2阻害薬やGLP-1関連薬を使用した薬物療法の効果を見る上でも、体重減少の 『中身』 をInBodyで確認する必要があります。」

前橋病院では高齢患者が多く、糖尿病患者は必ずしも肥満の方ばかりではありません。体脂肪量を減らすことよりも筋肉量を維持・増加させることが重要な方も多く、一人ひとりの治療目標は異なります。InBody測定によって、筋肉量に加えて体水分量やECW/TBWを確認できるようになったことで、運動指導が進めやすくなっただけでなく、前回との比較によって現在の治療が適切かどうかの判断材料にもなっています。

荻原先生:
「InBodyの結果を多職種で共有することで、栄養食事指導や運動療法をより具体的に進められるのも大きなメリットだと感じています。質の高い医療を提供するためには多職種での連携が必須な中、共通の指標を基に患者さんについて相談し合えることは非常にありがたいです。更に、こうした数値での可視化は患者さん自身の意識変化にも大きく影響します。自ら測定を希望したり、自分で工夫したトレーニングを頑張って筋肉量が増加した患者さんもいらっしゃいます。その具体的なトレーニング方法を伺って、さらに他の患者さんに事例として紹介することもあります。」


広がるInBodyの可能性

宮崎さん:
「内分泌や肥満症の患者さんが増加する中で、そういった患者さんにも初回から積極的にInBodyを活用していきたいです。治療としては薬物療法が中心になってきますが、一方で非常に重要なのがモチベーションの管理です。薬物療法に移行する前の食事療法・運動療法のみの期間でもInBodyを使った介入をしていきたいですし、薬物療法開始後から行う2ヶ月ごとの指導にも役立てたいと思っています。また、現在は外来での活用が中心ですが、今後は病棟でInBody測定が必要な患者さんをもっと測定してInBodyの活用を広げたいと考えています。これからも、体成分の評価を通じて一人ひとりに寄り添った栄養管理を続けていきたいと思っています。」

荻原先生:
「今後は肥満症治療における栄養食事指導・薬物療法の影響について研究を進めていきたいと考えています。肥満症治療ではどうしても体重のみに着目されることがまだまだ多い現状があります。しかし、体重だけでなく、筋肉量や体脂肪量の変化を継続的にモニタリングしていくことが重要です。InBodyを活用しながら、その重要性を広めていけたらと考えています。」