果物と健康

春のいちご、夏のすいか、秋のぶどう、冬のみかんなど四季折々の果物は、豊かな色彩や味、食感などでいつも楽しませてくれる、私たち日本人の食生活には欠かせない存在です。一方で、最近では糖質制限ダイエットが注目されるなど、果物に含まれる糖質の量が気になる方もいらっしゃるかもしれません。そこで今回は、果物の糖質と健康との関係や日本人の平均一日摂取量についてお話しします。また、果物の旬や食べるメリット、おすすめの果物についてもご紹介します。


糖質とは何か

糖質は、炭水化物の一部で、私たちの身体へエネルギーを供給するための主要な栄養素の一つです。ブドウ糖や果糖などの単糖類、オリゴ糖などの少糖類、デンプンなどの多糖類に分けられます。糖質は私たちの身体の基本的な機能を維持するために必要不可欠であり、脳の燃料としても使われています。

糖質はエネルギー源として重要ですが、摂りすぎると体重増加や生活習慣病のリスクが高まることがあります。過剰な糖質の摂取は血糖値の急激な上昇を引き起こし、インスリンの分泌が増えることで脂肪の蓄積が促進されます。一方、糖質が不足した場合は各臓器に十分なエネルギーが供給されないため、正常な働きができなくなってしまいます。特に脳のエネルギー不足は各器官への指示が遅くなって動きが鈍くなる原因にもなります。具体的な症状として、手足の震えやめまいなどの身体面だけでなく、不安感・眠気・イライラ・倦怠感・うつなどの精神面にも影響を及ぼします。そのため、糖質の摂取量を適切にコントロールすることは健康的な生活を送る上で重要なポイントとなります。

※糖質について、詳しくはトピック「五大栄養素 -炭水化物Ⅰ-」をご参照ください。


日本人は果物をどれくらい食べている?

厚生労働省が2019年に行った国民健康・栄養調査によると、日本人(1歳以上)における果実類の平均一日摂取量は96.4gでした。過去の調査で一番多かったのが1975年の193.5gであったため、約50年の間に私たちが摂取する果実類はほぼ半分になっています。性別で比較すると男性85.8g・女性106.0gとなっており、男性の方がより少ない傾向にあります。年代別に見ると、20~50代で少ない傾向があります。

▲ 世代別の果実類摂取量 (農林水産省「果樹をめぐる情勢」より抜粋)

2005年に厚生労働省と農林水産省が定めた「食事バランスガイド」では、一日に摂取する果物を約200gと設定していますが、実際の摂取量はその数値からどんどん離れてしまっているのが現状です。

▲ 食事バランスガイド 果物二つで約200gを想定している

果物を毎日食べない理由として、”値段が高い” “日持ちせず買い置きできない” “皮を剥くのに手間がかかる” などが挙げられています。実際に1年間の一人あたりの果物購入数量を見ると、みかんやりんごが減少する一方で、比較的安価で1年中購入でき、手軽に食べられるバナナの購入数量は増加しています。


果物を食べるメリット

果物には様々なメリットがあります。まず、果物のビタミンやミネラルは、私たちの身体の正常な機能を維持するために必要不可欠であり、免疫力の強化にも役立ちます。豊富な食物繊維は、腸内環境を整える効果や便秘の予防にも役立ちます。また、果物は水分の含有量も多く、水分補給としても活用できます。さらに、抗酸化作用によって体内の活性酸素を抑え、美肌効果や生活習慣病の予防にも繋がります。そして果物には天然の甘味があり、お菓子などと比べてカロリーが低いため、ダイエット中でも比較的安心して摂取することができます。


果物の旬とは

日本では様々な種類の果物が1年を通して栽培されており、旬の果物を選ぶ楽しさもあります。海外から輸入された果物などもスーパーに並び、どの果物が旬のものなのか分かりにくいということもありますが、果物は旬の時期に収穫されることで栄養価や風味が最も高まると言われています。旬の果物を選ぶことで、より美味しく栄養価の高い果物を摂取することができます。また、旬の果物は価格が安くなる傾向もあるため、経済的な面でもおすすめです。下記図を参考に、是非旬の果物を意識して食卓に取り入れましょう。例えば、春にはいちごやさくらんぼ、夏には桃やすいか、秋にはりんごやぶどう、冬にはみかんや洋梨などが旬となります。


おすすめの果物

様々な種類の果物がありますが、比較的通年食べられるおすすめの果物をご紹介します。糖質の摂取に加えて様々な栄養素を身体に取り入れることができます。

【りんご】
ビタミンCが豊富で免疫力の向上に役立ちます。りんごにはプロシアニジンというポリフェノールが含まれています。このポリフェノールは緑茶に含まれるカテキンや赤ワインに含まれるレスベラトロールといったポリフェノールよりも抗酸化力が優れており、動脈硬化や脳梗塞の予防、整腸作用が期待できます。りんごを切った後、断面が段々と茶色くなってくるのは、このプロシアニジンやその他に含まれているポリフェノール類が酸化してしまうことが原因です。そのため、なるべく切ってすぐに食べるようにしましょう。他にも、食物繊維が豊富に含まれており、便通の改善や血糖値の上昇を抑えるなど 「一日1個のりんごで医者いらず」 も納得の、様々な効果があります。

【バナナ】
タンパク質を骨や筋肉に、糖質・脂質をエネルギーに変えるために重要なビタミンB群が豊富に含まれています。ビタミンB群が不足すると、摂取した栄養素が正常に使われないまま、体内に体脂肪として蓄積されやすくなってしまいます。バナナは元々消化吸収が良い食品として知られていますが、バナナに含まれるアミラーゼという消化酵素がバナナ以外の食物の消化吸収も助けます。赤ちゃんの離乳食にもよくバナナが用いられますが、消化器官が十分に発達していない赤ちゃんには理想的な食品と言えます。また、バナナにはカリウムが多く含まれており、体内の余分なナトリウムの排出を促し、血圧の上昇を抑制するため、塩分の過剰摂取を防ぐことができます。


終わりに

果物は健康に良い栄養素が詰まっているため、積極的に摂取することをおすすめします。ただし、糖質制限や特定の病気などの条件に合わせて一度にたくさん食べ過ぎないよう適度な量を摂って、糖質の摂取量をコントロールすることが重要です。バランスの取れた食事を心掛けながら、旬の果物を楽しみ健康な生活を送りましよう。

参考文献
1. 文部科学省: 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
2. 厚生労働省: 令和元年国民健康・栄養調査報告
3. 農林水産省: 「食事バランスガイド」について
4. 農林水産省: 「果樹をめぐる情勢」
5. 青森りんご HP
6. Dole HP