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カーボローディングとは

カーボローディングという言葉を聞いたことがありませんか? カーボローディングとは、スポーツ選手が大きな大会の直前に、白米・パン・パスタなど高糖質食を詰め込む食事法です。特にボディービルダーや持久系スポーツ選手が、大会の準備で数日間に渡って、炭水化物による負荷(カーボローディング)を利用しています。

ボディービルダーや持久系スポーツ選手にとって、カーボローディングの概念は同じです。大会1週間前から、本番1時間前まで、食事全体の糖質量をコントロールします。しかし、両者がカーボローディングを行う理由はまったく異なります。ボディービルダーは大会前のルーティンの一環として、カーボローディングを行います。カーボローディングによって、自身の体をより大きく、より強く、より堅く引き締まって魅せることができると信じられています。一方、マラソンやサイクリングなどの持久系スポーツ選手は、筋肉が利用できるエネルギーを増やすためにカーボローディングを行います。余分に貯蔵されたエネルギーが、長時間走ったり、自転車を漕いだり、泳いだりする時に必要な持久力を向上させることに役立ちます。

しかし、カーボローディングについて科学的根拠はあるのでしょうか? 効果は本当にあるのでしょうか? 安全面は問題ないのでしょうか? 今回のトピックでは、これらの疑問について詳しく説明していきます。


カーボローディングを行う理由


炭水化物は、体内で非常に重要な機能を果たす主要栄要素で、体の主なエネルギー源です。糖質と食物繊維で構成される炭水化物は、摂取すると血糖に分解され、グリコーゲンとなり筋肉や肝臓にエネルギー源として貯蔵されます。通常、筋肉が蓄えるグリコーゲンは少量しかありません。その中で運動を行うと、貯蔵したエネルギーは使い果たされてしまいます。

男性はカーボローディングによって、グリコーゲンの貯蔵レベルを通常の25~100%高めることができます。女性が男性と同じ効果を得るには、男性よりも多くのカロリーを摂取する必要があります。

理論上、カーボローディングを行う理由は次の通りです。
1) 筋肉をグリコーゲンで満たすことで、筋肉内に水を引っ張り、質量を増やして強健にする
2) グリコーゲン貯蔵量を増やして、通常より余分に蓄えられたエネルギーを利用し、持久力を高める


カーボローディングの対象は?

カーボローディングは、主に次の2つの運動選手群で行われます。
➤ ボディービルダー
大会前に体を大きく、重くするためにカーボローディングを利用します。しかし、中には注意を喚起している研究者もおり、国際スポーツ栄養学会誌に掲載された論文では「カーボローディングを行う場合、選手は大会前に一度は脂肪が無い仕上がった筋肉に達すること、もしくは近づけることを検証し、個々の戦略を企てなければならない。」と報告されています¹⁾。炭水化物を摂取するタイミングや効果は人によって異なります。必ず大会前に、ご自身で実験をしてください。

➤ 持久系スポーツ選手
長時間走ったり、自転車を漕いだり、泳いだりする時に使える、エネルギー貯蔵量を増やす目的でカーボローディングを利用します。持久系スポーツ選手が効果的なタイミングで炭水化物を摂取すると、筋肉のグリコーゲン貯蓄量を増加させ、パフォーマンスを向上させることができます。


カーボローディングの手順

カーボローディングのやり方は達成目標や目的によって異なります。
➤ ボディービルダー

大会や撮影会を控えているボディービルダーの場合は、本番2~3日前にカーボローディングを試みてください。現在の体成分と代謝に合った正しいタイミングを見つけるためには、試行錯誤が必要かもしれませんが、InBodyの体成分や水分均衡(細胞外水分比;ECW/TBW)を判断材料として使用してみてください。ジム・ストッパーニ博士によると、体重1kg当たり約8gの炭水化物を補給する必要があります。水分を溜め込んでしまうパスタやオートミールよりも、低脂質で高カロリーなじゃがいもやさつまいもなどを取り入れることが効果的です。また、筋肉を魅せることを目的にしているので、カーボローディングと並行して水抜きが必要となります。グリコーゲンは糖質なので、体内の貯蔵量が増えると浸透圧の関係で水分も溜め込む結果となります。水が溜まってしまうと、浮腫んだり、筋肉のメリハリが消えてしまったりするため、大会で結果を出すことが難しくなります。グリコーゲンを筋肉内に貯めた状態で水を抜くことで、筋肉が膨らんだまま、凹凸を際立たせることができます。水分が溜まっていない状態でカーボローディングがちゃんと行われているかを確認する項目として、InBodyのECW/TBWが活用できます。ECW/TBWの数値は水分貯留の影響を受けて高くなる項目であるため、これらの状態を確認することができます。

 

➤ 持久系スポーツ選手

持久力が必要な大会に出場する選手は、少なくとも大会の二日前には体重1kg当たり約9~15gまで炭水化物摂取量を増やしてください。持久系スポーツ選手はボディービルダーとは異なり、パスタや小麦等の穀物でカーボローディングを行うことができます。持久性スポーツ選手に推奨される、低脂質で糖質を多く含んだ食品は、果物・スポーツドリンク・白米・オーツ麦・とうもろこし・じゃがいもなどが挙げられます。運動の3時間前に高糖質食を摂取することで、筋肉のグリコーゲンレベルを15%増加させたとの研究報告もあります²⁾。レース中に血糖値を維持するために、エネルギーを補充することは重要なポイントです。簡単に摂取できるスポーツドリンク・ゼリー飲料・果物・キャンディー・低脂質で糖質が多く含まれているパワーバーなどは、定期的にエネルギーを補充するには最適です。目安は1時間に30~60g程度で、これ以上多く摂取する必要はありません。

また、レース後に炭水化物が豊富な食事を摂ることも忘れないでください。レースで使い果たしたグリコーゲンを即座に補充して、回復を促すことが重要です。レース後なるべく早く栄養補給できることが望ましいですが、レース直後に固形物は受け付けないという選手も少なくありません。そのような場合は、手軽に摂取できるゼリー飲料やスポーツドリンクがお勧めです。グリコーゲンの回復に関しては、炭水化物だけではなくビタミン・ミネラル・タンパク質も一緒に摂取することを心がけましょう。長時間の運動では、グリコーゲンだけではなく他の栄養素も消費されているので、速やかな補充が必要です。また、炭水化物とタンパク質の同時摂取は、炭水化物のみを摂取した時よりも効果が高いことが報告されています。勿論、しっかりと回復や休養を取ることもとても重要です。


炭水化物(糖質)が多い食品

食品分量炭水化物含有量(g)
白米茶碗一杯(150g)55.8
うどんめん1玉(240g)51.9
食パン1枚(60g、1斤6枚切り)28.0
ショートケーキ1個(100g)47.2
オートミール100g69.0
じゃがいも中1個(110g)19.4
さつまいも120g37.8
とうもろこし中1本(180g)30.2
牛乳200ml9.7
ヨーグルト(脱脂加糖)120g14.3
りんご約1/2個(150g)21.9
バナナ約1本(200g)45.0
約1個(260g)41.4
約1個(280g)28.6
グレープフルーツ約1/2個(200g)19.2
ぶどう約1房(150g)23.6
キウイ約1個(90g)12.2
みかん約1個(100g)12.0
パイナップル5切れ(50g)6.7
いちご5粒(85g)7.3
すいか1切れ(200g、実の部分)19.0

糖尿病食事療法のための食品交換表第7版、日本糖尿病学会を基準に算出³⁾


カーボローディングの副作用とリスク

確かに、カーボローディングはグリコーゲンレベルを高めることで筋肉のボリュームと持久力を増加させ、パフォーマンスの向上に役立ちます。しかし、誰もがカーボローディングの恩恵を受けられる訳ではありません。カーボローディングの効果やパフォーマンスには持久系スポーツ選手かボディービルダーであるかに関わらず、現在の体力レベル・水分摂取量・運動の実施時間などの様々な要因が影響を及ぼします。カーボローディングは筋肉疲労に対抗できる特効薬ではありません。2時間以上も走ったり、自転車を漕いだり、泳いだりすれば、疲れてしまうのは当然のことです。

炭水化物を含む食品を大量に摂取することで、発症する可能性があるリスクもあります。胃腸の不快感、痙攣、腸内でのガス発生等副作用を経験した方もいらっしゃるでしょう。一時的な体重増加も副作用の一つで、体重が重くなったことによって走りに影響が出る可能性についても注意する必要があります。カーボローディングは血糖値にも影響を与えるため、糖尿病や高脂血症などの疾患を持つ人の場合は、健康上の理由から実施しない方が良いとされています。急激に筋肉のグリコーゲンを増加させると、グリコーゲンが消化しきれずに内臓に負担がかかることも考えられます。カーボローディングを徐々に適応させずに、試合の時だけ急に行うことは絶対にしないでください。

誰でも、カーボローディングの効果を等しく得られる訳ではありません。

 

参考文献
1. Eric R Helms et al., Evidence-based recommendations for natural bodybuilding contest preparation: nutrition and supplementation. J Int Soc Sports Nutr. 2014 May 12;11:20.
2. Wee SL et al., Ingestion of a high-glycemic index meal increases muscle glycogen storage at rest but augments its utilization during subsequent exercise. J Appl Physiol (1985). 2005 Aug;99(2):707-14.
3. 日本糖尿病学会 編・著, 糖尿病食事療法のための食品交換表第7版. 2013