GOLDWIN TECHLAB
-InBodyを用いてスポーツウエアの開発を強化する-
✓InBodyを活用する目的
● 測定データを分析し、ウエアなどの商品開発に役立てるため
● 社員の健康意識を向上させるきっかけとして活用するため
✓InBody470導入の決め手
● 補正を使用せず、高精度で細かい単位まで計測できる点
✓得られた効果
● ウエアの機能を具体的に数値で表す際に、体成分の情報が役に立った
● クラウド管理サービス 「LookinBody Web」 を導入したことにより、データの集計やフィードバックが楽になった
機種モデル:InBody470
株式会社ゴールドウインは製品に使用する素材選定から加工・パターン設計・縫製・品質管理までを行うスポーツアパレルメーカーです。『SPORTS FIRST:スポーツ・ファースト』のタグラインのもと、アスリートから一般のスポーツファンまで幅広い客層を対象に、オリジナルブランドの「Goldwin」「NEUTRALWORKS.」「and per se(アンパスィ)」や、オウンドブランド(商標権を取得したブランド)の「THE NORTH FACE」「HELLY HANSEN」「canterbury」など、数多くのブランドによるアパレル事業を展開しています。創業の地、富山県小矢部市にある研究開発施設「GOLDWIN TECHLAB(以下テック・ラボ)」では、InBodyを含め様々な最先端設備と技術が導入され、計測された数値を生かしてスポーツウエアの製品設計が行われています。『見えないものにこそ、真実の価値がある』 が機能美とブランド価値を追求するゴールドウインの矜持です。
ゴールドウイン、そしてテック・ラボにおけるInBodyの役割
▲ 髙島 直之さん
現在、テック・ラボで主に人間科学分野を担当している髙島 直之さんは、人や生地を対象として様々な実験を行い商品開発に携わっています。神戸大学大学院を修了して2014年にゴールドウインに入社し、テック・ラボの前身である開発部に所属して研究開発を行っていました。テック・ラボが開設された2017年11月以降、三次元計測装置(以下3Dボディスキャナー)・人工気象室・モーションキャプチャ・呼気ガス分析装置などの様々な最先端設備が導入される中で、体成分分析装置InBody470も2019年3月に設置されました。
髙島さん:
「大学院で運動生理学を専門に学んできて、卒業後も研究を続けたい、スポーツメーカーで専門性を活かしたいと思っていたところ、現職とご縁がありました。就職してからは人だけでなく、生地の実験を任されることも多くなりました。ウエアを作る上では着心地や機能面の要となる生地がとても大事なので、人と生地と完成する商品のイメージをトータルで考えていきます。実は、体成分分析装置の導入を検討していた頃、他の体組成計メーカーともやり取りをしていました。インボディさんへ問い合わせたことと同じことを他社さんにも質問して、機器の特徴や違いを調べていました。体成分を高精度で細かい単位まで計測できること、統計補正を用いていない点などに魅力があり、NEUTRALWORKS.の直営店舗でもInBodyが導入されていたことなどから、InBodyの導入を決めました。」
▲ 中嶋 葵さん
テック・ラボで人体測定学や設計分野を専門とする中嶋 葵さんは、InBodyを用いた体成分データや3Dボディスキャナーを用いた体型データの収集を担当しています。富山県出身で小さい頃からゴールドウインが身近にあったこと、スポーツが好きでスポーツに関わる仕事を希望していたことから、高校卒業後にゴールドウインの関連会社に就職して生地の染色加工などを経験した後、現職に就いて5年目となります。富山県小矢部市ではフィールドホッケーが盛んで中嶋さんも学生時代取り組んでおり、中学・高校では全国優勝を経験しています。国体に出場した際は、ゴールドウインのユニフォームを着用したという所縁もあります。
中嶋さん:
「InBodyは単に研究のための測定機器ではなく、社員への健康啓発のきっかけとなる場面でも活用しています。健康意識向上のプログラムである Wellness-pit は、InBodyから体成分を評価し、併せて3Dボディスキャナーから体型データを、アンケートから運動生活習慣を収集します。ゴールドウインはスポーツアパレルの会社ということもあり、スポーツをされていたり体を鍛えられていたりする社員の方が多くいらっしゃいます。『大会の前後で記録しておきたい』 『最近運動を頑張っているので体の変化を知りたい』 などの要望が多く、皆さん定期的に計測を行っています。」
InBody導入直後は紙媒体でデータ管理が行われていましたが、スマートフォン上で測定データを時系列で確認して数値の変化を追えるようにした方が、研究側だけでなく利用者側にとってもメリットが大きいという声から、InBody導入の1年後にはLookinBody Webも導入されました。研究者(管理者)は全ての測定データをパソコン・タブレットから閲覧でき、被験者(利用者)は自身のデータをスマートフォンの専用アプリからいつでも見ることができます。
中嶋さん:
「データ収集を行う際に、ただ計測されるだけでは測定にご協力いただく被験者にはメリットがないので、測定結果をフィードバックしたりスマートフォン上で測定結果を閲覧できるようにしたりすることで、測定に前向きに協力してもらいたいと考えました。LookinBody Webを導入したことで、実際に定期的に測定される方が増え、利用者の測定頻度が高くなりました。スマートフォンで測定データを見ることができるので、1ヶ月ほど経つとまた今の状態を知りたくなり、継続して計測に来られるようです。『1年前の自分と比較することができて楽しい。』『体の変化を定量的に見ることができるのが嬉しい。』など利用者の方から伺っています。」
商品化におけるInBodyデータの活用
▲ テック・ラボ内に展示されている歴代の代表的な商品
テック・ラボで収集したInBodyなどの測定データを基に、ウエアの設計を行います。ゴールドウインの社員・直営店舗でのお客様・ラグビーやクライミングなどアスリートの外部データを合わせて収集し、活用していきます。
髙島さん:
「テック・ラボで実験を行って収集したデータは分析した後、商品の企画担当や設計担当に結果を伝えます。実験結果の数値をそのまま伝えるだけではなく、数値の示す意味を伝え、この結果が設計に反映されたウエアの提案までできるよう心掛けます。しかし、我々の研究結果から提案するウエアと、企画担当や設計担当が思い描くウエアでは、お互いの主張が異なる場合があり、どのように折り合いをつけていくかで悩むこともあります。トップアスリートでも機能面だけでなくかっこいいウエアを着たいと言われるので、機能性もデザインも諦めることなく ”機能美” を追求しています。」
ゴールドウインでは、新製品が販売される1年前にアパレルバイヤーに対して展示会が開かれます。ここで展示するためのウエアを作るには、企画から1年半ほどの時間を要します。つまり、商品の企画開始から店頭に並ぶまでには2年から3年ほどの時間がかかっています。一般的に流通する衣類のデザインはその年の流行や時代を反映している部分もありますが、ゴールドウインの商品はいずれも ”機能美” を売りにしていることもあり、流行だけに左右されることはありません。商品の完成までに時間をかけてより良いものを追求していきます。
InBodyを研究開発に用いることの意義
▲ 3DボディスキャナーとInBody測定中の様子
見た目の体型が同じでも、体脂肪率が異なる(=体の中身が異なる)ということはよくあることです。体脂肪率が違うということは、健康状態・体質・生活スタイルも違うということになります。InBodyで体成分を測定することで、このような体型だけでは分からない情報をより詳細に知ることができます。ウエアの開発という部分では細かい寸法が分かる3Dボディスキャナーの情報が優先されることが多いですが、テック・ラボが3DボディスキャナーとInBodyを必ずセットとして測定を行う理由の一つでもあります。
髙島さん:
「体の状態やウエアの機能を、数値で定量的に示すことが大事だと思います。例えば、ある人が一つのウエアを着用して暖かいと感じていたとしても、データは逆の結果を示しているということがあります。このウエアはどの数値を根拠に、どういった機能を有した商品であるのかを示すことがテック・ラボとしての役割であり、その根拠となる数値を測れるようにするものがInBodyをはじめとした、ここにある実験機器だと思っています。」
▲ 2019年ラグビー日本代表のユニフォーム
中嶋さん:
「一度に筋肉量・骨格筋量・体脂肪量などの様々なデータを収集できるのがInBodyの魅力だと思います。そして、InBodyや3Dボディスキャナーから数値として出されるものを正しく選手や一般のユーザーに提供することが、私達の役目でありテック・ラボの意義でもあると思っています。ラグビー日本代表のユニフォームはゴールドウインが開発に取り組んでいることもあり、テック・ラボには国内トップのラグビー選手が計測に来られることがありますが、InBodyを測っていただくと体脂肪率が低く筋肉量が多いガッチリとした体型であることが分かります。しかし、他の競技では見た目がラグビー選手のようにガッチリしていると感じてもInBodyの結果を確認すると、ラグビー選手よりも体脂肪率が高く筋肉量が予想より少ないことがあります。見た目は同じでも、数値で見てみると違いを見つけられるというところが、データを見る・収集する部分での面白いところです。」
今後の展望
中嶋さん:
「2021年に県内にある桜ヶ池クライミングセンターで、スポーツクライミング愛好家にむけてInBodyと3Dボディスキャナーの計測サービスを期間限定で行いました。計測を行うことで利用者自身がパフォーマンスアップや健康管理へと繋げる機会を設けることができた他、クライマーの身体にあったウエアを作るための設計データの収集も行うことが出来ました。まだ、こちらのデータは分析途中ではありますが、今後も様々なスポーツをターゲットとした計測を行い、ウエアの開発に活かしたいと思っています。
InBodyのデータ、3Dボディスキャナーのデータ、それぞれ単体での計測を行っている施設はたくさんありますが、InBodyと3Dボディスキャナーをセットにした体型計測プログラムは、ゴールドウインだけが提供できる特別なプログラムです。このオリジナルの体型データをこれから蓄積して利用していけるよう、InBodyのデータをたくさん集めて行きたいと考えています。」
*株式会社ゴールドウインが展開するTHE NORTH FACEは2005年よりクライミング日本代表チームの公式ユニフォームをサポートしている。
髙島さん:
「一般的に体脂肪率が多く太っている人は暑がりで、逆に体脂肪率が少なくてガリガリの人は寒がりだと言われるように、体型によって温度の感じ方も様々な特徴があると思います。今後は、体脂肪率の違いによってウエアの暖かさを提案・選択できるコンセプトでのウエア開発も面白いのではと考えています。」