InBody BWAの新しい可能性について
InBody BWAはInBody S10と同じく、移動と携帯に特化した高精度体成分分析装置です。測定姿勢は、仰臥位・立位・座位の3姿勢から選択することができます。「手首・足首が腫れている」、「拘縮がある」などの理由で通常の装着式電極では測定できない方でも、付着式電極を使用することで測定を行うことができます※。また、新機能の一つである臨床ノートでは、切断有無を設定することによって、欠損患者でもより正確に体成分を測定できるようになりました。
ベッドサイド測定に特化した設計で、付属カートで院内を自由に移動でき、電源が取れない場所でもバッテリーパックとサーマルプリンターで検査を行うことができます。また、InBody BWA本体のLCD画面からでも必要な項目をその場で確認することができます。様々な測定環境で、より幅広い患者層を測定できるため、医療施設や研究施設で活用が広がっていくことが期待されています。
※装着式電極は手首の骨頭とくるぶしの中心に合わせて取り付けるホルダークリップタイプの電極です。付着式電極はシールタイプの電極で、欠損部位の末端など任意の個所に貼付して計測を行うことができます。付着式電極は有料のオプション機能になります。
BIA機器で初めて2000kHz・3000kHz高周波数を使用
2000kHz・3000kHzの高周波数を使用する目的は、とても強い浮腫の症例における測定精度を上げることにあります。強い全身性・局所性の浮腫、多量の腹水・胸水の症例は、既存の機種でも測定は可能でしたが、浮腫の程度が酷くなるにつれて一部の周波数帯域でインピーダンスが正常に測定されない限界がありました。しかし、InBody BWAの2000kHz・3000kHz周波数を用いた測定技術は、とても強い浮腫症例でも全ての周波数帯域で安定的にインピーダンスが計測でき、浮腫症例における体成分評価の信頼性を更に高めています。
2000kHz・3000kHzの周波数を用いた測定技術は、単に周波数の情報を追加しただけではありません。透析患者の浮腫症例や重症心身障害児で正確な測定が難しい症例などでInBody S10とInBody BWAを測り比べると、InBody BWAで測定エラーが減ったという報告があります。
切断箇所を自動で認識して体成分結果を提供
InBody BWAは測定前に設定できる臨床ノートで「切断有無」(以下、切断モード)を「切断部位あり」にして欠損患者を測定するモードがあります。切断モードでは、腕・脚のインピーダンス値の左右差を確認し、インピーダンスが小さい方の腕・脚を切断箇所として認識します。該当部位の部位別筋肉量・部位別水分量・部位別体脂肪量・部位別細胞外水分比(ECW/TBW)などの部位別情報は「0」と処理され、四肢骨格筋量を使用して算出される骨格筋指数(SMI)も0.0kg/m²と表示されます。
一方、全身の体成分結果では、切断肢のインピーダンスと健側のインピーダンスの差から切断によって失われた部位の重さを推定して、切断肢の推定値を含んだ値を全身の値として提示します。
インピーダンスは伝導体の長さに影響を受けますが、切断などの理由で測定距離が短くなるとインピーダンスは大幅に減少します。インピーダンスの減少は、一般的に体水分量(筋肉量)の増加を意味するため、従来のBIA機器で測定を行うと切断肢の筋肉量が異常に多く算出され、切断肢以外の健常部位の値や全身の体成分結果の精度が落ちる問題がありました。InBody BWAはインピーダンスを部位別で単独に測定できるインボディの技術を応用し、これらの課題を克服しました。
切断モードを応用してサルコペニア評価で使用するSMIを推定する
欠損患者を切断モードで測定した場合、骨格筋指数(SMI)は0.0kg/m²と表示されます。切断部位の部位別筋肉量は0と認識されるため、四肢の部位別筋肉量の情報を利用して算出される項目は0と表示されます。しかし、切断部位と逆の健側部位の結果を応用することで推定SMIを算出することができます。
例えば右脚を切断している場合は、右腕+左腕+左脚+左脚で四肢筋肉量の合計(推定値)を求め、身長(m)の二乗で割ることで、推定SMIを算出できます。S10では切断部位の筋肉量が過大算出されるだけでなく、部位別筋肉量の合計が体重を超えないよう調整されることで健側部位は過小評価される問題がありましたが、BWAは切断部位を0と認識することで、健側部位を正常に計測できるようになりました。そのため、推定SMIを算出することで既存BIA機器ではできなかった、欠損患者におけるサルコペニアのスクリーニングで活用できる可能性があります。
※現時点でInBody BWAを用いて欠損患者のSMIを推定している研究や報告はありません。
透析患者の目標体重(ドライウェイト)を算出する
透析患者や心不全患者など体の過剰水分を減らす治療を行う際、InBodyで提供する細胞外水分比(ECW/TBW)を利用して、除水量を確認したり目標体重を算出したりすることができます。
InBodyでは、健康な人体における標準的な細胞内水分量(ICW):細胞外水分量(ECW)が62:38であるという生理学的な根拠から、測定されたICWを基準に適切なECWを求め、それより過剰なECWを計算して現在体重から差し引くことで、目標体重を推定します。つまり、ICWを基準に過剰なECWが除外され、体水分(TBW)に対するECWが理想的な比(0.380)である場合の体重を意味し、次の公式としてまとめることができます。
【公式1】 iDW = 体重 - 過剰ECW
【公式2】 (ECW - 過剰ECW) ÷ (TBW - 過剰ECW) = 0.380
【公式1+公式2】 iDW = 体重 - (ECW - 0.380 × TBW) ÷ (1 - 0.380)
▲ ドライウェイト計算画面。目標細胞外水分比を入力することで、測定結果に基づいた目標体重が自動で算出される。
健康な方のTBWに対するECWの理想的な比(ECW/TBW)は0.380ですが、この値は浮腫の程度・年齢・栄養状態(筋肉量)・合併症などの要因によって高まることが分かっています。そのため、目標細胞外水分比を一律で0.380と設定するのではなく、個々の患者の状態に合わせて0.380より高い値で設定する必要があります。InBody BWAでは体成分測定後、LCD画面上で患者ごとに設定された目標細胞外水分比を入力することで、水分調節量と目標体重を表示することができます。
InBody BWAによる栄養評価
InBody BWAは体内の水分情報を詳しく測定することで、全身の栄養状態を評価することができます。人体の栄養状態に影響する要因はたくさんありますが、体成分測定を行うことは栄養状態の理解を助けてくれます。寝たきりの方やICU患者、車椅子を使用している患者など、立位での体成分測定が困難な方は、InBody BWAを使って、栄養状態を評価するために必要な情報を入手することができます。立位が困難な患者こそ栄養状態モニタリングの必要性は高く、InBody BWAはより多くの患者に寄り添います。
詳しい仕様や項目等については、InBody BWAの製品ページをご覧ください。