五大栄養素
-ビタミンⅠ-
五大栄養素の1つであるビタミンはエネルギー源や体をつくる成分ではありませんが、他の栄養素が体内で円滑に働くための潤滑油のような役割があり、健康を維持するためには必要不可欠な栄養素です。ビタミンは全部で13種類存在し、水に溶けやすい水溶性ビタミンと油脂に溶けやすい脂溶性ビタミンに分類され、それぞれの性質から体内に取り込まれるメカニズムが異なります。
水溶性ビタミンは血液などの体液に溶け込み、余分なものは尿として体外に排出されやすいため、大量に摂取しても体内に貯蔵されにくく過剰摂取の心配はありません。従って、体内で不足しないように、毎日数回に分けて摂取する必要があります。一方、脂溶性ビタミンは水に溶けにくく、主に脂肪組織や肝臓などに蓄積されやすい特徴があるため、過剰摂取すると蓄積過多となって体に害を及ぼしてしまう恐れがあります。今回のトピックでは、多くのビタミンの中でも骨の健康維持や免疫機能の向上に欠かせないビタミンDに焦点を当てていきます。
ビタミンDとは
ビタミンDは身体機能を正常に保つ働きをする脂溶性ビタミンに該当し、骨・ミネラル代謝の維持に必須な栄養素としてよく知られています。ビタミンDにはD2からD7まで6種類存在しますが、一般的に体内の生理的調節機能に高く作用するビタミンDはD2(エルゴカルシフェロール)とD3(コレカルシフェロール)です。この2種類は食品から摂取でき、体にとって重要な栄養素です。残りの4種類は殆ど食品に含まれておらず、体に及ぼす作用も低いです。
厚生労働省による1日の食事摂取基準は18歳以上の男女ともに8.5~100μg(ビタミンD2とD3の合計値)が推奨されています¹⁾。しかし、国民健康・栄養調査の報告では1日あたり男性6.9μg・女性6.3μgしか摂取できておらず、どちらも摂取量が基準を下回っている状況です²⁾。
ビタミンDはInBody結果用紙で表示される骨ミネラル量の改善に効果的な栄養成分です。 InBodyが測定する骨ミネラル量は除脂肪量に比例するという関係性に基づいて求めており、ビタミンDの摂取量がそのままInBody結果用紙の骨ミネラル量に反映されることはありませんが、除脂肪量の増加に伴って徐々に増加します。骨ミネラル量が標準範囲を下回っている場合は、ビタミンDの摂取量を増やしながら、除脂肪量の増加を心掛けてみてください。
ビタミンDの過剰摂取・不足による悪影響
既に説明した通り、脂溶性ビタミンであるビタミンDは 体内に蓄積されやすいため、過剰摂取は健康に問題を引き起こす恐れがあります。毎日大量のビタミンD(推奨量の約60~100倍)を数ヶ月間摂取し続けると、毒性が現れ、血中カルシウム濃度が過剰になり、血管・腎臓・肺・心臓に多量のカリウムが沈着します³⁾。初期症状として食欲不振・嘔吐・筋力低下・神経過敏・高血圧が起こりますが、重症化すると腎臓が損傷を受けて腎不全になる恐れもあります。
また、ビタミンDは健康な骨を維持するために必要なカルシウムとリンを小腸や腎臓で体内に吸収するのを助ける働きがあり、不足すると様々な骨へのリスクを高めます。小腸や腎臓で吸収されるはずのカルシウム量が減少し、低カルシウム血症になると、小児ではくる病(小児の骨軟化症)、成人(特に妊婦や授乳婦)では骨軟化症、骨量が低下している高齢者では骨粗鬆症を発症しやすくなります。日本内分泌学会では、血中ビタミンD濃度(血清25(OH)D濃度)からビタミンD欠乏症を判定する基準を次のように定めています⁴⁾。
充足状態: 30ng/ml以上
不足状態: 20ng/ml以上30ng/ml未満
欠乏症: 20ng/ml未満
ビタミンDを多く含む食品
ビタミンD2はきのこ類など植物性食品に多く含まれ、ビタミンD3は魚肉・魚類の肝臓・バター・卵黄など動物性食品に多く含まれます。ビタミンDは脂溶性のため、脂質を含む動物性食品の方が体内に吸収されやすいですが、植物性食品でも炒めたり、揚げたりして油と一緒に摂取すると吸収されやすくなります。次の表はビタミンDを多く含んでいる代表的な食品と100gあたりの含有量です。
「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より改変
このように、ビタミンDは食品から摂取することができますが、多くの人が体に必要なビタミンD摂取量を満たしてないのが現状です。では、ビタミンD不足を補うためには食事摂取量を増やす方法しかないのでしょうか。実は、食事以外の方法でもビタミンDを補うことができます。次のトピックでは食事以外でビタミンDを補う方法についてご紹介していきます。
参考文献
1.「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 厚生労働省
2.「平成30年国民健康・栄養調査報告」 厚生労働省
3.「ビタミンD」 MSDマニュアル家庭版
4. 岡崎 亮ら, ビタミンD不足・欠乏の判定指針. 日本内分泌学会雑誌, 2017 Mar; 93