大阪マーヴェラス
-測定の習慣化によるメリット-
✓InBodyを活用する目的
● 女子バレーボール選手のコンディション管理を行うため
✓InBody470導入の決め手
● 体重のみで厳しく管理してしまうことで起きる摂食障害などのトラブルを予防・対策できる点
✓得られた効果
● 公式アプリにデータを転送することで、選手自身も体成分管理ができるようになった
● トレーニングや食事量などで体成分がどのように変化するか、という感覚が身につき、自己管理しやすくなった
機種モデル:InBody470
▲ 2019-20 V.LEAGUE DIVISION1 優勝
JTマーヴェラスは兵庫県と大阪府にホームタウンを持ち、バレーボールV.LEAGUEで活躍するJTの女子バレーボールチームです。1956年に設立され、黒鷲旗で優勝5回と準優勝5回、現リーグの前身であるV・プレミアリーグで優勝1回と準優勝3回、現在のリーグであるV.LEAGUE DIVISION1では2019-20シーズン優勝など、何度もタイトルを獲得している強豪チームです。また、JTマーヴェラスから3名の選手が2020年度バレーボール女子日本代表チームに選出されており、東京オリンピックでの代表入りも期待されています。
実業団トレーナーとしての30年間の道のり
▲ 上村宗男トレーナー(当時)
JTマーヴェラスの上村 宗男トレーナー(当時)は、選手の治療と体のケアを管理するメディカルトレーナーです。JTマーヴェラスに赴任して7年目になりますが、赴任前はハンドボール部や陸上部などの他競技でも実業団トレーナーとしての実績があり、これらの経験をトータルすると実業団スポーツチームで30年間も勤務しているベテランのトレーナーです。学生時代に陸上の短距離選手だったことから、自然とトレーナーの道に進みました。日本体育大学へ進学して専門知識を学びましたが、上村トレーナーが大学を卒業された当時は、まだ ”トレーナー” という職業が日本で定着していない時代でした。最初は選手をケアするためのトレーニングルーム自体の設置やストレッチを指導することから始めました。上村トレーナーは、日本におけるトレーナーという仕事の礎作りとその普及に携わってきたひとりであると言えます。トレーナーという肩書の中には、柔道整復師・はり師・きゅう師・アスレチックトレーナー・上級トレーニング指導者(JATI-AATI)など様々な資格が含まれています。
女子バレーボール選手のコンディショニング管理法
上村トレーナーがJTマーヴェラスに赴任したことが、チームにInBodyを導入するきっかけとなりました。InBody無しでコンディショニングを行うことになると、体重のみでの指導となります。特に、女子選手では体重に関してあまりに厳しく管理してしまうと、拒食症・過食症・ホルモンバランス異常・精神的ダメージなどの原因となり、体調のコントロールが出来なくなってしまうという不安もあります。上村トレーナーがチームに働きかけたことで、2013年にInBody430が、2018年にInBody470が導入されました。
選手は毎朝InBodyで体成分を測定して体調チェックを行います。InBody測定の他に、血圧・体温・ヘモグロビン推定値(貧血指標)を測定・記録していきます。これらのデータは、選手とトレーナーだけでなく監督・栄養士・S&Cコーチらにも共有されます。選手はInBodyのデータを各自のスマートフォンからでも、InBodyアプリを通して確認することができます。
「在籍しているほとんどの選手が、自主的にInBodyを測定しています。女子バレーは6月から9月がトレーニング期、10月から4月がリーグ戦やカップ戦、5月がオフシーズンという1年間を過ごしますが、1年中を通して体成分を安定させている選手もいます。勿論、一部の選手や新人選手は体成分の変動を経験していますが、リーグ戦の開幕時期の10月には体成分の状態も最も良い状態に合わせてきます。毎日測定しているからこそ、選手自身もどのような体成分がベストパフォーマンスを発揮できるのか、自分に合った状態であるのかを擦り合わせていくことができます。」
怪我とInBodyの関連性
「1日単位の僅かな変化では気づきにくい点も、1年間や数年間分でデータ全体の推移を見渡すと、怪我が原因となった不調な期間が、体成分の明らかな違いとして目に見えてくることがあります。ある選手は膝の手術がきっかけで、体成分が別人のように大きく変わったことがあります。リハビリから復帰に向けての約半年で、体脂肪量が大きく増加する形で体重が約10kgも増加してしまいました。手術の影響で運動量が減ってしまったことも要因でした。筋肉でなく体脂肪の増加で体重が増えてしまうと、プレーにキレがなくなるなどパフォーマンスにも支障が出てしまいます。彼女は手術とリハビリを乗り越えて、崩れてしまった体成分を約5年間かけて徐々に戻していきました。」
※履歴グラフは取材を基に再現したイメージグラフです。
「スポーツには怪我が付き物です。中には手術を経験してリハビリが必要な選手や、毎日体のケアが必要な選手もいます。今後はInBodyの部位別筋肉量や筋肉均衡のデータから怪我の状態やリハビリの効果を確認し、体成分が変化するタイミングから治療や完全復帰の目安を検討する形の活用も考えています。部位別筋肉量の左右の違いを追っていけば、怪我の状態も見れると感じています。」
プロバレーボール選手の体成分
バレーボール選手といえば、高身長でスラリとした体型を連想しますが、実際の体成分はどういう特徴があるのでしょうか? 一般女性と、JTマーヴェラス、セルビア女子代表(国際大会メダル常連の強豪チーム)の体成分を比較してみましょう。
一般人と比べてみると、身長だけでも15cm-30cm高いことが分かります。身長が高い分、体重と骨格筋量(筋肉量)が多いことは勿論ですが、体脂肪量が少ないことには驚きです。体脂肪率は骨格筋量(筋肉量)が増えると相対的に低くなるため、体脂肪率が低いことは想定されますが、プロバレーボール選手は体脂肪量そのものの重さ自体も少ないことが特徴です。体脂肪量が少ない状態で骨格筋量を増やすことで、驚異的なジャンプ力が発揮できるのかもしれません。
※一般女性のデータは「InBody臨床DB」、セルビア女子代表のデータは「Descriptive Body Composition Profile in Female Olympic Volleyball Medalists Defined Using Multichannel Bioimpedance Measurement Rio 2016 Team Case Study」より引用・改変
選手とトレーナーの信頼関係
2名の選手にも、InBodyと上村トレーナーのお話を伺いました。セッターの柴田 真果選手は、JTマーヴェラスに入団して3年目(競技歴17年)の選手です。InBodyを活用したコンディショニングの成功事例について聞くことができました。
【セッター 柴田 真果選手 ➤ 】
「 ”体脂肪量を落とす” という体成分の目標を掲げて、トレーニングをした時期がありました。そこから1年半かけて体重を7kg落とすことができて、今でもその状態をキープできています。筋肉量も少し落ちてしまいましたが、体脂肪量を中心に落とすことができました。ちょうど怪我をしていて、この間の6ヶ月間はトレーニングをメインにしていた時期でもありました。栄養面では三食の食事量は変えずに、間食での甘いものを控えるようにしました。主にバイクでの有酸素運動を行って、体脂肪量を落としていきました。今ではInBodyアプリで1ヶ月単位、1週間単位、毎日でも自分の体がどうなっているのか体成分履歴で目に見えてわかるので、更にコンディション管理がしやすくなりました。」
「上村トレーナーはとてもマメな方で、選手全員の結果を一括で管理されています。体成分の変化も何日前はどうだったか、数年前のこの時期はどうだったかという情報まで教えてくれます。朝は練習前のテーピングで誰よりも早く体育館に来てくれて、帰りも練習後のマッサージやケアをしてもらっているので一番遅いです。負担を掛けてしまっていると感じますが、毎日毎日本当にありがたいです。」
二人目の選手はJTマーヴェラス6年目(競技歴17年)の、アウトサイドヒッター田中 瑞稀選手です。田中選手は高校卒業後からチームに所属し、InBodyの使用歴も長い選手です。
【アウトサイドヒッター 田中 瑞稀選手 ➤ 】
「どのようなトレーニングを行えば骨格筋量が維持できる、これだけの食事量を取ってしまうと2日後には体脂肪量がどれだけ上がってしまうなどの感覚が身に付いてきました。体脂肪率が20%以上で体重が重い時期では、体が動かないという訳ではなかったのですが、プレーのキレが今一つでした。筋肉量は52kg以上、体脂肪率は18%以下にすると良いコンディションで動きやすいので、この数値を目安に維持するようにしています。」
「上村トレーナーは体の細かいところまで気づいてくれます。筋肉のことだけでなく、女性アスリートの問題や生活面のインナーケア、精神面までもトータルでしっかりサポートしてくれます。上村トレーナーの人柄もあって、新人の選手もすぐに打ち解けていますし、選手との壁はまったくありません。」
上村トレーナーの話題になると、お二人ともこれまで以上にない笑顔で話される姿がとても印象的でした。チームスポーツにおいて、チームメイト間の信頼関係が重要なことは勿論ですが、選手と監督・コーチ・栄養士・トレーナーなどチームスタッフ間との信頼関係も必要です。選手と上村トレーナーの信頼関係は、JTマーヴェラスが強豪チームであることの一要因でもあります。InBodyはコンディショニングツールの一つとして、選手とトレーナー間の橋渡し、信頼関係構築の一助も担っています。
終わりに
「日本代表に選ばれている選手も3名いますが、ナショナルチームに入ると試合ばかりで調整が難しく、体調やコンディションがどうしても落ちてしまいます。選手たちには勿論頑張ってほしいですが、JTマーヴェラスのメディカルトレーナーとしては彼女たちの体調がどうしても心配になります。プレー中に怪我を負うこともなく、無事チームに戻ってきて欲しいです。2019-20 V.リーグ、チームは優勝しましたが、これで終わりではありません。気を緩めることなく、連覇を狙っていきます。」