InBodyは子どもにも活用できる? 測定前に知っておきたいこと

近年、日本の子供たちの痩せや肥満の増加が問題視されています。この背景には食生活の変化や運動不足、生活習慣の乱れなどが複雑に絡み合っています。例えばファストフードや高カロリー食品の摂取増加、家庭での食事時間の不規則化、スマートフォンやゲームの普及による身体活動の減少などが挙げられます。さらに、妊娠中の母親の栄養状態など、出生前の環境も子供の肥満リスクに影響を与えることが指摘されています。これらの要因が組み合わさり、子供たちの健康に深刻な影響を及ぼしています。また、子供の頃の健康状態は成人後にも大きく影響を及ぼします。そのため、子供の頃から健康意識を高め適切な健康管理を心掛けることが、将来の健康を支える土台を作るために欠かせないステップと言えます。

保育園や学校などで行われている身体測定は身長と体重、そしてそこから計算されるBMIのみで、これらの指標を用いて肥満や痩せ、発達の程度を評価しています。しかし、BMIは「体重(kg)÷身長(m)²」という計算で求められますが、この計算では筋肉量や体脂肪量など体重の内訳が区別できません。

例えば体重が1kg増えた場合、その1kgは筋肉量が増えたのか、体脂肪量が増えたのかで評価は全く異なります。小児の発達は目まぐるしくそれに伴って体成分の変化も大きくなるからこそ、定期的にInBody測定を行い、体重の中身である体成分を評価することが大切です。


小児でも測定可能なInBody

InBodyの測定対象年齢は6歳以上ですが、6歳未満の小児でも測定できないわけではありません。InBodyの測定精度は、ゴールドスタンダード(世界的に最も精度が高いと言われる体成分測定方法)と数値を比較することで検証されています。さらに、その検証は健常な成人に限らず様々な特徴(年齢・人種・疾患の有無など)を持つ人々を対象に行われています。その中には小児も含まれていますが、6歳未満の小児を対象とした精度検証はあまり行われていません。そのため、測定結果の数値の精度検証が行われている範囲として、対象年齢を6歳以上に設定しています。6歳未満でも測定は可能ですが、測定対象基準から離れるほど数値に影響が出る可能性があります。ただし、測定条件を守ることでモニタリングに十分活用できます。


小児を測定するときの注意事項

小児に限らず、正しくInBody測定を行うためには、測定条件を守ることが大切です。ここでは小児を測定する際に特に注意すべき測定条件を具体的に説明します。

InBodyをはじめとする体組成計は、最初に体水分量を測定し、それを基に筋肉量や体脂肪量を算出します。そのため、常に体内で循環している体水分量を正確に測定することが、結果の精度を左右します。体成分を正確に測定するには、測定条件を守り、体水分が安定した状態で測定することが重要です。

➤正しい身長を入力する

身長は体水分の算出に必要不可欠な情報です。BIA法では体内に電流を流した際に発生する電気抵抗値(インピーダンス)と入力した身長を基に体水分を算出するため、身長の入力が誤っていると全ての測定値に影響を及ぼします。成人とは異なり、小児は急速に成長する時期であるため、短期間で身長が変化します。正確な測定値を得るためには、最新の正しい身長を入力することが重要です。そのため、可能であればInBody測定を行う前に身長を測定することが理想的です。

➤正しい姿勢を保つ

測定中は正しい測定姿勢(上図参照)を維持する必要があります(機種によって測定姿勢は異なります)。丸で囲んでいる部分(腕と体幹、太もも同士)が接しないように注意が必要です。電流は最短距離を流れようとする性質があるため、接触している部分があると本来の電流の経路からずれた経路で電流が流れてしまい、測定値が影響を受ける可能性があります。どうしても該当箇所が接してしまう場合は、厚手のタオルのような絶縁体を挟んで測定を行ってください。

➤測定中には動かない、笑わない、話さない

測定中はほんの僅かな体の動きが電流の流れを乱し、測定値に影響を及ぼす可能性があります。InBody測定には30~70秒ほどかかりますが、その間小児が動かずに静止することや、話したり笑ったりしないようにするのは難しく、正しい測定姿勢を保つことが難しい要因となります。測定中の体の動きや正しい測定姿勢が保てない場合、測定エラー(インピーダンスの異常値など)が発生する可能性があります。そのため、測定後はインピーダンスの項目を確認し、正しく測定が行われたか判断する必要があります。また、測定中にどうしても動いてしまう場合は、測定者の皮膚に直接触れないよう注意しつつ、厚手のタオルの上から優しく支えてできるだけ動きを最小限にすることが望ましいです。

➤運動前に測定する

運動などで体温が上がると血流が促進され、安静状態の体水分に比べて体水分の移動が激しくなり、測定値に影響を及ぼします。そのため、保育園や学校などで測定する際には、体育の授業後や昼休みに走り回った後を避け、午前中に血流が落ち着いた状態での測定を心掛けましょう。このように測定前に体を安静に保つことが、正確な結果を得るために非常に重要です。

※測定上の注意事項について、詳しくは「今さら聞けない、体組成計のあれこれ-正しい測定方法-」をご覧ください。


結果の解釈で注意が必要なポイント

小児に対するInBody測定では、結果の解釈に注意が必要なポイントがあります。

InBodyから提供される各測定項目の標準範囲は、測定者が標準体重であるときに持つべき理想的な体成分の量を示しています。標準体重は【身長(m)×身長(m)×標準BMI】で求められ、標準BMIは男性22、女性21を適用しています。しかし、成長期である18歳未満の小児の場合、成人とは異なる基準での評価が必要となるため、InBodyでは小児の成長に伴う身長の変化に合わせて、標準BMIも変化するよう設定されています。標準BMIが変わると、その数値を用いて計算される標準体重も変わり、結果として体水分量・筋肉量・体脂肪量など各体成分の標準値や標準範囲も変更されます。

※小児で適用される標準BMIについて、詳細は資料をご用意しておりますのでお問い合わせください。


また、InBodyの結果用紙には、「肥満指標」としてBMIと体脂肪率を並べて表示している項目があります。

▲ 結果用紙内の「肥満指標」の項目

BMIは【体重(kg)÷身長(m)×身長(m)】という計算式で求められ、比較的簡単に体型を評価できる指標として広く知られています。標準値は男性22、女性21とされており、標準範囲はWHOが提示した基準にならって男女ともに18.5~25と設定されています。

しかしBMIは体重のみを基に算出するため、体重の中身である筋肉や脂肪のバランスまでは反映できません。例えば、170cm 70kgの男性のBMIは24.2kg/m²で標準範囲内に該当しますが、「筋肉量が多く体脂肪量が少ない70kg」でも「体脂肪量が多く筋肉量が少ない70kg」でも、BMIのもとでは同じ評価になってしまいます。このようにBMIだけでは詳細な体型評価が難しいことが分かります。

体脂肪率は【体脂肪量(kg)÷体重(kg)×100】という計算式で求められ、体重に占める体脂肪量の割合を示した項目です。体脂肪率の標準値(標準範囲)は男性15%(10~20%)、女性23%(18~28%)を適用しています。

例えばBMIが標準範囲内に収まっていても、体脂肪率が高く筋肉量が少ない場合は、体成分の改善が必要であると評価できます。一方でBMIが高くても体脂肪率が低く筋肉量が多い場合は、体成分の改善は必要ありません。このようにBMIと体脂肪率を併せて見ることで、より詳細な体型評価が可能になります。

肥満指標のBMIと体脂肪率も、小児では成人と異なる評価基準を用います。小児のBMIはWHOのデータを基に年齢別の基準が適用されます。小児の体脂肪率はWHOの成長曲線が基準になりますが、同年齢よりも成長が早いもしくは遅い場合は成長度が考慮されます。

※小児におけるBMI・体脂肪率の評価基準に関して、詳細は資料をご用意しておりますのでお問い合わせください。


InBodyでは、入力された測定者の年齢が17歳までを小児、18歳以上を成人と判断します。実際に、女性(身長: 151cm 体重: 48.5kg)が、成人(25歳)と小児(12歳)として情報を入力して測定を行った場合、下図のような結果用紙が得られます。

▲ 左: 成人の結果用紙 右: 小児の結果用紙

これまでご説明した通り、小児では発達に合わせた評価基準が適用されるため、成人(25歳)と小児(12歳)では体成分評価(標準値・標準範囲)が異なります。ただし、結果用紙内の筋肉量や体脂肪量等の数値は一切変わっていないことが確認できます。InBodyは身長・体重・インピーダンス(電気抵抗値)のみを使用して体成分を求めており、年齢の情報は体成分の算出に一切使用しません。そのため、身長・体重・インピーダンスが同じであれば、年齢が変化しても測定値には一切影響せず、評価(棒グラフ)のみが変化します。

上図の結果用紙を確認すると、筋肉量はどちらの年齢でも同じ30.8kgですが、その評価は成人では「低」に、小児では「標準」に該当します。このように、小児は成人と異なる評価基準が採用されることに注意が必要です。また、InBody測定の結果は他の測定者と比較するのではなく、自身の過去の数値と比較しながら、より良い体成分を目指して評価するためのツールです。小児は特に、発達により体成分の変化も著しい時期であるため、持つべき量(標準値)と比較しながら発達の程度を確認していくことが大切です。


終わりに

健康管理に適齢期はありません。成長期のうちから、自分の健康状態に興味を持つことが大切です。また身長や体重、BMIだけでなく、筋肉量や体脂肪量を把握することで、長期的な将来の健康を見据えた体成分管理ができます。InBodyなら体成分を分かりやすい数値やグラフで確認できるため、子供でも興味を持ちやすく、成長の変化を実感しながら健康を意識できます。定期的にInBody測定を行い、健康的な発達をモニタリングしていきましょう。