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今さら聞けない、体組成計のあれこれ: 測定値の理解を深めるためのQ&A

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「今さら聞けない、体組成計のあれこれ: 正しい測定方法


測定時の注意事項を守って測定しても、得られた測定結果に疑問を抱くこともあるかと思います。今回は、測定結果に関するよくある質問をまとめてご説明します。


Q. InBodyと他社の体組成計で測った体脂肪率が違います

体脂肪率とは、体脂肪量を体重で割った値で、体重に対して体脂肪量が占める割合を表しています。メーカーによって測定される体脂肪率が異なる理由をお話しする前に、まず体組成計における体脂肪量の求め方について簡単にご説明します。全ての体組成計は手や足の電極から体に微弱な電流を流し、最初に体水分量を求めます。それを基に筋肉量や除脂肪量(体脂肪以外の量)を求め、最後に体重から除脂肪量を差し引いて体脂肪量を求めるため、体脂肪量の変化は「除脂肪量(体水分量)の変化」もしくは「体重の変化」があった時に見られます。これを踏まえて、InBodyと他の体組成計で測定される体脂肪率が異なる理由をご説明します。

➀測定タイプの違い
InBodyと比較している体組成計は両脚で乗る測定タイプでしょうか? それとも両脚で乗って、手で電極を握る測定タイプでしょうか? 前者の場合、電流は下半身にしか流れず、体幹や腕の筋肉量、全身の体脂肪量などは下半身の結果に基づいて推定されます。例えば、下半身の筋肉量が多い方が脚だけ測定するタイプを使用すると、体幹や腕の筋肉量も脚と同じくらい多いと見積もられ、全身の筋肉量は実際よりも過大評価されます。一方で、下半身と比べて上半身の筋肉量が多い方が同じ測定タイプの体組成計を使用すると、全身の筋肉量は実際よりも過小評価されます。そして、体脂肪量は体重から除脂肪量を差し引いて求めるため、筋肉量(除脂肪量)が正しく測定できないと体脂肪量も正確に求めることができません。

筋肉の発達度合いは部位毎に異なり、更に個人差もあるため、体の一部だけを測定した情報から全身の体成分を推定するのではなく、各部位を個別に測定する必要があります。その点、InBodyは業務用・家庭用共に、全身を四肢と体幹に区分して測定しています(家庭用のInBody Dialの測定結果は、全身情報のみが提供されます)。
※詳しくはInBodyトピック「BIA技術の限界と克服 Part1: 技術の黎明」もご覧ください。

➁測定値算出方法の違い(統計補正の有無)
測定タイプがInBodyと同じであっても、他の体組成計とInBodyは大きく違う特徴があります。それは統計データで測定値を補正している点です。これを統計補正と呼びます。


統計補正とは、入力した年齢・性別・人種などを考慮した固定値を体成分の算出式に組み込むことです。InBody以外の体組成計は殆ど、この統計補正を使用しています。例として、若者は高齢者より筋肉量が多い、男性は女性より筋肉量が多いなどの統計データが体成分の算出式に組み込まれているため、同一人物を測定しているにも関わらず、機器に入力する年齢・性別情報を変えたり、測定モード(アスリートモードなど)を変えたりするだけで結果が変わってしまいます。このように、統計補正を使うと算出された体成分は一般的な傾向と似たような値として算出され、測定者の本来の体成分が100%反映されなくなってしまいます。統計補正を使用している体組成計かどうか判別する方法は、年齢・性別情報を変えたり、測定モードを変えて連続で測定し、体成分が変化するか確認してください。同一人物で何も変化していないのに筋肉量が増減することに違和感を覚えると思います。

統計補正は一般的な体型の方の測定精度を高めることを目的に取り入れられた技術であるため、一般健常者のデータを用いることが多いです。しかし、同じ年齢・性別の方でも体成分が全く同じ人はおらず、統計データによる補正はかえって誤差として測定結果に影響を及ぼしてしまいます。更に、統計補正は入力した情報によって測定値がある程度固定されてしまうので、筋肉量や体脂肪量の変化を敏感に追うことが難しくなります。

一方、InBodyは統計補正を使用しておらず、電流を流した際に測定される電気抵抗値(インピーダンス)・身長・体重の3つの情報のみで測定値を算出しているので、測定者のありのままの体成分を知ることができ、僅かな体成分の変化も敏感に追うことができます。

➂着衣量の設定
使用された体組成計は着衣量を設定できるものでしょうか? 業務用InBodyは事前に着衣量を設定することができ、自動的に測定体重から設定した重さが差し引かれます。しかし、この設定ができない体組成計を使用したり、着衣量以上の上着や装飾品を身に着けていたりすると、その分体重が重くなり、その差は体脂肪量として反映されます。正確に体脂肪量や体脂肪率を測定したい場合は、着衣量を考慮してできるだけ身軽な状態で体重を測定することをお勧めします。


Q. InBodyはメジャーを使わずに、どうやって腹部や腕の周囲長を測定していますか?


InBodyは電気抵抗値(インピーダンス)と身長から体水分量を算出しますが、これを詳しく説明すると、入力した身長を基に四肢・体幹の長さを求め、身体の各部位をそれぞれ凹凸のない均等な円柱と見立て、その体積(体水分量)を計算します。この過程で得られた円柱の円周を基に周囲長を算出しています。しかし、各部位のくびれの位置は個人差があり、インピーダンスだけではその位置を特定できないため、メジャーによる実測値とInBodyの推定値が一致しない方もいます。但し、メジャーによる実測は測る人によってメジャーを当てる位置や力の入れ具合が異なるので、値にバラつきが出る可能性があります(ヒューマンエラー)。しかし、InBodyの周囲長はインピーダンスという人為的に変えられない値から算出しているため、数値の変化をモニタリングする形で活用できます。


Q. 筋力がアップしたのに、筋肉量が増えません

確かに、筋力と筋肉量はある程度の相関がありますが、変化が同時に現れるわけではありません。筋力は比較的短期間の筋トレでも効果が期待できて変化もすぐ現れますが、筋肉量は十分な栄養摂取によって筋肉の重さを増やす必要があるため、どうしても変化が現れるまで時間がかかります。運動を始めて間もない頃は筋力と筋肉量の変化の違いに違和感を覚えるかもしれませんが、運動と食事管理を継続することでどちらも増加させることができます。


Q. 一日のどの時間帯に測定した方がいいですか?

体内の水分は常に循環しているため、朝・昼・夜それぞれの測定値が変化するのは当たり前です。また、午後になると体水分は重力の影響で下半身に移動する傾向があるため、測定は比較的水分分布が一様である時間帯の朝~午前中が望ましいです。

最も重要なことは毎回の測定条件をできる限り揃えることです。例えば、初回のInBody測定が夕方だった場合、次回以降も同じ時間帯に測定することで筋肉量や体脂肪量の増減をより正しく確認することができます。もし、次回の測定を午前中や昼食後などに変えてしまった場合、筋肉量や体脂肪量の変化が水分分布の変動や直前の食事の影響によるものか、運動の成果によるものかの判断が難しくなってしまいます。

何気なく測定することが多い体組成計ですが、普段の運動や食事管理の成果を正しく確認できるよう、今回のトピックを是非参考にしてみてください。

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「今さら聞けない、体組成計のあれこれ: 正しい測定方法

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今さら聞けない、体組成計のあれこれ: 正しい測定方法


多くの方が新生活を始める春は、何か新しいことを始めるのに適した時期でもあります。心機一転してジムに入会したり、ウォーキングやランニングを始めたりする方も多いでしょう。運動を習慣づけるとき、体成分を測定して自分の努力を確認するのはモチベーション維持に役立ちます。最近は、体組成計が一家に1台あることも珍しくなく、自宅で気軽に筋肉量や体脂肪量を測定することができるようになりました。

業務用InBodyも家庭用体組成計も、測定方法は同じ生体電気インピーダンス分析(BIA)法を採用しており、体内に微弱な電流を流すことで体成分を求めています。そのため、測定方法が正しくないと、体成分の変化を正確に追うことは難しくなります。今回はInBodyを含む全ての体組成計で共通する、測定に関する注意事項をお話しします。ご自身の体の変化を正しく確認するために、是非参考にしてください。


測定してはいけない方

心臓ペースメーカーのような植え込み型医療機器、もしくは生体情報モニタのような生命維持に必要な医療機器を装着されている方は測定しないでください。BIA法を用いる体組成計は測定中に微弱な電流を体内に流しているため、体内の機器が何らかの影響を受ける恐れがあります。また、心電図など生体情報のモニタリング中に測定すると、電流が生体信号と一緒に拾われるのでモニタの波形が一時的に乱れてしまいます。BIA法で使用する電流は人体に対する安全性が証明されており、長年活用されているにも関わらず全世界で1件の医療事故も報告されていない極めて安全な測定方法です。そのため、間違って上記のような方を測定してしまったとしても慌てることはなく、様子を見ていただき次回からは測定しないようにしてください。


測定前の注意事項

InBodyをはじめとする全ての体組成計は最初に体水分量を測定し、それを基に筋肉量や体脂肪量を算出しています。そのため、常に体内で循環している体水分量を正確に測定することが、他の測定値の精度に直結します。正確に測定するためには、測定前の注意事項を守っていただくことがとても重要で、InBodyの公式YouTubeチャンネル内の動画でもご紹介しています。

ここでは、動画内で挙げている注意事項をいくつかピックアップしてご紹介します。
➤立位で測定する場合は5分くらい起立してください
長時間横になっていたり、座ったりした状態から測定を行う直前に立ち上がると、体内の水分が重力の影響で下半身に移動します。姿勢を変えた直後の水分移動は平常時よりも激しく、測定値に影響を及ぼしてしまうため、水分の移動が落ち着くまで5~10分ほどの安静時間を取ってから測定します。

➤運動後・シャワーや風呂後の測定を控えてください
運動や風呂などで体温が上がると血流が良くなり、安静状態の体水分に比べて体水分の移動が激しくなり、測定値に影響を及ぼします。正確な測定結果を得るためには、血流が落ち着いた状態(運動前・シャワーや風呂前)での測定を心がけましょう。

➤測定前は食事を控えて、トイレを済ませてください
電流が流れない位置に存在する水分は、水分として測定されないため筋肉量には影響しませんが、重さは体重に影響を及ぼすので、体脂肪量として測定されます。消化器官に残っている飲食物、体内に残っている便や尿、妊婦さんのお腹の中の胎児や羊水などがこれに該当します。そのため、測定前はできる限り胃腸や膀胱内を空っぽの状態にすることで体脂肪量をより正確に把握できます。また、食事直後は消化器官の動きが活発になることで測定値が影響を受ける可能性があるため、食後に測定する際は消化器官の動きが安定するまで最低2~3時間空けて測定するようにしましょう。
※妊婦さんの測定データについてはトピック「妊娠中の体成分モニタリング」をご参照ください。

➤皮膚が乾燥している場合はウェットティッシュで拭いてください
電極と接触する掌や足裏などが乾燥していると、体内に電流がうまく流れず、測定が正しく行われない可能性があります。その場合、ウェットティッシュで電極が触れる部分の肌を十分に湿らせてください。使用するウェットティッシュはアルコール成分を含まないものを選んでください。アルコール成分は揮発性が高いので、かえって皮膚を乾燥させてしまいます。


測定中の注意事項


今まで測定前の注意事項についてご説明しましたが、測定中にもいくつか注意すべき点があります。ここからは測定時及び測定中に注意する内容をご紹介します。

➤正確な身長を入力してください
身長は体水分の算出に必要不可欠な情報です。BIA法では体内に電流を流した際に発生する電気抵抗値(インピーダンス)と入力した身長から体水分を算出するため、正しい身長を入力しないと全ての測定値が不正確になります。

➤正しい測定姿勢を取ってください
測定中は下図のような姿勢を維持してください(機種によって測定姿勢は異なります)。特に、腕と体幹、太もも同士が接しないように気を付けてください。電流は短い距離を流れようとする性質があるため、接触している部分があると電流の経路が変わってしまい、測定値が影響を受ける可能性があります。筋肉がとても発達している方でどうしても太もも同士が触れ合う場合は、厚手のタオルのような絶縁体を挟むことで接触による影響を防止することができます。

➤測定中に動いたり、喋ったり、笑わないでください
測定中はほんの僅かな体の動きが電流の流れを乱し、測定値に影響を及ぼす可能性があります。しかし、喋らない・笑わないは意識できますが、くしゃみや咳を我慢することは難しいため、もし測定中に起こってしまった場合は再測定することをお勧めします。

普段の測定で注意していただいている項目もあったかと思いますが、今回のトピックを機にこれらの注意事項を守れていたか是非見直してみてください。実際に全ての注意事項を守ることは難しいかもしれませんが、できるだけ多くの項目を守ることで測定の精度を高めることができます。

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体成分と食事回数の関係 Part2: 実践編

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「体成分と食事回数の関係 Part1:生理学

目標とした体成分に到達するために有用な方法は食事回数を減らすだけではありません。今回のトピックでは、体成分改善に効果的な食事コントロールの例として、朝食や断食の効果をご紹介します。


朝食の重要性


朝はゆっくりとできる時間もなく、朝食を摂らないという人も少なくはないでしょう。しかし、健康的な朝食を摂ることが体重の減量と間食を減らすことに役立つという研究結果¹⁾もあり、朝食を摂ることは減量または体重維持に有効な習慣です。また、高タンパクの朝食を摂ることで間食や甘いものに対する食欲が減少したという研究結果もあります²⁾。この研究では朝食を摂った人が摂っていない人よりドーパミン濃度が高く示されています。

好きなことをしていて幸せな時や、重大なことを無事に完了して達成感を味わっているとき、空腹を忘れているような経験をしたことはありませんか? この時に脳で分泌されるホルモンがドーパミンです。空腹状態で甘い物を食べた時に分泌されるドーパミンは食物依存症に繋がるのに対し、満腹中枢が刺激されている中で分泌されるドーパミンは食欲を抑える効果があります。そのため、満腹感を感じつつドーパミン濃度が更に高くなる高タンパクな朝食を摂ることは、余計なカロリー摂取を抑え体脂肪量の減少にも繋がります。
※食物依存症の詳細はInBodyトピックの「食物依存症と過食 part1: 体への影響」もご覧ください。

また、Gonzalezらの研究では朝食が代謝機能を改善させるという結果も示されています³⁾。これらの研究結果から分かることは、朝からしっかりエネルギーを補充しておくことが体脂肪量減少に役立つという点です。


断食の効果


摂取エネルギーの制限方法として食事回数を減らすことや低カロリー食事をすることが挙げられますが、断食も良く知られている方法です。減量目的でよく耳にする断食方法は断続的断食(Intermittent Fasting)と1日おき断食(Alternate Day Fasting)の2つがあります。

断続的断食には様々な方法がありますが、一番やりやすいのは16:8断食と言われるものです。これは1日のうち、8時間だけ食事をする時間を設けて残り16時間は食事をしない方法です。理論上、8時間の間で2食(朝食と昼食/昼食と夕食)を摂ることができるので、毎日行うこともできます。1日おき断食も断続的断食と似たような方法ですが、断食の時間がより長いです。1日おき断食は36時間断食して次の12時間で食事をする方法です。

どの方法も減量には効果的という研究は多々ありますが、断食の難しいところは全く食事をしない時間帯があるため、長期間持続するのが難しいという点です。また、断食の減量効果は摂取カロリー制限とあまり差がなかったとの研究結果もあるため⁴⁾、個人の生活パターンや目標とする期間などを考慮して、自分に合う方法を選択する必要があります。


減量のポイントは「カロリー赤字」


体重や体脂肪量の減少を目的とする場合、断食や食事回数の調節は有効な方法ですが、これらの方法がどういう状態になるための手段なのかを忘れてはなりません。減量において最も重要なのは「カロリー赤字」の状態になることで、断食も食事回数の調節もカロリー制限もこの状態になるための様々な手段にすぎません。ある研究では、食事回数とは関係なく、同じカロリー赤字の量であれば同じ程度の体重と体脂肪量の減少を示しています⁵⁾。

ただ、この結果は食事回数の変化が無意味というわけではありません。同じ低カロリーの食事を行った人でも、1日2食の人の方が1日6食の人よりも、体重が減少しています⁶⁾。 重要なのは、食事回数を減らしたとしてもカロリー赤字になっていなければ体重は減らないということです⁷⁾。つまり、食事回数の減少と摂取カロリー制限を同時に行うことでカロリー赤字になりやすく、減量しやすいと考えるべきです。
※カロリー赤字の詳細はInBodyトピックの「体脂肪量減量に関する5つの迷信」もご覧ください。


体重を減らす時に注意すべき点


食事回数を変えて体成分の変化を試みた時、本来意図していなかった結果となる場合もあります。通常であれば、タンパク質はエネルギー源としてあまり使われません。しかし、食事をしない時間が長くなって蓄えていたブドウ糖を使いきった後は多量のタンパク質がエネルギーを作るために分解され始めます。これは断続的断食または1日おき断食が、筋肉の分解という思いもしなかった結果に繋がることもあり得るということです。

一方、筋トレと断食を一緒に行った人は、筋肉量が減少しなかったという研究もあり⁸⁾、断食や食事回数の減少が筋肉量に及ぼす影響に関しては、不明な点もまだ多く残っています。断食中であっても、筋トレと並行しながら、食事のタイミングで十分な量のタンパク質を摂取できれば、筋肉量の減少を防止できるという研究結果から、断食で食事を摂る際は栄養バランスがとても重要であることが分かります。

繰り返しますが、食事回数・食事量・食事内容・摂取のタイミングなど、食事に関する何かしらの変化は、筋肉量の減少を引き起こす可能性があるということを常に考える必要があります。これを防ぐためには、タンパク質の摂取量を十分に確保することや、食事の変化に伴い筋トレメニューを組むなど、運動習慣も含めて計画を立てる必要があります。筋トレによって筋肉量が維持または増加すると基礎代謝量も増加するため、カロリー赤字になりやすいのも適切な筋トレのメリットです。


食事回数の調節に取り組む前に


食事は体に生理学的影響を及ぼし、食習慣は体成分に大きく影響します。食事回数を調整することは、代謝量・消化管ホルモン・満腹感に影響して、目標とする体成分に近づくことにも繋がります。ただ、食事回数を減らすことについて明確な結論は出ておらず、食事回数を減らすことが体重・体脂肪量の減少に有用であるという研究が多く報告されているだけです。食事回数の調節を検討する時は、次の内容を意識して自身の体で合った方法なのかも考えながら、試行錯誤しましょう。

少ない食事回数と体重・体脂肪量の減少は関連している。
体重・体脂肪量を減らすためにはカロリー赤字になることが重要である。
朝食を摂ることは体重の維持・減少に有効であり、高タンパクの朝食は間食や甘いものへの食欲を減らせる。
定期的に運動をすることは筋肉量を維持・増加させ、代謝量にも影響を及ぼす。

食事回数を減らすとき、1食を抜くことで1日2食にすることが一般的であるとはいえ、誰にでも効果があるものではありません。食事回数をどのように調整するかは自分の生活パターンや目標に合わせて決めることが大事です。短期間で魔法のように体成分を変える方法はありません。地道な努力だけが健康と体成分の改善を同時に達成できる唯一の方法です。食事回数を含む食生活の変化は、正しい方法を頑張って継続させた分だけ、成果として現れるでしょう。このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「体成分と食事回数の関係 Part1:生理学

 

参考文献
1. Schlundt DG et al., The role of breakfast in the treatment of obesity: a randomized clinical trial. Am J Clin Nutr. 1992 Mar;55(3):645-51.
2. Hoertel HA, Will MJ, Leidy HJ. A randomized crossover, pilot study examining the effects of a normal protein vs. high protein breakfast on food cravings and reward signals in overweight/obese “breakfast skipping”, late-adolescent girls. Nutr J. 2014 Aug 6;13:80.
3. Gonzalez JT et al., Molecular adaptations of adipose tissue to 6 weeks of morning fasting vs. daily breakfast consumption in lean and obese adults. J Physiol. 2018 Feb 15;596(4):609-622.
4. Catenacci VA et al., A randomized pilot study comparing zero-calorie alternate-day fasting to daily caloric restriction in adults with obesity. Obesity (Silver Spring). 2016 Sep;24(9):1874-83.
5. Cameron JD, Cyr MJ, Doucet E. Increased meal frequency does not promote greater weight loss in subjects who were prescribed an 8-week equi-energetic energy-restricted diet. Br J Nutr. 2010 Apr;103(8):1098-101.
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体成分と食事回数の関係 Part1: 生理学

体重と体脂肪量を減らす計画を立てる時、多くの人は食生活を変えることから試みるでしょう。食生活の改善で「何を食べるか」はとても重要で、普段の食事内容が確認できていないと、どのように改善すればいいのか分かりません。しかし、「1日の食事回数」については深く考えない人が多いのではないでしょうか。アスリートにおいてはパフォーマンスを最も高める食事タイミング及び量に関する研究発表もあります¹⁾。しかし、減量を目標とする一般健常人の場合、食事計画を立てるときに何を考慮すればいいのか分からない方が多いでしょう。

約50年も前に、少量の食事を1日数回に分けて摂る方が、体重・代謝量・代謝機能を良くするという研究発表がありました²⁾。今でも食事を小分けにして1日6食にする方が太りにくいという話はよく耳にする話です。しかし、最近ではこの研究内容が再検討されています³⁾。

少量を数回に分けて1日中食べる方法と、定期的に普通の量を食べる方法、どちらが減量と代謝に効果的でしょうか? どちらが効果的かを考える前に、体がどのように食べたものを消化するのかと、食事回数と量の関係について確認してみましょう。


食事の生理学

食事をすると、次のような生理学的現象が起こります。

➤食事による熱生産(Thermic Effect of Food; TEF)

食事をすると食べたものを消化・吸収するためのエネルギーと血流が必要となり、代謝量が増加します。代謝量が増加するということはエネルギーを消耗して熱を作り出すことを意味し、この現象を「食事による熱生産(TEF)」と言います。一般的にタンパク質のTEFは摂取エネルギーの15~30%、糖質は6~8%、脂質は2~3%程度とされています⁴⁾。ホルモン濃度や体重等によって個人差はあるものの、代謝量は食事後に約25%増加すると言われています⁵⁾。そして、他の要因と比べて代謝量に影響が大きいのは食事量です。多くの食べ物を消化するためにはエネルギーも多く必要であるため、食事量が少なかった時より多かった時の方が代謝量の増加も大きくなります。

➤消化管ホルモンの分泌

食べたものが胃や腸管に入って内壁を刺激すると、脳に信号が伝わりホルモン分泌が促進されます。信号を送るのが胃・腸などの消化器であることから、この作用で分泌されるホルモンを消化管ホルモンと称します。代表的な消化管ホルモンはグレリン・PYY・GLP-1・GIP等があり、それぞれ異なる作用と効果があります。消化管ホルモンは食べたものが胃に長く留まるようにしたり、代謝に重要なホルモンであるインスリンの分泌を促進したり、栄養摂取ができていると脳に信号を送ることで食事の速度を落としたり、満腹感を感じさせることで食事を終えるようにしたりします。消化管ホルモンのうち、GLP-1というホルモンは食事量に比例して分泌されますが、ブドウ糖の体内生産を抑えることや食べたものが胃から排出される時間を遅延させることで満腹感を感じやすくします。

同じものを食べるのであれば食事量がホルモンの分泌量に影響を及ぼすので、食事量が少ないと勿論満腹感も得られにくくなります。満腹感がないことから、食後あまり時間が経っていないうちにまた何か口にしてしまえば、「結局は食事を小分けにしない方がトータルの摂取量は少なかった」なんてことにもなりかねません。

食事から得た栄養素を消化・吸収している間、体はエネルギーや栄養分を貯める「貯蔵モード」に入ります。食後、代謝量が一時的に増加してもしばらく栄養素の吸収は続き、体に予備として貯蔵されます。そして、一般的に食後約4時間で体は「空腹状態」に戻り、次の食事までの間は貯蔵していた栄養素をエネルギー源として使用します。食事を小分けにして1日中食べると代謝量は多少増加しますが、1日の殆どを「貯蔵モード」で過ごすことになります。また、食後の状態が続くことで満腹を感じさせる消化管ホルモンが活発に分泌されなくなり、ずっと空腹を感じてしまうようになる可能性もあります。これらの内容を踏まえ、食事回数と量についてもう少し確認してみましょう。


食事回数と体重・体成分の変化


最初に紹介した研究の結論にある「少量に分けて数回食事を摂ることは、太りにくくすることと関係がある」という部分は、減量を考えている人の間で常識のように思われてきました。最初に決めた摂取カロリーを1日5-6食に分けて摂ると継続的に食欲を抑えることができるので、カロリー制限も続けられて減量しやすくなると考えられていたのかもしれません。しかし、これとは逆の結果を示す研究発表も実は多く報告されています。

ある研究では、食事回数が多い群(8食/日)と少ない群(3食/日)を比較した結果、回数が多い群が空腹を感じやすく、食欲が増加し、満腹感を少なく感じたと報告しています⁶⁾。その理由までは明らかになっていませんが、恐らく食事量と消化管ホルモン分泌量の関係や満腹感に及ぼす影響が原因ではないかと推測できます。

さらに2007年にアメリカで行われた研究では、2ヶ月間食事回数を1日3食と1日1食にした2群を比較した時、1日1食の群で体脂肪量がより減少したと示されました⁷⁾。この研究の食事回数は他の研究とは異なりますが、結果としては食事回数が少ない方が短期間の体成分改善に効果的であることを示唆しています。

食事回数に関した他の疫学研究では、頻繁な食事が過体重と関連していることを示しました。2015年、約2万名を対象としたアメリカの研究では、1日5食以上の場合、過体重または肥満になる可能性が約1.5倍も大きくなることが報告されました⁸⁾。食事回数と体重増加の関係を明確には説明されていませんが、食事回数が多い人たちの殆どが早食いだったとことが共通点で挙げられています。また、約1,000名の男性を10年間フォローアップした別の研究でも、1日3食以上食事をした人の15%以上で、体重が約5kgも増加していることが分かりました⁹⁾。


これらの研究結果から、少ない食事回数は減量または体重増加を抑える直接的な効果があると断言するのは難しいかもしれませんが、食事を小分けにして食事回数を多くすると、体重増加の引き金にもなり得ることを覚えておいてください。むしろ、体重を増やしたい場合は小まめに食事を摂ることが効果的と言えるでしょう。もちろん、体重はその数値だけが重要なわけではありません。重要なのは中身で、筋肉量が多くて体重が重い場合もあれば、隠れ肥満のように体重は普通でも体脂肪量が多い場合もあるので、体重より重要なのは体成分です。

では、なぜ食事回数が少なく一回当たりの食事量が多くなる摂取方法が、食事回数が頻繁で少しずつ分けて食べる方法より効果的なのでしょうか? ここで消化管ホルモンのことを思い出してみてください。満腹感を感じるのは消化管ホルモンの作用によるものなので、1回の食事量が少なくホルモンの分泌量が少ないと、満腹感をあまり感じることができません。食事回数が少なくても食事量が多ければ、PYYという消化管ホルモンの分泌量が多くなるので¹⁰⁾、1日の食事量を小分けにして食べるよりも、食事回数を減らして一回当たりの摂取量を増やす方が、満腹感を感じやすくなると言えます。PYYの分泌量はタンパク質の摂取量に影響されるので¹¹⁾、3食の中でタンパク質を適切に取り入れることを意識してください。また、GLP-1の分泌量は摂取量と関係するので、1回の食事量を極端に減らし過ぎないようにしましょう。GLP-1の分泌量が減ると、インスリン分泌がうまく促進されなかったり、満腹感を得ることが難しくなったりします。

つまり、1日2-3回、適量を食べることが体重と体脂肪を減らす食事戦略と言えるでしょう。続いて次のトピックでは、食事回数を減らすときに気を付けることをご紹介します。☞「体成分と食事回数の関係 Part2: 実践編

 

参考文献
1. Kerksick CM et al., International society of sports nutrition position stand: nutrient timing. J Int Soc Sports Nutr. 2017 Aug 29;14:33.
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妊娠中の体成分モニタリング

お腹の中で子どもを育み、出産に備えて体を整える約10か月の妊娠期間は、体成分が大きく変化する期間でもあります。中には、10kg以上の体重増加を経験した妊婦さんもいらっしゃるでしょう。以前、産後のダイエットについてご紹介しましたが、今回のトピックでは妊娠中の体成分モニタリングについて詳しくお話しします。


妊婦の体重管理の重要性

妊娠中にInBodyを測定しても、安全面で問題ないのか気になる方もいると思いますが、InBodyが体成分を測定するために使用しているBIA法は体に影響を及ぼさない程の微弱な電流を使用しているため、体成分の測定方法の中で最も安全で体に負担のかからない方法として評価されてきました。また、妊娠高血圧症候群・妊娠中毒・妊娠浮腫・妊娠糖尿病など、妊婦を対象にした様々なInBodyを活用した研究が、国内外でも活発に行われています。このように測定の安全性としては問題ありませんが、妊娠期間中は常に体に注意を払う必要があるので、InBody測定は他の検査と同様に、その日の体調や担当医師と相談しながら実施してください。

安定期(妊娠中期)に入り、つわりなどの妊娠初期症状が落ち着いてきた頃、次は体重管理の問題が待っています。厚生労働省は、妊娠中期から後期の妊婦における1週間当たりの体重増加量は「300gから500g」であることが望ましいと、妊娠中の目安となる体重増加量を定めています。従って、体重は週に500g以上増えないよう心掛けましょう。
※妊娠前のBMIが25.0未満であった妊婦に対する目安


妊娠中は、赤ちゃんの成長だけでなく胎盤・羊水・血液・皮下脂肪も増加するので体重が徐々に増加していくのは当たり前ですが、過度な体重増加には様々なリスクがあります。太り過ぎは、妊娠高血圧・妊娠糖尿病・腰痛などの妊娠合併症の原因となります。これらが悪化すると、胎盤の機能低下・流産・早産・胎児の巨大化など、母子ともに危険な状態になってしまいます。また、産道にも体脂肪が付くことで難産の原因となったり、微弱陣痛でお産が長引いたりすることがあります。太り過ぎの妊婦は出産を終えるまでこれだけのリスクを抱えていますが、出産後も体重が戻りにくく妊娠線ができてしまうなどの問題もあります。妊娠発覚から出産直前までの体重増加は7~8kg程度が理想的です。これ以上の体重増加はすべてお母さんの体脂肪です。特に妊娠中に過度な体重増加を指摘された方は、適切な体重管理を心掛ける必要があります。では、一体どのようにして体重管理を行っていけば良いのでしょうか?
※妊娠前のBMIが18~24であった妊婦に対する目安


妊婦の体成分変化 -筋肉量と体脂肪量のバランス-

妊娠期間に大きく変化する体成分は体脂肪量です。体脂肪量は出産日に近づくに連れて増加していきますが、この体脂肪量にはお母さん自身の増加した体脂肪量だけではなく、赤ちゃんの体重・拡大した子宮と乳房・余分な血液・胎盤・羊水が含まれます。なぜなら体内で電流の流れない部分は体脂肪量として測定されるため、電流が上手く通らない羊膜内の重量も体脂肪量として換算されてしまいます。この原理を利用すれば、自身の変化と合わせて赤ちゃん(羊膜内)の成長も予測することができます。先ずは、基準となるデータを妊娠前や妊娠初期に取ることから始めましょう。


体重・筋肉量・体脂肪量の棒グラフの先端を線で結んでみましょう。この形を、標準型(I型)・強靭型(D型)・肥満型/虚弱型(C型)と分けて、体のタイプを一目で確認することができます。上記の例❶では体重と筋肉量が標準で、体脂肪量が少ない標準体重強靭型(D型)と分類できます。


妊娠中期の体成分を妊娠前の体成分と比べてみましょう。上記の例❷では妊娠前の時から体脂肪量が3.2kg増加したことで、棒グラフの先端を結んだ形が真っ直ぐになり、体成分が標準体重健康型(I型)へと推移していることが分かります。部位別体脂肪量を見てみると、増加した体脂肪量の約半分が体幹体脂肪量の増加として現れていることが分かります。羊膜内の重量は体幹体脂肪量として反映されるため、このような結果が見られます。同時期に測定したエコー検査より胎児重量が660gであったことから、羊膜内の重量は胎児重量約0.7kg・胎盤約0.3kg・羊水約0.4kgの合計で、おおよそ1.4kgです¹⁾。つまり、上記の例❷で体幹体脂肪量が1.6kg増えていることは、羊膜内の重量1.4kgとお母さん自身の体幹体脂肪量が0.2kg増えた結果と推測できます。因みに、エコー検査から算出される胎児重量は、胎児頭部の大横径・腹囲・大腿骨頭長などの長さを計測して推定式を用いて算出されます²⁾。筋肉量も妊娠前の❶から1.1kg増えていますが、正常な妊娠では周期を経る毎に体水分量も増えるので³⁾、筋肉量も体水分量に比例して増加しています。このような結果は母子共に経過が順調であることの現れと言えます。


出産後は、体成分が大きく変化するタイミングです。出産直後は赤ちゃん・余分な血液・胎盤・羊水などが体内からなくなり、体重が大きく減ることになります。そして約6週間で子宮の大きさが小さくなり、妊娠前の体重に近づいていきます。上記の例❸は産後10日の時点で測定した体成分ですが、体脂肪量が妊娠前の❶から2.5kg増え、筋肉量は1.4kg減った状態です。筋肉量が大きく減ったことで、体成分が若干の虚弱型(C型)へ推移しつつあることが分かります。体脂肪量も妊娠前の❶よりは大幅に増加していますが、それでも標準値の100%よりは少ない状態なので、妊娠・出産による体脂肪量増加を気にしてダイエットを行う必要は全くありません。出産後は体の回復を第一にして、徐々に筋肉量を増やしていく意識が必要です。この時点で体脂肪量が標準範囲(80%~160%)を大きく外れている妊婦の方は、今後の育児で体調を崩さないために、自身の管理も優先的に行って欲しいです。


上記の例❹は産後半年の時点で測定した体成分ですが、体脂肪量が妊娠前の❶から1.7kg増え、前回測定の❸からは0.8kg減ったことが分かります。筋肉量は妊娠前の❶までは戻ってはいませんが、前回測定の❸からは1.0kgも回復しています。これまでの4回分の体成分を見比べてみると、徐々に妊娠前の体成分に戻りつつあることが分かりますが、授乳中は体脂肪量も必要な体成分なのでこれ以上無理に減らす必要はありません。上記の例❹では、体脂肪量を減らすことよりも、筋肉へのアプローチを継続して筋肉量を妊娠前の❶の状態まで戻すことが大切です。
※出産後でも実施しやすい具体的な運動例は、InBodyトピックの「出産後に体型を戻す方法」を参考にしてください。


妊婦の体成分変化 -体水分のモニタリング-

妊娠時は胎盤で血糖値を上げやすいホルモンなどが分泌されるため、妊娠中期以後はインスリンが効きにくい状態になり、血糖値が上昇しやすくなります。妊娠中に血糖値が高いと、母体では妊娠高血圧症候群や羊水過多症になりやすく、胎児では巨大児や新生児の低血糖などの影響が出てきます。妊娠正常群では妊娠周期を経る毎に体水分量・細胞内水分量・細胞外水分量が増加していきますが、妊娠高血圧症候群では全てが段々減少していく傾向が確認できます。妊娠初期に測定した体水分の増加・減少傾向をモニタリングすることで、妊娠高血圧症候群の可能性を事前に把握できます³⁾。


妊娠中は赤ちゃんに栄養を行き渡らせるために通常よりも血液量が増加していますが、同時にエストロゲンやアルドステロンというホルモンの増加によって、末梢血管透過性が亢進され細胞外に水分が溜まりやすくなっています。つまり、体水分量・細胞内水分量・細胞外水分量が増加していく中で、特に細胞外水分量の増加が目立つ形で細胞外水分比(ECW/TBW)も上がっていきます。体水分量(TBW)に対する細胞外水分量(ECW)の割合であるECW/TBWは、体の水分均衡を表す指標として世界的に広く使用されており、その標準範囲は0.360~0.400で、健常人は0.380前後の一定な数値を維持します。InBodyではECW/TBWが0.400以上なら高いと評価します。健常人でも重力の影響で夕方以降にむくむ人もいますが、妊婦は体内の血液と水分バランスが崩れやすくむくみやすい体質なので、よりむくみの管理が求められます。


妊娠中は、大きくなった子宮が静脈やリンパ管を圧迫するため、むくみが起こりやすい状態です。 朝よりも夕方や夜にむくみを感じる場合が多いですが、朝から下肢がむくんでいるときは注意が必要です。さらに手や顔、全身に現れるむくみや、1週間に500g以上の体重増加を認めるむくみなどは妊娠高血圧症候群の予備軍として危険視されています。正常妊娠では、体水分量・細胞内水分量・細胞外水分量が増加していく中で細胞外水分比も増加しますが、妊娠高血圧症候群では逆に、体水分量・細胞内水分量・細胞外水分量が減少する中で細胞外水分比が増加します。また、細胞外水分比の増加幅も正常妊娠のケースより大きく、明らかな違いが見られます。


最後に

出産に向けての約10か月間は体成分が大きく変化しますが、そのときの変化はどのような変化だったでしょうか。母子共に健康な証である変化だったでしょうか。それとも、妊娠合併症などの、状態が悪くなっているサインである変化だったでしょうか。妊娠中は、吐き気・眠気・便秘・下肢浮腫・頭痛・動悸・腰痛など様々な不調が現れ、出産に対する不安や恐れから情緒不安定になる方も少なくありません。このような状態でも、お母さんは母子共に無事出産を乗り越えるために、自身の健康と体重管理を頑張っています。頑張っていても、思うように体重管理が上手くコントロールできていないかもしれません。自分の状態を理解していても、出産に対する恐怖が先行してしまうかもしれません。


そのとき先ずは、家族の方が一緒になって、現状について知ってください。妊婦健診を一緒に受けてみることも良い方法です。毎週どれだけ体重が増加しているのかも気にしてみてください。また、医師から体重の過度な増加を指摘されている時は、家族が一緒になって食事の改善や適度な運動を行ってみてください。InBodyも家族の一員となって、妊娠期間の健康や体重管理のために、少しでも役立てることを願っています。

 

参考文献
1. 荒木勤, 胎児の発育とその異常. 日医大誌第51巻第1号, 1984
2.「推定胎児体重と胎児発育曲線」保健指導マニュアル 厚生労働科学研究成果
3. Herbert Valensie et al., Multifrequency bioelectrical impedance analysis in women with a normal and hypertensive pregnancy. Am J Clin Nutr. 2000 Sep;72(3):780-3.
4. InBodyトピック「出産後に体型を戻す方法

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健康美に対する認識が間違っている理由


美しさの基準は人それぞれですが、多くの人が(特に女性)考えている “理想的な体” というものは、実はそれほど健康的ではないことがあります。「これから運動をはじめよう」と行動を起こす背景には、自身の生理学的経験や心理的感情が複雑に絡んでいます。生い立ち・国柄・文化などは健康美に対する認識へ関係していますが、テレビ・雑誌・広告・SNSなどメディアで目にするものも、健康や運動意欲に大きく影響を与えます。

スーパーモデルの例を見てみましょう。平均的な体型とかけ離れている、とても細い体のモデルが理想として宣伝されています。しかし多くのモデルは、コットンボール・ダイエット(綿を食べることで満腹感を得るダイエット)のような不健康で危険なダイエットによって、その薄っぺらい体を維持しています。そして、メディアを通してスーパーモデルを目にした人々や、モデルに憧れる若い女性達は、そのモデルの体型を理想的な体と捉えます。これは間違った健康美を印象付けてしまう一例に過ぎず、その他にも誤解を与えてしまう要素はたくさんあります。


健康で綺麗になるための選択


偶像化された体型は、必ずしも健康的なライフスタイルによって生みだされているという訳ではありません。摂食障害のひとつである「オルトレキシア(orthorexia)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 一般的な摂食障害との大きな違いは、カロリーや量ではなく質に異常なまでに執着してしまうことで、グルテン・オイル・糖質・添加物・動物性食材などを徹底的に制限し、極端な偏食になっていきます。「健康的」と考えられる食事以外を信じられなくなっている状態なので、不健康なものを摂取することに過剰な不安や恐怖心を抱き、制限を破ってしまうと嘔吐したりしてしまうこともあります。結果、ビタミン・ミネラル・タンパク質など健康を保つために必要不可欠な栄養素が不足し、重度な栄養失調や神経性やせ症など様々な病気を引き起こしてしまいます。体脂肪は多過ぎても健康には良くありませんが、少な過ぎても良くありません。体脂肪は体温調節やホルモンの材料としても使われており、生命維持のためにも必要な成分です。

美意識が高いと言われるモデルや女優、セレブらによって、オーガニックフード・ヴィーガン・スーパーフード・スムージーなどお洒落なライフスタイルが毎日のようにSNSで拡散されている今日では、「こういう食事を取らなければ健康になれない」と受け取ってしまうのも致し方ありません。しかし、痩せることを望んで(体重を減らしたくて)生じる拒食症とは異なり、オルトレキシアは純粋に健康的で自然体になりたいことを望んで発症しているため、自身が摂食障害であることを理解するのが難しく、不健康な状態もなかなか気づきにくいです。


本当に意識すべき健康マーカー

体重とBMIが標準に入っているからと、安心していませんか? 健康と考えていた体が、実際は健康とかけ離れているということはないでしょうか? 体重とBMIは、健康状態を評価する指標としては十分ではないと指摘されているにもかかわらず、最も長く使用され、最も一般的に使用されている項目です。体重やBMIは手軽に測定できるので、自身の体型評価をこれらに頼っているという方も多くいますが、体重やBMIは見かけの肥満度にしか過ぎません。BMIは単純に身長と体重の比率に過ぎず、その比率で低体重(BMI18.5未満)・普通体重(BMI18.5~25.0)・肥満(BMI30.0以上)を決定します。BMIだけで健康を評価すると、筋肉量が多い健康なスポーツ選手が肥満(不健康)に分類されたり、代謝異常によって過剰に体脂肪量が貯蓄されている患者が標準体重(健康)に分類されたりしてしまうことも問題です。性別・身長・体重が同じでも、見た目や体型はまったく異なるという場合もあります。このことから、体成分がとても重要であるということが理解できます。

体成分分析は体を構成している各成分を定量化して、その過不足を評価します。単純に体重を筋肉量と体脂肪量に分けるだけでなく、筋肉を構成している体水分量とタンパク質量をそれぞれ表示し、除脂肪量は筋肉量とミネラル量の合計として、体系的に表示します。全ての成分が定量化されることで、本当の意味で筋肉質であるのか、痩せているのかを評価できます。痩せているとは、身長に対して必要な体重が足りていないこと(標準体重より軽いこと)を指しますが、体重は標準体重であっても、筋肉量が足りていない痩せタイプ(隠れ肥満・痩せ肥満体型・サルコペニア肥満・スキニーファット)も確認することができます。


全てを手に入れることはできません

運動をする目的は、大きく分けると次の3つです。
➤ スタイルを整えて外見を良くするため
➤ 健康のため
➤ スポーツ活動でパフォーマンスを向上させるため
残念なことに、この3つの目的を同時に達成することはできません。それぞれの目的を達成するには、異なるアプローチ、トレーニングが必要であるためです。そして、このような目的を持ち運動をしている方は、必ずしも健康体・健康美であるという訳ではありません。

スタイルに関して間違った理想を持ち、その理想に近づくことだけを目標にしていると、過剰なトレーニングや偏った食事など不健康なライフスタイルにたどり着くこともあります。健康のためと考えて選択した行動であっても、夢中になり過ぎると、疲労感・脱力感・無気力・罪悪感などに苛まれ、精神的な症状が発生することもあります。一見、不健康とは真逆にいるようなトップアスリートの中には、肝不全を経験したボディービルダーや心臓発作を起こしたレスリング選手もいます。

 


バランスの良い食事と一緒に好きなものを食べましょう。健康だからと言って、特定のものだけを食べ続けるようなことはしないでください。野菜・果物・穀物・赤身のタンパク質など、栄養豊富な食事を目指して努力することが大切です。糖質を少しでも抑えたい場合は、炭水化物を一切抜くのではなく、ごはんを大麦に置き換えるなど工夫してみましょう。大麦はg当たりの糖質がごはんの約1/2で、食物繊維は約20倍もあります。栄養が適切に補給できていること、過度に制限されていないことを確認してください。

 


好きなトレーニングを選択してください。ランニングが嫌いだからと言って、有酸素運動を避けてはいませんか? 有酸素運動はランニングが全てではありません。水泳・ハイキング・サイクリング・ヨガ・ローイングエルゴなども有酸素運動として選択肢になります。筋トレには、重いウエイト器具だけが効果的であると考えていませんか? トレーニングチューブや体重を使ったトレーニングも効率よく筋肉を鍛えることができます。様々なトレーニングを試して、自分に合ったものを探してみましょう。

十分な休養と睡眠を取ってください。睡眠は筋肉の成長や喪失に関わる体内のホルモン分泌に直接影響するので、体成分にとって重要な要素です。水分補給も忘れないでください。人体の大部分は “水” です。脱水は、筋肉疲労・めまい・頭痛などの諸症状を引き起こします。

健康美に対する認識が間違った状態で、食事・運動・ダイエット方法などを決定しないでください。健康の焦点を体成分に当ててみると、今後の選択が変わってくるかもしれません。

 

参考文献
1. InBodyトピック「体成分測定が必要な3つの理由」
2. InBodyトピック「カーボローディングとは」
3. InBodyトピック「疲労と回復のメカニズム」
4. InBodyトピック「脱水時に必要な飲み物は」

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肥満と脳卒中の関係

脳卒中は身体障害の原因の一つであり、世界的な健康問題でもあります。厚生労働省の2017年発表によると、脳卒中は日本人の死亡原因4位の疾患¹⁾であり、発症すると生存後にリハビリを受けても後遺症が残る可能性が高い疾患です。このようなことを考えると、脳卒中を予防することは健康な生活を維持するために重要なのは間違いありません。

脳卒中は「頭蓋内出血」と「脳梗塞」の2種類があります。頭蓋内出血は名前からもわかるように、脳血管が破れることを意味します。脳梗塞は血栓やその他血管問題により血管が詰まり、脳細胞にブドウ糖や酸素などが届かなくなることで起こります。脳卒中は原因によって予後が異なるという研究もあれば、原因に関係なく似たような予後を示したという報告もあります²⁾。また、脳卒中の中でも頭蓋内出血より脳梗塞の方の予後が良いことを示した報告もあり、脳卒中に関しては様々な研究報告があります。脳卒中のリスク因子は様々ですが、その中でも改善できる因子とそうでない因子があります。今回は改善できる因子の一つである肥満と脳卒中の関係、そして体成分が脳卒中予防にどのような影響を及ぼすかについて説明します。


脳卒中のリスク因子

脳卒中のリスク因子の中では年齢・性別・人種など、リスクを確認するときに考慮すべき要素ではあっても、改善することはできない変えられない因子があります。逆に、生活習慣や食習慣などの因子は改善することが可能です。改善可能な脳卒中のリスク因子には座位行動(長時間座ったまま生活すること)・悪い食習慣・肥満・メタボリックシンドロームなどが挙げられます。特に肥満は高血圧・糖尿病・脂質異常症のような脳卒中のリスクを高める疾患とも関連があります³⁾。


肥満と脳卒中の関連性


肥満は世界中で問題視されている健康問題の一つですが、様々な慢性疾患の原因でもあります。ある研究によると脳卒中患者の約18%~44%が肥満患者であると推定されています⁴⁾。肥満は様々なメカニズムで脳梗塞の1種であるアテローム血栓性脳梗塞や心原性脳塞栓症に影響を及ぼします。アテローム血栓性脳梗塞の発症メカニズムは複雑で、様々な要因が影響を与えますが、脂肪組織もその一つです。脂肪組織は余分なエネルギーを保存するだけが役割と思うかもしれませんが、脂肪組織は内分泌及び免疫システムに影響を及ぼす組織です。体脂肪が過剰に蓄積されると炎症を引き起こし、組織の構成にも影響を与えることでアテローム血栓性脳梗塞を促進させ、脳卒中のリスクを高めます。肥満の脳卒中生存者は特性の心疾患のリスク因子が増えやすくなり、脳卒中の再発または回復の予後を悪化させる恐れがあります。また、日本人の脳梗塞で最も多いラクナ梗塞の場合、高血圧・糖尿病・脂質異常症(高脂血症)の3つが主な原因と言われますが⁵⁾、この3つは肥満とも密接な関連を持っていることから、過剰な体脂肪量は脳卒中や血栓症などの原因になり得ると言えます。


肥満と脳卒中のパラドックス

このように、肥満は脳卒中のリスク因子であることが明らかになっていますが、肥満患者の脳卒中予後に関しては様々な意見があります。多数の研究では肥満患者の脳卒中予後がより良いことを示唆しており、これを肥満と脳卒中のパラドックス(Paradox; 逆説)といいます。肥満と脳卒中の関係を説明するために企画された系統的文献レビュー⁶⁾では、25件の研究を分析し、脳卒中リスクと肥満の関係を確認しました。その結果、確かに多数の研究で肥満の脳卒中患者がより良い予後を示しました。しかし、この結果を「体脂肪量が多いのは良い」と解釈することは間違っていると指摘しています。肥満患者の脳卒中死亡率が低いことは事実ですが、他の研究では高度肥満及び低体重患者の脳卒中死亡率が有意に高いことも示されています。この相反する内容から、脳卒中の予後には体重よりも適切な体成分の構成が重要であることを推測できます。肥満患者の体重減量が脳卒中の予防に役立つという説も、体成分が重要であることを裏付けします。


腹部肥満の危険性

体成分と脳卒中の関係に着目した研究もあります。腹部肥満と脳卒中の関係を調べるため、ニューヨークで虚血性脳卒中(脳梗塞)症例576件を検討した研究が行われました⁷⁾。結果、性別や人種と関係なく、ウエストヒップ比(Waist-Hip Ratio; WHR)の増加と脳卒中リスクには有意な相関があることが示されました。この研究では次のように述べています。

・人種に関係なく、腹部肥満は脳梗塞の独立リスク因子である。
・腹部肥満はBMIより有意な脳梗塞のリスク因子である。
・腹部肥満は若い人においてより悪い影響を及ぼす。

このように、腹部肥満と脳梗塞の間には独立且つ有意な関係があることを示しています。従って、体脂肪の分布を把握して腹部の体脂肪量を減らすことは、脳卒中のリスクを下げることに繋がります。InBodyでも腹部肥満の指標としてウエストヒップ比を提供しているので参考にしてください。ウエストヒップ比の値が大きいと、腹部肥満と判断されますが、男性1.0以上、女性0.9以上が目安とされています。また、ヨーロッパの研究では、男性0.9以上、女性0.85以上は心血管死亡率が高いと報告しています。
※ウエストヒップ比はS10以外の全ての機種で選択項目として提供しています。


他の改善可能なリスク因子

既に説明しましたが、糖尿病・脂質異常症・高血圧などの疾患は脳卒中リスクと関連しています。このような疾患は脳卒中のリスクを高めますが、適切な体成分状態を維持することでこれらの疾患を予防できます。次の内容は体成分と上記疾患の関連性に関する研究で示された内容です⁸⁾。

・2型糖尿病のリスクは国や人種に関係なく、BMIが高いほど増加する。
・高血圧症例の1/4以上が過体重と関連していた。
・内臓脂肪型の肥満患者において脂質異常症のリスクが増加した。

これらの疾患は脳卒中のリスク因子であるため、肥満を改善させて関連疾患のリスクを下げることは、脳卒中のリスクを下げることに繋がります。生活習慣を改善させてリスク因子を減らすことで、脳卒中の約50%を予防できると言われています⁹⁾。血圧を下げることや血糖値を管理すること、HDLコレステロール値を高めて脂質異常症を予防することは脳卒中のリスクを大きく下げると言われており、体成分の改善はこれらの疾患の予防に繋がります。生活習慣の改善方法には適切な運動による活動量の増加・肥満患者の体重減量・糖尿病患者の血糖値調整・禁煙・規則正しい食事を含む食習慣の改善などが挙げられます。


脳卒中予防のために


脳卒中は一度発症すると回復後にも後遺症が残る可能性があり、身体障害により生活の質が低下することは致命的な健康問題です。しかし、脳卒中はいくつかのリスク因子を改善させることで予防も可能です。今まで説明した通り、少ない活動量・座りっぱなしの生活・悪い食習慣・肥満などを改善することは脳卒中だけではなく、他の疾患のリスクも下げます。

脳卒中リスクを高める疾患には高血圧や糖尿病、脂質異常症などがあり、これらの予防と管理は脳卒中リスクを減少させることに繋がります。そして、肥満は様々な健康問題や疾患の原因である同時に、脳卒中のリスクを高める因子です。過剰な体脂肪量は炎症を起こしたり、アテローム血栓性脳梗塞の発症を促進したりする組織であるため、適切な管理が必要です。従って、肥満評価に用いられる体成分に注目して管理することは、脳卒中リスクを管理できる方法の一つとも言えます。特に内臓脂肪の蓄積が原因の腹部肥満は、脳卒中リスクを高める重要な因子と言われています。多くの研究が、ウエストヒップ比の減少で予測できる腹部脂肪量の減少は脳卒中の予防において臨床的価値を持つと示しており、腹部肥満管理の重要性を裏付けています。肥満と関連する体成分は体脂肪量が挙げられますが、筋肉量を維持することも肥満の予防・改善に繋がります。従って、活動量・食習慣・喫煙状況などの生活習慣を見直して、筋肉と脂肪のバランスを改善することは、誰でもできる脳卒中の予防方法と言えます。体成分の現状を把握し、どう改善すればいいか考えることから健康管理を始めてみてはいかがでしょうか。

 

参考文献
1. 「平成29年(2017)人口動態統計月報年計(概数)の概況」厚生労働省
2. Perna R, Temple J. Rehabilitation Outcomes: Ischemic versus Hemorrhagic Strokes. Behav Neurol. 2015;2015:891651.
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4. Walter N. Kernan et al., Obesity: a stubbornly obvious target for stroke prevention. Stroke. 2013 Jan;44(1):278-86.
5. 「どうしましたか?症状別病気解説: ラクナ梗塞」 社団福祉法人 恩賜財団済生会ホームページ
6. Lisa Oesch et al., Obesity paradox in stroke – Myth or reality? A systematic review. PLoS One. 2017 Mar 14;12(3):e0171334.
7. Seung-Han Suk et al., Abdominal obesity and risk of ischemic stroke: the Northern Manhattan Stroke Study. Stroke. 2003 Jul;34(7):1586-92.
8. Jana Jarolimova et al., Obesity: its epidemiology, comorbidities, and management. Prim Care Companion CNS Disord. 2013;15(5):PCC.12f01475.
9. Silvia Di Legge et al., Stroke prevention: managing modifiable risk factors. Stroke Res Treat. 2012;2012:391538.

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ホットヨガが代謝に及ぼす作用

ホットヨガは世界中で流行っているエクササイズの1つです。伝統的なヨガは、今から5000年以上も前からインドで行われており、現在までその人気は続いていますが、これには理由があります。ヨガは、柔軟性の向上・高血圧や心機能の改善・精神力の育成などの効果があります。一方、ホットヨガは大量に汗を掻くことで代謝が良くなり多くのカロリーを燃焼するので、デトックス効果が高まります。

ホットヨガは室温40℃前後、湿度40%~60%のスタジオで一連のエクササイズを行います。このように高温多湿な環境で行うヨガは、血流を良くし、筋肉が温まることでストレッチの効果も高まり、リンパの流れが良くなることで毒素の排出を助けるといわれています。しかし、このような主張のいくつかは、研究によって科学的に検証されていない点もあるということに留意してください。

運動中、体に熱ストレスを与えると筋肉代謝に影響すること¹⁾は明らかになっています。熱ストレスに長時間さらされることで代謝速度が向上するので、ホットヨガが実際に代謝へ影響している可能性は期待できます。今回のトピックではホットヨガと代謝の関係をもう少し詳しく考えていきます。先ずは、代謝と代謝率についてお話しします。


代謝と代謝率とは


代謝とは、体内に取り入れたもの(食べ物や飲み物)と酸素が組み合わさって、体に必要なエネルギーを生成する一連の合成や化学反応のことです。代謝は主に体成分と体力に由来します。代謝率とは、細胞の修復・呼吸・血液循環の維持など生命維持に必要なエネルギーをカロリーで表示した、代謝速度のことです。代謝速度が速くなると、体の機能を最適に維持するために必要なエネルギーが増えることになります。

基礎代謝量は、安静時でも生命活動を維持するために必要な最小限のエネルギーをカロリー(kcal)で表したものです。筋肉は多くのカロリーを消費するので、筋肉量を維持するためにもより多くのエネルギーが必要です。つまり、筋肉量が多い人は安静時でも多くのカロリーを消費するので、代謝率(基礎代謝量)も高くなります。カロリーの消費を増やす、もう1つの方法は身体活動です。身体活動が筋肉の需要を増大させ、筋肉を機能させるために更にエネルギー源を必要とします。InBodyでは全機種でカニンガム公式を利用した基礎代謝量を提供しているので、簡単に自身の基礎代謝量を調べることができます。また、一部の機種では推奨エネルギー摂取量も提供しており、体成分が標準に入っていない方が適正に近づくために摂取すべきエネルギー量も参考にすることができます。
※推奨エネルギー摂取量を提供している機種はInBody570・470・270です。健康な方における1日に必要なエネルギー推定量を算出したあと、InBodyで測定した体成分を考慮して補正した値です。体重と骨格筋量が両方とも標準範囲未満である場合は推奨エネルギー摂取量が増加し、体重と体脂肪率が両方とも標準範囲以上である場合は推奨エネルギー摂取量が減少します。

代謝率は個人で異なります。体の形・大きさ・体成分は個々で異なるので、代謝率が一致することはありません。代謝率に関わる遺伝的要素は変えることはできませんが、身体活動によって代謝率を高めることは可能です。先ほど、筋肉量が多いと安静時のカロリー消費量も増えることを説明しました。つまり、筋トレによる筋肉の構築は、代謝率にも大きな影響を与えるということです。有酸素運動も1日を通して消費するカロリー量を増やすため、一時的に代謝を高めます。有酸素運動と筋トレを組み合わせたHIIT(高強度インターバルトレーニング)が、運動後過剰酸素消費量(EPOC)を増やすことで代謝を効果的に高めることができると報告している研究²⁾もあります。代謝率を高める別の方法、熱ストレスによる方法は、次の項で見てみましょう。


熱が基礎代謝量に与える影響


性別・身長・年齢も代謝に作用しますが、これらの要因は変えることができません。しかし、体温を制御することでカロリーの燃焼を増やすことができます。体の内部温度と外部温度がどのように代謝率に影響するのでしょうか。

➤ 内部温度
体の内部温度が高くなると、体は正常な体温まで戻そうと化学反応が強く働くため、代謝速度が速くなります。例えば、発熱している時、基礎代謝量は通常よりも遥かに高い数字まで跳ね上がりますが、それは発熱を抑え健康な状態に戻そうと、細胞の代謝反応が増えるためです。

➤ 外部温度
内部温度の変化とは異なり、外部温度によって基礎代謝量を上昇させるには、体を熱ストレスに長時間さらす必要があります。短時間の熱ストレスでは代謝に影響を与えることができません。体に熱ストレスを長時間浴びせることができる代表的なものがホットヨガです。これが、多くの人がホットヨガに惹きつけられている理由の1つです。


ヨガとホットヨガの利点


先ず、従来のヨガの利点から説明します。ヨガで行う独特のポーズは、バランス能力・柔軟性・筋肉の構築を改善し、怪我の予防にも役立ちます。ヨガは筋肉を伸ばすことでストレスを緩和し、精神面にも作用します。定期的にヨガを行えば、肥満を防ぎメタボリックシンドローム発症のリスクを減らすと報告した研究³⁾もあります。

ホットヨガは従来のヨガと同じ利点を持ち、更にいくつかの利点が加わります。暖房が利いている部屋で大量の汗を掻くことは体に悪い影響を及ぼすこともありますが、
①トレーナーの指導に従うこと
②水分補給を行うこと
③自身の耐熱性を把握すること
でホットヨガは安全に行うことができます。高齢者を対象にホットヨガプログラムを8週間実施した研究⁴⁾でも、BMIが大幅に減少し体成分が改善されたことを報告しています。ホットヨガは体温より遥かに高い環境で行われるので、体が熱ストレスに長時間さらされることで基礎代謝量も上がり、体成分の改善が期待できます。


終わりに

代謝活動は睡眠中など無意識の状態でも常に行われており、生命活動にとって重要な機能を果たしています。代謝率は人それぞれ異なりますが、HIITや熱ストレスを利用したホットヨガなどの身体活動で高めることができます。一見、ホットヨガは大量に汗を掻いている姿から過酷な運動のように見えるかもしれませんが、得られる効果も大きく、行うだけの価値があるかもしれません。ホットヨガは柔軟性・精神力・代謝率の向上に加え、体成分の改善にも役立ちます。

何か新しいことにチャレンジしたいというあなた、マットを広げて汗を掻いてみませんか?

 

参考文献
1. Febbraio MA et al., Muscle metabolism during exercise and heat stress in trained men: effect of acclimation. J Appl Physiol (1985). 1994 Feb;76(2):589-97.
2. Skelly LE et al., High-intensity interval exercise induces 24-h energy expenditure similar to traditional endurance exercise despite reduced time commitment. Appl Physiol Nutr Metab. 2014 Jul;39(7):845-8.
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4. Zoe L. Hewett et al., The Effects of Bikram Yoga on Health: Critical Review and Clinical Trial Recommendations. Evid Based Complement Alternat Med. 2015;2015:428427.

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睡眠は子供の体成分にどう影響するか?

近年では睡眠不足が深刻な問題として挙げられており、あらゆる年齢層に影響を与えています。テレビやパソコン、スマートフォンの普及で、子供たちは常にスクリーンにへばりついています。このような光源を発する機器は、早寝を妨げる要因の1つとなっています。スクリーンが発する ”ブルーライト” を寝る直前まで見ていると、寝付きが悪くなってしまう子供もいます。

米国睡眠医学会によると、子供の適切な睡眠量は次のように発表しています。
4カ月~12カ月:1日12時間~16時間
1歳~2歳:1日11時間~14時間
3歳~5歳:1日10時間~13時間
6歳~12歳:1日9時間~12時間
13歳~18歳:1日8時間~10時間

子供の睡眠は親が管理することになりますが、起床時間は学校の開始時間によって決まってしまうので、就寝時間を遅くならないようにコントロールする必要があります。最近は夜更かしの原因になるものが溢れており、推奨されている睡眠量を取ることが難しくなっています。しかし、睡眠不足は学校の成績だけでなく、体の健康にも影響を与えてしまいます。体の健康が食事と運動習慣に基づくことは勿論ですが、睡眠も重要な要素です。


子供にとって重要な睡眠と成長ホルモン


成長は主に成長ホルモンの影響を受けます。このホルモンは睡眠中に2時間から3時間の間隔で下垂体前葉より分泌されるので、子供の成長や創傷治癒、肌の新陳代謝は睡眠時に特に促進されます。 また睡眠中、成長ホルモンレベルがピークに達するので、子供の成長にとって適切な睡眠量が必要であるということは理解できます。

就学前の子供でも睡眠が重要であることに変わりありません。未就学児を対象に睡眠と身体活動が成長に及ぼす影響を調査した研究¹⁾では、睡眠レベルが上がると全身の体脂肪量が減り、体脂肪率が改善されていることを発表しました。睡眠を怠惰や肥満増加の原因と考える人もいますが、子供の健康にとっては睡眠が必須です。子供たちが成長のために適切な睡眠量を取れているかどうか確認してください。


子供の睡眠と筋力


睡眠と筋力の関係について、興味深い研究がいくつかあります。青年の睡眠習慣を調べた横断研究²⁾では、睡眠が腹囲などの肥満マーカと反比例し、骨格筋量と正の相関関係があることが分かりました。しかし、最も睡眠の長かった青年も、睡眠が最も少なかった青年と同様に腹囲の増加が著しく、睡眠は少なすぎても多すぎても体成分に悪影響を及ぼす可能性があるということを示唆しています。男子大学生の睡眠習慣を調査した研究³⁾では、睡眠時間が短い(6時間未満)学生は、睡眠時間が適切な(7時間以上)学生と比べて筋力が低下していることが報告されました。

筋力が低下する理由は様々ですが、睡眠不足も1つの原因です。睡眠中にタンパク質合成が増加し、その日に分解された筋肉を再構築します。つまり、筋肉繊維を再建するには十分な睡眠が不可欠なのです。


睡眠は肥満に直接関連する


近年では小児肥満が深刻化し、小児の肥満診断基準が定められ、早期発見と予防の取り組みが求められるようになりました。厚生労働省は小児肥満を知る目安として、次の肥満度を使用しています⁴⁾。
厚生労働省:肥満度(%)=(実測体重-標準体重)÷標準体重×100
この計算式により、幼児では肥満度15%以上が肥満児、学童期以降では20~30%が軽度肥満、30~50%が中等度肥満、50%以上が高度肥満と判定されます。InBodyの研究項目にある肥満度は、
InBody:肥満度(%)=実測体重÷標準体重×100
で算出された数字なので、下二桁の数値が上記公式で算出された値と一致します。

BMC Public Healthで発表された、0-4歳児の子供を対象に睡眠の重要性に関する調査を行った研究⁵⁾では、睡眠時間が短いと成長障害や感情調整能力の未発達に加えて、体脂肪率が高くなることを発見しました。これは、より多く眠る子供は体脂肪率が良く、優れた体成分である確率が高いということを意味しています。7-9歳児を対象に睡眠を調査した横断研究⁶⁾でも同様な結果で、睡眠が9時間未満の子供は9時間以上の子らと比較して肥満になるリスクが3倍以上もあることが分かりました。体脂肪率は睡眠9時間未満の子供が23.4%、11時間以上の子供が20.9%と有意に低い値でした。

小児肥満の約70%が成人肥満に移行するといわれており、また高度の小児肥満は高血圧・糖尿病・脂質異常症などの病気を発症するリスクがあります。Obesity Reviews掲載記事⁷⁾では、習慣化された睡眠不足について次の問題を指摘しています。
➤ インスリン抵抗性が高くなる(糖尿病発症をもたらす可能性が上がる)
➤ 糖尿病が原因で食欲増進・代謝変化・体成分変化・肥満の発症に繋がる
➤ 高血圧と塩分貯留のリスクが上がり、心臓病の問題に繋がる
このような研究結果が、適切な睡眠量が肥満の治療に不可欠であることを示しています。健康な体を維持するためにはもちろん適切な食事と運動も重要ですが、睡眠も肥満の管理に重要な役割を果たすので、肥満治療計画の礎として睡眠にも介入すべきです。


健康には適切な睡眠が重要


子供たちが夜にしっかり睡眠を取れているかを確認することは非常に重要です。睡眠は、学校の成績・社会との関り・体の成長・健康にとって重要な役割を果たしています。宿題や習い事で忙しい子供は、就寝時間を早めることが難しいかもしれませんが、両親が就寝時間を一定に保つために努力することは必要です。寝る前にブルーライトを発する電子機器や運動を避け、カフェインを含む飲み物は与えないようにしてください。規則的な生活リズムを保てるように、周りの大人たちの生活リズムも一度見直してみましょう。子供が幼い時期から良い睡眠習慣を教えることは適切な発達を促し、良い健康状態、つまり健康的な体成分を成人期まで維持することに繋がります。

 

参考文献
1. Nancy F. Butte et al., Role of physical activity and sleep duration in growth and body composition of preschool-aged children. Obesity (Silver Spring). 2016 Jun;24(6):1328-35.
2. Nam GE et al., Sleep duration is associated with body fat and muscle mass and waist-to-height ratio beyond conventional obesity parameters in Korean adolescent boys. J Sleep Res. 2017 Aug;26(4):444-452.
3. Yanbo Chen et al., Relationship between sleep and muscle strength among Chinese university students: a cross-sectional study. J Musculoskelet Neuronal Interact. 2017 Dec 1;17(4):327-333.
4. 生活習慣病予防のための健康情報サイト 「子どものメタボリックシンドロームが増えている」 eヘルスネット 厚生労働省
5. Jean-Philippe Chaput et al., Systematic review of the relationships between sleep duration and health indicators in the early years (0-4 years). BMC Public Health. 2017 Nov 20;17(Suppl 5):855.
6. Padez C et al., Long sleep duration and childhood overweight/obesity and body fat. Am J Hum Biol. 2009 May-Jun;21(3):371-6.
7. Gangwisch JE. Epidemiological evidence for the links between sleep, circadian rhythms and metabolism. Obes Rev. 2009 Nov;10 Suppl 2(0 2):37-45.

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糖尿病と筋肉量の関係

生活習慣病としてよく知られている糖尿病は、毎年患者数が増加している現代の代表的な疾患の一つです。日本の糖尿病患者及び糖尿病予備群の数はどちらも約1千万名(2017年基準)、糖尿病による年間死亡数は約1万3千名(2016年基準)に達しています¹⁾。尚、全体の約95%は2型糖尿病の患者であるといわれています。世界的にも糖尿病患者は増加しており、国際糖尿病連合(IDF)の調査によると、2017年の糖尿病患者数は2015年より1千万名増加した約4億2,500万名、成人(20歳~79歳)の糖尿病有病率は8.8%、糖尿病予備群(耐糖能異常)の数は約3憶2,500万名に達する等、糖尿病は身近な疾患となりつつあります²⁾。


糖尿病患者といえば、多くの方は太っている人を想像するかもしれません。しかし、体重やBMIが標準または低くても糖尿病を患っている方もいます。BMIは高くなくても体脂肪率が高い、いわゆる隠れ肥満の人が糖尿病または糖尿病予備群になるリスクが高いです。これは糖尿病のリスクを下げるためには、単純に体重を管理するより体成分を管理する必要があることを示します。では、体成分と糖尿病はどのような関係があるのでしょうか? 不均衡な体成分と糖尿病はどう関連しているのか、確認してみましょう。


バランスの取れた体成分とは


体成分を2つに分けると体脂肪量と除脂肪量で分けることができます。除脂肪量には随意筋である骨格筋と、内臓筋・心臓筋や骨(骨ミネラル)が含まれます。除脂肪量と体脂肪量が適切な量を維持している状態が体成分のバランスが取れている状態で、健康な体を維持することに繋がります。過体重や肥満、または栄養状態が悪い人はこの均衡が大きく崩れています。

過体重や肥満の人は体重を減らすことだけを目標としがちです。しかし、健康状態を改善し、せっかく減らした体重を維持するためには崩れている体成分均衡を改善させる必要があります。つまり、体重を減らすことだけを目標にするのではなく、過剰な体脂肪量を減らしながら、除脂肪量(筋肉量)を維持または増やすことを目標とすることが望ましいです。体成分の改善は見た目をよくするだけではなく、糖尿病及び肥満と関連する様々なリスクを減らし、代謝機能を向上させる等、よい影響を及ぼします。


糖尿病と代謝機能の関連性

代謝機能(metabolism)という言葉を聞くとどういうことを思い浮かべますか? 代謝機能がいい人は同じ量を食べても、代謝機能が悪い人よりあまり太らないというイメージを持っている方が多いでしょう。これはある程度は正しいと言えます。代謝機能とは現在の身体構造を維持または回復するために飲食物を分解し、必要なエネルギーを供給する過程を言います。食事をすると、体はそれを分解して必要なところに届けます。この一連の過程を簡単に整理すると次の通りです。


このように、代謝活動はあまり複雑ではありません。しかし、糖尿病患者はこの一連の過程がうまくいきません。これが、糖尿病が代謝機能異常疾患として分類される理由でもあります。糖尿病は代謝方法を変化させるため、細胞がブドウ糖をエネルギーとしてうまく消費できないようにします。先ほどの代謝活動の流れをもう一度見てみましょう。上記過程でインスリンが分泌されるポイントは2つ(1次、2次)です。インスリンは細胞がブドウ糖を吸収してエネルギー源として使用できるように手伝う役割をするホルモンで、膵腸がインスリンを分泌するタイミングは最初にブドウ糖が供給されたときと、そのあとにもインスリンが必要になったときです。つまり、糖の代謝においてインスリンの役割はとても重要です。

 


糖尿病は1型と2型の2種類があります。1型糖尿病(T1D)患者の場合、そもそも体がインスリンを作ることができなくなり、代謝機能がうまく働きません。1型糖尿病患者は免疫機能の混乱によって膵腸でインスリンを作るβ細胞が壊れる疾患であり、糖尿病患者の中でもその数が少なく、原因もはっきりしていないため予防も難しいです。

2型糖尿病は少し違います。2型糖尿病患者の場合、インスリンはちゃんと分泌されていますが、細胞がインスリンを適切に使えなくなっています。このような状態を「インスリン抵抗性(IR)」といいます。インスリンが働かないと細胞はブドウ糖をエネルギー源として使用できないため、ブドウ糖はそのまま血中に残り、溜まってしまいます。血中の過剰な血糖はトリグリセリドに転換され、体脂肪として蓄積されます。体脂肪量が増加するとホルモン不均衡や全身性炎症が発症し、継続すると他の疾患にもつながる恐れがあります。

糖尿病は心疾患、脳卒中、腎臓病、神経疾患、皮膚感染症、眼科疾患とも関連しており、免疫システムの損傷を引き起こす恐れもあります。血液循環の問題と糖尿病が重なると怪我や感染のリスクを高め、足の感覚を鈍くさせ、切断せざるを得ない状態まで悪化することもあります。他に糖尿病が引き起こす合併症としては網膜症、腎不全、歯周疾患、動脈硬化、狭心症、認知障害等の慢性合併症と糖尿性ケトアシドーシス、感染症等の急性合併症があり、最悪の場合、死に至るほどの深刻な疾患まで発展することもあります³⁾。


筋肉量と2型糖尿病の関係

過剰な体脂肪量だけが糖尿病のリスクを高めるわけではありません。最近の様々な研究では、糖尿病のリスクと低筋肉量の関連性が示されています。筋肉量が少ない人の糖尿病有病率が高いだけではなく、糖尿病によって筋肉が弱くなることもあります。2型糖尿病が筋肉に及ぼす悪影響は疲労度、筋力、筋肉量の3つに分けられます。

➤ 筋肉の疲労度
筋肉疲労は運動または身体活動後に、筋肉の疲れや痛みを感じる疲労の一種です。2型糖尿病患者は筋肉が回復するのに時間がかかり、運動負荷への耐性が弱くなる等、筋肉疲労度が増加するという研究発表もあります⁴⁾。これは2型糖尿病患者が健康な人より運動による筋肉疲労の影響が強いことを示します。

➤ 筋力
2型糖尿病は筋力を低下させます。年齢、性別、教育水準、アルコール消費量、喫煙期間、肥満、有酸素運動などの変数で調整した後でも、2型糖尿病患者の握力は健康な人に比べ弱かったという研究結果があります⁵⁾。

➤ 筋肉量
2型糖尿病患者は筋力や筋肉の回復速度が低下するだけではなく、筋肉量も少なくなります。特に糖尿病の罹患期間が長くなると、筋肉量はより減少する傾向があり、部位別でみると下半身の筋肉量が特に減少しやすいです⁶⁾。2型糖尿病患者のInBody結果用紙を見てみましょう。下半身の筋肉量が特に少なく、それらの部位の水分均衡(ECW/TBW)※も崩れていることが分かります。

※水分均衡(ECW/TBW)の標準範囲は0.360~0.400で、InBodyではECW/TBWが0.400以上なら高いと評価します。特定の疾患・浮腫・悪い栄養状態・怪我による炎症などでECW/TBWは高くなります。

低筋肉量が2型糖尿病のリスクを高めるとすると、筋肉量を増やし、体成分を改善させることは2型糖尿病のリスクを減少させることに繋がります。日本と韓国の健常人約20万人をフォローアップした研究では、約3年後での2型糖尿病罹患率は、筋肉量が多い参加者で低い結果となりました⁷⁾。この結果から、筋トレや適度な運動を日常的に行い、筋肉量を減らさない努力が重要であると分かります。

運動は糖尿病のリスクを下げるだけではなく、糖尿病の状態を改善させる効果もあります。運動をすると筋肉は通常より多くのエネルギーを必要とし、ブドウ糖の需要を高めます。これによって、ブドウ糖が細胞に運ばれる量が増加するため、適切な運動は2型糖尿病患者の血糖コントロールに効果的です。特に、筋肉は大きいとより多くのエネルギーを必要としますが、脚の筋肉は体の中で最も大きい筋肉に該当します。そのため、脚の筋肉はブドウ糖の摂取・コントロールにおいて重要な筋肉です。また、2型糖尿病患者は下半身の筋肉量が特に減少しやすいため、下半身を中心とした運動を継続して筋肉量を維持・増加させることは糖尿病のリスクを下げ、身体能力の改善も期待できます。既にインスリン抵抗性が発生している状態でも、運動によってブドウ糖の需要が増えるとインスリンの効果が高くなり筋肉細胞がブドウ糖を使用できるようになり、血糖などを改善させることに繋がります。


インスリン抵抗性を改善する方法


既に説明した通り、2型糖尿病患者または糖尿病予備群の人はインスリン抵抗性が発生しており、これは細胞が血中のブドウ糖をエネルギーとして使う過程でインスリンがうまく働いていないことを意味します。そして、このような状態は結果的に様々な健康問題を引き起こします。しかし、インスリン感受性を回復させ、糖尿病の状態を緩和させたり、糖尿病が引き起こす合併症のリスクを下げたりすることは可能です。2型糖尿病患者を対象に筋トレプログラムを実施した結果、トレーニング前後でHbA1c数値が8.7%から7.6%に減少し、16週間の筋トレプログラムを終了した時には参加者の72%が、薬の服用量が減少していたと報告した研究もあります⁸⁾。既に糖尿病を患い、血糖値が高かったとしても、週2-3回程度の筋トレで糖尿病の症状を緩和させることができます。ただ、既に疾患を患っている方の場合、運動を始める前に必ず担当医と相談の上、運動計画を立ててください。


糖尿病の予防・改善のために覚えておくこと


糖尿病のリスクを高めるのは体重ではなく、その中身です。少ない筋肉量と多い体脂肪量は体重とは関係なく糖尿病のリスクを高めます。そのため、糖尿病のリスクを下げたり、血糖値を改善させたりするためには、体成分を改善させることが役立ちます。簡単に言うと体脂肪量が多い場合は体脂肪量を減らし、筋肉量が少ない場合は筋肉量を増やすことです。筋肉量を増やしつつ体脂肪量を減らした人が、両方ともに多い人または両方とも少ない人より2型糖尿病のリスクが低いと報告している研究もあります⁹⁾。つまり、どちらか片方ではなく、両方とも適切な量を維持することが大事といえます。

現在の体成分を把握することは、疾患のリスク把握と適切な目標設定に欠かせません。測定結果を基に体成分をどう改善すべきか、そのためには今の生活習慣をどう変えるべきか、具体的な計画を立てることができます。その計画を実行することで糖尿病を含む様々な疾患のリスクを下げることに繋がるでしょう。定期的な運動を行うことで、体脂肪量や筋肉量の改善はもちろん、血糖値を下げる効果も得られます。もちろん、食事も大事です。低糖質・高たんぱくの食事と筋トレを並行することは、インスリン感受性と体成分の改善に役立ちます。

健康問題が心配ですか? 健康維持のための目標設定が難しいですか? まずは体成分を把握しましょう。バランスの良い体成分を目指すことで、悩んでいた問題がより解決しやすくなるかもしれません。

 

参考文献
1. 「生活習慣病の調査・統計」一般社団法人日本生活習慣病予防協会ホームページ
2. 「IDF Diabetes Atlas 8th」国際糖尿病連合ホームページ
3. 「DM TOWN」SANOFIホームページ
4. Senefeld J. et al., Mechanisms for the increased fatigability of the lower limb in people with type 2 diabetes. J Appl Physiol (1985). 2018 Aug 1;125(2):553-566.
5. Lee MR et al., Association between muscle strength and type 2 diabetes mellitus in adults in Korea: Data from the Korea national health and nutrition examination survey (KNHANES) VI. Medicine (Baltimore). 2018 Jun;97(23):e10984.
6. Yuji Tajiri et al., Reduction of skeletal muscle, especially in lower limbs, in Japanese type 2 diabetic patients with insulin resistance and cardiovascular risk factors. Metab Syndr Relat Disord. 2010 Apr;8(2):137-42.
7. Sungwoo Hong et al., Relative muscle mass and the risk of incident type 2 diabetes: A cohort study. PLoS One. 2017 Nov 30;12(11):e0188650.
8. Castaneda C. et al., A randomized controlled trial of resistance exercise training to improve glycemic control in older adults with type 2 diabetes. Diabetes Care. 2002 Dec;25(12):2335-41.
9. Seung Jin Han et al., Effects of combination of change in visceral fat and thigh muscle mass on the development of type 2 diabetes. Diabetes Res Clin Pract. 2017 Dec;134:131-138.