部位別測定のガイド

体の構成を詳しく分析する体成分分析は、シーズンに向けてトレーニング中のプロスポーツ選手であろうと、健康志向の一般人であろうと、進捗確認や目標維持に役立ちます。それぞれの目標を達成するために、フィットネス専門のトレーナーと契約して協力を得ることも一つの方法ですが、体成分分析を行い、体を構成している各成分について理解することも次のような利点があります。

第一に、体成分分析は太り気味・痩せ気味のようなアバウトな評価ではなく、現状どの位置にいるのかを正確に示すので、体成分を維持・改善するための客観的な評価を提供します。変化の内容もはっきり分かるため、体重の変動に対して敏感になる必要もありません。第二に、より正確で詳細な体内変化をモニタリングできます。各成分の増減をモニタリングすることで筋肉量を増やすことに焦点を当てるのか、体脂肪量を減らすことに集中するのか、またはその両方をアプローチしていくのかなど、状況に合わせて運動内容を随時調整することができます。正確なモニタリングによって目標に向かって具体的な行動を選択し、達成度を把握することができます。今回は、InBodyの技術の一つである「部位別測定」に着目して、詳しくお話しします。


部位別測定とは?

体成分分析とは、体を構成する体水分・タンパク質・ミネラル・体脂肪などの各成分が、どれくらいあるのかを分析する方法です。従来のBIA装置では、人体を一つの円柱として分析していました。そのため、測定者の体成分データを決定する抵抗値(インピーダンス)も一つしかありませんでした。
※体成分分析についての詳細は、InBodyトピックの「体成分とは何でしょうか? 」 を参考にしてください。


しかしながら、人体の各部位は長さや円周が異なるため、人体を1つの円柱として分析する方法は、精度に限界がありました。この問題を解決するために、統計的な情報で補正する公式が使われるようになりましたが、更に精度を高めるためにも技術的な限界を乗り越えて、各部位を単独で測定し、体成分データを部位毎で提供できる技術が必要でした。

InBodyは人体を右腕・左腕・体幹・右脚・左脚の5つの部位に分けて測定する技術の開発に成功しました。未だに1つの円柱モデルを採用している装置が多く使われていますが、人体を5つの円柱として分析する部位別測定のメリットは、次の通りです。
1. 体成分データの精度を高めることができる
2. 部位毎の体成分を識別して比較できる
3. 車いすやリンパ浮腫等の疾患によって均衡が崩れている人の正確な評価ができる

InBody結果用紙の部位別筋肉量では、各部位で棒グラフが2本ずつ表示されています。上の棒グラフは標準体重で持つべき筋肉量と比べて筋肉量が多いか少ないかを評価します。数値は実際の筋肉量をkgで表示しています。下の棒グラフは現在の体重で持つべき筋肉量と比べて筋肉量を評価します。数値は現在体重からみた筋肉量の発達度合いを%で表示しています。

下半身の左右差・アンバランスは転倒のリスクを高める上に腰痛や関節痛などの原因となります。また、オーバートレーニングや負傷の兆候として左右差が出てくることもあります。トレーナーやコーチが部位別筋肉量の項目を使って、選手のコンディションを把握したり、運動強度を調節したりすることができます。


部位別測定の仕組み: 技術の理解

部位別測定の理解を深めるために、体成分分析の基礎からご説明します。体成分をモニタリングする方法はいくつかあります。測定は簡便ですが、結果のばらつきがあるキャリパー法。除脂肪量と体脂肪量を正確に算出できますが、特別な設備と専門家が必要な水中体重法。体成分のゴールドスタンダードとして使用できますが、コストや医師の指導など多くの労力が必要なDEXA法。そして、InBodyでも採用している生体電気インピーダンス分析(BIA)法です。現在はこれらの方法が頻繁に使用されています。

部位別で分析が可能なものはDEXA法とBIA法です。BIA装置の技術や精度は製品によって様々で、すべてのBIA装置が全身のインピーダンスを部位毎で測定しているとは限りません。例えば、多くの家庭用体脂肪計では、脚のインピーダンスのみを直接測定し、上半身は推定値を使用して結果を算出しています。逆に腕のインピーダンスを直接測定し、下半身は推定値を使用しているものもあります。部位別測定を行う最新の医療用BIA装置は、人体を5つの円柱、それぞれの部位として分析しています。各部位を正確に単独測定することは、各部位のモニタリングのみならず、全身の指標として提供される体成分データの精度を高めるためにも必要不可欠です。

信頼性の高い結果を得るためには、各部位の正確なインピーダンス測定が重要ですが、最も重要な測定は体幹部の測定です。体幹には内臓器官が含まれており、水分量・筋肉量は全体の約50%を占めています。また、体幹の断面積が広く長さは短いことから、体幹インピーダンスは四肢インピーダンスよりも遥かに小さいです。体幹はインピーダンスあたりの体水分量が多いため、1Ωの差が体水分量に大きく影響してしまいます。これらの理由から、体幹のインピーダンスを正確に直接測定することがとても重要です。体幹を直接測定することで、誤差を最小限に抑えることができるのです。


どれくらい正確なのか?

BIA法の精度について、気になる方もいらっしゃると思います。今まで、多くの研究者がBIA法の原理や精度に関する研究を行い、信頼性について証明しています。 いくつもの研究の中で、部位別測定のBIA装置はDEXAの代替になると言われています。
※InBody活用情報の「原理に関する論文及び精度を検証した論文」も参考にしてください。


部位別測定の技術が登場したことにより、性別や年齢などの情報から結果を推測する(統計補正)必要がなくなりました。統計補正によって結果を算出しているBIA装置は、一般的な集団から得られた変数を公式に利用するため、個人の身体特性を正確に反映することができません。例えば、筋肉がとても発達した女性は「女性は男性よりも筋肉量が少ない」という一般的な集団情報が影響して、実際の筋肉量を過小評価してしまいます。疾患によって痩せている若い男性は「若い男性は筋肉量が多い」という集団情報から筋肉量を過大評価、健康志向で体が鍛えられている高齢男性は「加齢によって筋肉量は少なくなる」という集団情報から筋肉量を過小評価してしまいます。統計補正を使用せずに測定値のみで結果を提供する部位別測定のBIA装置は、体成分の変化を敏感に捉え、測定者のありのままの体を反映します。そのため健常者は勿論のこと、運動療法や栄養指導が必要な臨床現場でも用いられています。


部位別測定の恩恵を受ける人たち

部位別測定は、体成分変化をモニタリングする必要がある人たちに有用で、特に次の集団で重宝しています。

1. 競技特性によって、特定の部位が発達しているアスリート


競技やポジションなどの競技特性によって、特定の部位だけが発達しているアスリートもいます。テニスやバトミントンなどのラケットスポーツは利き腕がより発達していたり、サッカーや陸上選手は下半身の筋肉量が多くなる特徴があります。

2. 疾患によって身体均衡が崩れている患者


健康な人の筋肉は均衡が保たれた状態で発達していますが、疾患や怪我などによっては部位別の筋肉量・水分量・水分均衡は大きく変わってきます。

3. トレーニング効果や食事療法の効果を評価したい集団


例えば、シルク・ドゥ・ソレイユのチームはパフォーマーの部位別筋肉量を記録し、筋肉の均衡が保てるようなトレーニングプログラムを設計しています。また、負傷中のパフォーマーが回復したかを確認する方法としても部位別筋肉量を活用しています。
※シルク・ドゥ・ソレイユの活用方法が気になる方は、InBody活用情報の「シルク・ドゥ・ソレイユ 体成分に基づく訓練法の選択」を参考にしてください。

4. 生活習慣を見直し、改善したいと考えている人たち


上半身と下半身の不均衡は、デスクワークが中心の会社員で多く見られます。椅子に座る時間が長くなりがちな高齢者や運動不足が深刻な現代人も同様で、下半身の筋肉量が少なくなってしまうと、転倒のリスクが高まったり、将来歩行困難になって寝たきりになってしまう可能性が高まります。

5. 隠れ肥満に多い、腹部に脂肪が溜まっている人たち


部位別測定によって、部位別筋肉量だけでなく部位別体脂肪量も確認することができます。体幹の体脂肪量は高くないですか? 内臓周りの体脂肪は生活習慣病に関連することが知られています。

6. リスク管理が必要な高齢者


高齢者は身体活動の減少に伴って筋肉量が減少してしまいます。筋肉量が減少して栄養不良になると、健康面への様々なリスクが生じてきます。転倒や怪我のリスクが増加するだけでなく、日常生活を送る上で必要な身体機能の低下にも繋がります。

7. 慢性的な問題を抱えている患者


部位別測定のデータは、医療の専門家が慢性的な疾患を持つ患者を治療するために使用されることもあります。実際に、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の筋肉喪失の早期発見に部位別測定の体成分分析が重要であることが報告されています¹⁾。また、透析治療を行っている慢性腎不全患者の部位別体液移動の評価においても部位別水分量や細胞外水分比、細胞外水分量など部位毎の情報が使われています²⁾³⁾⁴⁾⁵⁾。


終わりに

部位別測定は、体成分分析を行う上で最も重要な技術の1つです。両腕・両脚が対称的に発達しているのか、どこの部位に問題を抱えているのか、部位別測定によって確認することができます。BIA装置を利用する際は、部位別測定の技術を搭載している装置なのかを確認してください。InBodyは、健康な体を手に入れるためのサポートができる装置です。

参考文献
1. Daniela Gologanu et al., Body composition in patients with chronic obstructive pulmonary disease. Maedica (Bucur). 2014 Mar;9(1):25-32.
2. Soo-Jeong Yu et al., Assessment of fluid shifts of body compartments using both bioimpedance analysis and blood volume monitoring. J Korean Med Sci. 2006 Feb;21(1):75-80.
3. John Booth et al., The effect of vascular access modality on changes in fluid content in the arms as determined by multifrequency bioimpedance. Nephrol Dial Transplant. 2011 Jan;26(1):227-31.
4. Sanjeev Kumar et al., Changes in upper limb extracellular water content 
during hemodialysis measured by multi-frequency bioimpedance. Int J Artif Organs. 2013 Mar;36(3):203-7.
5. Kwanpeemai Panorchan et al., Does the presence of an arteriovenous fistula alter changes in body water following hemodialysis as determined by multifrequency bioelectrical impedance assessment? Hemodial Int. 2015 Oct;19(4):484-9.