CLUBHOUSE
-学生アスリートの食を支える-
✓InBodyを活用する目的
● 客観的な指標(InBodyの測定結果)となる数値から食事改善の効果を実感してもらい、提供する食事の説得力を高めるため
✓InBody270導入の決め手
● クラウド型データ管理サービス「LookinBody Web」を活用することで、選手へのフィードバックや測定結果の分析を行うことができる点
✓得られた効果
● InBodyの測定データを基に食事メニューを改善することができている
● 選手がInBodyアプリで測定結果を見ることが練習や食事へのモチベーション向上に繋がっている
● 「LookinBody Web」で管理している選手の測定データを監督・コーチに共有し、選手やチームの状況確認に役立ててもらっている
機種モデル:InBody270
CLUBHOUSEは2024年現在、関大前(大阪府)/東福岡(福岡県)/松本山雅(長野県)の3施設を展開しています。従業員は3施設合わせて50名ほどで、学生アスリート・ユースチームなどの食事サポートを行っています。食事の提供方法・提供時間・食事内容・食事量などは各施設で異なり、選手・チームの要望に対して柔軟かつ迅速に対応できることが強みとなっています。大阪では大学前に店舗を構えて、福岡・長野では寮の食堂で食事の提供を行っています。地産地消を掲げて少しでもコストを抑えつつ、栄養豊富な食事を摂ってもらえるよう常に工夫と努力を続けています。
▲ CLUBHOUSEのコンセプト
社員食堂から始まった歩み
CLUBHOUSEを運営する株式会社フィジカルコントロールセンターの代表取締役、山下 高弘さんは関西大学サッカー部出身で、卒業後1999年に住友銀行(現三井住友銀行)に入行しました。金融業界で経験を積んだ後、東南アジアを渡り歩きながら自身も経営に挑戦したいと考え、2016年にカンボジアで金融関連の会社を起業します。


▲ (左)山下 高弘さん (右)中川 亮佑さん
山下さん:
「カンボジアで立ち上げた会社が順調に成長して社員が80名を超えた頃、現地で採用した社員たちのお昼の弁当が白米と菜っ葉だけであることに気づき、栄養面がとても心配になりました。カンボジアは元々栄養不良の方が多いので、一度病気にかかると重症化しやすく、場合によってはそのまま死に直結することもあります。カンボジアには”カンボジアの人たちを救いたい” という想いを持った日本の医療従事者がたくさん派遣されています。しかし、病院で診てもらう以前に根本的な問題があるのではないかと感じていました。」
同社の取締役副社長である中川 亮佑さんは2010年に理学療法士の資格を取得し、日本の一般病院に勤務していました。2018年にアスレティックトレーナー(JSPO)の資格を取得後、カンボジアのプロサッカーチームにトレーナーとして所属していましたが、現地で山下さんと出会ったことをきっかけに、後述するカンボジアの社員食堂の立ち上げメンバーとして起用されました。その後CLUBHOUSEの立ち上げにも携わり、現在はCLUBHOUSE3施設の維持・管理を任されています。中川さんは元々栄養についての知識はありましたが調理や飲食店のマネジメントなどは全く経験がなく、山下さんと出会ってから改めて勉強し、CLUBHOUSEのために食品衛生責任者などの資格も取得されました。
中川さん:
「共通の知人を介してカンボジアで山下さんと出会いました。山下さんが目指していたアスリート向けの食事支援に共感して、私も立ち上げメンバーに加わることになりました。当初、アフリカや東南アジアといった途上国へは予防医学を念頭に置いた食事サービスを、そして日本(先進国)へはアスリート向けの食事サービスを展開していくことを構想していました。」
▲ カンボジアの社員食堂の様子
山下さんと中川さんは最初に社員食堂 「Take-Chan」 を立ち上げました。調理設備も何もなく、現地雇用のスタッフに調理や掃除など一から教育を始めました。山下さんは有名料理店で働いていた友人に頼み、安価で栄養豊富なメニュー作りに協力してもらいました。安くて美味しい社員食堂の評判は少しずつ広がっていき、カンボジアに駐在している他の日本人の方々向けにも作ってほしいという要望なども寄せられました。そこで一般の方向けの和食弁当屋を社員食堂に併設し、2021年には居酒屋 「Chidori」 も立ち上げました。
CLUBHOUSEの設立
立ち上げ当初から構想にあった ”アスリートの食事サポート” は、山下さんたちのカンボジアでの活動をSNSで見かけたチームから選手の食事サポートを依頼されたことがきっかけで実現します。そのチームはなんと、山下さんの母校でもある関西大学サッカー部です。コロナ禍の影響で話を進めることが難しい時期もありましたが、2022年4月に関西大学の前にCLUBHOUSE 関大前(以下、関大前)をオープンしました。関大前ではオープン当初からInBody270を導入し、学生が定期的に測定できる環境を整えています。
▲ 関大前店に設置されているInBody270
山下さん:
「食事の効果を測定することは構想段階から含まれていて、客観的な指標となる数値からも食事改善の効果を実感してもらいたい、私たちが提供する食事の説得力を高めたいと考えていました。効果を判断するには、体重・筋肉量・体脂肪率などの変化を見る必要があると考え、InBodyを含む様々な体組成計を検討していましたが、最終的にInBodyを導入することに決めました。CLUBHOUSE全店でInBodyを導入しており、現在提案中のチームなどにもInBodyがあることを前提に話を進めています。」
CLUBHOUSEでInBodyを導入するにあたり、クラウド型データ管理サービスであるLookinBody Web(以下、LBWeb)が一つの決め手となり、現在CLUBHOUSE全店でLBWebが導入されています。山下さんはLBWebを活用することでInBodyのデータをより効率的に扱うことができ、選手へのフィードバックでも利便性が向上するだろうと考えました。
▲ 測定後はInBodyアプリで結果を確認
山下さん:
「LBWebを利用することで、選手はいつでもInBody専用アプリ(以下、アプリ)から測定データを確認できます。人数無制限でアプリを活用できる点もありがたいです。また、データの管理方法として、測定データをまとめてCSVでダウンロードできる点もまさに私たちが欲しかった機能でした。当初からデータの分析・フィードバックには積極的に取り組みたいと考えていて、数値の分析が容易に行える点も良かったです。またCSVデータは各チームの監督・コーチにも共有して、選手やチームの状況確認にも役立ててもらっています。」
中川さん:
「CLUBHOUSEは食事をする場所なので、正確に測定値を出すためにもInBodyは食前に測定してもらうことを徹底しています。福岡のように寮で食事を提供する形であれば、朝食前、部活が終わって帰ってきてからの夕食前と、測定の時間帯も自然と揃ってきますので特に指示していません。関大前ではオープンから2年半で7,500件ほどの測定件数があります。」
▲ 多くの学生で賑わう店内の様子
関大前では現在、同大学の男女サッカー部とラグビー部で合計約160名の食事サポートを行っています。朝9時からオープンして主にサッカー部向けの食事を提供します。朝の営業は全体練習が終わった後に自主練習をしてから来る学生もいるため、広く対応できるように営業時間を長めにしています。14時に一旦閉めた後、ラグビー部向けの夕食を提供するために夜営業も行います。練習終わりの学生を待つので、夜10時まで店を開けています。サッカー部は契約している人数分の食事を用意し、ラグビー部は事前に申し込みのあった学生分の夕食を用意します。コストとSDGsの観点から、食べ切れる量を準備することを心掛けています。
▲ 取材当日のサッカー部向けメニュー
InBodyで食事の効果を確認する
▲ 店内に設置されたタブレットで情報収集
関大前では基本的に食事とセットでInBodyを測定してもらうようお願いしていますが、人によって月1回測定する、毎回測定するなど自由に測定してもらっています。他にも、部内のカテゴリ(学年・ポジション)毎に月1回全員で測定する日なども設けられています。食事の効果測定としてInBody測定だけでなく、睡眠時間・食べた白米の量・主観的疲労度の三つを収集しています(白米はおかわり自由)。ある程度データが蓄積されたことで、2024年からはこれらの数値を分析していくことにも取り組み始めています。CLUBHOUSEの特徴である各チームに合わせた柔軟な対応によって、データを分析した結果も迅速に食事内容に反映されます。
▲ 各部のメニュー表。豊富なメニューを楽しめる
中川さん:
「関大ラグビー部からは、普段お渡ししているInBodyの数値を参考にしてタンパク質と脂質をより多く摂取できるように副菜を1品減らしてその分主菜を増やしてほしいという要望がありました。その時は選手の増量期に合わせた要望だったのですが、現在もラグビー部に提供している食事は副菜を1品減らして主菜にタンパク質と脂質を増やしたメニューになっています。
福岡では猛暑や練習量の増加などが原因で、8月に白米の摂取量が大きく減っていたことが分かりました。そこで9月はメニューを大きく変更して丼物のメニューや白米が進むおかずを増やしました。また味付けを少し濃くする、麺類などでも炭水化物を摂取できるようにするなどの工夫もしました。」
▲ InBodyアプリ画面
山下さん:
「選手は体脂肪率や、部位別筋肉量の左右差をInBodyアプリ上で表示される五角形のチャート図で確認します。アプリ上で各測定値の推移がすぐに確認できて、モチベーションに繋げやすい点が素晴らしいです。練習へのモチベーションだけでなく、食事へのモチベーションにも繋がっていると思います。今の良い状態を維持できるように、もっと体を成長させるために、練習も食事も頑張らないといけないという気持ちにしてくれていると思います。学生アスリートはどちらも必要なことだと分かっていても、周囲の大人から指摘されることを煙たく思ってしまうことが多いです。アプリで数値を見て、自発的に前向きな気持ちになってくれるのは、InBodyを導入した後に気付いた予想外のメリットでした。」
中川さん:
「食事をしっかり摂れている子は、当然ながら体重の増量が一番分かりやすく現れてきます。加えて練習もしっかりこなせていると体脂肪率が維持されながら体重が増加していることが確認できます。一方で、怪我をした子は練習ができなくなって運動量が落ちることで、体脂肪率が増加しながら体重も増加していることがすぐに確認できます。特に筋トレが嫌いな子だと怪我をしていない部位のトレーニングも怠って、怪我中の運動量が急減することで体脂肪率がすぐにリンクして増えてくるので、体はびっくりするくらい正直だなと感じます。」
関大前オープンと同時に入部してきた学生が現在3年生になっています。1年生から3年生になるまでのデータを見ていると、食事がすべてではないですが体が見事に変わっていることが確認できます。
▲ 初回測定結果
▲ 15ヶ月後の測定結果
山下さん:
「一昨年、サッカー天皇杯でJ1のチームと対戦したとき、後半に関大の選手が足を攣り、当たり負けしている姿を見ていました。しかし、去年も同様に天皇杯でJ1のチームと対戦したときには、逆にJ1の選手が足を攣り、当たり負けすることが少なくなっているところを見て、選手たちの体が強くなっているんだなと感じました。結局試合には負けてしまいましたが、監督やコーチからも ”食事サポートが入ったことで試合の後半になってもバテなくなってきた、体の当たりが強くなった” といった感想をいただき、選手の成長に貢献できているような気がして嬉しかったのを覚えています。」
CLUBHOUSEを利用する学生の声
▲ お話を伺ったNさん(4年生、左)とOさん(3年生、右)
Nさん:
「練習や試合で体がすごく強くなったと感じています。InBodyは週1回測定していて、CLUBHOUSEの利用当初は体脂肪率が15-16%くらいだったのが現在は11%くらいまで低くなったことで、体が軽く走れるようになったと思います。食事が変わって体が変わっていったことで全体的なパフォーマンスがアップしたと感じています。」
Oさん:
「食事を変えて体が動きやすくなったことで、プレー中にもう一歩踏み出せるようになったと感じています。InBodyを初めて測定したとき、自分が思っている以上に筋肉量は少なく体脂肪率が高いことが分かり、自分の体の課題がよく分かりました。定期的にInBodyで測定しながら、2年間で筋肉量を3-4kg増やすことができました。一人暮らしで栄養面に気を付けようと思ってもなかなか難しいので、こうやってバランスの良い食事を提供してもらえることが本当に助かっています。」
食事だけではなく、人間的な成長もサポートしていく
中川さん:
「食への意識が高まってくれていると感じた出来事として、福岡ではサッカー部の寮長が食べたいメニューの要望を部内で集約して持ってきてくれました。福岡でCLUBHOUSEの運営を始めてすぐに、何か食べたいものがあればリクエストしてほしいとは伝えていました。寮での食事といえば要望を出さなくても勝手にメニューが組まれており、出てきた食事を食べるだけという受動的な食事になることが多いと思います。でも、彼らが自分たちから能動的に食事について考えて、みんなで意見を出し合ってくれたのは嬉しかったです。
彼らが出してくるメニューは、栄養面から見ると少しアンバランスなものもありますが、どんなに栄養バランスの整った食事でもまずは食べてもらわないと意味がありません。そのため、多少栄養バランスを崩してでも、喜んで完食してもらえる食事を用意することも大事だなと最近感じています。彼らの声に素早く応えてあげたいので早いときは月末、遅くとも翌月にはメニューに反映できるよう、こちらも努力しています。」
▲ サッカー部寮長が出してくれたリクエストメモ
山下さん:
「福岡のサッカー部のコーチと話したときに、これまで寮の食堂の人とコミュニケーションを取るという発想自体がなかったと聞きました。出された食事を淡々と食べて、無口で食事を残していくような状態だったそうです。彼らもまだ高校生なので、サラダをよく残したり、子どもが好きそうなメニューしか食べなかったりします。それがCLUBHOUSEを導入してからは彼ら自身が、”カレーやスープに野菜を入れてもらったら食べられます” という提案を自分たちからしてきたことを後から聞いたコーチはとても驚いたそうです。メニューの要望を出して、それが実際にメニューに反映されたことで彼らも少しずつ信頼して心を開き始めてくれているんだなと感じます。学校関係者の方からも、寮も一つの教育の場なのでこれからも指導よろしくお願いします、と仰っていただけたのも嬉しかったですね。」
各チームのコーチからは共通して、食堂を通じた人間形成をしてほしいと言われます。これまでの食堂は無機質でただ食事をするだけの場でしたが、CLUBHOUSEを導入することで、挨拶をする・配膳を手伝う・食べた食器を片付けるなどを通じて、人として成長できる機会を生み出す場としても機能するようになっています。
▲ 東福岡での様子。運び込まれたお米を学生たちが運搬
中川さん:
「福岡では、ラグビー部の寮長が中心となって声をかけ、食後の皿洗いを毎日当番制で手伝ってくれています。地産地消の考えから、大阪と福岡ではお米を自社で作っていますが、大阪では関大生が田植えを手伝いに来てくれました。福岡は毎月2tのお米を寮に運び込んでいるのですが、運搬のトラックが寮に着くと自然と何十人もの学生たちが列をなして、バケツリレーの要領でお米を運んでくれます。自分が学生の頃、ここまで周囲の人たちを手伝っていたかと思うと、今の学生たちの積極性に感心させられます。」
終わりに
食事量は白米がおかわり自由なので個人で調整できますが、1食に提供できる栄養量が予め決められていることもあり、個人の特性に合わせて白米以外の食事内容を変えることが難しく、体格の大きいラグビー部には栄養量が足りないことがあります。食事への意識が高い子は卵や納豆などを持参して、提供する食事と一緒に食べていることもあります。現在、中川さんは体格の大きい子におかずをもう1品足してあげることはできないかと調整しているところです。
中川さん:
「InBodyをCLUBHOUSEで使うメリットは、やはり食事に根拠を持たせることができることです。体づくりは食事と運動の両方が十分に揃って初めて成立します。InBodyの数値を分析しながら食事と運動の関係に根拠を持たせて、日々メニューの改善に取り組んでいくことでより一層体づくりに貢献できたら良いなと思っています。そのためには、今までは見えていなかったトレーニングのデータも一緒に収集してみたいとも考えています。」
山下さん:
「現在のプロスポーツチームでは血液検査やスプリント回数など、どんどん新しい検査や指標が取り入れられ、そのデータを分析することでパフォーマンスの向上に役立てられています。InBodyは、普段の生活や食事を改善した結果の答え合わせの一つとして活用できると思っています。私たちがプロスポーツチームほどの高度な検査や指標を取り入れることはすぐには難しいですが、持てる情報を集めてそれを基に食事を改善して、その結果をInBodyで確認し修正していく、といったPDCAサイクルを行う点は同じです。InBodyを加えることでより高みを目指していけますし、日々蓄積されていくデータを基に私たちの取り組みもレベルアップさせていきたいと思っています。
また、私たちにとって学生たちはお客様ではありますが、人生の先輩として彼らに何を伝えることができるか、と常々考えています。食事を通じた身体面の成長はもちろんですが、精神面での成長にも繋がってほしいと願っています。」