広島県立祇園北高等学校
-DXハイスクールで活躍するInBody-
✓InBodyを活用する目的
● DXハイスクールにおける探究活動のツールとして活用するため
● 生徒自身が測定したデータをグラフ化・分析し、客観的な数値でデータサイエンスに取り組むため
✓InBody380導入の決め手
● 複数の部活動から要望が上がり、生徒全員に役立つ機器として適していた点
● 使い方も簡単で測定時間も約30秒と短く、短時間で多くのデータを得ることができる点
● DXハイスクールにおいて、どのように活用するか容易にイメージできた点
● 消耗品が少なくランニングコストがほとんどかからず、継続して活用できる点
✓得られた効果
● 導入から1年半で累計6,000件以上の測定が行われ、様々なデータ分析に活かされている
● 生徒が測定結果に興味を持ち、友人同士で自発的に結果を共有・説明し合う文化が生まれた
● 高校説明会や文化祭、地域のイベントなどでも活用でき、コミュニケーションツールとしても役立っている
機種モデル:InBody380
![]()
広島県立祇園北高等学校(以下、祇園北高校)は2025年度で創立43年目を迎える全日制普通科の高等学校です。文武両道を校風とし、陸上競技部やバレーボール部が全国大会に出場したこともある県内有数の公立高校の一つです。2024年度からは高等学校 DX 加速化推進事業(以下、DX ハイスクール)採択校として、授業でデータサイエンスに取り組んでいます。DX ハイスクールは、情報・数学等の教育を重視するカリキュラムやICTを活用した文理横断的・探究的な学びの強化などに必要な環境整備等の経費を文部科学省が支援する新たな取組です。現在の教育では、高校の早い段階からAIやデジタルなど今後の成長分野を支える人材の育成強化が求められています。
祇園北高校は2021年の全国高校野球選手権広島大会にて、強豪校がひしめく中でノーシードから準優勝を果たしました。「祇園北旋風」 という言葉も生まれた躍進の影には、「解析班」 として主に自チームの分析を行う部員のサポートがありました。その背景には、DXハイスクール以前から文武両道を重んじつつ、長年取り組んできた 「総合的な探究の時間」 の授業を通じて、データ分析や実験の重要性を学び、研究・発表してきた風土が影響しています。
▲ 西 武宏 先生
西 武宏先生は物理の授業を担当しながら、DXハイスクールに関する取組を担当しています。西先生自身も学生時代は野球に打ち込んでいて、その頃から打率や出塁率などのデータ分析が好きでした。大学で部活動を続ける人は少ないと思いますが、高校生はまだ気軽に部活動に入れます。祇園北高校も部活動加入率が8割を超えていますが、大学進学後や社会に出てからも同じように部活動に打ち込めるという人は多くありません。部活動を通して科学的な視点を培っていけるのは高校がラストチャンスと捉え、指導に努めています。
このようにまとめられたデータは、これまでに日本テニス学会や日本野球学会でも発表されており、高校生のうちから将来に役立つ貴重な経験ができています。
DXハイスクールでなぜInBodyなのか?
▲ 総合的な探究の時間に使用する機器が置かれているDX部屋
祇園北高校がDXハイスクール初年度に採択された2024年6月、InBody380が導入されました。DXハイスクールに採択される要件の一つに “デジタルを活用した課外活動又は授業を実施するための設備を配備したスペースを整備する” という項目があります。 ”DX部屋” と呼ばれる部屋にはInBodyの他にも、野球部が球速や回転数を測定するラプソードや、サッカー部が心拍数や走行距離などを測定するKnowsなども置いています。
西先生:
「DXハイスクールの補助金で購入する機器は探究の時間だけでなく、生徒全員に役立つ機器を購入したかったので、授業や部活動で必要な機器はないか校内で意見を集めました。測定機器の情報収集や事務にお願いするまでの購入手続きを取りまとめていた中で、サッカー部が広島県立総合体育館で半年ごとにInBodyで測定していると聞きました。早速結果用紙を見せてもらい、普段では決して測定できない部位別筋肉量やInBody点数などの数値が表示されており、これは面白いと思いました。野球部からは既にラプソードの希望が出ていましたが、ちょうど同じ時期にInBodyの話も上がりました。複数の部活動から要望が挙がるのであれば、InBodyを導入しようと思いました。より多くのデータを集めるため、できるだけ1学期中に導入したいという学校の事情もありましたが、問い合わせから導入まで迅速に対応していただきました。」
▲ DX部屋に置かれているInBody380
西先生は授業で教えるExcelの使い方や様々なグラフの種類などについての知識が元々あったため、他の先生もDXハイスクールの授業ができるよう、まずは授業用動画を約20本作成しました。その動画の中には生成AIの使い方や、自ら収集したデータが本当に正しいかを検証する方法などの内容も含まれています。他にも、スポーツ現場におけるデータ活用方法について、ひろしまAI部や高野連などが主催する外部機会に参加する形で、地元のスポーツチームである広島東洋カープ(野球)や広島ドラゴンフライズ(バスケットボール)のアナリストの話を聞くことや、学校独自でサンフレッチェ広島(サッカー)や広島サンダーズ(バレーボール)のアナリスト講演会を企画・実施しています。
分析に必要なスキルはある程度授業で身に付きますが、最終的な探究テーマは生徒自身が見つけて、尚且つ客観的なデータで示すところまで必要であると西先生は考えています。部活動に絡めた探究テーマを考えると、体の変化がすぐに数値でわかるInBodyはまさにうってつけの機器です。祇園北高校には、DXハイスクールの好事例として全国の高校から視察が訪れますが、西先生は視察に来られた方に必ずInBodyで測定してもらっています。
西先生:
「3Dプリンター・VRゴーグル・ドローンはDX三種の神器のようなもので、これらはDXハイスクールで使用する測定機器の例として国の資料で紹介されています。その資料だけを基にして使用計画が不明瞭なまま購入したという高校では、本校も例外ではなく、教員も生徒も使いこなせず、結果として十分に活用されないままというところもあると思います。一方、InBodyは使い方も簡単で測定時間も約30秒と短く、短時間で多くのデータが得られます。そのため、DXハイスクールでどのように活用するかは容易にイメージができました。また、消耗品も少なく、他の機器と比べてランニングコストがほとんどかからない点も、継続して取り組むのに良いポイントでした。DXハイスクールに関する研修会などの場でInBodyの活用を紹介すると、皆さんとても興味をもってくれます。他の高校はデータ活用のハードルを高く見積もり過ぎている部分があるかもしれません。InBodyのような測定機器を用いて誰がどう見ても変わらない数値を使って研究を進めていくことは、立派なデータサイエンスだと思っています。」
文系や文化部を特色としている高校や、データ分析・実験などを学校のカリキュラムに組み込んでいない高校からすると、理系向きのように見えるDXハイスクールに苦手意識をもち、自分の高校に上手く融合できないと思われるかもしれません。
▲ 生徒が取り組んだ探究テーマにおける結果の一例
西先生:
「高校生は文系・理系関係なく部活動に取り組むことが多いと思います。祇園北高校は部活動を探究のテーマに据えているので、そこに文系・理系の区別はありません。例えば、野球部は打率や球速という数字には全員が日常的に触れていると思います。文化部の例で言うと、書道部の生徒が部屋の湿度と筆に一回墨を付けて書ける文字数の関係を分析していました。吹奏楽部の生徒は音声感情認識AIに曲を取り込んで、曲に含まれる感情を数値化してレーダーチャートで示していました。美術部の生徒は好きなアニメの中でキャラクターの顔と体の比率を分析して、優しいキャラクターは顔が大きい、逆に怖そうなキャラクターは顔が小さいなどの分析をしていました。このように、文系でもデータで裏付けて説明する場面が多くあるので、文系・理系関係なくDXハイスクールに取り組むべきだと私は考えています。」
野球の探究活動を行った生徒は高校でデータ分析を学んだ後、高校教諭(国語)になることを目指して大学に進学しました。この生徒は高校在学中、野球の「後ろにつなげ!!」という掛け声に疑問を抱き、 “「後ろにつなげ」という言葉は決して「スイングを小さく当てに行け」という意味じゃない。当てにいくより、いつも通り思い切り振っていった方が結果として後ろにつながっている” ということをデータ解析で証明しました。最初は受験の際に 「データ活用の経験をどう活かせば良いか」 と悩んだそうですが、日本語の曖昧な表現をより分かりやすく、なおかつ正確に現代語で表現するために、高校で培ったデータ活用の経験が役立ったと話してくれました。自分が興味のあることや探究したいテーマをどのように数値化し、分析し、根拠をもって説明するかといった ”ひらめき力” も重要になってきます。
生徒だけに留まらず、大人気のInBody
▲ 野球部やサッカー部は顧問の先生の指示で定期的に測定
InBody導入から約1年半で、本体に保存されている測定件数は3,800件にも上ります。
西先生:
「生徒たちは朝から放課後までひっきりなしにInBodyで測定しています。InBodyの前には使用方法を貼り出して、誰でも気軽にいつでも測定できる環境にしています。初めは運動部に所属している男子生徒ばかりが測定に来るかなと思っていたのですが、予想以上に女子生徒も測定に来ています。測定した生徒が友達に結果用紙を見せて一緒に測定に連れてくるなど、口コミを通して少しずつ利用が広がっているようです。部活動生だけでなく、パソコンが好きな生徒がプログラミングに少し疲れて気分転換にInBodyを測定しに来るような例もあります。また、生徒だけでなく教員も自己管理のために測定しています。教員や女子生徒は本体にデータを保存せずに測定することも多く、それらの件数も合わせると累計6,000件以上は測定していると思います。」
測定時のIDは学校独自で設定しています。本体から出力したCSVデータを西先生がまとめて整理し、各部活動の顧問の先生へ定期的に部員の測定データをフィードバックして活用してもらっています。最初は西先生がInBody測定結果の各項目について説明していましたが、それを聞いた生徒が面白がって友達に説明するようになり、自然と友達同士で説明し合ったり、競い合ったりする姿も見られるようになりました。結果用紙は各自で管理していますが、部活動によっては顧問の先生へ定期的に提出することもあります。
西先生:
「InBody導入後、中学3年生向けの高校説明会や文化祭などでもInBodyの測定体験を行っています。高校説明会ではDX部屋が注目を集めやすいので、こういった入口から祇園北高校に興味をもってもらえるのはありがたいですね。文化祭でInBody測定をされた保護者の方が、次の年の文化祭にもInBody測定をしに来てくれたこともありました。『去年測定したので、今年も測定しなきゃと思って』 と言われたことは、担当教員として嬉しかったです。他にも、地域のお祭りにInBodyを持って行ったことがあるのですが、測定を体験してくださった女性の方が、後で旦那さんをわざわざ連れて来て測定してくれたりと、InBodyがコミュニケーションツールとしても役立つことを、身をもって体験しています。」
探究におけるInBody活用
探究でInBodyを活用する場合は、自分自身のデータを分析対象として扱います。InBody導入前は体重計を用いる生徒がいましたが、体の中身が確認できるようになったことで、より詳細な分析が確認できるようになりました。
西先生:
「夏休みの前後で2回測定して、夏休み中にどのような運動をしたか、食事で何に気を付けたか、その成果をInBodyの数値から比較するだけでデータサイエンスが簡単にできてしまいます。二人の生徒が夏休みの前後で測定して、夏休み中に一人はずっと腕立て伏せ、もう一人はずっとスクワットを続け、夏休み明けにInBodyの結果を比較するというテーマに取り組んでいたことが印象に残っています。このようなふとした思いつきも、InBodyが客観的な数値で示してくれることで、生徒にとって大きな学びや気づきになっていると思います。」
▲ InBodyで測定した値を用いた探究発表の一例
データサイエンスはただ分析するだけでなく、その数字をどのように見せるかも重要です。授業で学んだ様々なグラフの中から、生徒自身でグラフを作成します。InBodyの結果用紙をそのまま発表に使ったり、何十回も測定した結果を折れ線グラフで示したりなど、数字の見せ方にも個性が光ります。完成した発表資料は生徒同士で読み合って相互評価を行います。
西先生:
「自分たちの身の回りには多くのデータが溢れていることを体感してもらうために、グラフを作る授業の中でYouTubeにアップされているサッカーのPK動画を見て、どのコースが一番決まりやすいかを集計したときは、生徒の反応が非常に良かったです。今はテレビだけでなく様々な媒体で試合動画を見ることができる時代だと思いますが、高校の部活動でも実は試合の動画やスコアシートをちゃんと記録しているんです。でも、撮影したり記入したりするだけで終わってしまっていて、そのデータを活かしていないことがとても多いです。
これは私の理想ですが、データサイエンスの授業の中で、部活動のミーティングができたら良いなと思います。過去の試合映像やスコアブックをみんなで見て、そこから様々な数字を引き出していく。そのようなプロセスを通して、自ずとデータ分析をするようになるのではないかと考えています。そうすると、最初の目的である “試合に勝つ” “上手くなる” ために何が足りていないのか、次はどういう練習をしようかと考えるきっかけになります。バスケットボールであれば、例えば今のシュート成功率が30%で、ではそれを40%に上げるためには何を練習すれば良いかを考えます。もしデータがない場合は、もうちょっとシュートが入るようになれば良いな、だけで終わってしまいます。だからこそ高校でデータサイエンスをやるには、部活動というテーマが最適だと思っています。」
あるバレー部の生徒は、撮影した試合動画を分析してサーブのコースと決定率を分析しました。その結果、大事な試合でも緊張することなく自信を持ってサーブが打てるようになったと嬉しそうに話してくれたそうです。技術的な面もですが、自分やチームのプレーを見返すことで精神的にも成長できるきっかけとなりました。
一方、DXハイスクールを進めていく中で、思わぬ落とし穴に西先生は気付きます。驚いたことに、プリンターの使い方を知らない生徒が多かったのです。
西先生:
「プリンターにInBodyの専用結果用紙を補充できない生徒や、電源の入れ方が分からない生徒もいました。大学受験の受験票を印刷するときや、大学生活で一人暮らしを始めるとパソコンとプリンターをセットで買う生徒もいるでしょう。最近の生徒はパソコンやスマホ、タブレットなどは説明しなくても手際よく使いこなすのに、プリンターが使えないのは盲点でした。今はペーパーレスの時代ではありますが、DXを進めるためにこういった周辺機器を適切に扱えるように説明してあげることも授業の一環なのかもしれません。」
InBodyを用いた探究を行った生徒の声
男子生徒Aさん (バレー部)
入学当初から体重がなかなか増えないと感じていました。InBodyで測定しながら自宅でのトレーニングを増やしたことで体重を3kg増やすことができました。スパイクを打つ利き腕や下半身の筋肉量なども気にしています。一方で、なかなか上半身の筋肉量を増やすことができていないので、今後は上半身を意識したトレーニングにも取り組んでいきたいです。
女子生徒Bさん (陸上部長距離)
最初は興味本位で測定しましたが、色んな数値を見ることができるので面白くて週一回のペースで測定しています。体幹トレーニングを頑張った結果、体重が変わらないまま筋肉量を1.5kg増やすことができました。体重の増加は走りに影響するので不安な部分もありましたが、体重が変わっていないことを確認しながら筋肉量を安心して増やすことができたので良かったです。
男子生徒Cさん (硬式野球部)
入学当初は朝食を食べないことが多く、体重の増減が大きいせいでコンディションが安定しないことが課題でした。2年生の夏頃から朝食を必ず食べるようにして、レトルトの牛丼とプロテインでタンパク質を40g摂ることを意識した結果、この冬の間に体重が5kg増えて、FFMIが21.5kg/㎡になりました。夏の暑い時期は食欲が低下して一度にたくさん食べられなくなってしまうので、部活動中の飲み物に粉飴を入れたり、補食含めて6-7食小分けに食べたりすることを意識しました。
男子生徒Dさん (硬式野球部)
打球の飛距離と体重・筋肉量の関係を調べました。その結果、体重よりも筋肉量の方が飛距離に関係があることが分かりました。冬のトレーニング期間に体重が8kg増えましたが、その中でなるべく体脂肪量を増やさずに筋肉量を増やせているかInBodyで確認していました。監督に教えてもらった食事・トレーニング・睡眠を心掛けながら、間食のおにぎりは、具にツナや鮭などを入れてもらってタンパク質を一緒に摂るよう意識しています。
終わりに
西先生:
「これからの時代、様々な事象を客観的なデータをもって確認・分析する力や、そのデータを基に意見を出し合う力などは、間違いなく必要になります。そのための教材としてInBodyを有効に活用しています。DXハイスクールの研修会などに参加してみると、InBodyの存在自体を知らない方も多く、DXハイスクールの取組に困っている高校も多いです。そういった高校に対して、生徒が興味をもちやすい部活動を入口に、InBodyをはじめとする測定機器を使ってDXハイスクールに取り組んでいくことを発信していけたら良いなと思います。」
![]()