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カフェインが体に及ぼす影響

【質問】コーヒーや緑茶など、カフェイン含有飲料をどれほど飲んでいますか?
国際コーヒー機関(IOC)が2018年に発表した「世界の1人当たりコーヒー消費量」統計データによると、2017年に日本人1人当たりが1年間に消費したコーヒー消費量は3.64kgです¹⁾。疲れてなかなか目が覚めない朝、コーヒー一杯でパッと目が覚めたり、夜遅くまで勉強や仕事をするときにコーヒーを飲んで眠気を飛ばしたりした経験はあるでしょう。カフェインの覚醒効果や食欲抑制効果についてはよく知られていますが、体成分についてはどうでしょうか? カフェイン摂取は体成分に対して一体、どのような影響を及ぼすのでしょうか?

実は、カフェインは体脂肪の燃焼を促進する効果を持つだけではなく、運動効果を高める効果もあるため、体重調節に役立ちます。もしダイエット中に水以外の飲み物で良いものがないか悩んでいるのであれば、コーヒーは良い選択肢になるかもしれません。これから、カフェインがどのように体脂肪量の減少に役立つか、そのメカニズムについて確認してみましょう。


カフェインはどうやって体脂肪を「燃焼」させるのか?


よく「体脂肪を燃焼させる」といいますが、もちろん脂肪細胞を火で直接燃やすという意味ではありません。「体脂肪を燃焼させる」ということは、体脂肪をエネルギー源として使うということを指しています。体脂肪という単語を聞くと、脂肪の塊のような脂肪組織をイメージしやすいですが、この形の体脂肪はエネルギー源として使用できません。脂肪細胞の中には遊離脂肪酸というものが含まれており、この遊離脂肪酸の形で血液中に存在するときのみエネルギー源として使用されます。そして、エネルギー源として使用されないときはブドウ糖と合成して中性脂肪となり、脂肪組織に蓄積されます。つまり、体脂肪量を減少させるためには脂肪組織の中に含まれている遊離脂肪酸を血液中に放出し、消費する必要があります。そして、カフェイン摂取は遊離脂肪酸の放出量を増加させる効果的な方法の一つです。

カフェインの摂取により、脂肪分解というプロセスが促進されます。具体的に言うと、カフェインを摂取するとリパーゼという消化酵素が活発になり、このリパーゼが体脂肪を遊離脂肪酸とグリセリンに分解し、エネルギー源として使用できる形に変えます。また、カフェインを摂取すると血中のアドレナリンとノルアドレナリンというエネルギー性ホルモンの濃度が高くなります。これらのホルモンは腎臓から分泌されるものですが、心拍数を増やしたり、血管の収縮・拡張を誘導したり、脂肪組織での脂肪分解作用を促進させたりする働きもあります。つまり、カフェインは体脂肪の分解作用を手伝う酵素やホルモン分泌を促進させ、体脂肪の「燃焼」を起こりやすくします。


カフェインと代謝機能の関係

遊離脂肪酸の形になった体脂肪をエネルギー源として使用することを代謝といいます。この代謝能力は食習慣や生活習慣、遺伝などの様々な要因によって高くなったり低くなったりします。そして、カフェインはこの代謝機能の改善にも役立ちます。

どうして運動後には体が温まるのでしょうか? 代謝活動によりエネルギーを消費したときのプロセスとして熱生産があります。代謝が発生する際には必ず熱エネルギーが発生するため、代謝と熱生産は1セットとして考えられますが、カフェインを摂取すると熱生産量が増加するという研究があります。この研究によると、カフェイン400mg摂取またはコーヒーを2~3杯飲むことで、熱生産が増加したと報告されています²⁾。最近では、カフェインが代謝に関わる特定遺伝子を活性化させることで体細胞の代謝率を高めることができるということが分かってきました³⁾。この通り、カフェイン摂取は代謝を高める効果があり、より多くエネルギーを消費できるようにします。


カフェインと代謝機能の関係


今までは細胞単位で行われるエネルギー消費において、カフェインがどのように働くかを確認しました。しかし、このようなプロセスが本当に体重減量という結果に繋がるのでしょうか? カフェインと体重減量に関する研究について、いくつか調べてみましょう。

カフェインの消費量が多い人と少ない人が混ざっている過体重の76名を対象にした研究では、低カロリーの食事を4週間続けた結果、女性において4週後の体重減少量とカフェイン消費量が相関するということが明らかになりました。つまり、カフェイン消費量が多い人がより減量したという結果になります⁴⁾。その他にも2016年に行われた観察調査では、カフェイン摂取量が多い人は減量後にも体重を維持できていたと報告しています⁵⁾。せっかく体重減量に成功しても、維持できずリバウンドしてしまっては再び減量することは難しくなります。減量した体重を維持することに苦労しているのであれば、適量のカフェインを摂取することが役に立つかもしれません。このように多くの研究で体重減量とカフェイン摂取量が関係していると示されていますが、これはカフェイン摂取だけで体重を減量できるというわけではなく、体重減量・維持においてカフェインが効果的という意味であることを忘れないでください。


カフェインと運動効果の関係


最も確実に体脂肪量を減らす方法が何かを聞かれると、誰でも運動と答えるでしょう。運動は体脂肪量を減少させるだけではなく、筋肉量を増加させるなど、体成分を改善させることで基礎代謝量を高め、太りにくい体質にすると科学的に証明された方法です。では、この運動にカフェイン摂取を加えると更なる効果が期待できるのでしょうか?

激しい有酸素運動にカフェイン摂取をプラスすると、エネルギー源として使用される遊離脂肪酸の量が増加し、血流を促進するアドレナリンの濃度が2倍以上に増えます。つまり、運動に必要なエネルギー源が活発に供給できる状態になるため、運動の効果を高めるだけではなく、エネルギーが良く消費されることで更に脂肪分解が強化されます。また、個人によってはカフェインの働きにより筋肉内のグリコーゲン消費が抑えられる効果も期待できます。運動によって筋肉に貯蓄されたグリコーゲンは消費されますが、この消費量を抑えることでより長く運動を続けることができるようになります。

カフェインと運動の組み合わせには他のメリットもあります。カフェインは少ない量(コーヒー1~2杯ほど)でも、気分を高揚させ、認知能力を高め、運動中及び運動後の集中力を高めます。前項でカフェインの摂取によりアドレナリンとノルアドレナリンの濃度が高まると述べましたが、アドレナリンは運動時にも分泌されます。アドレナリンによって血管が拡張され、心拍数が上がると、血流が速くなって酸素が筋肉や細胞により多く供給されるようになり、運動能力が高まります。そして、アドレナリンが脳に働くとエンドルフィンやドーパミンというホルモンの分泌も促進されます。これらのホルモンはモチベーションを高めたり、運動による疲れを軽減させたり、鎮痛効果もあるため、より長く運動を続けられるようになります。このようなホルモンの影響から、カフェイン摂取で次のような運動の強化が期待できます。

➤ 持久力強化: サイクリング選手を対象とした研究ではノンカフェインコーヒーを飲んだ選手群よりカフェイン含有コーヒーを飲んだ選手群の速度パフォーマンスが有意に高く示されました⁶⁾。摂取量とは関係なく、カフェインを摂取することで持久力の向上が期待できます⁷⁾。
➤ 筋力強化: 筋トレをしている男性をカフェイン摂取群と非摂取群(プラセボ投与)に分け、筋力を測定した結果、カフェイン摂取群の筋肉収縮時最大筋力が有意に高くなりました⁸⁾。女性においても上半身筋力の有意な増加を確認した研究があります⁹⁾。
➤ 高強度運動の持続時間延長: カフェイン摂取群と非摂取群(プラセボ投与)に分けて、それぞれ激しい有酸素運動を行い、筋肉内グリコーゲン量を比較した結果、カフェイン摂取群で筋肉内エネルギー(グリコーゲン)の状態が良好であったことから、筋肉内グリコーゲンの節約効果も期待できます¹⁰⁾。


カフェインとテストステロンの関係


男性ホルモンと呼ばれるテストステロンは筋肉量を維持しつつ、体脂肪量を減らしたいときに注目すべきホルモンです。肥満男性を対象にした研究で、テストステロン補助剤を摂取した群は対照群に比べて筋肉量がより増加し、体脂肪量はより減少することが確認されています¹¹⁾。このように、テストステロンの血中濃度が高まれば、運動効果を強化することができます。カフェインはテストステロン濃度を高める効果を持っているため、運動効果の強化に繋がります。。最近の研究によると、ハーフタイムでカフェイン含有のガムを噛んだラグビー選手とプラセボ群のテストステロン濃度を比較した結果、15分後のテストステロン濃度はカフェイン摂取群が70%も高い数値を示す結果となりました¹²⁾。テストステロンは筋肥大反応に影響を及ぼすホルモンでもあるため、カフェイン摂取後の筋トレでより効果を高めることもできるでしょう。


適切なカフェイン摂取量について


このように様々な効果を持っているカフェインですが、「薬も過ぎれば毒となる」といわれる通り、摂りすぎはかえって健康を損なうことになります。カフェインの過剰摂取はめまいや吐き気、頭痛、不眠症、神経障害、幻覚・幻聴などの身体的な副作用はもちろん、カフェインによってドーパミンの分泌量が増加し続けると、逆に脳がドーパミンに鈍くなるため、深刻な憂鬱状態を引き起こすなどの精神的な副作用もあります。従って、カフェインの摂取量は目的に合わせてコントロールすることが大事です。運動効果を高めたい場合は、少量のカフェインでも十分効果があるため、コーヒー一杯ほどの量でも十分でしょう。体脂肪の分解に関してはカフェイン摂取量が多くなると効果も比例して現れますが、過剰摂取による急性カフェイン中毒は死亡に至ることもあるほど危険な状態であることを忘れてはいけません²⁾。

カフェイン中毒症状が現れるのは、成人の場合1,000mgを短時間で摂取した場合といわれています¹³⁾。ただ、カフェイン感受性が高い人であればこれより少ない量を摂取してもカフェイン中毒症状が現れることもあるので、異常を感じたら摂取量を減らすことが必要です。参考までに、代表的な飲料のカフェイン含有量は次の通りです。

飲料100mL当たりのカフェイン含有量の目安

食品名 100mL当たりのカフェイン濃度 備考
カフェインが多く添加された清涼飲料水 32~300mg 製品によってカフェイン濃度、内容量が異なる
インスタント珈琲(顆粒製品) 60mg インスタントコーヒー粉末2g、熱湯140mL
コーヒー(浸出液) 60mg 浸出法:コーヒー粉末10g、熱湯150mL
紅茶(浸出液) 30mg 浸出法:茶5g、熱湯360mL、1.5~4分
せん茶(浸出液) 20mg 浸出法:茶10g、90℃ 430mL、1分
ほうじ茶(浸出液) 20mg 浸出法:茶15g、90℃ 650mL、0.5分
ウーロン茶(浸出液) 20mg 浸出法:茶15g、90℃ 650mL、0.5分
玄米茶(浸出液) 10mg 浸出法:茶15g、90℃ 650mL、0.5分

「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~」厚生労働省より算出¹⁴⁾

コーヒーや緑茶、紅茶に含まれているカフェインは、元々含まれている他の成分によって効果がある程度抑えられることもあるといわれていますが、エナジードリンクやカフェイン補助剤によるカフェイン摂取は一気に多量のカフェイン摂取に繋がりやすいため、注意が必要です。


適切なカフェインと上手く付き合いましょう

今まで説明しました通り、適量のカフェインは体脂肪減量に頑張るあなたの頼もしい味方になってくれるでしょう。また、コーヒーやお茶を飲みながらリラックスすることは、疲れやストレスを和らげ、厳しい減量にも頑張れるようモチベーションの維持にも役立つでしょう。カフェインの効果や副作用について理解し、良い効果だけを得られるようにうまく付き合うことが大切です。毎日頑張っているあなたに、心と体の健康をもたらすコーヒー一杯をご馳走してはいかがでしょうか?

 

参考文献
1. 「世界の国別一人当たり消費量」社団法人全日本コーヒー協会ホームページ統計資料
2. Astrup A. et al., Caffeine: a double-blind, placebo-controlled study of its thermogenic, metabolic, and cardiovascular effects in healthy volunteers. Am J Clin Nutr. 1990 May;51(5):759-67.
3. Jamie K. Schnuck et al., Metabolic effects of physiological levels of caffeine in myotubes. J Physiol Biochem. 2018 Feb;74(1):35-45.
4. Westerterp-Plantenga MS et al., Body weight loss and weight maintenance in relation to habitual caffeine intake and green tea supplementation. Obes Res. 2005 Jul;13(7):1195-204.
5. Icken D. et al., Caffeine intake is related to successful weight loss maintenance. Eur J Clin Nutr. 2016 Apr;70(4):532-4.
6. Adrian B. Hodgson et al., The metabolic and performance effects of caffeine compared to coffee during endurance exercise. PLoS One. 2013;8(4):e59561.
7. Pasman WJ et al., The effect of different dosages of caffeine on endurance performance time. Int J Sports Med. 1995 May;16(4):225-30.
8. Timmins TD et al., Effect of caffeine ingestion on maximal voluntary contraction strength in upper- and lower-body muscle groups. J Strength Cond Res. 2014 Nov;28(11):3239-44.
9. Erica Goldstein et al., Caffeine enhances upper body strength in resistance-trained women. J Int Soc Sports Nutr. 2010 May 14;7:18.
10. Chesley A. et al., Regulation of muscle glycogenolytic flux during intense aerobic exercise after caffeine ingestion. Am J Physiol. 1998 Aug;275(2):R596-603.
11. Mark Ng Tang Fui et al., Effects of testosterone treatment on body fat and lean mass in obese men on a hypocaloric diet: a randomised controlled trial. BMC Med. 2016 Oct 7;14(1):153.
12. Russell M. et al., Physiological and Performance Effects of Caffeine Gum Consumed During a Simulated Half-Time by Professional Academy Rugby Union Players. J Strength Cond Res. 2020 Jan;34(1):145-151.
13. 「保健師・薬剤師・看護師向け中毒情報、カフェイン含有飲料(コーヒー、紅茶、緑茶、ココア)」日本中毒情報センターホームページ
14. 「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~」厚生労働省

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