, ,

五大栄養素 -脂質Ⅱ-

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -脂質Ⅰ-

前回のトピックでは脂質の推奨摂取量や体内での役割についてご紹介しました。今回はもう少し深く脂質について見ていきましょう。


脂質の過剰摂取による悪影響

皆さんがご存知のように、脂質の過剰摂取は肥満に繋がります。摂取した脂質のうち、体内で利用されずに余った分は皮下脂肪や内臓脂肪として体に溜まります。タンパク質や糖質の過剰摂取分も体脂肪として蓄積されますが、今回のトピックの前半でもご説明したように日本人の脂質摂取量は年々増加していること、エネルギー源の中で脂質は1gあたりのエネルギー量が最も多いことから、脂質は体脂肪量増加に寄与している割合が大きいです。体脂肪量のうち、皮下脂肪と内臓脂肪が約9割を占めており、残りの僅かな体脂肪量は血中などに存在します。皮下脂肪とは皮膚と筋肉の間にある脂肪を指し、内臓脂肪は内臓の周りにある脂肪を指します。これらの脂肪は、全身のあらゆるところ(特に下腹部・お尻・太もも・背中・二の腕・内臓周り)に存在する脂肪細胞に溜められたものです。体内で余った体脂肪はどんどん脂肪細胞に溜められ、体脂肪が溜め込めなくなると脂肪細胞の数を増やして更に溜め込もうとします。ダイエットや運動を行うと脂肪細胞の大きさを小さくすることはできますが、増えてしまった脂肪細胞が減ることはありません。

ここまで聞くと、脂肪細胞が悪者のように見えますが、溜め込んでいる体脂肪量が正常範囲内である脂肪細胞は実は、生活習慣病を防ぐ物質を放出し、私たちの体を守ってくれています¹⁾。放出されるレプチンは満腹中枢を刺激して食欲を抑制する効果があり、アディポネクチンは血圧や中性脂肪を下げる効果があります。しかし、細胞内に体脂肪を過剰に溜め込み膨れ上がった脂肪細胞は一転して、生活習慣病を招く悪い物質(PAI-1・TNF-α・IL-6など)を放出するようになります。タンパク質の一種であるPAI-1は血栓(血液の塊)を形成し、血液の流れを悪くします。サイトカインの一種であるTNF-αはインスリンの働きを妨げることで血糖値を上昇させ、IL-6は免疫機能を暴走させることでウイルスだけでなく健康な細胞まで攻撃するようになってしまいます。また、アディポネクチンの放出量が減ることで血圧や中性脂肪が上がってしまいます。そして、最終的に生活習慣病を発症してしまうのです。


脂質の不足による悪影響

一方、脂質の摂取不足は体にどのような悪影響があるのでしょうか。脂質が不足すると、体に必要な体脂肪量が確保できなくなります。保温機能がある体脂肪が少ないと、体温が維持されにくくなり体が冷えてしまいます。体温と免疫機能は密接な関わりがあり、体温低下は免疫力の低下に繋がります。

また、ホルモンバランスも乱れやすくなります。男性の場合、体脂肪率が低すぎると骨や筋肉の増加に関わるテストステロンの分泌量減少を引き起こし、女性の場合はホルモンバランスや月経周期に大きく影響します。女性ホルモンの分泌にはエネルギーが必要であり、普段蓄積されている体脂肪もエネルギー源として使用されます。しかし、体脂肪が少なすぎると、体脂肪から分泌されて脳のホルモン分泌信号にも影響を及ぼすレプチンの分泌量が減り、生理不順または無月経を引き起こします。InBodyでは成人女性における体脂肪率の標準範囲を18-28%としています。この標準範囲を下回ると個人差はありますが、約半数が月経不順に、10%以下ではほぼ100%無月経になってしまいます²⁾。正常な生理周期を保つためには最低22%以上が必要とされています³⁾。また、ホルモンバランスの乱れは骨密度にも影響するため、体脂肪率が低い女性アスリートは骨密度の低下によって疲労骨折が起こりやすくなります。

自分の体の体脂肪情報を確認せず闇雲に、「脂質を取らない」「夕食を食べない」といった偏りのあるダイエットを行った結果、脂質の不足が原因で体調不良に悩まされる方も少なくありません。InBodyでは体重の増減の内訳を確認することができます。体重が増えたとしても、体脂肪量が増加せず、主に筋肉量が増加しているなら良い体重増加と捉えることができます。一方、体重が減ったとしても、体脂肪量が維持されたまま筋肉量のみが減少しているなら悪い体重減少と捉えます。InBodyを定期的に測定することで、筋肉量や体脂肪量を加味した現在の体の状態を確認できます。


InBody結果用紙で表示される体脂肪量は測定・入力された体重から、測定された除脂肪量を差し引いた値になります。体重が正しく測定できなかった場合、その誤差のほとんどは体脂肪量の誤差として表れます。また、InBodyを測定する際、胃に残っている食べ物や、体内の便や尿などの排泄物は体脂肪量として算出されます。従って、正確に体脂肪量を測定するためには、食後最低2時間は時間を空け、測定前には必ずトイレを済ませることを推奨します。
※その他測定前の注意事項はインボディ公式YouTubeチャンネル「測定前の注意事項」の動画をご覧ください。

InBodyが独自に提供しているInBody点数(フィットネススコア)は筋肉量(厳密には除脂肪量)と体脂肪量から算出されています。筋肉量は標準値を超えると1kgあたり+1点されますが、体脂肪量は標準値から1kg増えても減っても-1点されます。体脂肪量の不足は体に悪影響を及ぼすため、私たちの体には適量な体脂肪が必要であるとInBodyは知っているからです。


脂質異常症

体内の脂質が過剰もしくは不足している状態が続くと脂質異常症と診断されます。日本動脈硬化学会では血液検査による診断基準を以下の通りとしています⁴⁾。脂質異常症そのものが何かしらの症状を起こすものではありませんが、脂質異常症によって動脈硬化が発生することで、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めてしまいます。また、血中の脂質が増加することで、胆のうに胆石(コレステロールの塊)が発生してしまうこともあります。
▲脂質異常症の診断基準(日本動脈硬化学会より引用・改変)

脂質異常症の主な原因は喫煙・食生活の乱れ・運動不足・糖尿病・睡眠不足などが挙げられます。これらの生活習慣や関連疾患が起因して血中脂質濃度が上昇してしまいます。また、脂質異常症には遺伝的な要因が絡んでいる場合もあります。先天的なLDLコレステロールの代謝異常によって、血中の脂質が増加してしまうことが原因です。脂質異常症を防ぐには食生活の改善と定期的な運動を行うことが大切です。


体脂肪量以外で確認する測定項目

脂質を適切に摂取できているかは体脂肪量以外のInBody測定項目でも確認することができます。

➤内臓脂肪レベル
業務用InBodyの一部機種では、内臓脂肪レベルを確認することができます。InBodyでは内臓脂肪を直接測定しておらず、インピーダンス値とCTとの相関から、あくまで参考値として算出しています。内臓脂肪レベルは内臓脂肪断面積の1桁数値を切り捨てた値を意味しており、内臓脂肪レベルが10以上(内臓脂肪断面積が100cm²以上)だと、内臓脂肪が多いと判断します。

➤腹囲・部位別周囲長
腹囲や各部位の周囲長からも確認することが可能です。InBodyは最初に体水分量を算出しますが、体水分量を求める際に、各部位を円柱として捉えることで、円柱の体積・長さ・断面積が求められるので、円柱の周囲長(つまり腹囲や各部位の周囲長)も推定できます。くびれの位置や凹凸間の差が大きい方では、実測値と乖離する場合があります。しかし、メジャーで測定した周囲長でも測定する人によっては誤差(ヒューマンエラー)が発生することもあるので、そういった誤差が含まれていない値として、継続的にモニタリングするにはInBodyの数値も便利です。
※InBodyの測定原理に関して、詳しくは「InBodyの技術」ページも併せてご覧ください


終わりに

ダイエットや食生活を見直す際によく間違いやすいのが「脂質=体脂肪=悪」という認識です。この誤解から、体脂肪を減らすためには脂質の摂取量を極端に減らすことを考えるようになり、その結果、逆に脂質の不足状態に陥り、体の不調を招くことも多いです。つまり、脂質は必要不可欠な栄養素であり、体には適量必要であることを是非覚えておいてください。

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -脂質Ⅰ-

 

参考文献
1.「e-ヘルスネット」 厚生労働省
2. 順天堂大学 女性スポーツ研究センター
3. Kimberly Huhmann, Menses Requires Energy: A Review of How Disordered Eating, Excessive Exercise, and High Stress Lead to Menstrual Irregularities. Clin Ther. 2020 Mar;42(3):401-407.
4.「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」 日本動脈硬化学会