運動の選び方 Part2: 有・無酸素運動の組み合わせ

Part1では有酸素運動と無酸素運動の違いとその効果について調べてみました。次の運動についてお話する前に、無酸素運動(筋トレ)についてよくある質問2つをご紹介します。


質問1:ウェイトリフティングは有酸素運動にもなるのか?


多くの方は無酸素運動をした後でも、心拍数が上がる経験をしたことがあるかもしれません。では、無酸素運動も有酸素運動と同じく心血管系や代謝能力に影響を及ぼすと考えて良いのでしょうか? 答えは「NO」です。

無酸素運動は筋肉量を増やすことで基礎代謝量を増加させます。しかし、これは有酸素運動によって増加するエネルギー消費量とは異なるもので、有酸素運動によって消費されるエネルギー量に比べると少ないです。もちろん、無酸素運動はエネルギーを消費する組織である筋肉を鍛えることで結果的に総エネルギー消費量の増加に役立ちますが、運動によるエネルギー消費量だけを考えると、有酸素運動の方がよりエネルギーを消費します。


質問2:無酸素運動(筋トレ)はみんなに必要か?


筋肉をつけたい人の場合、もちろん筋トレを行うことが大事です。しかし、ただ健康を維持したいだけの人でも筋トレをする必要があるのでしょうか?

筋トレは筋肥大だけでなく運動機能の向上にも重要です。特に、日常生活で必要な動作と似たような動きをすることで筋肉を鍛える機能的レジスタンス運動などは、特定の筋肉にアプローチする筋トレと違って、全身の筋肉をまんべんなく鍛えられます。

また、高齢者に筋トレの効果があまりないという誤解が多く見受けられますが、様々な研究から筋トレは高齢者の運動機能も改善させることが明確になっています。身体機能が低下している高齢者を対象に筋トレプログラムを実施した研究¹⁾では、3ヶ月後に参加者の筋肉量が増加し、歩行速度及び身体機能全般の改善が確認されました。これは高齢者において筋トレが体成分を改善させるだけではなく、運動機能や日常生活に必要な身体能力も向上させることを示しています。更に、筋トレや自重トレーニングは筋力増加、柔軟性や俊敏性の改善によって、日常的に必要な運動機能を整えたり、怪我のリスクを減らしたりします。
※高齢者の筋トレに関してはInBodyトピックの「筋トレに年齢制限なし」もご覧ください。

では、有酸素運動のメリットと無酸素運動(筋トレ)のメリットを両方とも得られることはできないのでしょうか? 単純に有酸素運動と無酸素運動を一緒に行えば良いのでしょうか?


有・無酸素運動を組み合わせる

有酸素運動と無酸素運動は体に与える効果が異なるため、二つをうまく組み合わせて行うことでどちらの効果も得ることができます。有酸素運動と無酸素運動を一緒に行うことでお互いの作用を妨げてしまうようなことはあまりありませんが、プログラムの効果を最大限に得るためには次の2点を考慮しましょう。

①有酸素運動と無酸素運動の相性を考慮する

例えば、下半身を鍛える筋トレに有酸素運動としてランニングを追加すると筋力アップや筋肥大の効果が弱まってしまうことが言われていますが、サイクリングと組み合わせることで筋トレの効果も得られやすくなるとされています。その原因としてはおそらく次の2つが考えられます。

・サイクリングでも下半身の筋トレと同じ筋肉が使われる。
・ランニング中の伸張性筋収縮は筋損傷を引き起こすが、サイクリング中の短縮性筋収縮は筋損傷をあまり引き起こさない。

有酸素運動の種類や特徴について理解することも重要ですが、頻度と期間を正しく設定することも大事です。場合によっては、筋トレに有酸素運動を追加することがかえって筋肉の成長効果を低下させる可能性もあります。そのため、運動プログラムを作成する際は、特定部位を頻繁に鍛えるような偏りがないように心掛けましょう。例えば、上半身の筋トレ+ランニングで全身の筋肉に刺激を与えたのであれば、次の日は有酸素運動を行わず下半身の筋トレのみ行うか、サイクリングのみを行うなどの調整が必要です。

②運動で得たい効果の優先順位を明確にする
有酸素運動と無酸素運動を一緒に行うとき、優先順位が高いのはどちらなのかを明確にしてから運動プログラムを組みましょう。例えば、心肺機能を強化して長距離を走れるようになりたいのであれば、まずは有酸素運動から入り、その後無酸素運動を行います。逆に、筋肉量や筋力の向上を目指すのであればストレッチや軽い有酸素運動でウォーミングアップを済ませ、筋トレ→有酸素運動の順で行うとより効果的です。ただ、順番に関わらずどちらも健康に良いことに変わりないので、健康維持を目標にするのであればまずは体を動かすことから始めましょう。

運動前に軽く炭水化物を摂取したり、運動後にプロテインを補充したりすると筋肉の成長と修復に役立ちます。また、運動後には体が回復する時間を十分に確保してください。1日に有・無酸素運動を組み合わせて両方行う場合は、最低でも6時間以上の間隔をおくことが望ましいとされています。


自分に合う運動プログラムを作りましょう

肥満や加齢による様々な健康問題の予防において、運動と食事は何よりも重要なポイントです。特に、自分に適した運動プログラムを考え、習慣として継続することはとても大事です。有酸素運動と無酸素運動はそれぞれ異なる方法で健康な体作りに役立ちます。どちらか不足している部分を補う運動から始めても、2種類の運動を組み合わせても問題はありません。重要なのは、どのような運動でも無理せず楽しく続けることでしょう。まずは簡単な目標を立てましょう。そしてそれに最も適した、あなたに合う運動の組み合わせを考えて少しずつ取り組んでみてはいかがでしょうか。

参考文献
1. Liao CD, Tsauo JY, Lin LF, Huang SW, Ku JW, Chou LC, Liou TH. Effects of elastic resistance exercise on body composition and physical capacity in older women with sarcopenic obesity: A CONSORT-compliant prospective randomized controlled trial. Medicine (Baltimore). 2017 Jun;96(23):e7115.