西神戸YMCAウエルネスセンター学園都市
-InBodyを用いて地域の健康を見守るフィットネス施設-

機種モデル:InBody430

西神戸YMCAウエルネスセンター学園都市 (以下、ウエルネスセンター学園都市)は1988年の開設以降、地域住民の健康づくりに長年関わってきました。深さが2.5mもあるプールをはじめ、大人数でダンスプログラムなどができるスタジオ、ウエイトルームやマシンルーム、ラケットボールコートなど、様々な運動が行える場所となっています。

ディレクターを務められる中北 瑛美さんは大学卒業後YMCAに入社し、当時運営委託を受けていた神戸市立東灘体育館で勤務を始めました。入社当時からウエルネスセンター学園都市とは研修などで関わりがありましたが、2015年からは正式にウエルネスセンター学園都市のスタッフとして勤務しています。

▲ 中北 瑛美さん

中北さん:
「大学では教育を勉強していたのですが、子供の頃からダンスを習っていたこともあり、運動を通して子供と関わりたいと思い、YMCAに入社しました。運動指導については入社して一から勉強したので、大人向けのエアロビクスや子供向けの体操教室など、学ぶことはたくさんありました。他にも行政との関わりや運動イベントの開催などにも携わり、現在は大人向けのウエルネスプログラムやキッズダンスなどを担当しています。」


会員に大好評のInBody測定

ウエルネスセンター学園都市では、2012年12月にInBody430が導入されました。会員は入会後1ヶ月以内と年3回(2・6・10月)の測定期間中に無料で測定できます。測定は毎回大変好評で、1回の測定期間で総会員数の半数に近い、400名ほどの会員が測定されます。

▲ InBody430

中北さん:
「InBody導入前は他社の体組成計を使用していましたが、故障に伴って買替を検討していたところ、最終的にInBody430を購入することになったようです。導入時にはまだウエルネスセンター学園都市に籍を置いていなかったものの、関わりはあったので機器導入の準備などを一緒に作業した記憶があります。当時の資料を見返してみると、InBodyは8個の電極を使っているので測定の再現性が高いこと、入力される年齢や性別が変わることで測定値が変わってしまう統計補正が使用されていないことが導入の決め手となっていました。軽量・折りたたみ可能で持ち運びができるので、地域のイベントに持ち出せることもプラスになりました。InBodyに変わってから測定できる項目も増えて、会員様がこれまで以上に測定結果に興味を持ってくださったと実感しています。」

※統計補正について詳しくは、トピック「今さら聞けない、体組成計のあれこれ -測定値の理解を深めるためのQ&A-」をご参照ください。


InBodyが生み出す好循環

新規入会の方へは、下記三つの理由からInBody測定を行っています。
① 運動を始める必要性を改めて認識してもらう
② 今後の目標を決める
③ 運動メニューを決める際に参考にする

既存会員の方には、下記三つの理由からInBody測定を行っています。
① 年3回の測定で自分の体の現状を確認してもらう
② トレーニングメニューを評価する・見直す材料にする
③ 新しい目標を設定する

▲ フィードバックの様子

中北さん:
「InBodyは会員様とのコミュニケーションに必要不可欠なツールとなっていて、測定後は必ず結果を振り返る時間を作っています。初回測定の方には結果用紙を隅々まで説明しています。2回目以降の方は、前回の測定値から筋肉量・体脂肪量の増減を確認し、フィットネススコア(InBody点数)や体型チェックの変化を確認します。体重の増減だけを見るのではなく、ちゃんと体の中身を見ようねと声を掛け、測定結果から運動のアドバイスに繋げていきます。トレーニングメニューを変えて2ヶ月経った頃には 『次の測定会いつだったっけ?!』 と、次の測定が待ちきれずにうずうずされている方も多くいらっしゃいます。」

トレーニングメニューの見直しでは、普段行っているトレーニングの負荷や回数に加え、フォームの再確認なども行います。沈み込みの深さや可動域を改善するだけで、同じ負荷・回数でも効き方が変わってきます。測定をきっかけにトレーニングメニューを見直すことで、運動のマンネリ化を防ぐことにも貢献しています。

中北さん:
「以前使用していた体組成計と違って、部位別筋肉量が見えるようになったことがInBodyを導入して良かったと思える一つの大きなポイントです。部位別筋肉量があってもなくても提案するトレーニングのメニューはそこまで変わりませんが、部位別筋肉量を評価することで、曖昧な説明ではなく明確にメリットを伝えることができ、提案するメニューの説得力が大きく違うと実感しています。根拠のあるトレーニングメニューを組むために、InBodyの結果用紙は欠かせないものになっています。」

▲ 会員はトレーニングメニュー表やInBody結果用紙をファイリングしていつでも見返すことができる

トレーニングを頑張ってもなかなか筋肉量が増えない方は体脂肪量が少ない方が多く、食事量が足りていない場合があります。筋肉を増やすための栄養が足りていないことをアドバイスして、間食を増やすよう提案すると、トレーニングメニューを変えなくても筋肉量が増加するケースもあります。


継続率の向上や退会抑止にも貢献するInBody

中北さん:
「コロナ禍による影響もありましたが、InBodyは会員様の退会抑止にも一役買ってくれています。InBody導入時に当時の施設長が、年間の退会率を20%から15%に減少させることを目標に掲げていました。ありがたいことに、InBodyを導入してから2年後の2014年には退会率を14%まで減少できただけでなく、2023年には退会率が8%と、当初の目標を大きく上回る効果が出ています。測定期間中はスタッフ総動員で結果用紙の説明に追われて大変なことも多いですが、自分の体を数字で確認して運動に対するモチベーションを高めて、非常に前向きに取り組んでくださっている会員様の様子がスタッフ一同とても嬉しいです。」


実際の測定例

現在、ウエルネスセンター学園都市のInBodyには登録者数約3,000人、総測定件数15,000件以上のデータが蓄積されています。測定データの内訳として、男女比は3:4くらいの比率で60歳以上の方のデータだけでも10,000件を超え、90歳を超える方のデータも300件近くあります。ウエルネスセンター学園都市は開設から36年経ちますが、中には開設時から30年以上継続して通われている方もいます。その中から2例をご紹介します。

①高齢者の方だと筋肉量を増やすことはどうしても難しく、維持するだけでも大変ですがこちらの女性の場合、88歳から89歳の間に骨格筋量が0.9kg増加しています。そこから年を重ねることで筋肉量がどうしても減ってしまいますが、日々のトレーニングによって96歳になってもフィットネススコア76点を維持されています。

▲ 89歳時点での結果用紙

▲ 88歳(左)から89歳(右)で体成分が変化

中北さん:
「この施設では、70歳80歳を過ぎても元気に運動されている方がたくさんいらっしゃいます。年齢による測定値の補正が行われていないことで、高齢な方であっても運動を継続することで筋肉量を増やせることが確認できます。皆さんの元気な姿を見て、私達もパワーを貰っています。」


②ウエルネスセンター学園都市の周りにはたくさんの大学が集まっています。海外では運動習慣が根付いていることが多く、留学生の方がウエルネスセンター学園都市に通われることも少なくありません。ある留学生の方は入会時フィットネススコアが52点でしたが、9ヶ月後には+21点の73点になりました。

▲ 入会時(左)から9ヶ月後(右)で体成分が大きく変化

中北さん:
「留学中に自分を変えたいと熱心に通われていて、スタッフの間でも 『体が変わりすぎて誰か分からなかった』 と驚いたくらいです。留学生の方が来られても、人種による測定値の補正を行っていないことで安心して測定値の説明が普段通り行えます。」


震災における避難所での活用

日本YMCAは様々な事業を展開していますが、日本YMCA同盟の石橋 英樹さんはYMCA内の多様な事業が円滑に協力できるような橋渡しの役割を担っています。

▲ 石橋 英樹さん

石橋さん:
「YMCAに入社後はキャンプ施設運営をはじめ、専門学校や留学生向けの語学学校に関わり、海外でも11年勤務しました。世界中に拠点があり、多種多様な事業を通じて様々な人と繋がりが持てるのが魅力です。今の仕事は元々YMCAの拠点同士の連絡調整係でした。そこから、時代の流れと共に社会とどう関わっていくか、社会貢献活動の調整係としての役割も出てきて、災害支援という社会貢献の形が生まれてきました。」

阪神・淡路大震災や東日本大震災での現地YMCAの復興サポートの経験やノウハウが蓄えられていましたが、契機となったのは2016年の熊本地震です。災害が発生した当時、熊本YMCAが運営委託を受けていた体育館が避難所となったことで、被災しながらも被災者をサポートする役回りとなりました。これを全国のYMCAが支援し運営した結果、行政からYMCAの被災地サポートが評価され、2024年1月に発生した能登半島地震でも全国のYMCAが一丸となって支援活動を行うことになりました。特に震災を経験した神戸や仙台、熊本からは多くのスタッフが現地入りしました。

能登半島地震が2024年1月1日に発生して、その1週間後には石橋さんを含めたYMCAのサポートチームが現地入りし、どのようなサポートが必要なのか調査が始まりました。

石橋さん:
「能登半島地震は被害が大きいにも関わらず、能登という地形上の問題からアクセスが悪く、人々の移動が困難な状況であったため、金沢市内のいしかわ総合スポーツセンターや石川県産業展示館に1.5次避難所が設置されました。私は主にここで活動していましたが、市内には他にもいくつかの1.5次避難所が設置されていたと聞いています。1.5次避難所は、仮設住宅や他県への避難に繋げるための一時的な避難場所を想定しています。しかし思ったように避難は進まず、結果的に長期滞在される高齢者の割合が増えてきて、こんなにも次の避難先に繋げられない被災地は初めてでした。」

避難所に身を寄せる多くの高齢者は、一日ずっと動かずに過ごしており、ご飯を受け取る時くらいしか動く機会がありません。そういう背景もあって、3月初めに日本災害リハビリテーション支援協会(JRAT)から、高齢者の体重増加が避難所内の課題として報告されました。そこで体重増加を自覚してもらうよう、保健師などに寄り添ってもらいながら1日1回体重測定を行ってもらうことが考え始められたところで、当時被災地支援で現地入りしていた神戸YMCAの中北さんがInBodyの活用を提案し、3月に1.5次避難所にInBodyを設置しました。

石橋さん:
「これまでの避難所には、InBodyのような体重や体成分を測定する機器は設置していませんでした。設置当初は目につきやすいよう、入口すぐの掲示板の隣に設置していました。その裏にご飯を受け取るスペースがあったので、1日3回はInBodyの前を通ることになります。その後、体育館中央に設けた娯楽スペースに移しました。基本は体重を測定する目的でしたが、もしかすると体成分測定から自分の健康について目を向けるきっかけにもなっていたかもしれません。」

▲ 体育館中央のお楽しみ広場(囲碁・将棋などの娯楽を集めて置いているスペース)に設置されたInBody

保健師が定期的に各仮設テントを訪問して健康状態をチェックした後、理学療法士がリハビリの必要な方に声を掛けて1日に何回かお楽しみ広場で体操を行っていました。その前後で体重の確認を行うよう促します。高齢者は避難所という非日常な空間であることもありなかなか腰が重く、100人に声を掛けても体操に参加する人は5-10人くらいです。今後はいかに参加率を高め、避難者の健康増進に繋げるかも課題としています。


終わりに

石橋さん:
「InBodyを今回初めて避難所で活用してみましたが、この経験を基に、今後同じように避難所に長期滞在するケースがあった場合は最初からInBodyの活用を検討することで、被災者へのより良い健康サポートに繋がるかもしれないと感じました。保健師さんや医療従事者の方は普段InBodyを使われていると思うので、InBodyありきで避難所のサポートを考えてくれると活用も更に広がると思います。ただ、皆さんとにかく避難所の運用に必死で、細かいところまでは手が回りません。私達YMCAが調整することで、もっと早期からInBodyを導入することも可能だと思います。今後そういった運用も探っていきたいと思います。また、仮設住宅内に設置される集会所での活用も今後検討してみたいです。被災前の暮らしと比べて生活様式が一変することで体重や体成分も変化するので、そこに介入することで健康の手助けになればと考えています。」

中北さん:
「InBodyがウエルネスセンター学園都市のようなフィットネス施設にあることで、継続率の向上・退会抑止・会員様とのコミュニケーションツール・会員様のモチベーションアップなど様々な恩恵が得られます。今後もInBodyを上手く活用しながら、皆さんの健康づくりをサポートしていきたいです。」