COVID-19の合併症と肥満の関連性

肥満は世界的な健康問題の一つであり、様々な健康障害や疾患のリスクを高めることが示されてきました。そして、この悪影響はCOVID-19においても例外ではないとされています。COVID-19が世界規模に拡散されて以来、数億人を超える人々が感染しました。特にその感染者の中でも、感染前に肥満や他の疾患を有していた人は重症化しやすい傾向が示されています。今回は、肥満とCOVID-19の関係、そしてCOVID-19に感染した際に肥満が及ぼす影響などについて確認していきます。


肥満とは?

肥満は体重に対して体脂肪量が過剰な状態を意味し、評価基準としてBMIや体脂肪率を用いることが殆どです。体脂肪はその分布個所によって内臓脂肪と皮下脂肪に分けられます。内臓脂肪は臓器周りに蓄積していて外からは見ただけでは分かりにくく、皮下脂肪は全身の皮膚すぐ下に存在するのでつまんで確認しやすいです。

過剰な体脂肪は健康に悪い影響を及ぼしますが、特に内臓脂肪は臓器の近くに位置することもあり、その影響は皮下脂肪より大きいとされています。肥満は2型糖尿病、高血圧・動脈硬化などの血管系疾患、脳梗塞、心筋梗塞など様々な疾患の原因になったり、リスクを高めたりする恐れがあり、高度肥満の場合は各関節への悪影響や睡眠時無呼吸症候群などの呼吸障害を引き起こす恐れもあります。また、肥満によって身体活動が難しくなることで活動量が減少し、肥満度の重症化やサルコペニア肥満の問題にも発展していきます。

肥満の分類には昔からBMI[kg/㎡, 体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)]が使用されています。WHOが発表しているBMIの標準範囲は18.5~24.9で、25~29.9までは過体重、30~34.9までを肥満(1度)、35~39.9を肥満(2度)、40以上を高度肥満と分類します。一方、日本肥満学会では25以上を肥満とし、25~29.9までを肥満(1度)、30~34.9までを肥満(2度)、35~39.9までを肥満(3度)、40以上を肥満(4度)と分類しています¹⁾。


BMIは体重と身長から算出できるため、肥満を評価する簡単な方法として広く使用されていますが、大きな問題があります。それは、単純に「体重が重い人=肥満」という評価になってしまうことです。上記のイメージはボディービルダーや運動選手のように筋肉量が多いことで体重・体格が大きい人がInBodyを測定したときに得られる肥満指標の項目です。BMIだけでこの方の肥満度を評価すると、BMI30は肥満として評価されてしまいます。

しかし、肥満が「体脂肪が過剰な状態」を意味するという点から考えると、ボディービルダーは肥満には当てはまりません。この評価のずれこそがBMIを用いた肥満評価の問題であり、正しく肥満を評価するためには体脂肪率を用いることが望ましいです。InBodyの各結果用紙では必ずBMIと体脂肪率を一緒に示しており、正しく肥満を評価することができます。


COVID-19とは?


このご時世に、新型コロナウイルス感染症という言葉を聞いたことがない方はいないでしょう。2019年12月に第1例目が報告されたことからCoronavirus disease 2019と命名され、COVID-19と略すこの疾患は呼吸器疾患に分類されます。コロナウイルスは風邪の病原体となるウイルスでもあり、風邪の約10~15%は4種類のコロナウイルスによって発症するとされています。基本的に風邪の病原体となるコロナウイルスは軽い症状しか引き起こさないため、対症療法の治療ですぐに回復します。

一方、COVID-19の場合、風邪の病原体となるコロナウイルスとは遺伝子構造が異なります。似たような前例としてはSARSやMERSと称された感染症がありますが、COVID-19の原因となる病原体はSARSやMERSで発見されたコロナウイルスとも異なるため、「新型コロナウイルス」と称されることになりました。

COVID-19の感染経路は感染者の咳やくしゃみと同時に出てくる飛沫によるもの(飛沫感染)・咳やくしゃみによって空気中に拡散されたウイルスが呼吸を通して体内に侵入するもの(空気感染)があるとされています。加えて、ウイルスが付着した物を触り、その手で鼻や口を触ることでウイルスが体内に侵入する、感染者との間接的な感染(接触感染)の可能性があります。このような特徴から密閉・密集・密接(3密)な空間での感染が頻繁に確認されています。


ウイルス感染から発症までの潜伏期間は1週間程度とされており、症状としては喉の痛み、頭痛、咳、高熱、悪寒、呼吸困難、倦怠感、吐き気、嘔吐、下痢、嗅覚と味覚の異常、筋肉痛と全身疼痛などが知られています。一般的な症状は風邪と酷似しており、発症初期は特に判断が難しいのも問題です。

COVID-19が確認されて以降、様々な変異株が発見されており、伝播性や重症化する可能性などが種類によって異なります。その中でも、公衆衛生上問題があるとされる変異株を「懸念される変異株(Variant of Concern: VOC)」と言います。今までVOCとされた変異株はアルファ・ベータ・ガンマ・デルタ・オミクロンの5種類で、2022年4月の現時点で流行っている変異株はデルタとオミクロンです²⁾。

COVID-19が重症化すると、人工呼吸器を使わなければ呼吸ができないほど肺の機能が急激に低下し、症状が落ち着いてからも本来の肺機能に戻ることが難しいとされています。また、喘息・糖尿病・心疾患などの患者や高齢者の方が重症化しやすく、若い人でも重症化するリスクがあることから、感染しないようにすることが重要と言えます。


COVID-19感染における肥満の影響

COVID-19の流行が長期化する中でこの疾患のリスク因子についての研究も継続的に行われ、初期と比べると多くのことが明らかになってきました。肥満とCOVID-19の重症化に関する研究もその一つです。元々、肥満は呼吸器機能に悪い影響を及ぼします。肺の周辺に蓄積された脂肪によって呼吸が制限され、肺活量が減少するためです。このような傾向から、肥満患者はそうでない人に比べてCOVID-19に感染した際に呼吸に関する症状がより悪化しやすく、呼吸に必要な酸素を取り込むことが難しくなるため人工呼吸器を必要とする可能性も高くなるなど、予後が悪くなりやすい因子を持っていると言えます。


アメリカでは2020年の3月から12月の間、COVID-19の重症化で入院した患者の約30%が肥満でした³⁾。また、肥満患者はCOVID-19の治療期間が非肥満患者よりも3倍以上長いとされています³⁾。更に、肥満のCOVID-19感染者は挿管及び人工呼吸器を要するほど深刻な症状を呈し、ICUでの治療が必要な傾向がより強いという報告もあります⁴⁾。挿管中の患者は全身麻酔などで医学的に昏睡状態を誘発され、十分な酸素を供給するために気道がチューブで開いたままになります。チューブは人工呼吸器に繋がっており、呼吸の補助または代行をしています。このように自力で呼吸ができなくなる期間が生じると、回復後の呼吸機能が落ちてしまうことから、ICUでCOVID-19の治療を受けた患者は、退院後も何らかの健康問題が発生するリスクが高くなります。

このような結果から、適切な運動を行って体脂肪量を減らしつつ筋肉量を増やし、心肺機能を向上させることは、たとえCOVID-19に感染しても症状が深刻化するリスクを減少させると言えます。


COVID-19に負けない体を作るためには

適切な体脂肪率を維持することはCOVID-19の重症化リスクを下げるために大事なことと言えるでしょう。そして、体脂肪率を減らす方法としてよく勧められるのは身体活動量を増やすことです。活動量を増やすと言っても特別なことをする必要はありません。歩行量を増やしたり、定期的にストレッチしたりするだけでも筋力や心肺機能などの健康維持に役立ちます。

特に注意すべきことは、体重減少をそのまま体脂肪量の減少と捉えることです。体重計の数値だけを見るとこれらを同じものと勘違いしやすいですが、体重の減少が必ず体脂肪量の減少によるものとは言い切れません。


運動を適切に続けていくと、筋肉量(骨格筋量)が増えていきます。これらも同じく体重を構成する重さであるため、体脂肪量が減少しても、その分筋肉量が増えると体重に変化は見られません。肥満患者の治療やダイエットを行う時は、体重の変動よりも筋肉量の増加と体脂肪量の減少の観点から体成分の変動を見ることが大事です。

他にも、体成分の改善を確認する指標として、腹囲があります。腹部など体幹に蓄積する内臓脂肪は生活習慣病の原因とも言われ、問題視されています。この内臓脂肪の簡易的な評価方法として活用されるのが、腹囲測定です。腹囲は男性≧85cm・女性≧90cmをメタボの診断基準としており、これはCTで測定した内臓脂肪断面積≧100cm²に相当するものとされています。腹囲の減少は内臓脂肪の減少を簡易的に評価することができるため、定期的に確認してみるのも良いでしょう。


感染症から健康を守るために

世界的な感染症が流行り始めてから2年以上の時間が経ちました。マスクの着用や定期的な換気・消毒などの日常的な対策から、ワクチン接種や勤務環境の変化などの社会的な対策まで、感染症から人々の健康を守るための試みは継続して行われています。しかし、どれほど注意しても社会活動を行う限り、感染の可能性は存在します。そのため日頃の健康管理は、もし感染してもできるだけ早く回復するための土台を作るようなものです。そして、その第一歩として体成分の管理を始めてみましょう。

肥満はCOVID-19のみならず、様々な疾患のリスクを高め、QOLを低下させます。また、筋肉量は疾患からの回復や予後と密接に関連していることが様々な研究から証明されており、COVID-19も例外ではありません。そのため、規則的な運動と食習慣の改善、そして体成分を定期的に測定してを各成分を適量にコントロールしていくことは、もしCOVID-19に感染したとしても重症化するリスクを減らし、一刻も早い回復に繋がるでしょう。勿論、感染しないに越したことはありません。引き続き個人での予防対策を怠らないようにしましょう。

人の免疫機能は様々な病原体と戦い、健康を守るための力を持っています。そして、その力を十分発揮できるように体成分を管理することの重要性は、どの疾患が対象でも変わりません。先ずは体を動かしてみましょう。余分な体脂肪を減らし、筋肉を増やすことがあなたの健康を守る盾となってくれるはずです。

参考文献
1. 厚生労働省 e-ヘルスネット「BMI」
2. WHO「Naming SARS-CoV-2 variants」
3. CDC ホームページ「Overweight & Obesity」
4. Albashir AAD. The potential impacts of obesity on COVID-19. Clin Med (Lond). 2020;20(4):e109-e113.

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