正しいファスティングのすすめ

皆さんは、”ファスティング” という言葉を耳にしたことはあるでしょうか? ファスティングとは、一定期間食事を絶つことで体内の老廃物を排出し、代謝を改善するというものです。食事を絶つと言ってもファスティングは断食とは異なり、特定の食事を制限したり、一時的な絶食をすることで体内の浄化や代謝の改善を図ります。ファスティングはダイエットや美容面での効果も期待されますが、正しい方法で行わなければ効果が出ないばかりか、健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。今回はファスティングの正しい方法についてご紹介します。


ファスティングの歴史

近年ではファスティングが医学的にも注目されていますが、もともとは古代の宗教的な儀式や修行の一部として行われてきた断食が、ファスティングの起源となります。古代ギリシャや古代エジプトでは、断食が身体や精神の浄化になると信じられており、仏教やヒンドゥー教では、長期間の断食による修行を通じて悟りを得られると考えられていました。

医学的なファスティング(断食療法)としては、肥満症の治療や心身症など精神病患者の治療に応用されています。アメリカ国立衛生研究所の研究¹⁾では、絶食と摂食を交互に繰り返す”間欠ファスティング”によって、代謝スイッチ(食糧不足への適応反応)を誘発することにより細胞の健康に寄与することが報告されています。細胞が絶食により軽いストレス下に置かれることで、ストレスへ対処するための能力や抵抗力が高まり、病気とも対峙できるようになるとの仮説が示されました。

現代のファスティングは、健康増進やダイエット目的に行われることが一般的です。ファスティングは、一時的な減量効果が期待できますが、その後のリバウンドにも向き合わなければなりません。ファスティング中に体重が減少することで、一時的な達成感を得ることができますが、ファスティング終了後に通常食に戻ると、体重が元に戻ることがあります。食事制限から解放されたことによりついつい食べ過ぎてしまうと、リバウンドどころか元より体重が増えてしまい本末転倒です。無理なファスティングは健康に悪影響を及ぼす可能性があり、医師や専門家の指導を受けながら正しい方法を身につける必要があります。


ファスティングの正しい方法

ファスティングは身体的な健康効果だけでなく、精神的なリセットや集中力の向上などの効果も期待されています。しかし、正しい方法で行わないと逆効果となる可能性もあるため、正しい知識を持って実践することが重要です。ファスティングの正しい方法として、以下のようなポイントがあります。


➤自分の身体に合ったファスティング方法を選択する

多様な方法があるファスティングの中から、自分の身体に合った方法を選ぶことが大切です。例えば、完全絶食やジュースファスティング、間欠ファスティングなどがありますが、自分の目標や体調、ライフスタイルに合った方法を選ぶことで、継続しやすくなります。また、ファスティング中に運動を行う場合は身体への負担を考慮して適度な運動を心掛けましょう。


➤適切な準備期間とファスティング期間を設ける

ファスティングを行う前は、ファスティング時にかかる身体の負担を和らげるために準備期間を設けることが重要です。摂取する食事を徐々に減らしていくことで、身体が絶食に適応しやすくなります。また、ファスティングの期間は個人の状態によっても異なりますが、通常は数日から数週間程度(最低でも24時間以上)が一般的です。長期間のファスティングは専門家の指導のもと実施する必要があり、初めての方は1日未満の短い期間から始め、徐々に絶食期間を延ばしていくことをおすすめします。


➤水分補給・睡眠・休息を十分に取る

ファスティング中は水分補給をしっかりと行うことが重要です。水やハーブティー、野菜ジュースなどの飲み物をこまめに摂取することで、脱水症状を予防することができます。ただし、過剰な水分摂取は逆効果となる場合もあるため、適度な摂取量を心掛けましょう。また、ファスティング中は十分な睡眠と休息を取ることが必要です。睡眠不足や疲労の蓄積は、身体機能の低下を招き、ファスティングの効果が減少します。ファスティングを行う際は、普段よりも多めの睡眠と休息時間を確保しましょう。


➤回復食を計画する

ファスティング終了後はすぐに通常食に戻すのではなく、徐々に食事を増やしていく調整が必要です。急激な食事内容の変化は胃腸に負担をかけるため、回復食と呼ばれる軽い食事から始めます。回復食で栄養の吸収をコントロールすることで過度なリバウンドを防止する効果もあります。おかゆ・野菜スープ・味噌汁・湯豆腐は回復食の代表例で、液状や柔らかい食べ物がおすすめです。ファスティングを行う際は、ファスティング前後までの食事内容を含めて計画することが重要です。


➤ファスティング中の身体の変化を観察する

ファスティングを行う際は、自分の身体の変化を観察することも重要です。体重・体成分の変化や身体の調子、気持ちの変化などに注目し、ファスティングの効果を客観的に確認しましょう。また、心身の不調や異変を感じた場合はファスティングを中止して、すぐに専門家に相談することも大切です。


➤医師や専門家と相談する

ファスティングは身体に負担をかけることがあるため、事前に医師や専門家に相談することをおすすめします。自己判断でファスティングを行うと、体調不良や栄養不足のリスクがあります。医師や専門家の指導を受けることで、自分に合ったファスティング方法を見つけやすく、安全に実施することができます。また、特定の疾患を持っている方はファスティングが禁忌な場合もあり、子どもや高齢者もファスティングは適しません。既往症をお持ちの方や妊娠中の方も注意が必要です。


ファスティングのメリットとデメリット

ファスティングには主に ”ダイエット効果・代謝改善・心身のリフレッシュ” などのメリットが期待できます。

ファスティングにより体重を減らすことができるのはもちろんですが、正しいファスティングは健康やダイエットに関する理解と意識の向上にも貢献します。ファスティングを実践することで、自己管理能力や食事の計画性が向上し、健康的な生活習慣をその後も築くことができるようになります。ファスティング中の身体の観察を通して、自分自身の身体に対する理解を深めることにも繋がります。

また、正しいファスティングは身体だけでなく精神面にも良い影響を与えます。絶食という行為は一種のストレスです。このストレスを乗り越えることで、精神と身体のバランスが強化され、ストレスに対して強くなるという訳です。このことから、心身症などの症状に効果があると言われています。

ファスティングには、このように様々なメリットがありますが、いくつかのデメリットも存在します。例えば、ファスティングは一時的な絶食を伴うためにエネルギー源が不足することがあり、体力や身体パフォーマンスの低下が生じ、疲労を感じやすくなることがあります。そのため、ファスティング中に運動などの身体活動を行う場合には特に注意が必要です。また、食事制限や絶食は人によってはかなりの心理的な負担になります。食事に対する欲求や忍耐力の問題からストレスやフラストレーションの蓄積を引き起こす可能性がありますし、ファスティング期間中の周りの人との食事会では、食事の誘惑にもストレスを感じてしまうかもしれません。

これらのデメリットを踏まえつつ、自身の体質やライフスタイルを考慮した上で、ファスティングを行うかどうかを判断してください。ファスティングは適切な方法で行えば、効果的なダイエット法となりますが、無理な食事制限や絶食は健康へのリスクを伴うため、注意が必要です。


終わりに

正しい方法を守ってファスティングを行えば、健康改善や理想の体型を手に入れることができるかもしれません。さらに、ファスティングは1週間や1ヶ月など、自分に合った周期で定期的に実施すると、持続的な効果を得ることができます。

しかし、ファスティングは極端な食事制限や一時的な絶食を伴うため、体質やライフスタイルに合わない方は効果を得ることが難しいかもしれません。ファスティングはダイエット法の一つの選択肢に過ぎません。何より自分に合ったダイエット法を見つけることが、成功への近道となるでしょう。

※弊社のホームページでは、InBodyを活用してダイエットやボディメイクに成功した方の成功事例をまとめています。こちらも今後のダイエットにご活用ください。

参考文献
1. Rafael de Cabo and Mark P Mattson, Effects of Intermittent Fasting on Health, Aging, and Disease. N Engl J Med,2019 Dec 26;381(26):2541-2551