五大栄養素
-炭水化物Ⅱ–

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -炭水化物Ⅰ-


糖質過剰摂取の原因

朝はパン1枚にリンゴとフルーツジュース。昼はレタスサンドイッチと野菜ジュース。間食はドライフルーツにコンビニで買った缶コーヒー。夜はポテトサラダに果物。ダイエット目的で食事から炭水化物をなるべく抜こうとする人でよくある食習慣かもしれません。炭酸飲料を飲む代わりにフルーツジュースを選択することは一見糖質を避ける良い選択肢に見えるかもしれませんが、ここには隠れた糖質の罠があります。

➤飲み物の中の糖質

「甘い味」がする食品全般には糖質が含まれており、100%フルーツジュースも例外ではありません。果物にも果糖という糖質が入っており、飲み物として濃縮すると同量の果物に比べて果糖の摂取量が大きく増えてしまいます。更に、加工の過程で甘味を出すために異性化糖と言われるでんぷんを化学的に処理したシロップのような添加物が入ります。中にはブドウ糖50%以上の液糖や砂糖が混合されているものもあるので、意識せずに多量の糖質をとってしまう可能性があります。実際の研究でも、果汁100%のフルーツジュースを1日3杯以上飲む人は1杯未満しか飲まない人より糖尿病のリスクが高い¹⁾という結果も出ています。健康に良いと思って飲んでいたジュースが、かえって健康を損なうということにも繋がりかねません。

また、ミルクと砂糖が入っているコーヒーも糖質を多く含みます。特に砂糖は二糖類といい、単糖2つが結合されている糖類です。果糖やでんぷんは数十個の糖が結合しているため、分解して単糖類のブドウ糖に変換する過程に時間がかかり、血糖値の上昇も緩やかです。それに比べ、結合している数が少ない砂糖は分解にあまり時間がかからず、すぐブドウ糖に変換・吸収されるため血糖値を急上昇させます。血糖値の急上昇はインスリン分泌にも影響を及ぼし、殆どのブドウ糖が中性脂肪に変換されて体脂肪として蓄積されるので健康にはあまり良くない糖質の摂取方法と言えるでしょう。

➤食パン

穀物には炭水化物以外にもビタミンやミネラルなどの栄養素も入っています。しかし、精製される過程で多くの成分が失われます。コンビニでよく見かけるサンドイッチは食パンが使用されていますが、食パンは精製された小麦粉で作られており、食物繊維が多く取り除かれているので、精製されていない全粒粉で作られたパンより糖質の割合が高くなります。パンを焼いたことがある方は分かると思いますが、パンの製造過程には多量の砂糖とバターが使用されるため、糖質の量は更に増えます。また、小麦粉でできた食パンは食物繊維が少ないため腹持ちが悪く、すぐ空腹感を感じるようになるので間食を摂りたくなることも問題です。

他にも、果物は食物繊維やビタミンなどの栄養素も含まれているため、他の加工食品より健康的ではありますが、果糖が含まれています。そのため、食事の代わりとして果物をたくさん摂ることも糖質をたくさん摂る結果に繋がります。

このように、普段口にする食べ物の中には思っている以上に糖質を含んでいる食べ物が多々あります。そのため、糖質摂取量を見直すときは食べる量だけでなく、どんな食べ物や飲み物を選ぶかにも注意する必要があります。


賢い炭水化物の摂り方

では、正しく炭水化物を摂取するためには何に気を付ければ良いでしょうか。炭水化物を全く摂らないとなると選べる幅は非常に狭くなりますが、適切な摂取量についてそこまで難しく考える必要はありません。次の内容を考えながら選択しましょう。

➤加工の過程は少ないほど良い

お米は炭水化物が主栄養素の代表的な食材で、糖質であるでんぷんだけではなく、食物繊維・ビタミン・ミネラルも豊富です。しかし、白米は精製の過程で食物繊維をたくさん含んでいる糠(ぬか;白米を覆っている薄い茶色の膜)や胚芽が取り除かれるため、これらの栄養素が少なくなり、糖質がメインのものになってしまいます。逆に、玄米や麦などの雑穀は胚乳以外の部位も残っているため、穀物本来の栄養素があまり損なわれず、食物繊維の影響で満腹感も長続きします。

これはパンも同じで、材料となる小麦粉は小麦の胚乳部分を粉にしていることに対し、全粒粉は小麦の殻まで粉にしたものです。そのため、栄養素が殆ど取り除かれていない全粒粉で作ったパンは食物繊維が多く、消化・吸収に時間がかかるため血糖値がゆっくり上昇する効果を期待できます。ただ、全粒粉は加工が少ない分、食感が荒くなるのでご飯やパンに取り入れるときは白米または小麦粉と混合したほうが食感と栄養素のどちらも損なわれにくくなります。

果物や野菜も同じです。加工されたジュースを飲むより果物をそのまま摂取するか、手作りジュースの方が添加物による糖質摂取量を抑えることができます。

➤砂糖の代わりにオリゴ糖などの代用品を使う
料理の調味料として砂糖を入れなければならない場合がありますが、その時も砂糖の代わりに吸収されない糖類を入れることで味には影響なく糖質摂取量を抑えることができます。砂糖の代わりによく使用されるのがオリゴ糖です。

オリゴ糖は糖類に該当しますが、胃酸や消化酵素によって分解されない難消化性糖質であることが砂糖との違いです。普通の糖質は消化酵素によって分解され小腸で吸収されますが、オリゴ糖は分解されず大腸まで届き、大腸にあるビフィズス菌などの善玉菌の栄養源として分解されてやっとエネルギー源になります。そのため、小腸で吸収される糖類よりカロリーも低く、血糖値に及ぼす影響も少ないです。

➤間食でお菓子は避ける

食品にはGI値という概念があります²⁾。これは炭水化物が分解されて糖に変わるまでの速度を示している数値で、ブドウ糖を摂取した後の血糖上昇率を100として、ある食品を同量摂取した際の血糖上昇率をパーセントで表しています。GI値が高いとその分早く分解・吸収されて血糖値も急上昇します。特に、食後一定時間が過ぎると血糖値が下がり空腹感を感じるようになりますが、この時に血糖値が急に上がるとインスリンが大量分泌され、殆どが脂肪に変わってしまいます。従って、間食はなるべくGI値が低いものを選択し、血糖値の上昇を緩めることが大事です。

オーストラリアのシドニー大学ではGI値55以下の食品を低GI食品と定めていて、GI値が比較的低い間食としては牛乳・アーモンドなどのナッツ類・サツマイモ・バナナなどがあります。同じ芋類でもジャガイモはGI値が高いので注意が必要です。殆どの野菜はGI値が低いですが、野菜の種類によって異なるので気を付けましょう。特にナッツ類は食物繊維が豊富で、脂質の中でも健康に良い不飽和脂肪酸が多く含まれているので、間食として優れています。ナッツを間食として食べるときは砂糖などでコーティングされていないものを選び、適量を食べるように心掛けましょう。


大事なのは自分の適量を知ること

太る原因としてのイメージが強い炭水化物ですが、体にとってはなければ生命維持ができないほど重要な栄養素です。体は常にエネルギーを消費しているため、糖質を摂らなすぎると命の危険として捉え、消費エネルギーを減らそうとします。そのため、血糖値が下がると眠くなり、脳に届くエネルギーも少なくなるので集中力が切れてしまいます。また、命の危機と捉えたときにエネルギー源が入ってくると、体は同じ危険に備えるために入ってきたエネルギー源を可能な限り保存しておこうとします。そのため、適切な糖質摂取を行い、常に一定の糖質が体内にある状態をキープして体が飢餓状態に陥らないようにすることで、多くのエネルギーを溜め込みすぎないようにします。また、炭水化物の構成成分である食物繊維は腸内環境を整え、便通にも良い影響を及ぼすなど、炭水化物の働きは単なるエネルギー供給ではありません。どの栄養素自体も決して悪いものではありませんが、摂り過ぎは毒です。様々な栄養素をバランスよく、適量を摂取するよう心掛けて、健康を保ちましょう。

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -炭水化物Ⅰ-

参考文献
1. Isao Muraki et al., Fruit consumption and risk of type 2 diabetes: results from three prospective longitudinal cohort studies. BMJ 2013; 347
2.「Glycemic Index」The University of Sydney