「メンタルを強くしたければ筋トレをすべき」と言われる理由

昨今、年代問わず筋肉の必要性が広く認知され、フィットネスクラブやジムの会員数は増加し続けています。また、動画サイトやSNSでも自宅で簡単に行えるトレーニング内容を紹介するアカウントが注目を集め、いまやボディビルやアスリートに限らず、誰しもにとって筋肉トレーニングが身近なものとなってきています。

そんな中で、皆さんは 「筋トレをすればメンタルが強くなる」 という言葉を聞いたことはありませんか? 今回は、心身ともに健康でありたい皆様に、筋トレがメンタルにどのような影響を及ぼすのかをご紹介します。


そもそもメンタルとは?

メンタル(mental)とは、「精神的な」 という意味を持つ英単語です。現代では、精神そのものを指すことが多く、「メンタルが強い」「メンタルが弱い」 などという言い方で精神状態を表すことも多く見受けられます。ストレス社会とも呼ばれる現代では、精神的な不調により日常生活に支障が出たり、通院や入院を繰り返してしまうなど、精神面での健康が身体面と同じくらい、もしくはそれ以上に重視されるようになってきました。


メンタルが不調なサイン

よく耳にする 「メンタルが弱い」 という言葉ですが、一般的にはストレスやプレッシャーに対応する力が弱まり、精神的に不安定になりやすいなどといった状態を指します。メンタルの強さや精神的な健康度は、明確な数値で測定することはできないため把握することが難しいです。また、遺伝的な要素・環境・過去の経験など、多様な要因も絡んでいるためとても複雑です。

しかし、メンタルの不調は一般的な風邪と同じで生涯治らないというものではありません。不調の原因となっている要素の排除、生活習慣の改善や環境の変化、適度な運動などで改善できます。まずは自分のメンタルがどのような状況にあるのか、現状を把握することから始めましょう。最近、こんなことはありませんか?

● 今までは気にしなかったことも気になる
● 何に対しても楽しめない、興味が持てない
● 身近な人に対して過度にイライラしてしまう
● 集中力が落ち、注意散漫になってしまう
● 寝つきが悪い
● 食欲がない
● 頭痛や胃痛などの体調不良が続く

上記のいずれかに当てはまる人は、メンタルが不調である可能性があります。メンタルの不調が長い間続いたり、日常生活に悪影響が生じたり、自分自身や他人に危害を加える恐れを感じた場合は、まずは専門家に相談しましょう。


筋トレがメンタルを安定させる理由

筋トレで筋肉を増やすことは、身体機能の向上だけではなく、生活習慣病の予防や睡眠の質の改善など、幅広い効果がありその必要性が広く知られています。身体面での効果は目に見えて確認しやすいため注目されがちですが、実は精神面の健康にも大きなメリットがあります。筋トレによってメンタルが安定する理由は様々ですが、代表的な二つをご紹介します。


1. ホルモンの分泌の変化

筋トレが精神面へ良い効果を与える主な要因は、ホルモン分泌の変化だと言われています。筋トレによって生じる代表的なホルモンの変化と、その効果についてご説明します。


➤コルチゾール

筋トレをすることで、ストレスホルモンとも呼ばれるコルチゾールの分泌が低下すると言われています。コルチゾールは副腎皮質から分泌され、ストレスへの対応に関与しています。ストレスがかかるとコルチゾールが増加し、交感神経を刺激することで身体を緊張状態とし、ストレスに対応しようと働きます。ストレスを上手く処理するために必要な生理機構ですが、この状態が長く続いてしまうと心身の健康に良くない影響を及ぼします。実際に、うつ病患者ではコルチゾールの血中濃度が非常に高い傾向があります。適度な筋トレはこのコルチゾールを減少させ、ストレスを緩和します。ただし、長時間負荷の強いトレーニングをすると、かえってコルチゾールの分泌量増加に繋がってしまいます。適切な負荷や頻度を管理することも必要です。


➤セロトニン

幸せホルモンとして有名なセロトニンは、脳の神経伝達物質の一つで、自律神経を調整して怒りや不安などの感情を抑制し、精神を安定させる作用があります。同じく神経伝達物質で、喜びなどの感情を刺激するドーパミン、恐怖や不安などに繋がるノルアドレナリンを調整していることから、セロトニンが不足している状態ではこの二つのバランスが崩れ、不安が強くなったり攻撃的になったり、更に悪化するとうつ病やパニック障害にまで繋がってしまいます。筋トレはこのセロトニンの分泌を高め、幸福感が増し精神状態の安定に役立ちます。


➤エンドルフィン

なかなか聞き馴染みのないホルモンですが、体内でモルヒネと同様の働きをし、実際にはモルヒネの約6倍の鎮痛作用があるとされています。また、幸福感を高めたり、気分を高揚させる作用もあり、メンタルへ多大な好影響をもたらすホルモンです。マラソンなど長距離を走っている際に、満足感や爽快感を得て、ずっとこのまま走っていられそうな気がするような感覚になる 「ランナーズハイ」 も、このエンドルフィンの鎮痛作用や気分を高揚させる作用が原因となっているのではないかと考えられています。


2. 自己肯定感の向上

筋トレの効果として、最も実感しやすいのは見た目の変化ではないでしょうか。見た目が大きく変わってくると、自身の理想の身体になれたという達成感を得られ、周りの人からは体型の変化を褒められるかもしれません。このような成功体験から、筋トレを継続できた自分に対して自信が持てるようになります。自信がつくと自己肯定感も高まり、精神的な安定へと繋がります。

しかし、周りの人でも気づけるほどの見た目の変化が訪れる期間は、個人差はありますが概ね半年前後と言われています。正しくトレーニングを継続していれば確実に身体の中身は変化していますが、それがあまり実感できないとストレスに感じてしまい、トレーニングを中断してしまうかもしれません。モチベーションを維持したままトレーニングを継続するためにも、InBodyで体成分の小さな変化も見逃さないことが大切です。InBodyでは、筋肉量よりも早い段階で変化する筋肉の質(ECW/TBW)を確認できます。見た目や筋肉量に変化があまり見られなくても、質の改善が分かれば継続する意欲も湧いてくるはずです。

※筋肉量とECW/TBWの評価方法については、InBodyトピックの「InBodyの測定結果で筋肉量が減少するのは悪い結果なのか?」をご覧ください。


終わりに

筋トレを行う目的は、健康状態を良くするため、理想の身体を手に入れるため、取り組んでいる競技でのパフォーマンスを向上させるためなど、多岐に渡ります。筋肉量を維持、増進することが長期的な健康において重要であり、ゆくゆくはやってくるサルコペニアの備えとしても 「筋肉貯金(筋)」 が必要です。

筋トレは身体面だけでなく精神面にも良い影響を与えています。筋トレの身体面への効果は、見た目やInBody測定などによって数値で分かりやすいですが、精神面への効果には気づいていないという方も多いかもしれません。しかし、気持ちが前向きになることが増えたり、少しでも自分に自信を持てるようになったりすれば、メンタルも成長している証です。もし今、落ち込み気味だったりネガティブな思考に偏っているという方は、ぜひ生活の中に筋トレを取り入れてみませんか?