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子供の成長と体成分の変化

子供は乳児期-幼児期-学童期(児童期)-思春期(青年期)と成長段階を経て大人(成人期)になります。特に思春期以前の子供は身体的な成長も顕著で、この成長過程を評価するために身長や体重が頻繁に計測されています。そして、成長の程度は成長曲線分布に当てはめて同年代の子供と比較することが多いですが、体重の変化は表面的なものに過ぎず、その解釈に注意が必要です。子供の成長は身体の中身=体成分の視点からも確認することが重要です。今回の記事では、子供の発育で体成分がどのように変化するのか、子供の体成分が大人になってからの健康にどう影響するのかについてお話しします。


学童期の体成分は思春期のタイミングにも影響する

学童期頃の体成分は、思春期が始まるタイミングにも影響します。2002年イリノイ大学の研究では体脂肪率の高い子供ほど思春期の開始時期が早くなることを報告しています¹⁾。脂肪組織は内分泌機能を活性化し、ホルモン調節に関与します。つまり、脂肪組織が性ホルモンを産生し思春期早発症を引き起こします。

ホルモンの分泌異常で引き起こされる代表的な小児内分泌疾患は、思春期早発症の他に成長ホルモン分泌不全症(低身長)や小児肥満症があります。思春期早発症に罹患すると、大人になった時の身長が極端に小柄になること、循環器疾患・高血圧・2型糖尿病などの合併症を発症しやすくなることも知られています²⁾。

思春期早発症に当てはまったとしても、最終的には正常範囲に収まるような心配がいらないケースも勿論多いです。しかし、思春期前の学童期でも体成分が悪い(=肥満度が高い)と将来的に健康上の深刻な問題に発展する可能性もあります。また、思春期早発症はマクキューン・オルブライト症候群や中枢神経系の障害が器質的原因となって発症していることもあるので、子供の成長があまりにも早いor遅いなどの違和感を覚えたら、体成分をコントロールするだけでなく小児科や内分泌専門で正確な診断と治療を行う必要があります³⁾。


思春期の体成分変化に関して

思春期にも体成分は大きく変化します。この時期には成長ホルモン・性ホルモン・遺伝的要因・環境的要因が作用して、男児と女児に大きな違いが生じてきます。体成分の変化として次のような特徴が挙げられます。

・男児は骨格筋量など主に筋肉の増加が顕著
・女児は体脂肪量の増加が目立つ
・男児女児共に骨密度が大きく発達
・男児はより男性らしい体型に、女児はより女性らしい体型に変わる

幼少期~思春期の体成分は成人期の体成分に影響すると言われています。つまり、子供の体成分を管理することは、将来的に病気のリスクを減少させることにも繋がるのでとても重要です。また、子供の時から体成分が悪くなると、大人になっても体成分は改善されにくく、致命的な病気や合併症を引き起こす恐れもあります。


悪い体成分が将来的に病気へと繋がるプロセス

思春期の体成分と成人期の疾患の関係が明らかとなっている代表的なものは、「体脂肪量と肥満」「骨ミネラル量・骨密度と骨粗鬆症」です。思春期の太り過ぎは成人期の太り過ぎや肥満に繋がるリスクが高く、骨ミネラル量や骨密度が低い人はその後に骨粗鬆症を発症するリスクが高くなります⁴⁾。

➤体脂肪量と肥満
脂肪組織はアディポサイトカイン、インスリン、性ステロイドホルモンなどの生理活性物質と相互作用し、心血管系や代謝性疾患の発症に関与します。思春期の体成分は栄養状態の評価だけでなく、将来的な慢性疾患の発症リスクに直接関連するため、早い段階での疾患リスク評価および介入が重要です。

同一人物における子供の頃のBMIと成人してからのBMIは、子供の成長段階(年齢層)によって程度は変わってきますが、ある程度相関することが報告されています⁵⁾。例えば、BMIが95パーセンタイルを超える8-13歳の子供では男児の33%が成人でも肥満、女児の50%が成人でも肥満で、13-18歳の子供では男児の50%が成人でも肥満、女児の66%が成人でも肥満でした。また、思春期から成人期にかけての体脂肪量と除脂肪量は高く相関することから、思春期以降に測定した体成分は成人期の体成分予測に活用できます⁶⁾。

業務用InBodyで提供している小児結果用紙では、身長と体重の成長曲線から同年代の標準的な値と自分の位置を知ることができます。また、BMIの比較もしてみたいと思った方は下記の成長曲線(2007 WHO Reference)を参考に、自分の位置をプロットしてみましょう。

➤骨ミネラル量・骨密度と骨粗鬆症
骨粗鬆症の発症は、思春期の骨の状態で決まるという話があります。6-36歳の男女100人ずつを対象に、骨ミネラル量と骨密度を5年間追跡した研究では、思春期前の段階では骨ミネラル量や骨密度に性差がないこと、思春期の時期で骨密度の成長率が最も高くなること、骨ミネラル量と骨密度のピークは思春期直後(20-25歳の間)で達成するが男性よりも女性の方が早くピークに達することなどを報告しました⁷⁾。除脂肪量(骨格筋量)と骨ミネラル量は相関関係があります。つまり思春期に骨格筋量を発達させるよう介入することが、将来的な骨粗鬆症の予防に繋がるということです。


子供の頃から早い段階で健康的な生活習慣を身に付ける

上記のお話からも分かるように、子供の体成分を管理することはとても大事なことです。子供の体成分は思春期が始まるタイミング、成人期の健康状態、将来的に病気を発症するリスクと関連しています。子供達の目標は、ボディービルダーになることではありません。大人に成長して子供の頃より新陳代謝が落ちても健康な体であること、将来的に健康上の問題が発生しないよう、子供の頃から健康的な体成分を維持することです。

子供と過ごす休日は、テレビやゲームで一日中費やすのではなく散歩や公園に出かけてみましょう。新鮮な野菜や果物を取り入れて、栄養バランスを考慮した食事メニューを選択してください。子供が定期的な運動や健康的な食事習慣を身に付けるには、周りの大人達の手助けが必要です。特に小さい子供では自分の食事や生活スタイルをコントロールできないので、この時期の肥満は保護者の責任でもあります。お子様の体成分は正常範囲なのか? 同年代と比較してどの位置にいるのか? 将来的な病気のリスクを抱えているのか? 調べてみたい方は、是非一度InBody測定を検討してください。

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参考文献
1. Wang Y. Is obesity associated with early sexual maturation? A comparison of the association in American boys versus girls. Pediatrics. 2002 Nov;110(5):903-10.
2. Kauli R et al., Final height of girls with central precocious puberty, untreated versus treated with cyproterone acetate or GnRH analogue. A comparative study with re-evaluation of predictions by the Bayley-Pinneau method. Horm Res. 1997;47(2):54-61.
3. 10代の心と身体のガイドブック, 米国小児科学会編, 関口進一郎, 白川佳代子監訳
4. Siervogel RM et al., Puberty and body composition. Horm Res. 2003;60(Suppl 1):36-45.
5. Guo SS et al., Predicting overweight and obesity in adulthood from body mass index values in childhood and adolescence. Am J Clin Nutr. 2002 Sep;76(3):653-8.
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7. Nguyen TV et al., Sex differences in bone mass acquisition during growth: the Fels Longitudinal Study. J Clin Densitom. 2001 Summer;4(2):147-57.

 

 

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体成分改善に効果的な運動頻度は?

運動は健康増進やダイエットなどの体成分改善に必要不可欠です。運動の必要性を分かっていても、「どのような運動をすれば良いのか?」「週に何回運動をするのか?」具体的に計画を立てる際につまずく人も多いかと思います。毎日がむしゃらに運動を行えば、運動の効果はすぐに出てくるのでしょうか? 今回は体成分改善と運動頻度の関係性について確認してみましょう。


体成分改善の目標と運動の関係

頻度について話す前に、体成分改善の目標と適切な運動について簡単に確認してみましょう。一般的に運動は有酸素運動と筋トレ(無酸素運動)で分けることができ、有酸素運動は体脂肪量の減少に、無酸素運動は筋肉量の増加に効果的と言われています。しかし、どの運動も片方だけに効果があるわけではなく、より効果的であるという考え方が正しいと言えるでしょう。従って、体脂肪量と筋肉量のどちらも改善を目的としている場合は有酸素運動と筋トレの割合を調節しながら自分の目標に適した運動計画を立てる必要があります。また、運動と食事管理を並行しながら体成分の変動を定期的に確認し、有酸素運動と無酸素運動の割合やトレーニング部位を変えるなどの工夫も重要です。

勿論、運動を日常化することは良いことですが、だからと言って毎日高強度の筋トレを続けるのが良いとは言い難いです。筋トレの場合、毎日行うと疲労ばかりが蓄積されてかえって筋肉量を減らす結果となる恐れもあります。そのため、運動効果を高めるためには適度な休息を入れることで筋肉を超回復させなければなりません。
※ 筋肉増加と休息の関係について詳しく知りたい方は、InBodyトピックの「疲労と回復のメカニズム」もご覧ください。

では、体成分の改善に有効な運動頻度は次の中どれでしょうか?
① 週5日
② 週3日
③ 週2日

ここからは上記3つの運動頻度の理論とその効果について説明します。

⓵週5日プランの理論と効果
週5日プランは平日運動し、週末に休息日を取り入れる方法です。週5日プランの特徴は「トレーニング部位を分けて計画を立てる」ことです。運動部位を分けることで前日に鍛えた部位は休ませ、その間に他の部位を鍛えることで筋肉の回復時間の確保と運動の継続を両立させるという理論です。次は週5日プランの計画例です。

【週5日プランの運動計画例】
月曜日: (背中と上腕)背筋・上腕二頭筋・上腕三頭筋
火曜日: (胸と腹部)胸筋・腹筋
水曜日: (肩)広背筋・三角筋・ローテーターカフ
木曜日: (大腿と下腿)大腿四頭筋・ハムストリングス・ヒラメ筋
金曜日: (腰部)腸腰筋・大殿筋
土曜日: 休息
日曜日: 休息

これはあくまで一つの例で、部位の分け方を変えたり、5日のうち1日は有酸素運動にしたりなど自由に構成できますが、「ほぼ毎日」「違う部位を運動する」がポイントです。このように、週5日プランでは体を5つに分けて毎日違う部位を鍛え、一度鍛えた部位は残り6日にかけてゆっくり回復させるという理論を基にしています。

この方法は一見、毎日違う部位を鍛えながら十分な休息も取れる効率的な方法のように考えられます。しかし、最近の研究ではこの方法は思ったより筋肉量を増加させないことが分かりました¹⁾。特定部位の筋肉量を増やすためには同じ部位の筋トレを週2回行う方が望ましいという研究結果が報告されたのです。勿論、週5日プランが運動を習慣化させて健康増進に役立つことは間違いありませんが、筋肉量を増やすことが主な目的である場合は他の方法を検討したほうがいいかもしれません。

⓶週3日プランの理論と効果
週3日プランは普段の生活が忙しく、運動できる日を多く確保するのが難しい人にとって、選択しやすい方法でしょう。また、運動があまり好きでない人でも週5回プランに比べると、週3回プランの方はあまりストレスを感じずに継続できます。毎日運動すると計画を立てた後に運動計画を守れなくなって、そのまま運動を諦めてしまった経験がある方は少なくないでしょう。しかし、週3日プランであれば多少計画がずれても本来の計画を修正して対応できるため、諦めずに続けやすくなります。

週3日プランの特徴は、上半身または下半身でより鍛えたい部位を週2回運動するスケジュールを組んだり、「全身筋トレ-有酸素運動-全身筋トレ」のような組み合わせを作ったりすることで、効率的に体を鍛えられることです。しかし、週3日だと体成分を改善させるには運動頻度が少ないと感じる方や、高強度で運動する必要があるのではないかと心配される方がいるかもしれません。

大学生における週3日プランの効果を検討した研究²⁾では、運動強度に関係なく週3日の運動が除脂肪量を有意に増加させており、体成分を改善させるには週3日でも十分であることが示されました。このように、週3日プランは体成分の改善効果もありながら、あまりストレスを感じずに持続できる方法と言えます。

⓷週2日プランの理論と効果
週2日プランというと体成分改善の効率的な運動頻度としては不十分で、その効果は良くて健康維持程度だろうと思われるかもしれません。週5日が厳しすぎて続けられるか心配になる頻度であれば、週2日は運動することを忘れてしまいそうなほど少ない気もします。週2日プランは体成分を改善する効果があるのでしょうか。

週2日プランの効果を検証した研究³⁾では、週2日プランを20週間行い、体成分の変化を確認しました。その結果、筋肉量が有意に増加する結果が示されています。ただ、この研究には重要なポイントが一つあります。それは「全身運動をした場合」に体成分が有意に改善したということです。週5日プランの説明で述べたように、筋肉が成長するためには週2回同じ部位を鍛える必要があり、週2日プランでこれが全身にかけて行われていたため体成分が有意に改善したと考えられます。つまり、週2日の頻度で筋肉量を増やしていくには、1日で全身の筋肉を鍛えられる筋トレや全身運動を組まないとその効果を期待できないかもしれません。


終わりに

運動頻度に関わらず、定期的な運動は体成分改善の効果が期待できます。これは週何日運動をするかではなく、”継続すること” が重要であることを示します。週5日運動すると意気込んでも、仕事が忙しいなどの理由から途中で諦めてしまっては何も得られません。週2日でも継続することで、いつかは “体成分改善” というゴールに辿り着けるでしょう。他人のやり方を無理してマネすることより、自分のライフスタイルに適した方法を探して続けることが大事です。まずは今のあなたに適している運動頻度を見つけて、運動を継続していきましょう。

 

参考文献
1. Schoenfeld BJ, Ogborn D, Krieger JW. Effects of Resistance Training Frequency on Measures of Muscle Hypertrophy: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Med. 2016 Nov;46(11):1689-1697.
2. Thomas MH, Burns SP. Increasing Lean Mass and Strength: A Comparison of High Frequency Strength Training to Lower Frequency Strength Training. Int J Exerc Sci. 2016 Apr 1;9(2):159-167.
3. Calder AW, Chilibeck PD, Webber CE, Sale DG. Comparison of whole and split weight training routines in young women. Can J Appl Physiol. 1994 Jun;19(2):185-99.

 

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真夏の食欲低下対策

夏本番を迎え、暑い日々が続きますがいかがお過ごしでしょうか? 暑くなってくるとどうしても食欲が落ちやすくなります。食欲は人間の三大欲求の1つであり、生命を維持する上で非常に重要な欲求です。夏になると暑さによる体力の消耗が激しくなるため、しっかり食事を摂り体力を維持することが大事ですが、食欲が落ちてしまい食事も疎かになりやすいです。栄養を摂らないといけないはずなのに、どうして食欲は落ちるのでしょうか? また、食欲がない中でどうやって栄養を摂取すればよいのでしょうか? 今回は食欲についてお話ししていきます。


食欲のメカニズム

そもそも、食欲はどのようにして生まれるのでしょうか?

食欲を制御するのは脳内の視床下部にある摂食中枢(空腹中枢)と満腹中枢の2つです。名前の通り、摂食中枢は空腹を感じさせて食事を促し、満腹中枢は満腹を感じさせて食欲を抑える働きをしています。視床下部は自律神経系(交感神経・副交感神経)の機能および内分泌機能を総合的に調節しています。食事や飲水、睡眠などの本能行動、また怒りや不安などの情動行動など様々な行動が視床下部によってコントロールされています。

空腹になると血糖値が下がり体内の脂肪が分解されて脂肪酸が遊離します。その脂肪酸が摂食中枢を刺激し空腹状態を実感させることで、食欲がわき食事するように仕向けています。胃の中が空になると摂食中枢に食欲をわかせる信号が伝わる場合もあります。そして、食事から摂取した栄養素が分解されると血中グルコース濃度が高くなって血糖値が上昇し、満腹中枢が刺激されて満腹状態を実感させることで食欲を抑えます。このように、食欲は自律神経系によって調節されていますが、何らかの原因で自律神経系のバランスが乱れると、食欲が落ちてしまうのです。


夏バテと食欲

6月の梅雨から9月にかけて続く、日本独特の高温多湿で不快な夏の気候は、体にストレスとして働き自律神経系を乱してしまいます。これが、いわゆる「夏バテ」状態です。

自律神経系は交感神経と副交感神経に分かれ、相互作用によって常に体の内部環境を一定にするように働いています。日中には交感神経が優位となり、血圧や脈拍を上げ、胃腸の動きを減らして筋肉を緊張させ体を活動状態にします。日が暮れて夜になると副交感神経が優位となり、血圧や脈拍を下げて筋肉を弛緩させて体をリラックス状態にしつつ、胃腸の動きを高めて食べ物の消化・吸収を促します。

自律神経系は気温の変化に応じて、血流や発汗を調節して体温を一定に保つ働きも担っています。暑いときは体の表面に近い血管を大きく拡張させて血流を増やしたり発汗させたりすることで、体外へ熱を逃がして体温が上がらないように調節します。逆に、寒いときには血管を縮めて血流を減らすことで、できるだけ熱が体外へ逃げないように調節します。

夏バテは屋外の高温環境と屋内のエアコンが効いた冷房環境を1日に何度も行き来し、急激な気温差に24時間対応し続けた結果、自律神経系が疲労してバランスが崩れてしまうことで発生します。自律神経系から指示を受けている臓器も機能が低下し、胃腸の不調や食欲の低下など様々な症状に襲われます。


食欲低下の原因と対策

食欲低下は自律神経系の乱れから引き起こされますが、自律神経系が乱れる原因にはどのようなものがあるのでしょうか? 自律神経系が乱れる理由とそれを抑えるためにどのような対策を取ればよいのかご紹介します。

➤睡眠不足
夏は熱帯夜でなかなか寝付けなかったり、折角寝付いても眠りが浅かったりなどで睡眠の質が低下しやすいです。自律神経系を含む脳の疲労回復には睡眠が一番大切ですが、睡眠不足で回復ができない状態が続くと食欲の低下を招く原因になります。寝る時はエアコンや扇風機を使用して室温を調整し、十分な睡眠ができるよう心掛ける必要があります。昼寝やうたた寝では脳は回復しないため、夜に最低6時間以上連続して睡眠を取る必要があります。

➤気温差による身体的・精神的ストレス
前述の通り、夏場に自律神経系が疲労する大きな原因が気温差です。特に近年は地球温暖化によって外はより暑く、エアコンの普及で建物や電車内はより冷えており、極端な気温差が1日の内に何度も発生するため、自律神経系に大きな負担がかかります。

日中の家の中やオフィスの温度は、実測値で26~27℃程度に保ち冷え過ぎないようにしましょう。従って、各部屋に温度計を設置し、実測値に基づいてエアコンの温度を調節するのがおすすめです。また、過ごしやすい気温は人それぞれで、暑がりの人がエアコンの設定温度を一気に下げると冷えに弱い人は体調不良になりやすいです。そのため、暑がりの人には個人用扇風機などを利用してもらい、部屋全体が冷え過ぎないようにすることが大切です。

夜間はエアコンの効き過ぎに十分注意しましょう。睡眠時は体温が下がって冷えやすくなるため、起きている時よりも高めの温度設定にしてください。食事や飲み物も暑いからといってキンキンに冷やした物ばかりでは体の芯が冷えてしまいます。温かい料理や汁物を食事のメニューに一品は加えて、胃腸を冷やし過ぎないようにしましょう。

➤栄養不足
夏は食欲がないことであっさりした簡単なもので食事を済ませがちになります。蕎麦やそうめんなど、冷たい麺類ばかり食べてはいませんか? その結果、疲労回復に必要なタンパク質が不足してしまい、食欲低下がより深刻になる悪循環に陥ります。タンパク質は五大栄養素にも含まれる重要な栄養素ですが、夏は特に意識して摂るようにしましょう。
※タンパク質について詳しく知りたい方は、InBodyトピックの「五大栄養素 -タンパク質Ⅰ-」もご覧ください。


食欲がない時にお勧めの食品

食欲がないからと言って食事を抜いてしまうと、健康を損なう恐れもあります。ここでは、食欲がない時も比較的食べやすいお勧めの食品をご紹介します。

➤口当たりの良い食品
おかゆ・雑炊・うどんなどの柔らかい炭水化物や、ヨーグルト・ゼリー・プリンなど飲み込みやすい食べ物を選びましょう。食べ物を咀嚼し飲み込むことは思っている以上に体力を使います。少しでも食べることの負担を和らげると良いでしょう。

➤緑黄色野菜や海草類などビタミン・ミネラルを含む食品
ビタミンやミネラルはタンパク質の吸収・代謝を助けます。夏野菜を積極的に食事に取り入れてタンパク質と一緒に摂取するように心がけましょう。

➤食欲を増進させるクエン酸を含む食品
クエン酸は主にレモンやグレープフルーツなどの柑橘類に含まれる酸味成分です。酸味は唾液や胃液の分泌を促進し、食欲を増進させる効果があります。クエン酸は柑橘類以外にもお酢・梅干し・パイナップルなどにも含まれているため、普段の食事にお酢や梅干しで味付けすることで食欲増進効果が期待できます。クエン酸には食欲を促進する効果以外にも、乳酸を分解する疲労回復効果・汗をかいて失いやすいミネラルの吸収を助ける効果・新陳代謝を活発にして古くなった角質をスムーズに作り替える美肌効果などの様々なメリットがあります。

➤食欲を刺激してくれる香辛料
香辛料に含まれる辛味成分は消化器の粘膜を刺激して唾液や胃液の分泌を促すことができます。更に、腸の蠕動運動を促進させることで栄養の吸収も高めます。意識的に大葉やにんにく・しょうが・とうがらしなどを食事の薬味や味付けに使ってみましょう。カレーのように複数の香辛料を使用すると、相乗効果で更に食欲が増します。但し、香辛料は刺激が強いものもあるので、胃腸が弱っている場合は余計に負担をかけてしまうため注意が必要です。

今はコロナ禍で難しいですが、外食をしたり友人と一緒にご飯を食べたりすることも食欲増進に繋がります。親しい人と楽しむ食事は自然と食欲もわいてきます。家族で一緒に暮らしていても、生活リズムや帰宅時間が違うことで孤食になりがちですが、たまには時間を合わせて一緒に食事するのも良いかもしれません。今回のトピックを是非参考にして、厳しい夏の暑さを乗り越えるのに役立ててください。

 

参考文献
1. 岡田 忍監修 『看護のための症状Q&Aガイドブック』 サイオ出版
2. 日本成人病予防協会 『夏バテ予防』

 

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体水分均衡の特徴と重要性

日常的に体成分測定をされる方で、筋肉量と体脂肪量を確認している方は多いと思います。確かに両者は馴染みがあり、誰でも理解しやすい項目ですが、体成分測定で見逃してはいけない項目が他にもいくつかあります。その代表的な項目が体水分量や体水分均衡です。成人における体水分は体重の約6割を占める成分であり、健康状態を評価する上でとても大切です。体水分均衡は浮腫や痩せの指標としても活用されている項目です。今回は人体における体水分の役割とそのバランスの重要性についてお話します。


体水分率とは ?

体水分は体に存在する水成分(H₂O)を意味し、主な役割は酸素や栄養分を細胞に届け、老廃物を尿として排出することです。また、体温が上がったときは皮膚表面の血管に血液を集め、熱を逃がすための発汗を促すことで体温を一定に保ちます。

体重に対する体水分量の割合を体水分率と言います。年齢、性別、日々の運動量によって個人差はありますが、胎児では体重の約90%、新生児では約75%、子供では約70%、成人では約60~65%、高齢者では約50~55%が体水分で占められています。成長するに従って体水分の割合が減る理由は、水分を殆ど含まない体脂肪の割合が増えるためです。また、一般的に男性よりも女性の方が体脂肪量は多いので、男性の体水分の割合は女性より高いです。一方、体水分量は加齢に伴って減りますが、これは老化によって細胞内の水分が減少することが原因です。体水分率は水分摂取量、身体活動量、体調などで変動しますが、人体は常に一定の体水分量を保とうとするため、1日の水分摂取量と排出量はほぼ一致します。

体水分は筋肉の主な構成成分であり、体水分量が多い人は筋肉量も多いです。そのため、体水分率の増加=筋肉量の増加による体成分の改善と思われがちですが、浮腫みによっても体水分は増加するため、必ずしも体水分率の増加が健康の改善を意味するわけではありません。従って、現在の体水分状態が良好な傾向であるかどうかを判断するためには、体水分率ではなく体水分均衡を確認する必要があります。体水分均衡とは細胞内水分と細胞外水分のバランスを意味し、InBodyの細胞外水分比(ECW/TBW)という項目で確認できます。この指標が表していることや、水分バランスを整えることの重要性を理解するためには、まず細胞内・細胞外水分について知る必要があります。
※細胞外水分比は、InBody470/270以外の機種で測定できます。


水分バランスとは ?

体内の純粋な水成分である体水分(Total Body Water; TBW)は、細胞膜を隔てて細胞内水分と細胞外水分に分けることができます。
➤細胞内水分量(Intracellular Water; ICW)
ICWは細胞膜の内側に存在する水分であり、健康な人体におけるICWの割合はTBWの約62%です。ICWの主な役割は細胞膜の外側まで運ばれてきたエネルギー源を細胞小器官まで届けることです。

➤細胞外水分量(Extracellular Water; ECW)
ECWは細胞膜の外側に存在する水分であり、血液、間質液、細胞通過液、リンパ液などが該当します。健康な人体におけるECWの割合はTBWの約38%です。ECWの主な役割は細胞へ栄養素や酸素を運搬したり、細胞内の代謝過程でできた老廃物を細胞外に運び出したりすることです。

両者の間では常に水分・栄養・酸素などの行き来がされており、お互いの均衡を保とうと働いています。その均衡を表す指標が細胞外水分比(ECW/TBW)で、TBWに対してECWが占める割合を意味します。健康な人の水分バランスは常に細胞内水分と細胞外水分を62対38で維持するので、ECW/TBWは0.380前後が計測されます。この値は大量の水を摂取したからといって、大きく変動することはありませんが、何かしらの原因で水分バランスが崩れるとECW/TBWは標準よりも高くなります。


体水分の測定方法

体水分状態を確認する方法は2つあります。

➤重水と臭化ナトリウムによる希釈法
希釈法とは体水分中に自由に拡散する性質の成分を経口摂取し、一定時間後に採取した尿から摂取した成分の濃度を測定することで、体水分を算出する方法です。TBWを測定する際に用いられる成分は重水(D₂O)、ECWは臭化ナトリウム(NaBr)です。この希釈法はTBWやECWを最も正確に測定できる方法(ゴールドスタンダード)として認識されています。しかし、体内に存在しない成分を経口摂取するという侵襲的な方法は、時間と手間がかかり且つ専門的な知識・技術が必要なので、気軽に測定することは難しいです。

➤生体電気インピーダンス分析法(BIA法)
一方で、非侵襲的で気軽に測定できる方法としてBIA法があります。BIA法は、人体に微弱な電流を流し、その際に発生する抵抗値(インピーダンス)から体水分を測定します。直接部位別多周波数BIA法(DSM-BIA法)を用いるInBodyは、両腕・体幹・両脚ごとのICWとECWを測定することができるので、部位別に水分バランスを把握することができます。
※BIA法の詳しい測定原理については、「InBodyの技術」ページをご参照ください。


水分バランスが健康に及ぼす影響

水分バランスが崩れてECW/TBWが高くなる要因は大きく2つあり、それぞれが健康に及ぼす影響は次のようなことが挙げられます。

パターン①:細胞外水分量(ECW)が増えてECW/TBWが高くなる
➤炎症
怪我によって発赤したり、腫れて痛みを感じたりする現象を炎症と呼び、血管の拡張や血流の増加などの影響で炎症部位のECWが増加します。一過性の急性炎症は比較的早く回復するので、ECWの増加も一時的なものとして観察される反面、慢性炎症は細胞ストレスや機能不全によって引き起こされるので、ECWの増加が長期に渡って続きます。慢性炎症状態が長引くほど、肝疾患、心疾患、がんなどの深刻な病気に繋がる恐れがあります。

➤腎疾患
腎臓の主な役割は血液をろ過して体内で生成されるナトリウムなどの老廃物を取り除くことです。腎臓の機能が低下している人が塩分を多く含む食事を摂取すると、ろ過機能が低下した腎臓は老廃物を水分と一緒に排泄しきれなくなります。そして、排出されなかった老廃物と水分は体内に溜まり、浮腫みを発生させます。排出されずに溜まった水分はECWに該当するので、ECW/TBWは増加します。腎機能低下による浮腫みは体重の増加、血圧の上昇、心不全や脳卒中のような合併症リスクを増加させるなど、様々な健康問題を引き起こします。

➤肥満
肥満はECWも増加させます。内臓脂肪が増加すると血圧やECWに影響するホルモンの調節機構(RAA系)が活発になり、血圧は上昇してECWも増加してしまいます¹⁾。また、過剰な体脂肪は血管を圧迫して血流を悪くするので体内に余分な水分を溜めてしまいます。

パターン②:細胞内水分量(ICW)が減ってECW/TBWが高くなる
➤サルコペニア
体水分量は加齢に伴って減少する傾向があります。ECWとICWの両方が減少していきますが、ECWに比べてICWの減少率が大きいので、結果的にECW/TBWは高くなります。これは水分をたくさん保持している筋肉量が減少することに起因します。このような加齢による筋肉量や筋力の低下をサルコペニアと言い、様々な疾患のリスクや重症度を高める因子とされています。例えば、2型糖尿病は体脂肪量の増加だけが原因で発症すると認識されがちですが、実は筋肉量の減少に伴うインスリン抵抗性(糖を体に吸収するインスリン作用が十分に働かない状態)の増大でも発症リスクは高まります²⁾。また、動脈硬化(動脈が硬くなって血管の流れが悪くなる状態)は生活習慣病だけでなく、下半身における筋肉量の減少も要因の1つであることが明らかになっています³⁾。
※サルコペニアについては、トピック「サルコペニアの理解に必要なこと」もご参照ください。

これとは逆に、ICWが増加することでECW/TBWが標準より低くなることもあります。これは水分バランスが崩れているわけではなく、むしろ筋肉が引き締まっている状態を意味します。筋肉は筋肉細胞の数が増えたりICWの増加に伴って肥大したりすることで、筋繊維のサイズが大きくなり成長していきます。この筋肉とICWの関係性は研究でも明らかになっており⁴⁾、ECW/TBWは筋肉の質の指標としても使えることが分かります。例えば、筋肉量が比較的多い運動選手や若い男性のECW/TBWは標準値より低くなる傾向があります。


終わりに

適切な水分バランスを保つことは健康においてとても重要なことです。特に持病もなく、栄養バランスの良い食事と定期的な運動をしている人は水分バランスが崩れることは殆どありません。しかし、何かしらの原因でECWが過剰に増えたり、ICWが減少したりして水分不均衡が起こっている場合は、その原因によって対処法は変わってきますが、ECW/TBWをモニタリングしながら改善していく必要があります。

体水分均衡(ECW/TBW)は筋肉量や体脂肪量と同様に体成分を評価する上では欠かせない指標です。水分バランスの項目を提供する機種で測定された際は、ぜひこの項目も確認してみましょう。

 

参考文献
1. Christiane Rüster et al., The role of the renin-angiotensin-aldosterone system in obesity-related renal diseases. Semin Nephrol. 2013 Jan;33(1):44-53
2. Noboru Kurinami et al., Correlation of body muscle/fat ratio with insulin sensitivity using hyperinsulinemic-euglycemic clamp in treatment-naı¨ve type 2 diabetes mellitus. diabetes research and clinical practice 120 (2016)65–72
3. Yuji Tajiri et al., Reduction of skeletal muscle, especially in lower limbs in Japanese type 2 diabetic patients with insulin resistance and cardiovascular risk factors. Metabolic Syndrome and Related Disorders 2010 Apr;8(2):137-42
4. Alex S Ribeiro et al., Resistance training promotes increase in intracellular hydration in men and women. Eur J Sport Sci. 2014;14(6):578-85

 

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五大栄養素番外編 -食物繊維Ⅱ-

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -食物繊維Ⅰ-

前回のトピックでは食物繊維とは何かを中心にご紹介しました。今回のトピックでは様々な種類の食物繊維が持つ効果についてご紹介します。


食物繊維の種類によって健康にもたらす効果は異なる

前回のトピックでも説明した通り、食物繊維は大きく水溶性と不溶性に分類され、それぞれで健康に及ぼす効果は異なります。

➤ 水溶性食物繊維は体脂肪量の蓄積を防ぐ
水溶性食物繊維は体脂肪量を減らすのに効果的であると言われています。2014年にオーストラリアで行われた研究によると、水溶性食物繊維は腸内フローラ(腸内細菌の総称)のバランスを改善させることでインスリン感受性を改善します¹⁾。インスリン感受性とは、血糖値を一定に保とうとするインスリンの働きが正常に作用しているかの程度を示します。インスリン感受性が低いと、インスリンの分泌量が正常にも関わらず、インスリンの効果が十分に発揮できていない状態を意味します。インスリン感受性を改善させ、インスリンの働きを正常にすることで、余分な糖を体脂肪量として体内に蓄積することを防ぐため、体脂肪量の増加を抑えることができます。
また、2017年にアメリカで発表された研究によると、水溶性食物繊維は血糖コントロールを改善させたり、LDLコレステロール値を低下させたりする大きな効果を示しましたが、それが不溶性食物繊維では示されませんでした²⁾。つまり、LDLコレステロール値を下げて血糖値とインスリン感受性を正常にするためには、水溶性食物繊維の摂取がおすすめです。

➤ 不溶性食物繊維は慢性便秘を防ぐ
よく便秘解消のためには食物繊維の摂取が有益であると聞いたことはありませんか? しかし、全ての食物繊維がそのような効果を示すわけではありません。2012年にシンガポールで発表された研究では、特発性便秘(原因不明の便秘)とそれに関連する症状は、大きい・粗い形状の不溶性食物繊維がより効果的であると報告しています³⁾。また、同研究ではそれらの症状に対して水溶性食物繊維は効果的ではなく、むしろ、摂取を止めたり、控えたりすることで軽減できると結論付けています。ただ、前回のトピックでもご紹介したように、不溶性食物繊維のは便秘を悪化させるので、あくまでも適量摂取を心掛けてください。

このように、同じ食物繊維でも水溶性と不溶性は異なる効果を持つため、どちらもバランス良く摂取することが大切です。


レジスタントスターチ

レジスタントスターチ(難消化性デンプン)は食物繊維の一種で、食事に取り入れたほうが良いのではないかと最近になって注目されています。通常のデンプンは小腸で消化・吸収されますが、レジスタントスターチは小腸で消化・吸収されずに大腸まで到達し、コレステロールを排出して血中コレステロールを低下させたり、蠕動(ぜんどう)運動を活発にして便通を改善させたりする、水溶性と不溶性の食物繊維両方の働きをします。

また、レジスタントスターチには大腸がんの発症率を低下させる働きがあると言われています。2013年に日本で発表された研究では、レジスタントスターチは大腸内にとって有害な物質の生成を抑制して、大腸内環境を改善させる効果があると報告されています⁴⁾。大腸がんは食事との関連性が良く言及されていますが、レジスタントスターチをバランス良く摂取することで大腸がんの予防に役立ちます。

レジスタントスターチはデンプン質を豊富に含む白米・トウモロコシ・ジャガイモ・インゲン豆・大麦・全粒小麦などに含まれています。レジスタントスターチは加熱すると減少し、冷やすと増える特質を持つため、調理後に冷やしてから食べると効率よく摂取できます。例えば、お寿司・冷やしうどん・冷製スープやパスタなどの料理が挙げられます。また、冷やしたレジスタントスターチを再加熱すると含有量は減少してしまいますが、常温に戻す程度では減ることがありません。


終わりに

腸内フローラと健康に関する様々な研究が進むと共に、腸活という言葉も出るほど食物繊維への関心は高まり、腸内環境の改善に必須不可欠であると認識されるようになりました。また、食物繊維はエネルギー源としての役割はないものの、血糖値の上昇を抑えたり、便通を良くしたりなど様々な効果を持っている、健康維持に欠かせない栄養素として位置付けられています。

残念なことに、近年は食事の欧米化が進んだ影響で十分な食物繊維摂取量を確保できていません。意識的に食物繊維を含む様々な食品を食生活に取り入れて摂取量を増やしていく必要があります。食物繊維を摂取する手段としてサプリメントも挙げられますが、サプリメントは過剰摂取になりやすかったり、体調や体質によってはお腹が緩くなったりするため、可能な範囲で食品から摂取することを心掛けましょう。

最後に栄養バランスの良い食事を効率よく取るためには、タンパク質・ビタミン・脂質・炭水化物・ミネラル・食物繊維などの特定の栄養素だけを摂取するのではなく、全ての栄養素を満遍なく摂取する必要があります。各栄養素の組み合わせによっては相乗効果が生まれることもあり、体が必要としない栄養素はないからです。バランスが取れた食事と健康は密接に関係していることを忘れないでください。

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -食物繊維Ⅰ-

 

参考文献
1. S Carnahan et al., Prebiotics in obesity. Panminerva Med. 2014 Jun;56(2):165-75.
2. Johnson W.McRorieJr.et al., Understanding the Physics of Functional Fibers in the Gastrointestinal Tract: An Evidence-Based Approach to Resolving Enduring Misconceptions about Insoluble and Soluble Fiber. J Acad Nutr Diet. 2017 Feb;117(2):251-264.
3. Tetsuya Otani et al., Stopping or reducing dietary fiber intake reduces constipation and its associated symptoms. Int J Cancer. 2006 Sep 15;119(6):1475-80
4. 早川 享志, 健康増進に寄与するルミナコイドとしてのレジスタントスターチの働き. 日本醸造協会誌. 2013; 108(7):483-493

 

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五大栄養素 -ミネラルⅡ-

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -ミネラルⅠ-

前回のトピックでは、ミネラルの役割や過剰摂取と不足によるリスクについてご紹介しました。今回のトピックでは、ミネラルを多く含む食品や効率よく摂取するための食品(栄養素)の組み合わせをご紹介していきます


ミネラルを多く含む食品

ミネラルを多く含む代表的な食品には、魚介類・藻類・種実類・野菜・加工食品などがあります。ここでは多量ミネラルを多く含む食品の一部と、その摂取目安となる必要量をご紹介します¹⁾²⁾。
「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より改変

五大栄養素の中でも、ミネラルやビタミンは微量栄養素なので、各個人で必要量は変わってきます。「運動量」「生活環境」「年齢」そして「体成分」などが必要量に関わる要因です。年齢毎で定められている必要量を基準に、一人一人の生活習慣を考慮して、理想的な食事メニューを考えるようにしましょう。


ミネラルも豊富なスーパーフード ”ナッツ”

ナッツは、ミネラル・ビタミン・ヘルシーな脂質(不飽和脂肪酸)を含む栄養価の高い食品で、リン・カリウム・マグネシウムなどのミネラルの他にも、ビタミンB1・B2・B6・B9、食物繊維など様々な栄養素を豊富に含んでいます。中でもクルミは、必須脂肪酸のひとつであるα-リノレン酸を多く含んでいます¹⁾。α-リノレン酸は悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やすヘルシーな脂質として摂取したい栄養素です。一般に、加工された状態で販売されるナッツは健康的利点が小さく、砂糖などの影響でカロリーが高いものもあります。従って、加工されたナッツ類を買うときはカロリーや加工の種類を確認し、少量を摂取するようにしましょう。

ナッツの適度な摂取を推奨している、DASH(Dietary Approach to Stop Hypertension)食や地中海食は、血圧を下げ心機能を改善し、心血管疾患・糖尿病・がん・メタボリックシンドロームに関連する病気のリスク軽減に貢献すると報告されており、十分なエビデンスが存在する食事法です³⁾⁴⁾。DASH食ではナッツ類を1日あたり1カップ、地中海食では毎食ナッツ類を摂取することを推奨しています。


ミネラルも豊富な日本伝統のスーパーフード “味噌”

味噌はナトリウムが多い食品のイメージがありますが、主原料である大豆はとても栄養豊富な食品です。更に発酵することで栄養価も高まることから、日本伝統のスーパーフードとして様々な健康効果が実証されています⁵⁾。味噌はナトリウム以外にも、カリウム・マグネシウム・カルシウム・鉄・亜鉛などのミネラルの他、ビタミンB1・B2・B6・B12、ナイアシン・葉酸・食物繊維など、様々な栄養素を豊富に含む食品です。

毎日の食事で味噌汁を食べている人は多いと思いますが、順天堂大学医学部の小林弘幸教授は、味噌汁の健康効果をさらに高める「長生きみそ汁」を考案しています⁵⁾。ストレスの軽減効果を持つGABAが豊富な白みそ・抗酸化作用をするメラノイジンが豊富な赤みそ・解毒効果を持つケルセチンが豊富な玉ねぎ・余分な塩分の排出に役立つカリウムが豊富なりんご酢を掛け合わせた「長生きみそ玉」を使用して味噌汁を作り、具材としてワカメ・もずく・とろろ昆布・めかぶ・ひじきなど、ミネラルが豊富な海藻類も追加してみましょう。


ミネラルと相性の良い栄養素・悪い栄養素

ミネラルはビタミンとの相性が良いので、一緒に摂取することでさらに大きな力を発揮します⁶⁾。カルシウム・カリウム・鉄・亜鉛・セレンはビタミンCと相性が良く、カルシウムはビタミンD・ビタミンKとも仲良しです。ミネラル同士の中でも、カルシウムはマグネシウムとカリウム、カリウムはナトリウム、鉄は銅と相性が良いです。

一方で、栄養素には相性の悪い組み合わせが稀にあります。リンとカルシウムはそれぞれミネラルとして必要な栄養素ですが、リンを多く摂取するとカルシウムが吸収されにくくなり、骨に存在するカルシウムが血液に溶け出してしまうことがあります。現代の食事では加工食品など、食品添加物が入っている食品を食べることが多いため、リンの摂り過ぎに注意が必要です。リンとカルシウムは、1:1の割合で摂るようにしましょう。また、食物繊維も摂り過ぎるとマグネシウムとカルシウムを排出してしまうので、組み合わせが良いとは言えません。


終わりに

ここまでで、私たちが生きていくうえで必要不可欠な5種類の栄養素を『五大栄養素』として紹介しました。最近の栄養学では食べる順番も重要視されており、➀食物繊維が豊富な野菜 ➁タンパク質が豊富な魚肉類 ➂炭水化物を多く含む主食類 という順番で食べることで、血糖値の急激な上昇を抑えられます。血糖値をゆっくり上げる食べ方は、糖尿病のリスクを下げるだけでなくダイエットにも効果的です。5つの栄養素をバランス良く食事に取り入れて、それらを摂取する順番も工夫することで、栄養素それぞれの働きを最大限に活かしてください。

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -ミネラルⅠ-
 

参考文献
1. 正しく知れば体が変わる!栄養素の摂り方便利帳, 中村丁次 監修
2.「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 文部科学省
3.「地中海食の特徴」 公益財団法人長寿科学振興財団
4. 高血圧治療ガイドライン2019, 日本高血圧学会 発行
5. 医者が考案した「長生きみそ汁」, 小林弘幸 著
6. マンガでわかるまるごと栄養図鑑, 代居真知子 著, 五明紀春 監修

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五大栄養素 -タンパク質Ⅱ-

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -タンパク質Ⅰ-

前回のトピックではタンパク質の役割や、過剰摂取と不足による悪影響についてご紹介しました。今回のトピックでは効率良くタンパク質を摂取する方法をご紹介していきます。


プロテインの種類と効果


プロテインは、加工の過程で脂肪分や炭水化物が取り除かれるため、タンパク質の含有量が高く、タンパク質をたくさん摂取するにはお勧めです。プロテインは牛乳が原料であるホエイプロテイン・カゼインプロテインや、大豆が原料であるソイプロテインなど、様々な種類があります。また、ビタミン・ミネラルを加えることで、タンパク質の吸収効率も高まるので、一緒に摂取するように心掛けましょう。使用目的に合わせて、最適なプロテインを選べるよう、まずはそれぞれの特徴についてご紹介します¹⁾²⁾。

➤ホエイプロテイン
ホエイプロテインは、牛乳に含まれるタンパク質の一種です。ヨーグルトの上澄みにできる液体のことをホエイ(乳清)といいますが、このホエイに含まれるタンパク質がホエイプロテインです。ホエイには他に、ミネラルや水溶性ビタミンが含まれています。

ホエイプロテインには筋肉成分の多くを占めるアミノ酸が含まれており、筋肉修復効果も高いので、トレーニングで強い肉体を手に入れたい方にお勧めです。トレーニング後、効率的に筋肉の回復を促すためにはできるだけ素早くタンパク質を補給することが必要です。ホエイプロテインは吸収がスムーズであることからトレーニング直後の補給にも最適です。筋トレだけではなく、マラソンなどの持久系スポーツ、格闘技・コンタクトスポーツ(ラグビー・アメフトなど)と、広い分野で強靭な体を作りたい方に適しています。ホエイプロテインの味は淡白で飲みやすく、体内への吸収速度はスムーズで胃腸がもたれにくいというメリットがありますが、他のプロテインと比べると価格が比較的高いところが難点です。しかし、種類によってはソイプロテインと混合したものや、プロテイン含有量を控えめにしたものなど、機能や価格面で工夫しているものが多く出回っています。また、ホエイプロテインはその製法によって、タンパク質含有量が異なってくる点も特徴です。

➀ WPC製法…Whey Protein Concentrate(濃縮乳清タンパク質)、濃縮膜処理法
原料になる乳清をフィルターで膜処理し、ろ過して得られた液体を濃縮する製法のため乳糖(ラクトース)が残りやすいです。乳糖不耐症(乳製品に含まれる乳糖を小腸で分解できず、腹痛や下痢を起こす)を持つ人にとっては、腹部膨満感(お腹が張ってごろごろする症状)の原因となる場合もありますが、乳清に含まれるビタミンやミネラルをできるだけ多く残すことができるというメリットがあります。タンパク質含有率が約80%の製品はこの製法で作られていることが多いようです。

➁ WPI製法…Whey Protein Isolate(分離乳清タンパク質)、イオン交換法
WPC製法で分離されたタンパク質をさらにイオン交換処理を施して不純物を取り除くため、高濃度のホエイタンパクが作られます。タンパク質含有率も約90%と高く、お腹の不調になりやすい乳糖の含有率も非常に低いため、日本人に多い乳糖不耐症の方にも適した製法といえます。精製度の高いホエイプロテインを実現するために比較的多くの工数が必要となり、価格は若干高めです。

➂ WPH製法…Whey Protein Hydrolysate(加水分解乳清タンパク質)
加水分解ペプチドとも呼ばれ、微生物に含まれる酵素などを使いWPCをペプチド状態(アミノ酸が十数個から数十個つながった状態)に分離したものです。ホエイ含有率が約95%と高くなり、価格も高めのものが多いですが、比較的少ない摂取量で筋タンパク質合成を促進させることができます。

ホエイプロテインは製法ごとに様々な特徴を持っています。自分にあった製法のプロテインを選んで、タンパク質を効率良く摂取しましょう。

➤カゼインプロテイン
ホエイプロテインと同じく牛乳から作られるのがカゼインプロテインです。主成分であるカゼインは生乳を構成するタンパク質の約80%を占めています。ホエイプロテインが水溶性で吸収が早いことに対し、カゼインプロテインは不溶性で固まりやすく、体への吸収速度がゆっくりであることが特徴です。ダイエット時の間食や運動をしない日のタンパク質補給、就寝前にお勧めです。カゼインプロテインは体への吸収速度がゆっくりであることから満腹感の持続が期待できます。

➤ソイプロテイン
ソイプロテインの原料は、その名の通り大豆のタンパク質部分だけを粉末にしたものです。タンパク質の比率を高め水分や糖質、脂肪を減らし植物性タンパク質を効率的に摂取できます。価格が比較的安いことも特徴の一つです。ソイプロテインはカゼインプロテインと同じく消化吸収速度がゆっくりのため、満腹感が持続しやすく、ダイエットや健康維持をしたい方にお勧めです。加えて、大豆に含まれるイソフラボンの効果で皮膚や骨の強化、血流改善が期待できます。また、イソフラボンは女性ホルモンと似た働きをするので、肌の張りを保つ効果や、女性らしい体のラインをキープすることにも役立ちます。一方で、溶かしたときに粉っぽくなってしまい飲みにくいこともあるため、少量のぬるま湯で溶いてダマにならないようにしてから水を加えるなど、飲みやすくする工夫が必要です。最近では、溶けやすく改良された商品も多く発売されています。


筋肉増強以外でのプロテイン活用法

「プロテイン=運動している人が摂取するもの」というイメージを抱く方が多いですが、あくまでプロテインは「高タンパク食品」です。食事でタンパク質摂取量が足りない方や、タンパク質を多く摂取する必要がある方は普段の食事にプロテインを組み合わせることで効率よくタンパク質を摂取することができます。プロテインを摂取した方が良い人は、アスリート以外にはどのような人が当てはまるのでしょうか?

➤成長期の子ども(ジュニアプロテイン)

子どもは基礎代謝量や活動エネルギー分だけでなく、発育に必要なエネルギーも摂取しなければならないため、栄養摂取が特に重要な時期です。どんなに栄養豊富なご飯を朝・昼・夕に食べたとしても、子どもなので1食で食べられる量には限界があります。食の細い子も中にはいるでしょう。栄養をたくさん摂りたいけれど摂れないという時には、普段の食事に合わせてジュニアプロテインを一緒に摂取することで不足しがちな栄養を補うことができます。また、ジュニアプロテインは一般的なプロテインとは異なり、タンパク質だけでなく鉄分やカルシウムなど子どもの成長に必要な成分が多く含まれています。例えば、朝ごはんに飲んでいる牛乳にプロテインを溶かして一緒に摂取するのはいかがでしょうか?

➤高齢者の筋力・カルシウムサポート

最近では、高齢者のフレイルが問題視されています。フレイルとは、高齢期に筋肉量・筋力の減少など生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、機能障害、要介護状態、死亡などの不幸な転機に陥りやすい状態とされ、生理的な加齢変化と機能障害、要介護状態の間にある状態を指します³⁾。筋肉量の減少は、フレイルを構成する原因の一つであり、筋肉量・筋力の減少を指すサルコペニアは多くの疾患と関連します。そこでフレイル予防の観点から2020年版の日本人の食事摂取基準⁴⁾では、65歳以上の総摂取エネルギー量に占めるべきタンパク質由来エネルギー量の下限値を前回(2015年版)の13%から15%に引き上げています。筋肉量の減少を防ぐために、運動の推奨は勿論ですが、栄養面からの予防策も必要になります。

例えば、70歳男性・身体活動レベルⅠ(自宅にいて、ほとんど外出しない)の方の推定エネルギー必要量は2,050kcal/日です(下表参照)。この方の推定エネルギー必要量のうち、タンパク質由来のエネルギー量は約308kcal/日になります。タンパク質1gあたりのエネルギー量は約4kcalなので、この方の推定エネルギー必要量を満たした食事メニューでは、タンパク質が約77g含まれるように構成を考える必要があります。食事量が多く取れない高齢者が十分なタンパク質を摂取するためには、食事面での栄養バランスを考えるだけでなく、プロテインなどの補助食品でタンパク質を補っていく必要があります。


「日本人の食事摂取基準2020」エネルギーより抜粋

➤妊婦や授乳期のお母さん

妊婦の方は、胎児及び胎盤などの発育に必要なタンパク質を摂取する必要があり、授乳期のお母さんは、自身に必要なタンパク質に加えて母乳分のタンパク質も摂取する必要があります。妊婦の場合、自身で必要なタンパク質に加えて、妊娠中期で+5g/日、妊娠後期で+25g/日のタンパク質摂取を推奨しています。また、授乳期では+20g/日の摂取を推奨しており、十分なタンパク質摂取が母親だけでなく、胎児・乳児の健康にも欠かせないことが分かります。


「日本人の食事摂取基準2020」タンパク質より抜粋


終わりに

普段、何気なく摂取しているタンパク質ですが、私たちの体に必要な量を摂取できているでしょうか? 同じ年齢・性別の方でも、体格や運動習慣の違いによって必要なタンパク質摂取量は変わってきます。そのため、自分に必要なタンパク質量を把握し、足りない分はプロテインなどの補助食品を上手く組み合わせながら食事メニューを考えてみましょう。

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -タンパク質Ⅰ-

 

参考文献
1.「ホエイ、カゼイン、ソイってなに?プロテインの種類について」 グリコ
2.「かんたん、わかる!プロテインの教科書」 森永製菓
3. 日本サルコペニア・フレイル学会
4.「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 文部科学省

 

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猛暑下の運動と生体反応 Part2: 予防策

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「猛暑下の運動と生体反応 Part1: 熱中症

前回のトピックでは主な熱中症の症状や危険性についてご紹介しました。今回のトピックではそれらの予防法についてご紹介します。


猛暑の中で安全に運動するためには


暑い時期だからといって、運動を控えた方が良いわけではありません。運動で発生する熱の影響を軽減して、熱中症にならないための予防策に取り組めば、夏でも外で運動を楽しむことができます。猛暑の中での運動を考えている場合は、次の内容を心掛けましょう。

➤自分の体調を考慮する
猛暑の中で運動をする際に、一番考慮しなければならないことは自分の体調です。今日の体調は大丈夫か? 暑さに弱い体質ではないか? 暑い環境下で運動することには慣れているのか? 熱中症の症状がもし現れても、対処することはできるのか? などを考えてみましょう。

➤適宜水分補給をする
最も代表的な熱中症予防対策は水分補給です。夏の運動は暑さと運動による多量の汗が要因で脱水状態になりやすく、体温調節機能に影響を及ぼすため、発汗量に見合った水分を補給する必要があります。適切な水分の補給量は、体重減少が体重の2%以内に収まることが目安となります¹⁾。つまり、運動の強度や気温だけでなく、 体格(体が大きい人は小さい人よりも補給量が多くなる)も考慮して水分補給を心掛けることが重要です。アメリカのスポーツ医学大学による運動時の水分補給ガイドラインは次のように定めています²⁾。

運動時の水分補給ガイドライン

運動前 運動前は十分な食事及び水分(運動する4時間前辺りから約500ml程度)を摂取するようにし、前回の運動後から少なくとも8~12時間の回復時間を設けてください。
運動中 喉の渇きに気づいたら水分摂取をするようにしてください。極端な暑さの中では、より喉が渇きやすくなります。しかし、水分のみを摂取し過ぎてしまうと、低ナトリウム血症または水中毒を発症するリスクが高まるため注意が必要です。長時間の運動をする場合は、6~8%の糖質を含む飲み物(スポーツドリンクなど)がお勧めです。
運動後 運動後の体重が減少していた場合、約500~700ml/450gの水分を摂取してください。運動後の食事でも必ず水分補給をしてください。

運動時の水分補給は、カフェイン入りの飲み物は避けてください。運動前にカフェイン入りの飲み物または水を摂取させて運動前後に血液検査を実施した研究によると、カフェイン入りの飲み物を摂取した人は運動後に脱水症を悪化させ、心血管系への負担が大きくなることが分かっています³⁾。従って、運動時の水分補給は水またはスポーツドリンクなどを選択してください。
※脱水時の水分補給についてもう少し詳しく知りたい方はInBodyトピック「脱水時に必要な飲み物は?」、水分摂取量についてもう少し詳しく知りたい方はInBodyトピック「水は飲めば飲むほどいいのか?」もご覧ください。

➤体を冷やす

体温の過度な上昇を抑えることで、熱中症の予防・持久性運動能力や認知機能低下の抑制・多量の発汗による脱水予防ができます¹⁾。

冷却方法は体の内部または外部から冷やす方法があります。内部から冷やす方法は、冷たい飲料などを摂取することで皮膚や筋温を大きく低下させることなく核心温を下げることができます。一方、冷水・アイスパック・送風などを用いて皮膚などの外部から冷やす方法は、筋肉の熱を直接冷やしたり、発汗による熱を発散させたりする効果があります。外部から冷やす場合、首筋やわきの下など、皮膚表面付近で太い血管が通っている部位を冷やすとより早く体温を下げることができます。首の後ろを冷やしてしまうと、視床下部が冷やされ体温が下がったと勘違いしてしまうので、首の横側を冷やすようにしましょう。

運動前・中・後、積極的に冷却することで得られるメリットは熱中症予防効果だけではありません。運動前に体温を低下させると、運動中の体温の許容量(貯熱量)を大きくして運動時間を延ばすことができます。運動・休憩中の冷却は体温や筋温が過度に上昇することを防ぎ、疲労感や暑さなどの主観的な感覚を和らげることができます。そして、運動後の冷却は上昇した体温や筋温を通常に戻して、疲労を軽減したり、筋損傷や炎症反応を抑えたりすることができます。また、体温が上昇した状態が続くと、余分なエネルギーを消耗してしまうため、冷却することでリカバリー効率も向上します。

体を冷却することは熱中症予防に繋がりますが、体温や筋温を適切な状態に保つためには過度に冷却しないことも大切です。例えば、外部から冷やすときはタオルを冷水に浸して軽くしぼり、冷たさを感じなくなるまで当て、再度タオルを冷水に浸して当てるということを2~3回繰り返す程度が適切です。汗を流している時には、風を当てるだけでも冷却効果は期待できます。

➤環境に体を慣れさせる
ほとんどの人は体が暑さに順応するまで約1〜2週間(毎日90分程度)かかります⁴⁾。但し、外部環境によるストレスに体を慣れさせることが大事なので、その環境にただ体を置くのではなく、ウォーキングなどの軽い運動をしたり、室内の温度を外の温度とあまり変わらないように、若しくは少しだけ低くなるようにしてリラックスした状態で過ごしたりするなど、ストレス環境下でもある程度の身体活動や日常活動を行うことが理想です。

➤運動しやすい時間と服装を選択する

1日の気温は朝5~6時頃が最も低く、徐々に上昇し、午後2~3時頃ピークに達します。従って、外で運動するときはこの暑い時間帯を避けるようにしましょう。また、服の素材や色も体温調節に重要です。運動時はポリエステルなど通気性のある生地で作られた明るめの服を着用しましょう。暗めよりも明るめの色の方が太陽光を吸収しにくいので、太陽光の熱を感じにくくなります。


終わりに

人間は周りの環境変化に合わせて適応できますが、全員が同じように暑さに耐えられるわけではありません。体調やその日の気温・湿度などを考慮して運動の可否や内容を検討してください。また、外ではなく冷房の効いた室内で行う、時間帯を変更・短縮する、激しい運動は控えるなど、暑さの中で少しでも快適に運動ができるような工夫をすることで、暑い季節でも運動を楽しむことができます。

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「猛暑下の運動と生体反応 Part1: 熱中症

 

参考文献
1. 「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック(第5版)」 公益財団法人日本スポーツ協会
2. Brad A. Roy, Ph.D., Exercise and Fluid Replacement: Brought to you by the American College of Sports Medicine. FACSM, FACHE, ACSM’s Health & Fitness Journal: July/August 2013 Volume 17 Issue 4 p3
3. Chapman, Christopher L.; Johnson, Blair D. et al., Consumption of a Caffeinated Soft Drink during Exercise in the Heat Worsens Dehydration. Medicine & Science in Sports & Exercise: May 2018 Volume 50 Issue 5S p386
4. Michael N. Sawka, Julien D. Périard, Sébastien Racinais. Heat acclimatization to improve athletic performance in warm-hot environments. Sports Science Exchange (2015) Vol.28, No.153, 1-6

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猛暑下の運動と生体反応 Part1: 熱中症


日が長く晴れた夏空の下、屋外で運動をしたい、または始めたいと思う人はたくさんいるでしょう。しかし、日本の夏は年々気温が上昇しており、これまでに最高気温が41℃以上を観測した地域もあるほど(2020年6月時点)、猛暑日が増えてきています¹⁾。1980年アメリカでは猛暑への対策ができていなかったために1,700名が²⁾、2003年パリでは14,800名が熱中症に関連した合併症により亡くなりました³⁾。日本でも2018年に熱中症が原因で1,581名 が亡くなっています⁴⁾。猛暑下における運動は、健康を増進するどころか命の危険に繋がってしまう恐れもあります。では、暑い時期の運動は控えたほうが良いのでしょうか?


暑さを感じたときに起こる体内の反応

人間を含むほとんどの哺乳類は、外部の温度変化に左右されずに一定の体温を保つことができる恒温動物です。どのように人体は体温を一定に保っているのでしょうか。

人体は深部の核心温を36.5~37.5℃の一定範囲で維持しようとする体温調節機能を備えています⁵⁾。その核心温を調節する役割を担っているのが脳の視床下部です。外部温度が核心温を変化させるくらい極端である場合、視床下部は体温を正常範囲内に保つために、体を温めたり冷やしたりする指示を出します。

例えば、外部温度上昇の影響で体の核心温が上がると、視床下部は核心温を下げるために体内の血液を皮膚表面の血管に移動させます。これにより血管が拡張されて血液循環量が増えると、体内の熱は皮膚を通して放散されやすくなり、体温は下がります。また、血液循環量の増加に伴い、視床下部は汗腺を活性化させて発汗を促します。汗は蒸発することで肌を冷やし皮膚表面を流れる血液の温度を下げるため、体温はそれに伴って下がります。


様々な熱中症関連症状


体温調節機能は疾患などの問題がなければ自然に働きます。夏の高温環境では皮膚表面の温度が下がりにくいため、体温を汗の蒸発によって下げようとします。しかし、夏場は高い湿度の影響により汗の蒸発は少なくなります。その状態で十分な水分補給ができずに大量の汗をかくと、体温の低下が十分でないまま体内の水分は減少します。そして、体内に熱がこもり体温が高くなると熱中症になってしまう恐れがあります。熱中症に関する症状は様々ですが、熱中症が疑われた時点で適切な処置をする必要があります。熱中症に関する症状は次のようなものがあります。

➤熱痙攣
激しい運動により大量の汗をかいているにも関わらず水分だけを補給していると、血液中の塩分(ナトリウム)濃度は低下し、体内の電解質均衡が崩れてしまいます。酷使した筋肉は痙攣してしまい、触ると鋭い痛みを伴います。熱痙攣は熱中症の中では比較的重症度が軽く、涼しい環境でスポーツドリンクを飲んだり、少しの塩を入れた水を飲んだりすることで治ります。また、痛みがある部位は直接マッサージするよりも、ゆっくりストレッチすることで痛みを和らげることができます。

➤熱失神

長時間の立ちっぱなしや運動、または長時間座っていた後に急に立ち上がったりすると、めまいや一時的に意識を失う症状が起こります。体温を下げるための皮膚血管拡張により、血圧が急激に低下して脳に十分な血液が供給されないことが原因で起こります。意識がある場合は周りの人の助けを借りて、涼しいところに移動し、スポーツドリンクなど電解質を含む飲み物で水分補給しましょう。横になって休む時は脚を少し高めにすると脳への血流を改善できます。首筋やわきの下など、皮膚表面付近で太い血管が通っている部位を冷やすことも効果的です。但し、首の後ろを冷やしてしまうと、視床下部が冷やされ体温が下がったと勘違いしてしまうので、首の横側を冷やすようにしましょう。

➤熱疲労
運動時に限定されず、大量の汗で水分と塩分が過剰に失われて血液量が減少すると起こる症状です。軽度の体温上昇(40℃未満)を伴うこともあり、吐き気・頭痛・嘔吐などを感じ、失神に繋がることもあります。心拍数や呼吸数の上昇・血圧降下が見られ、症状が発生しているときも汗をかき続けるため、肌は冷たくベトベトに感じることがあります。熱中症の関連症状の中でも重症度が高い症状ですが、対処方法は他の熱中症と同じく、涼しいところで横になって休憩を取り、電解質を含む水分をゆっくり摂取します。嘔吐によって水分摂取ができない場合は、医療機関で点滴を行う必要があります。

➤熱射病
熱中症の中でも最も重症度が高く、若年運動選手の主な死亡原因とされているほど危険な症状です。極度の高温状態で運動や仕事をしたり、閉め切った暑い場所で過ごしていたりする人に起こることが殆どです。非常に暑い中、発汗または他の方法で体の熱を放散できなくなると、体温は下がらずに40℃以上まで上昇します。他の熱中症の症状が大量の発汗を特徴としているのに対し、熱射病の場合は皮膚が熱く赤くなり、汗をかかない場合もあります。また、意識障害(反応が鈍い・言動がおかしい・意識がない)が見られ、命に関わる危険性(脳や臓器の損傷・死亡)も高いため、緊急治療が必要です。処置の方法はとにかく体を冷やすことです。冷水に体を浸したり、浸すことができない場合は体にぬるま湯の霧を吹きかけ扇風機で風を当てて蒸発させることで体を冷やしたりします。もちろん、これらは応急処置なので早急に救急車を呼び、搬送を待つ間に行います。


このように高温多湿な環境では体温調節機能がうまく働かないこともあるため、体の不調に注意する必要があります。いつもより汗をかいていたり、めまいや立ちくらみを感じたり、動悸が激しいと感じたときは、必ず体を休めて水分補給をしましょう。更に深刻な兆候が見られた場合はすぐに助けを求め、医師の診察を受けるようにしてください。軽い症状だと思って放置してしまうと、命の危機に繋がる恐れもあります。


運動を控えた方が良いと判断する基準

暑さに耐えられる程度は年齢や健康状態などによって異なるため、運動を避けた方が良い暑さを判断する明確な基準は存在しません。しかし、運動をしても問題ないかを判断するときに活用できる客観的な要素として、暑さ指数(WBGT: Wet Bulb Globe Temperature)があります。WBGTは熱中症を予防することを目的に1954年にアメリカで提案された指標です。気温とは異なり、人体と外気との熱のやり取り(熱収支)に着目しており、熱収支に与える影響の大きい①湿度、②地面・建物・体から出る周辺の熱環境(輻射熱)、③気温の3つを考慮して計測されます。労働環境や運動環境の有用な指針として国際的にも規格化されており、環境省の熱中症予防情報サイトでは日本各地のWBGT情報を確認することができます。また、日本スポーツ協会では下図の「熱中症予防運動指針」を公表しており、WBGT 28℃以上は激しい運動を中止するように示しています⁶⁾。(乾球気温は気温を指します。)

「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック(第5版)」より引用

実際に、環境省によるデータを基に熱中症患者発生率と日最高WBGTの関係を示した下図を見ると、日最高WBGTが28℃を超えると一気に熱中症患者が増えていることが分かります⁷⁾。

「暑さ指数(WBGT)とは?」より引用

ただ、熱中症の発症リスクは年齢・健康状態などにより個人差が大きく、運動強度によっても大きく異なります。特に高齢者や小児は熱中症になりやすく、重症度が高くなりやすいため、より注意が必要です。WBGTによる運動指針を判断材料の一つとして活用し、運動を控えるかどうか決めてください。


脱水時の体成分変化について

脱水は熱中症を引き起こしてしまう主な要因ですが、どのように脱水は評価できるのでしょうか。医療施設では血液・尿検査や医師による所見診断などで脱水症を評価しますが、体重変動からも重症度を評価することができます⁸⁾。何らかの要因で1日のうちに大幅な体重減少が見られる場合は、体内の水分が大量に喪失していることを意味するため、脱水症になっている可能性が考えられます。下図は体重減少率による脱水症の重症度を示しており、体重減少率が大きいほど重症度が高いことが分かります。
「水分と電解質を失う「脱水」を知り、対策をとることが体調管理のテーマ」より引用⁸⁾

InBodyは体水分量を測定することができるため、このような脱水による水分変動を敏感に反映します。実際に、急激な減量を行うレスリング選手を対象に平常時・減量時(脱水時)・再水和時の水分状態を調査した報告もあります⁹⁾。レスリングは体重別で階級が分かれており、試合前日もしくは当日に計量をクリアしなければなりません。そのため、レスリング選手は計量の1~2日前から水抜き(脱水)によって体重を急激に落とそうとします。減量時では体水分量が減少し、再水和時には体水分量が増加する体成分の変化が結果に反映され、体重変動と同様に、基準となる平常時の値と比較することで体水分量の減少率を確認することができます。勿論、体水分量が減少することで水分均衡にも影響が出る可能性はありますが、脱水症は3種類あり、それぞれ水分均衡の変化も異なるため、体重変動と異なり明確な基準を設けることが難しいのが現状です。

また、大量の汗を掻くことによって体内の水分量が減少すると、筋肉量も一時的に減少してしまいます。なぜなら、筋肉量は水分とタンパク質の融合体であるため、体水分量の減少は筋肉量の減少に繋がってしまうためです。このような理由から、InBodyは運動前に測定する必要があります。

次回のトピックでは熱中症の具体的な予防策について紹介していきます。☞「猛暑下の運動と生体反応 Part:2 予防策

 

参考文献
1.「歴代全国ランキング」 気象庁
2. Eric E Coris et al., Heat illness in athletes: the dangerous combination of heat, humidity and exercise. Sports Med. 2004;34(1):9-16.
3. Jean-François Dhainaut et al., Unprecedented heat-related deaths during the 2003 heat wave in Paris: consequences on emergency departments. Crit Care. 2004 Feb;8(1):1-2.
4.「熱中症による死亡者数(人口動態統計)」 厚生労働省
5. J Gordon Betts et al., Anatomy and Physiology. Tyler Junior College. 2013 Aug:167
6.「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック(第5版)」 公益財団法人日本スポーツ協会
7.「暑さ指数(WBGT)とは?」 環境省熱中症予防情報サイト
8.「水分と電解質を失う「脱水」を知り、対策をとることが体調管理のテーマ」 教えて!「かくれ脱水」委員会
9. Alan C Utter et al., The validity of multifrequency bioelectrical impedance measures to detect changes in the hydration status of wrestlers during acute dehydration and rehydration. J Strength Cond Res. 2012 Jan;26(1):9-15.

 

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体成分と食事回数の関係 Part2: 実践編

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「体成分と食事回数の関係 Part1:生理学

目標とした体成分に到達するために有用な方法は食事回数を減らすだけではありません。今回のトピックでは、体成分改善に効果的な食事コントロールの例として、朝食や断食の効果をご紹介します。


朝食の重要性


朝はゆっくりとできる時間もなく、朝食を摂らないという人も少なくはないでしょう。しかし、健康的な朝食を摂ることが体重の減量と間食を減らすことに役立つという研究結果¹⁾もあり、朝食を摂ることは減量または体重維持に有効な習慣です。また、高タンパクの朝食を摂ることで間食や甘いものに対する食欲が減少したという研究結果もあります²⁾。この研究では朝食を摂った人が摂っていない人よりドーパミン濃度が高く示されています。

好きなことをしていて幸せな時や、重大なことを無事に完了して達成感を味わっているとき、空腹を忘れているような経験をしたことはありませんか? この時に脳で分泌されるホルモンがドーパミンです。空腹状態で甘い物を食べた時に分泌されるドーパミンは食物依存症に繋がるのに対し、満腹中枢が刺激されている中で分泌されるドーパミンは食欲を抑える効果があります。そのため、満腹感を感じつつドーパミン濃度が更に高くなる高タンパクな朝食を摂ることは、余計なカロリー摂取を抑え体脂肪量の減少にも繋がります。
※食物依存症の詳細はInBodyトピックの「食物依存症と過食 part1: 体への影響」もご覧ください。

また、Gonzalezらの研究では朝食が代謝機能を改善させるという結果も示されています³⁾。これらの研究結果から分かることは、朝からしっかりエネルギーを補充しておくことが体脂肪量減少に役立つという点です。


断食の効果


摂取エネルギーの制限方法として食事回数を減らすことや低カロリー食事をすることが挙げられますが、断食も良く知られている方法です。減量目的でよく耳にする断食方法は断続的断食(Intermittent Fasting)と1日おき断食(Alternate Day Fasting)の2つがあります。

断続的断食には様々な方法がありますが、一番やりやすいのは16:8断食と言われるものです。これは1日のうち、8時間だけ食事をする時間を設けて残り16時間は食事をしない方法です。理論上、8時間の間で2食(朝食と昼食/昼食と夕食)を摂ることができるので、毎日行うこともできます。1日おき断食も断続的断食と似たような方法ですが、断食の時間がより長いです。1日おき断食は36時間断食して次の12時間で食事をする方法です。

どの方法も減量には効果的という研究は多々ありますが、断食の難しいところは全く食事をしない時間帯があるため、長期間持続するのが難しいという点です。また、断食の減量効果は摂取カロリー制限とあまり差がなかったとの研究結果もあるため⁴⁾、個人の生活パターンや目標とする期間などを考慮して、自分に合う方法を選択する必要があります。


減量のポイントは「カロリー赤字」


体重や体脂肪量の減少を目的とする場合、断食や食事回数の調節は有効な方法ですが、これらの方法がどういう状態になるための手段なのかを忘れてはなりません。減量において最も重要なのは「カロリー赤字」の状態になることで、断食も食事回数の調節もカロリー制限もこの状態になるための様々な手段にすぎません。ある研究では、食事回数とは関係なく、同じカロリー赤字の量であれば同じ程度の体重と体脂肪量の減少を示しています⁵⁾。

ただ、この結果は食事回数の変化が無意味というわけではありません。同じ低カロリーの食事を行った人でも、1日2食の人の方が1日6食の人よりも、体重が減少しています⁶⁾。 重要なのは、食事回数を減らしたとしてもカロリー赤字になっていなければ体重は減らないということです⁷⁾。つまり、食事回数の減少と摂取カロリー制限を同時に行うことでカロリー赤字になりやすく、減量しやすいと考えるべきです。
※カロリー赤字の詳細はInBodyトピックの「体脂肪量減量に関する5つの迷信」もご覧ください。


体重を減らす時に注意すべき点


食事回数を変えて体成分の変化を試みた時、本来意図していなかった結果となる場合もあります。通常であれば、タンパク質はエネルギー源としてあまり使われません。しかし、食事をしない時間が長くなって蓄えていたブドウ糖を使いきった後は多量のタンパク質がエネルギーを作るために分解され始めます。これは断続的断食または1日おき断食が、筋肉の分解という思いもしなかった結果に繋がることもあり得るということです。

一方、筋トレと断食を一緒に行った人は、筋肉量が減少しなかったという研究もあり⁸⁾、断食や食事回数の減少が筋肉量に及ぼす影響に関しては、不明な点もまだ多く残っています。断食中であっても、筋トレと並行しながら、食事のタイミングで十分な量のタンパク質を摂取できれば、筋肉量の減少を防止できるという研究結果から、断食で食事を摂る際は栄養バランスがとても重要であることが分かります。

繰り返しますが、食事回数・食事量・食事内容・摂取のタイミングなど、食事に関する何かしらの変化は、筋肉量の減少を引き起こす可能性があるということを常に考える必要があります。これを防ぐためには、タンパク質の摂取量を十分に確保することや、食事の変化に伴い筋トレメニューを組むなど、運動習慣も含めて計画を立てる必要があります。筋トレによって筋肉量が維持または増加すると基礎代謝量も増加するため、カロリー赤字になりやすいのも適切な筋トレのメリットです。


食事回数の調節に取り組む前に


食事は体に生理学的影響を及ぼし、食習慣は体成分に大きく影響します。食事回数を調整することは、代謝量・消化管ホルモン・満腹感に影響して、目標とする体成分に近づくことにも繋がります。ただ、食事回数を減らすことについて明確な結論は出ておらず、食事回数を減らすことが体重・体脂肪量の減少に有用であるという研究が多く報告されているだけです。食事回数の調節を検討する時は、次の内容を意識して自身の体で合った方法なのかも考えながら、試行錯誤しましょう。

少ない食事回数と体重・体脂肪量の減少は関連している。
体重・体脂肪量を減らすためにはカロリー赤字になることが重要である。
朝食を摂ることは体重の維持・減少に有効であり、高タンパクの朝食は間食や甘いものへの食欲を減らせる。
定期的に運動をすることは筋肉量を維持・増加させ、代謝量にも影響を及ぼす。

食事回数を減らすとき、1食を抜くことで1日2食にすることが一般的であるとはいえ、誰にでも効果があるものではありません。食事回数をどのように調整するかは自分の生活パターンや目標に合わせて決めることが大事です。短期間で魔法のように体成分を変える方法はありません。地道な努力だけが健康と体成分の改善を同時に達成できる唯一の方法です。食事回数を含む食生活の変化は、正しい方法を頑張って継続させた分だけ、成果として現れるでしょう。このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「体成分と食事回数の関係 Part1:生理学

 

参考文献
1. Schlundt DG et al., The role of breakfast in the treatment of obesity: a randomized clinical trial. Am J Clin Nutr. 1992 Mar;55(3):645-51.
2. Hoertel HA, Will MJ, Leidy HJ. A randomized crossover, pilot study examining the effects of a normal protein vs. high protein breakfast on food cravings and reward signals in overweight/obese “breakfast skipping”, late-adolescent girls. Nutr J. 2014 Aug 6;13:80.
3. Gonzalez JT et al., Molecular adaptations of adipose tissue to 6 weeks of morning fasting vs. daily breakfast consumption in lean and obese adults. J Physiol. 2018 Feb 15;596(4):609-622.
4. Catenacci VA et al., A randomized pilot study comparing zero-calorie alternate-day fasting to daily caloric restriction in adults with obesity. Obesity (Silver Spring). 2016 Sep;24(9):1874-83.
5. Cameron JD, Cyr MJ, Doucet E. Increased meal frequency does not promote greater weight loss in subjects who were prescribed an 8-week equi-energetic energy-restricted diet. Br J Nutr. 2010 Apr;103(8):1098-101.
6. Varady KA. Meal frequency and timing: impact on metabolic disease risk. Curr Opin Endocrinol Diabetes Obes. 2016 Oct;23(5):379-83.
7. Papakonstantinou E et al., Effect of meal frequency on glucose and insulin levels in women with polycystic ovary syndrome: a randomised trial. Eur J Clin Nutr. 2016 May;70(5):588-94.
8. Moro T et al., Effects of eight weeks of time-restricted feeding (16/8) on basal metabolism, maximal strength, body composition, inflammation, and cardiovascular risk factors in resistance-trained males. J Transl Med. 2016 Oct 13;14(1):290.