小児分野におけるInBody活用
適切な栄養摂取と運動は小児の成長において重要な役割をします。偏った食習慣や運動不足は小児肥満の原因となりますが、小児肥満の人は成人になっても肥満になりやすいです。逆に、思春期の女児などは肥満を気にしすぎて逆に痩せすぎになりやすいですが、その影響で成長に悪影響を及ぼしたり、月経が来なかったりなどの問題が生じ、将来の健康を悪くする結果に陥りやすいため、適切な食事・運動指導が必要です。
ここで、InBodyが提供する筋肉量や体脂肪量は小児肥満の評価に活用できます。また、重度心身障害を持つ小児においては細胞外水分比や位相角を活用することで、より細かい栄養管理が可能となります。
入力した身長と体重から成長度合いを評価できる小児成長曲線(文部科学省/WHOから選択可能)を提供
6~18歳の子どもの場合、小児用結果用紙を活用することで、子どもが年齢相応の成長をしているのかを確認することができます。また、成長曲線による発育程度の評価に加え、筋肉量・体脂肪量が適切かを判断することで小児肥満になる前に運動・栄養介入を行うことも可能です。小児の場合、遊びを中心とした身体活動の増加が肥満の改善に効果的であることや¹⁾、小学生を対象に体成分測定と体力テストを行った結果、定期的に運動する方が体成分や体力テストの結果が良かったと報告されており²⁾、成人とは異なる方法で身体活動量を増やし、将来の健康を守ることができます。
未就学児(6歳未満)や重症心身障害児の測定と注意事項
一方、6歳未満の小児に関しては放射線を浴びるリスクなど測定に困難な点があるため、DEXAを用いた精度検証があまり行われておらず、客観的な信頼性が確保できていません。従って、測定対象基準から離れれば離れるほど測定精度に対する信ぴょう性は落ちますが、測定条件を守って測定することでモニタリングでの活用は可能です。未就学児は腕の重さが1kgにも満たないほど軽いこともあり、部位別筋肉量の測定値を用いたモニタリングや左右のバランスを確認する目的で活用することをお勧めします。
一方、複数の障害が重複している重症心身障害児の多くは低体重・低栄養状態で早期の栄養介入が必要ですが、身体測定等からの正確な栄養評価は難しいのが問題として挙げられます。筋肉量や体脂肪量による栄養状態の評価が難しい場合、ECW/TBWや位相角を指標として使用することがありますが、重症心身障害児に対しても同様の活用が可能です。
未就学児や重症心身障害児など、小児を60~90秒も静止させて測定することはとても難しく、しゃべったり笑ったりしないようにすることも同様に難しいです。そして、正しい測定姿勢を取らせることも難しい点ではあります。測定中の体動やおしゃべり・正しくない測定姿勢によってインピーダンスが乱れる可能性も十分あるため、小児の測定値の活用においては測定終了後にインピーダンスを確認していただく必要があります。また、測定中にどうしても動いてしまう場合は厚手のタオルの上から押さえて、できる限り動きを抑える必要があります。
※詳しい測定方法についてはお問い合わせください。
筋肉量に比べて体脂肪量が多いが、小児は少しの増減でもグラフの長さが大きく変わる
体脂肪率が高くなる (年齢や成長度に応じて標準BMIや体脂肪率が異なる)
小児は部位別筋肉量のグラフを参考せず、測定値のみで評価する (各部位の筋肉量がとても少なく、僅かな変化でもグラフが大きく変わる)
ECW/TBWが高くなる傾向がある
測定姿勢の維持や体動・しゃべりなどでインピーダンスが乱れる可能性が高く、測定後にインピーダンスを確認する
人体における水分均衡は体水分(Total Body Water; TBW)に対する細胞外水分量(Extracellular Water; ECW)の割合で示すECW/TBWから評価でき、健康な成人のECW/TBWは常に一定の0.380前後が維持されます。しかし、病状の悪化に伴ってうっ血や浮腫が現れると、主にECWが増える形で水分均衡が崩れ、この数値が0.400を超えて高くなることが多々あります。小児は成人と比べて健康な状態でもECW/TBWが高くなる傾向があります。小児は大人になる準備期間で日々体成分が変わっていくこともあり、ECW/TBWが高めに出ますが成人に近づくに従って、0.380前後に落ち着いていきます。ECW/TBWは水分均衡の指標としてだけでなく、栄養評価にも活用いただける指標です。BIA法で重症児と健常小児を測定した結果、体重や栄養状態に関係なく、重症児のECW/TBWは有意な高値を示したと報告されています³⁾。従来の体重のみの評価ではなく、体成分を考慮した運動・栄養介入が必要です。
位相角(Phase Angle; PA)は簡単に説明すると、交流電流が細胞膜を通過した際に発生する抵抗であるリアクタンスを角度で表した値と言え、リアクタンスは細胞内・外水分量を分ける細胞膜の生理的機能や構造の安定性を反映します⁴⁾。 そのため、細胞膜の状態が改善されるとリアクタンスは高くなり、位相角も増加します。位相角は筋肉量の変化よりも栄養状態の改善に敏感に反応するため、筋肉量を用いた評価が難しい重症心身障害児の栄養評価に有用です。重症心身障害児(者)の低カルニチン状態と血液指標では相関を示されなかったが、位相角と四肢骨格筋指数(SMI)は相関を示したとの報告もあり、位相角とSMIは従来の検査指標では把握できない潜在的な低栄養状態を反映する可能性が示唆されています⁵⁾。
但し、位相角はBIA機器の電極が触れる位置によって、インピーダンスを測定する範囲が変わるため、メーカー間・機種間で値が異なる場合があります。このような測定上の限界から世界で共通するカットオフ値が存在せず、同一機器における評価、またはモニタリング目的での活用が望ましいです。
InBodyではカニンガム式に基づいた基礎代謝量を提供しています。基礎代謝量を求める式は様々ありますが、カニンガム式は測定された除脂肪量を基に算出するため、同じ年齢・性別であっても個人の体成分に合った基礎代謝量が算出されます。蘇生後脳症児におけるエネルギー量設定においても、体重やBMI基準のエネルギー量設定は過栄養になり体脂肪量増加に繋がりやすいため、基礎代謝量と強い相関のある除脂肪量を参照することが推奨されています⁶⁾。
カニンガム式における基礎代謝量は除脂肪量の測定精度に左右されますが、基礎代謝量を求める間接公式はいずれも小児ではなく成人を対象に作られた推定式であるため、カニンガム式だけでなく、ハリス・ベネディクト、WHOなども小児に対しては呼気ガス測定に比べて過小評価される傾向が報告されています⁷⁾。
参考文献
1. Sánchez-López AM et al., Play as a Method to Reduce Overweight and Obesity in Children: An RCT. Int J Environ Res Public Health. 2020 Jan 3;17(1):346.
2. Cho M, Kim JY. Changes in physical fitness and body composition according to the physical activities of Korean adolescents. J Exerc Rehabil. 2017 Oct 30;13(5):568-572.
3. 吉田 索 et al., 生体インピーダンス法による重症心身障害児と健常小児の比較, 久留米大学, 日本臨床栄養学会, 2017
4. Liedtke, R.J. Principles of bioelectrical impedance analysis; RJL Systems Inc.: Clinton, MI, USA, 1997.
5. 吉田 索 et al., 生体インピーダンス分析による重症心身障害児(者)の低カルニチン血症の検討, 久留米大学, 日本外科代謝栄養学会, 2016
6. 水口 浩一, 久保田 雅也. 蘇生後脳症後の重症心身障害児における生体インピーダンス法を用いた体組成評価と栄養管理の検討. 能と発達. 2016; 48(5): 337-341
7. Łuszczki E et al., Resting Energy Expenditure of Physically Active Boys in Southeastern Poland—The Accuracy and Validity of Predictive Equations. Metabolites. 2020; 10(12):493.
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