かわしま内科クリニック
-InBodyを活用した水分管理と長年の研究で、より安全な透析医療の実現へ-

✓InBodyを活用する目的
● 透析患者の徹底した水分管理を行うため

✓InBody S10導入の決め手
● 両腕と両脚に電極があり、部位別(両腕・体幹・両脚)に直接測定しているため、各部位や全身の体成分を正確に測定できる点

✓得られた効果
● 透析後に測定したInBodyの測定結果を基に、浮腫の発見やDWの算出をできるようになった
● 測定者によって数値が大きく変わらないため、DWを決定する一つの指標として活用できるようになった
● 位相角は他の測定項目よりも早い段階で変化するため、位相角から患者様の状態や転帰を予測できるようになった

機種モデル:InBody S10

かわしま内科クリニックは、透析医療を専門としたクリニックとして、2006年に茨城県筑西市に開院しました。血液透析の他にも、内科や発熱外来を設置しており、茨城県の地域連携協力医療機関及び自治医科大学附属病院の地域連携協力施設として近隣の医療施設と連携を取りながら、地域医療に貢献しています。

腎臓は、血液をろ過して老廃物を取り除き尿として排泄させるなど、私たちの生命維持に欠かせない多くの役割を担っています。腎臓の機能が低下すると、浮腫や高血圧、乏尿や多尿などの尿量の異常が生じ、数ヶ月~数年に渡り腎臓の働きが弱まると慢性腎臓病(CKD)となります。CKDの進行は重症度により5段階に分類され、最終段階のステージ5に達すると、腎機能が著しく低下していることから、腎機能を補うために透析療法を行うことになります。

透析とは、血液中の過剰な水分や老廃物などを、腎臓に代わり人工的に排泄する治療法です。透析には機器を介す「血液透析」と、患者自身の腹膜を介す「腹膜透析」の2種類がありますが、国内透析患者の9割以上は血液透析を行っています。透析において最も重要なことは、正しい除水量を決めて水分量が適切な状態、いわゆるドライウェイト(以下、DW)の状態にする水分管理と、透析を受けながらも患者が健康的な日常生活を送れるようにする栄養治療です。

かわしま内科クリニックは現在30床の透析用ベッドを有しており、上野 幸司さん、白石 武さんは長年透析患者の治療に携わりながら、どうすればより適切なDWを設定でき、効果的な栄養治療に繋げられるのかを研究し続けています。

▲ 左から上野 幸司さん、白石 武さん

上野 幸司さんは、東京電子専門学校で医学電気を学んだ後、帝京大学の手術室に勤務しながら臨床検査技師の免許を取得しました。その後栃木県や茨城県のクリニックでの勤務を経て、かわしま内科クリニックで臨床工学技士として勤務されています。かわしま内科クリニックでは開院時から携わっており、患者だけでなくスタッフの管理なども任されていました。

上野さん:
「クリニック立ち上げの時は、人員の確保がとにかく大変でした。透析治療の段取りもそうですが、30床分のベッドメイキングなどに人手を割くことが難しく、苦労したことを覚えています。開院してから総計200名近くの患者様と向き合ってきましたが、現在は70名程の患者様が通院されています。クリニックの運営としては、通院患者様を増やす工夫も大切ですが、やはりDWを的確に算出して徹底した水分管理を行えるかどうかが重要であると考えています。」

白石 武さんは、もともと医療とは関係のない企業で営業職に就いていました。その後、あるテレビ番組がきっかけとなり医療職を志し、東洋パラメディカル学園(現在のさくら総合専門学校)へ入学しました。卒業後は上野さんと共にかわしま内科クリニックの開院に携わり、現在は透析機器や透析液の管理、InBodyを含む様々な検査のスケジュール作成など、透析室全体の管理を担っています。また、2011年より一般社団法人栃木県臨床工学技士会の理事としてもご活躍され、県全体の臨床工学技士の発展にも貢献しています。

白石さん:
「前職で営業として働いている時に、テレビ番組で人工心肺を取り扱う人の特集をたまたま目にしました。ちょうど仕事も落ち着いてきた頃で、何かやってみたいことはないかと考えていたタイミングでもあり、人工心肺のような生命維持装置を扱う医療職になりたいと思い、専門学校に入学しました。専門学生時代に上野さんの名前を拝見する機会が多く、ぜひ一緒に働きたいと思いかわしま内科クリニックで働くことを決めました。」


徹底した水分管理に必要不可欠なInBody

かわしま内科クリニックでは、2006年の開院当時からInBody S20(InBody S10の前身)を導入し、2016年にはInBody S10が導入されました。

上野さん:
「開院のタイミングで、徹底した水分管理を行うにあたり数値で体水分情報をモニタリングできる機器を導入した方が良いという話が上がり、InBodyを含めた様々な体組成計を測り比べて検討していました。その中には電極が両腕にしかない、または片手と片足のみにしかないタイプの体組成計もありましたが、両手足に電極があるInBody S20と比較して数値の誤差が非常に大きく、より徹底した水分管理が必要な透析では部位別直接測定ができるS20が最適であると考え、導入しました。」

体組成計は様々な製品が販売されていますが、根本的な測定原理は同じであっても、測定技術の違いにより測定値は大きく異なります。

例えば、両腕にのみ電極がある機器の場合、インピーダンスを測定できるのは両腕のみです。それ以外の体幹や脚においては、両腕の数値を元にした推定値を算出しています。そのため、両腕に水分量が多い場合は他の部位も水分量が多いと見なされ、全身の体成分は誤差が大きくなります。反対に両腕の水分量が少ない場合は、他の部位も全身も水分量が少ないと見なされてしまいます。水分の分布や部位内での水分バランスは個人によって大きく異なる上に、特に透析患者は重症度や透析歴など様々な要因が作用して、特定部位のみが炎症を起こしたり浮腫んだりするなど局所的に特徴のある分布になることは珍しくありません。透析患者の場合はより適切なDW設定のためにも、全身・部位別の体成分を正確に把握する必要があります。InBodyは両腕と両脚に電極があり、右腕・左腕・体幹・右脚・左脚の5部位のインピーダンスを直接測定しているため、各部位の体成分はもちろん、全身の体成分を正確に把握できます。

白石さん:
「開院して以来ずっとInBody S20でデータを取ってきました。導入後10年程経過した頃には測定回数もかなり多くなっており、機器内部へのデータ保存容量が上限に達したことと、機器の経年劣化が気になってきたことからInBody S10へ買い替えました。その頃には他社の体組成計も多く販売されていましたが、測定値や使い勝手などを改めて何台も試しながら比較した結果、インボディ社から当時発売されたばかりのS10に決めました。S20との誤差が最も少なく数値への信頼性が高かったことや、今まで測定してきたデータを引き継いで使えることが大きな理由です。」


浮腫の発見や重症度評価に活用できるECW/TBW

InBodyは現在月に30~40名の患者を測定しています。基本的に2ヶ月に1度の頻度で測定し、DWの設定や水分管理に役立てています。透析患者のように浮腫が生じている人は、BIA機器で体成分を測定すると筋肉量が多く算出される特徴があります。これは体水分が筋肉の主な構成成分であり、体水分量が増加すれば、その分筋肉量も増加するためです。

また、人体における体水分量(TBW)に対する標準的な細胞外水分量(ECW)の割合は38%前後とされており、健康な人では常に一定の割合が維持されます。この水分バランスは、InBody結果用紙内の「細胞外水分比(ECW/TBW)」という項目で確認できます。ECW/TBWの標準値は、ECWとTBWの標準的な割合から0.380と設定されています。しかし、浮腫により蓄積した余分な水分は、主にECWとして蓄積されることから、浮腫を伴う患者では症状が悪化するにつれてECW/TBWが0.390、0.400、0.410・・・と上昇していきます。つまり、浮腫を伴う患者は筋肉量とECW/TBWが共に高値を示します。ECW/TBWは浮腫の重症度を反映する項目ですが、筋肉の質としても見ることができます。

※細胞外水分比(ECW/TBW)に関しては、ぜひこちらのトピック「体水分均衡の特徴と重要性」もご覧ください。

▲ 浮腫患者の結果用紙の例(右腕に浮腫がある場合)

浮腫によりECW/TBWが高値である場合の筋肉量には、純粋な筋肉に加えて余分な水分も含まれているため、筋肉量の数値だけで患者の状態を正確に評価することはできません。これは、定期的な測定において経過を評価する際も同様です。例えば、浮腫患者で筋肉量が上昇した場合でも、併せてECW/TBWも上昇していれば、正しくは浮腫の悪化(=ECW増加によるTBWの増加)で質の悪い筋肉量が増加しているという評価になります。このようなケースでは筋肉量が増加しているとしても、健康状態が改善したとは言えません。

白石さん:
「透析前の患者様の測定結果は、浮腫によって生じた余分な水分の影響を受けていますので、正しく体成分を評価できません。ECW/TBWを見ることで測定時点の浮腫程度を確認する用途として活用することは可能ですが、体成分評価やDW設定においては必ず透析後の、過剰な水分が抜けきった状態で測定したInBodyの結果を活用します。」

上野さん:
「当院に通院している間でも、合併症の治療を目的として他の病院へ入退院を繰り返している患者様もいます。その場合は入院する前と退院してきた時にInBody測定を行います。もちろん、入院期間中にどのような治療を行ったのか、当院でどのような治療を行ったのかは必ず入院先の病院とも情報共有していますし、患者様も私たちに話してくれます。短期間の入院が多いためか、患者様のDWを退院後に再計算している透析施設はほとんどないように感じます。しかし実際は、短期間であっても入院中の食事摂取量の変化や炎症などによりDWが変わっていることがあります。当院では、患者様が退院してきた時には必ずInBody測定をしてDWを計算し直すことで、患者様の現在の状態に合わせた治療を行うようにしています。」


透析患者の水分管理の基本、ドライウェイト(DW)算出を担うInBody

透析後に測定したInBodyの測定結果は、主に浮腫の発見やDWの算出を目的として活用されています。

白石さん:
「他の検査とInBodyの違うところと言えば、測定者によって数値が大きく変わらないという点も魅力的です。測定条件を守って、電極の位置を間違えずに装着すればデータが大きくずれることはまずありえません。例えば検査に失敗した例として、血液検査の場合は、分析した後に初めて失敗だったと分かりますが、InBodyの場合は測定中にエラーの表記が画面に表示されるのでその場でやり直すことができます。そういった意味でも現場での使い勝手が良く、DWを決定する一つの指標として重宝しています。」

InBodyの水分情報から理想DWを推定するには、除水後の目標となるECW/TBWの数値を仮に0.380とし、測定されたICWを基準に理想的なECWを求めます。ここで計算された理想的なECWと実測されたECWの差分を過剰水分と見なし、実測体重から過剰水分を差し引いた値が理想DWとなります。つまり、体成分の観点から定義する理想DWは、ICWを基準に過剰なECWが除外され、TBWに対するECWの比が理想な状態である場合の体重を意味しており、下記の公式にまとめることができます。

【公式1】 理想DW=体重-過剰ECW
【公式2】(ECW-過剰ECW)÷(TBW-過剰ECW)=0.380

また、透析患者の大半は高齢者や、糖尿病・高血圧のような合併症を患っていて栄養状態が芳しくない方です。このような患者の目標ECW/TBWを健常人の標準値と同じ0.380と考えて除水量を決めてしまうと、除水量を多く設定してしまったり、有害事象が発生しやすくなったりする恐れがありました。そのため、当時の院長である佐々木先生は疾患や栄養状態に合わせた目標ECW/TBWを設ける必要があると考え、2008年に発表した研究では、透析患者の主要合併症の有無でECW/TBWの差を確認し、有意な差を示した糖尿病と低アルブミン血症の有無を基に透析後のECW/TBWを確認しました。その結果、下図のように合併症のない人と比べると、どちらか一つでも合併症を患っている患者のECW/TBWは適切な除水を行った後でも少し高めであり、両方を伴う患者は0.400を超える高い値が示されました¹⁾。

上野さん:
「当院に通院されている患者様で最も多いのは、原疾患が糖尿病の方です。糖尿病は、合併症として糖尿病性腎症に発展しやすく、透析患者様の中でも糖尿病を患っているケースは珍しくありません。低アルブミン血症も同じです。これらの合併症がある患者様ではECW/TBWが高くなりやすい傾向を考慮することが、DWの評価と設定を効率的に行うにあたり非常に役立ったと感じています。」

日本は現在超高齢社会に突入していますが、これは透析患者の高齢化にも当てはまります。腎疾患や透析と長く付き合っている患者が多くなると、必然的に平均年齢も高くなります。腎疾患患者の体成分について長年研究を続けてきた上野さんと白石さんは、高齢者においてECW/TBWが高くなりやすい傾向があることに注目していました。患者の体調や病状の変化によってDWを再設定する際、合併症がないという理由で比較的若い患者と高齢者のDW設定基準が同じでも良いのかと疑問を持たれていました。

しかし、当時は年齢によるECW/TBWの変化に関して発表した研究は少なく、疾患者を対象にしたものとなると極めて少ない状態でした。そこで、上野さんは一般外来患者のデータを収集して年齢別にECW/TBWの変化を確認したところ、身体活動が活発な年齢である20代から40代までのECW/TBWは標準に近い値を示しましたが、それ以降の年代では徐々に増加し、80代の高齢者は基礎疾患がない場合でも0.400以上の値を示すことが明らかになりました。このデータを基に作成した年齢別の標準化ECW/TBW(以下、年齢補正ECW/TBW)の回帰式を用いて、透析患者を対象に算出した年齢補正DWは臨床DWと同様に活用できると結論付けられました²⁾。

ECW/TBWの0.01の差はとても小さな差と思われるかもしれませんが、健康な人の日内変動でも0.01以内に収まります。もともとの体格にもよりますが、目標ECW/TBWが0.01変わるだけでDWは数百グラムも変わることになります。水分管理が厳重な透析患者のDW設定ではECW/TBWの僅かな差も無視できません。現在は井上院長をはじめとした上野さん達の研究では年齢補正ECW/TBWの回帰式を男女別に作成しており、この式を活用することで患者の特性に合わせた目標ECW/TBWをより合理的かつ簡易的に算出できるようになりました。

上野さん:
「合併症や年齢などによって患者様の最適なECW/TBWは全く異なります。もちろんこれら以外にも、患者様の主疾患や食生活、血液検査の結果なども考慮してDWを設定していきますが、InBody以外の指標でDWの設定をする場合は、現在の除水量が適量かどうかしか判断できません。しかしInBodyでは、〇L(リットル)という風に目安の除水量を数値で算出できるので、非常に心強いです。実際にこの式を使ってDW管理をしていますが、臨床DWとすごく近い数値が出せています。他の病院でも活用してくださっていますが、とても役立つというお声をよくいただいています。」


患者の状態を細胞レベルで評価する位相角

上野さんと白石さんは、患者の状態を評価する指標として、水分量やECW/TBW以外にも、位相角という項目に着目しています。透析患者のシャント肢は様々な問題を抱えていることがあります。かわしま内科クリニックでは患者の状態を観察する上でシャント肢の状態に影響を受けないよう、シャント肢以外の4つの部位の平均を取り、患者の全身位相角として活用しています。このように位相角を算出できるのも、部位別直接測定をしているInBodyだからこそ可能となります。

位相角とは、細胞膜で発生する電気抵抗(リアクタンス)を角度で表した数値であり、細胞の栄養状態や健康状態を表す指標として活用されている項目です。栄養状態の悪化や疾患の重症度が高くなるにつれて細胞膜は弱まるため、そこで発生する電気抵抗も小さくなります。そのため、位相角が高値であるほど状態が良く、低値を示すほど状態が悪いという評価ができます。また、位相角が低い状態では予後も悪化することが示されており、重症度以外にも予後の予測因子として活用されています。

上野さん:
「位相角は他の項目のような基準値がありませんが、日々の患者様の測定結果や、様々な研究を見てみると、3.0°を下回ると予後が悪い印象があります。更に2.0°を下回ると寝たきりや感染症に罹患した時の予後不良のリスクを感じています。入退院を繰り返している患者様では位相角の数値も上下しやすく、状態が悪化して入院すると位相角も低くなる傾向が見られます。しかし、退院してから適切な透析、栄養・運動療法に取り組むことで数値が改善した例もありますし、そういった経過を観察できるのもInBodyの強みです。」

白石さん:
「位相角は他の測定項目よりも早い段階で変化するので、患者様の状態や転帰を予測しやすいです。測定した段階で位相角が低い場合は、悪い方向に進まないように透析、栄養・運動療法を組み合わせて、早め早めに治療に取り組みます。そうすることで予後は良くなりますし、そういった患者様の経過を追うにはInBodyが一番だと感じています。」


痛みを伴わずに自分を知るツールとして活躍するInBody

InBodyの測定結果は、測定した日の次の診察日に患者様に説明しています。ECW/TBWは「浮腫の指標」として、数値を履歴で追いながら浮腫の程度や経過を説明し、患者の特性に合わせたアドバイスを行います。

白石さん:
「InBodyの測定結果を素直に受け止める患者様が非常に多い印象です。InBodyは自身の体成分が数値で明確に見えるので、納得しやすいのだと思います。自身の測定結果の変化を、最近飲み過ぎていたとか、食欲がなかったとか、日々の生活と結び付けて考察できる人も多いです。透析現場で行う検査の中には痛みを伴う検査もありますが、InBodyは非侵襲的に実施できる検査です。測定の準備をしていると 『痛くない検査の方ですね』 と患者様もInBodyを受け入れてくれていると感じます。他院から転院された患者様から 『InBodyはありますか?』 と聞かれたこともあります。

ただ、InBodyの数値だけが全てとは思われないよう、患者様の病態や生活などとInBodyを併せた総合的な評価としてお伝えするようにしています。例えば、InBodyのECW/TBWの標準範囲は0.400までですが、患者様によっては0.400を超えていても問題がない方もいます。その場合は、標準値と比べてどうかではなく、自分にとって最適な値と比べてどうか、という評価方法でお伝えするようにしています。現状としての体成分を知ることももちろん大切ですが、自分にとって健康を保つ上で最適な体成分を知ることが重要だと考えています。」


患者と共に、より安全な透析を目指して

InBody S20を導入した当初は、BIA技術に対する課題や新しい医療技術に対する不安もあり、上野さん達の研究には否定的な意見が多く寄せられていました。その中でInBody独自の技術と測定精度を信じ続け、とにかく様々なデータを収集し続けてきました。世界中でだんだんとInBodyをどのように測定するか、どの項目を評価するかなどの活用方法が定まってきて、論文も数多く発表されてきました。今では上野さんと白石さんはBIA機器を医療現場で活用できるように道を切り開いてくれたパイオニアと言えます。今後も、さらにより良い透析医療の実現に向けてInBodyデータの研究を進め、その結果を臨床現場へと繋げていきます。

白石さん:
「アメリカで豚の腎臓移植を行った事例が報告され話題になりましたが、いずれこの治療法が医療として確立する可能性も考えられ、そうなると透析を行わずに済む患者様が多くなると予想されます。しかし、移植は侵襲性が非常に高い治療法ですので、誰しも行えるわけではなく、リスクが大きすぎて移植ができない患者様もいらっしゃいます。医療が進歩して透析以外の選択肢が増えたとしても、透析療法という選択肢を選んだ患者様がより良い安全な透析を行えるようにしていくことが我々の使命です。現在透析療法に取り組んでいらっしゃる患者様は、透析前と比較して生活が大きく変わってしまった部分もあるかと思います。しかし、そこで後ろ向きになってほしくはなく、新しい医療技術や検査方法などに期待しながら、一緒に治療を行いたいと思っています。」

上野さん:
「今はロボットやAIなどの最先端の技術も出てきていますが、透析治療が全自動化されれば人員不足や患者様の拘束時間の軽減につながると思います。将来的に、もっと時間的な拘束が無くなり、クリニック側ではなく患者様が透析の時間を決められるような、自由度の高い透析が求められるのではないでしょうか。患者様が元の生活スタイルを大きく変えることなく、仕事やプライベートと治療を両立でき、安全な透析治療を行うということが大切であり、透析医療全体のテーマになっていると思います。草野 英二理事長先生をはじめとして井上 真院長、医療スタッフさんたちのもとで、様々な研究や発表を行いながら安心、安全な透析医療を提供できたことに心から感謝しています。今後、InBodyの測定データを当院に限らず多施設で集めて、病態などで分析してみるともっと深いところまで考察できるのではないかと考えています。そのためにも、今後透析医療をはじめとした医療全体でInBodyがもっと広まっていくことを願っています。」

参考文献
1. 佐々木 信博ら. 生体電気インピーダンス法によるDW設定基準 -高精度体成分分析装置による浮腫値での検討-. 透析会誌. 2008,41(10),723-730.
2. 上野 幸司ら. InBody-S20使用における透析患者の標準化DW算出の試み. 医工学治療. 2020,32(1),26-33.