, ,

体水分均衡の特徴と重要性

日常的に体成分測定をされる方で、筋肉量と体脂肪量を確認している方は多いと思います。確かに両者は馴染みがあり、誰でも理解しやすい項目ですが、体成分測定で見逃してはいけない項目が他にもいくつかあります。その代表的な項目が体水分量や体水分均衡です。成人における体水分は体重の約6割を占める成分であり、健康状態を評価する上でとても大切です。体水分均衡は浮腫や痩せの指標としても活用されている項目です。今回は人体における体水分の役割とそのバランスの重要性についてお話します。


体水分率とは ?

体水分は体に存在する水成分(H₂O)を意味し、主な役割は酸素や栄養分を細胞に届け、老廃物を尿として排出することです。また、体温が上がったときは皮膚表面の血管に血液を集め、熱を逃がすための発汗を促すことで体温を一定に保ちます。

体重に対する体水分量の割合を体水分率と言います。年齢、性別、日々の運動量によって個人差はありますが、胎児では体重の約90%、新生児では約75%、子供では約70%、成人では約60~65%、高齢者では約50~55%が体水分で占められています。成長するに従って体水分の割合が減る理由は、水分を殆ど含まない体脂肪の割合が増えるためです。また、一般的に男性よりも女性の方が体脂肪量は多いので、男性の体水分の割合は女性より高いです。一方、体水分量は加齢に伴って減りますが、これは老化によって細胞内の水分が減少することが原因です。体水分率は水分摂取量、身体活動量、体調などで変動しますが、人体は常に一定の体水分量を保とうとするため、1日の水分摂取量と排出量はほぼ一致します。

体水分は筋肉の主な構成成分であり、体水分量が多い人は筋肉量も多いです。そのため、体水分率の増加=筋肉量の増加による体成分の改善と思われがちですが、浮腫みによっても体水分は増加するため、必ずしも体水分率の増加が健康の改善を意味するわけではありません。従って、現在の体水分状態が良好な傾向であるかどうかを判断するためには、体水分率ではなく体水分均衡を確認する必要があります。体水分均衡とは細胞内水分と細胞外水分のバランスを意味し、InBodyの細胞外水分比(ECW/TBW)という項目で確認できます。この指標が表していることや、水分バランスを整えることの重要性を理解するためには、まず細胞内・細胞外水分について知る必要があります。
※細胞外水分比は、InBody470/270以外の機種で測定できます。


水分バランスとは ?

体内の純粋な水成分である体水分(Total Body Water; TBW)は、細胞膜を隔てて細胞内水分と細胞外水分に分けることができます。
➤細胞内水分量(Intracellular Water; ICW)
ICWは細胞膜の内側に存在する水分であり、健康な人体におけるICWの割合はTBWの約62%です。ICWの主な役割は細胞膜の外側まで運ばれてきたエネルギー源を細胞小器官まで届けることです。

➤細胞外水分量(Extracellular Water; ECW)
ECWは細胞膜の外側に存在する水分であり、血液、間質液、細胞通過液、リンパ液などが該当します。健康な人体におけるECWの割合はTBWの約38%です。ECWの主な役割は細胞へ栄養素や酸素を運搬したり、細胞内の代謝過程でできた老廃物を細胞外に運び出したりすることです。

両者の間では常に水分・栄養・酸素などの行き来がされており、お互いの均衡を保とうと働いています。その均衡を表す指標が細胞外水分比(ECW/TBW)で、TBWに対してECWが占める割合を意味します。健康な人の水分バランスは常に細胞内水分と細胞外水分を62対38で維持するので、ECW/TBWは0.380前後が計測されます。この値は大量の水を摂取したからといって、大きく変動することはありませんが、何かしらの原因で水分バランスが崩れるとECW/TBWは標準よりも高くなります。


体水分の測定方法

体水分状態を確認する方法は2つあります。

➤重水と臭化ナトリウムによる希釈法
希釈法とは体水分中に自由に拡散する性質の成分を経口摂取し、一定時間後に採取した尿から摂取した成分の濃度を測定することで、体水分を算出する方法です。TBWを測定する際に用いられる成分は重水(D₂O)、ECWは臭化ナトリウム(NaBr)です。この希釈法はTBWやECWを最も正確に測定できる方法(ゴールドスタンダード)として認識されています。しかし、体内に存在しない成分を経口摂取するという侵襲的な方法は、時間と手間がかかり且つ専門的な知識・技術が必要なので、気軽に測定することは難しいです。

➤生体電気インピーダンス分析法(BIA法)
一方で、非侵襲的で気軽に測定できる方法としてBIA法があります。BIA法は、人体に微弱な電流を流し、その際に発生する抵抗値(インピーダンス)から体水分を測定します。直接部位別多周波数BIA法(DSM-BIA法)を用いるInBodyは、両腕・体幹・両脚ごとのICWとECWを測定することができるので、部位別に水分バランスを把握することができます。
※BIA法の詳しい測定原理については、「InBodyの技術」ページをご参照ください。


水分バランスが健康に及ぼす影響

水分バランスが崩れてECW/TBWが高くなる要因は大きく2つあり、それぞれが健康に及ぼす影響は次のようなことが挙げられます。

パターン①:細胞外水分量(ECW)が増えてECW/TBWが高くなる
➤炎症
怪我によって発赤したり、腫れて痛みを感じたりする現象を炎症と呼び、血管の拡張や血流の増加などの影響で炎症部位のECWが増加します。一過性の急性炎症は比較的早く回復するので、ECWの増加も一時的なものとして観察される反面、慢性炎症は細胞ストレスや機能不全によって引き起こされるので、ECWの増加が長期に渡って続きます。慢性炎症状態が長引くほど、肝疾患、心疾患、がんなどの深刻な病気に繋がる恐れがあります。

➤腎疾患
腎臓の主な役割は血液をろ過して体内で生成されるナトリウムなどの老廃物を取り除くことです。腎臓の機能が低下している人が塩分を多く含む食事を摂取すると、ろ過機能が低下した腎臓は老廃物を水分と一緒に排泄しきれなくなります。そして、排出されなかった老廃物と水分は体内に溜まり、浮腫みを発生させます。排出されずに溜まった水分はECWに該当するので、ECW/TBWは増加します。腎機能低下による浮腫みは体重の増加、血圧の上昇、心不全や脳卒中のような合併症リスクを増加させるなど、様々な健康問題を引き起こします。

➤肥満
肥満はECWも増加させます。内臓脂肪が増加すると血圧やECWに影響するホルモンの調節機構(RAA系)が活発になり、血圧は上昇してECWも増加してしまいます¹⁾。また、過剰な体脂肪は血管を圧迫して血流を悪くするので体内に余分な水分を溜めてしまいます。

パターン②:細胞内水分量(ICW)が減ってECW/TBWが高くなる
➤サルコペニア
体水分量は加齢に伴って減少する傾向があります。ECWとICWの両方が減少していきますが、ECWに比べてICWの減少率が大きいので、結果的にECW/TBWは高くなります。これは水分をたくさん保持している筋肉量が減少することに起因します。このような加齢による筋肉量や筋力の低下をサルコペニアと言い、様々な疾患のリスクや重症度を高める因子とされています。例えば、2型糖尿病は体脂肪量の増加だけが原因で発症すると認識されがちですが、実は筋肉量の減少に伴うインスリン抵抗性(糖を体に吸収するインスリン作用が十分に働かない状態)の増大でも発症リスクは高まります²⁾。また、動脈硬化(動脈が硬くなって血管の流れが悪くなる状態)は生活習慣病だけでなく、下半身における筋肉量の減少も要因の1つであることが明らかになっています³⁾。
※サルコペニアについては、トピック「サルコペニアの理解に必要なこと」もご参照ください。

これとは逆に、ICWが増加することでECW/TBWが標準より低くなることもあります。これは水分バランスが崩れているわけではなく、むしろ筋肉が引き締まっている状態を意味します。筋肉は筋肉細胞の数が増えたりICWの増加に伴って肥大したりすることで、筋繊維のサイズが大きくなり成長していきます。この筋肉とICWの関係性は研究でも明らかになっており⁴⁾、ECW/TBWは筋肉の質の指標としても使えることが分かります。例えば、筋肉量が比較的多い運動選手や若い男性のECW/TBWは標準値より低くなる傾向があります。


終わりに

適切な水分バランスを保つことは健康においてとても重要なことです。特に持病もなく、栄養バランスの良い食事と定期的な運動をしている人は水分バランスが崩れることは殆どありません。しかし、何かしらの原因でECWが過剰に増えたり、ICWが減少したりして水分不均衡が起こっている場合は、その原因によって対処法は変わってきますが、ECW/TBWをモニタリングしながら改善していく必要があります。

体水分均衡(ECW/TBW)は筋肉量や体脂肪量と同様に体成分を評価する上では欠かせない指標です。水分バランスの項目を提供する機種で測定された際は、ぜひこの項目も確認してみましょう。

 

参考文献
1. Christiane Rüster et al., The role of the renin-angiotensin-aldosterone system in obesity-related renal diseases. Semin Nephrol. 2013 Jan;33(1):44-53
2. Noboru Kurinami et al., Correlation of body muscle/fat ratio with insulin sensitivity using hyperinsulinemic-euglycemic clamp in treatment-naı¨ve type 2 diabetes mellitus. diabetes research and clinical practice 120 (2016)65–72
3. Yuji Tajiri et al., Reduction of skeletal muscle, especially in lower limbs in Japanese type 2 diabetic patients with insulin resistance and cardiovascular risk factors. Metabolic Syndrome and Related Disorders 2010 Apr;8(2):137-42
4. Alex S Ribeiro et al., Resistance training promotes increase in intracellular hydration in men and women. Eur J Sport Sci. 2014;14(6):578-85

 

, , ,

すべての女性が筋トレを行うべき科学的根拠

健康に関する目標を尋ねた時に、”体重(体脂肪量)の減量” ではなく ”筋肉量の増加” と答える方は、女性の中でどれくらいいるのでしょうか? 本当の意味での健康体とは、一体どのような体型を指すのでしょうか? ただ痩せているだけではなく筋肉で引き締まったスタイルを手に入れるためには、どのようなトレーニングが必要なのでしょうか? 今回のトピックでは、特に女性が知ってほしい筋トレに関する科学的根拠や迷信についてご紹介します。


女性は筋トレを避けるべきという迷信

筋トレに関する様々な迷信や誤解があります。これらの中には、女性がウエイトトレーニングや高負荷トレーニングを行わないよう推奨しているものもあります。次に紹介するのは一般的に広まってしまっている3つの迷信です。

迷信1:ウエイトトレーニングを行うと、ずんぐりとした体型になる
多くの女性はウエイトトレーニングなどの筋トレが体重増加やずんぐりとした体型に繋がるため、男性だけが行うべきトレーニングと考えています。確かに、筋トレを行うと筋肉量(除脂肪量)の増加によって体重が増える可能性があります。しかし、筋肉は脂肪よりも密度が高いので増加しても思うほど見た目は太くならず、むしろ引き締まった体型になります。また、筋トレによって筋肉が増加しても同量の体脂肪を減らせば、体重は変わらずボディラインはよりスリムになるため、実際の体重より痩せて見えることもあります。筋肥大を目的として高強度トレーニング(1RMの75%以上強度, RM:最大挙上重量, 反復回数4-12RM)ばかりを行わない限り男性のように筋肉が強調されてムキムキになることはありません。ダイエットまたは健康増進を目的とした筋トレの負荷程度では筋力と筋持久力の向上が主な効果として得られますが、そこまでの筋肥大は生じません。

つまり、筋トレで太って見えるようになることはなく、筋肉量が多いほど時間の経過とともに消費できるカロリー(燃焼する体脂肪量)も多くなるなどのメリットもあるため、将来的に体成分が良くなるための投資と考えてください。「健康」の定義は人それぞれですが、体重だけを基準にせず、見た目の体型や気分、そして筋肉量をはじめとした体成分の数値などの様々な基準で、健康を測ることができます。
※消費エネルギーに関する調整法など詳しく知りたい方は、InBodyトピックの「体脂肪減量に関する5つの迷信」もご覧ください。

迷信2:軽い重さでは効果が得られない

女性を対象に3つの筋トレ方法(高強度低反復vs中強度中反復vs低強度高反復)の効果を調べた研究では、トレーニング方法の違いに関係なく全ての方法で筋力と筋肉量が増加したことが報告されています¹⁾。体重の2倍ものバーベルを持ち上げたり、頭のサイズほど大きいダンベルをカールさせたりする必要はなく、軽い重さでも反復回数を調整すれば、筋トレの効果は十分得られます。

迷信3:筋トレは高齢者に適さない
筋肉の喪失を意味する「サルコペニア」は老化過程で発生する自然な現象ではありますが、高齢者だけが直面している問題ではありません。40代後半から筋肉量は徐々に減少していくことが報告されていますが²⁾、女性の中には30代後半から段階的に減少していく人もいます。このように若い内から筋肉量や筋力が低下していくことは、老化のプロセスではなく活動量が少ないことに起因します。

加齢や活動量低下によって筋肉量が減少していくにもかかわらず、中年女性や高齢女性では筋トレに抵抗意識を持つ人が多いです。トレーニングや身体活動をしない期間が長くなると、”年を取りすぎて、もう重いものは持てない” という誤った認識から、筋トレで自身の体力レベルを改善することに消極的になってしまいます。

しかし、勉強と同じく、筋トレも”始めるには遅すぎる” “年齢制限がある” というものではありません。筋トレの効果を得るには “若くなければいけない” ということはありません。高齢者が対象であっても、筋トレの効果が認められた報告はいくつもあります。
※高齢者にもお勧めできるトレーニングなどもう少し詳しく知りたい方は、InBodyトピックの「筋トレに年齢制限なし」もご覧ください。


筋トレがもたらす様々な利点

筋肉量(除脂肪量)を増やして体成分を改善することは、見た目が健康的になること以外にもいくつかの利点があります。

➤骨・関節への効果
運動習慣がない成人は、10年ごとに3~8%もの筋肉量が減少するという研究もあります。筋トレを行うことは骨格筋の減少を防ぐだけでなく、内臓脂肪の減少・HbA1cの減少・安静時血圧の低下・心血管の健康増進等の利点があります。また、筋トレは骨の発達を促進することから、骨密度の増加や腰痛・関節炎の軽減などにも効果的であると報告されています³⁾。特に女性は更年期以降、骨粗鬆症のリスクが一層高まるので、筋トレで除脂肪量を増やして予防するという意識も必要です⁴⁾。

➤精神的な効果(不安やストレスの軽減)
面白いことに、筋トレにはリラックス効果やストレス・不安の緩和効果もあります。筋トレとストレス軽減に相関関係があることを報告した研究では、筋トレの強度は低-中強度(1RMの70%以下強度, RM:最大挙上重量, 反復回数12RM以上)が最適であるとしています⁵⁾。


最適な筋トレの頻度

筋トレを効果的に行うためには筋肉を休ませる時間が必要で、その時間は運動負荷の程度によって異なります。運動後の休息期間に起こる修復のリバウンドを超回復と言いますが、超回復には運動後24~48時間ほどの休息が必要です。運動負荷が大きい場合は48~72時間の休息が必要です⁷⁾。つまり筋トレの頻度は週に2-3回が最適であると言えます。
※超回復に関する詳しい説明は、InBodyトピックの「疲労と回復のメカニズム」をご覧ください。

例えば週に2回、上半身(肩・胸・お腹周り・背中・腕など)と下半身(お尻・太もも・ふくらはぎなど)を交互に実施すれば、全身の筋肉をバランス良く鍛えることができます。筋トレ初心者は、エクササイズバンドや軽いダンベルを使用するトレーニングを週1回実施することから始めてみましょう。また、スクワット・腹筋・腕立て伏せ・ぶら下がりなどの自重トレーニングを隔日で行うことも効果的です。


終わりに

今回は筋トレの重要性に焦点を当ててお話ししましたが、スリムで引き締まった健康的なスタイルは、筋トレだけでなく有酸素運動も組み合わせて習慣化することで実現できます。まずはトレーニングプランと目標設定から決めていきましょう。体成分測定ができる環境のある方は、定期的な測定も忘れないでください。これからトレーニングを始めるにあたってInBody測定を検討されている方は、当ホームページで公開している「InBody測定ができる施設」のページからお近くの施設を検索してみてください。

体重計に縛られる目標は止めて、筋肉量(除脂肪量)の増加を目標設定に取り入れてください。筋肉量の増加という観点を持てば、筋トレの効果も正しく測定できるでしょう。体重が増えたことで落ち込むこともなくなり、筋肉量が増えたことが喜びとなります。筋トレを試したことがない、または今までなかなかダイエットに成功したことがない方は、今が行動するチャンスです。外出し辛い時期が続きますが、自重トレーニングや軽いダンベルを使った筋トレは自宅でも実施可能です。まずは一歩踏み出してみましょう。

 

参考文献
1. Stone William J., Coulter, Scott P., Strength/Endurance Effects From Three Resistance Training Protocols With Women. Journal of Strength and Conditioning Research. 8(4):231-234, November 1994
2. Minoru Yamada et al., Age-dependent changes in skeletal muscle mass and visceral fat area in Japanese adults from 40 to 79 years-of-age. Geriatr Gerontol Int 2014;14(Suppl.1):8–14
3. Wayne L Westcott, Resistance Training is Medicine: Effects of Strength Training on Health. Curr Sports Med Rep,Jul-Aug 2012;11(4):209-16
4. Geun Ou Shin et al., Comparison of Body Components and Mineral Mass between Women with Osteoporosis and Non osteoporosis Postmenopausal Women. J Korean Acad Fam Med 2002, 23, 7:934 941
5. Justin C. Strickland and Mark A. Smith, The anxiolytic effects of resistance exercise. Front Psychol, 2014; 5: 753

 

,

腸内環境を改善する方法 -3つのバイオティクスたち-

腸内フローラ(=腸内細菌叢)という言葉をご存じですか? 腸内フローラは腸内に存在する様々な細菌の集合体のことで、その様子がお花畑のように見えることからフローラ(flora)と呼ばれています。これまで腸内細菌に関する情報は「乳酸菌が健康や免疫力向上に良い」といった、漠然としたものしかありませんでした。しかし、ここ数年で腸内細菌に関する様々な研究が行われ、腸内環境の改善が多くの健康問題の予防・改善に役立つという事実が明らかになってきました。例えば、脳と腸は自律神経を介して相互作用していたり、肥満は腸内細菌のバランスと関連していたりなど、腸内フローラを整えることは健康管理に繋がるという認識が広まっています。

腸内には、腸の蠕動(ぜんどう)運動を促進したり病原菌の感染を予防したりするなど身体に有益に働く善玉菌、腸内で有害物質を作る悪玉菌、どちらにも属さず数が多い方の菌と同じ作用をする日和見菌(ひよりみきん)の3種類が主に存在しており、その数は100兆個に至ると言われています。その膨大な腸内細菌の殆どを占めているのは日和見菌で、この細菌の性質上、善玉菌の数が悪玉菌より多くなるように管理することが腸内環境の改善につながります。善玉菌の増殖には食生活の改善やストレス管理が重要ですが、腸内に善玉菌を送って育てる方法もあります。今回のテーマは腸内環境を改善させる方法の1つであるプロバイオティクスとプレバイオティクスについてお話しします。


プロバイオティクス? プレバイオティクス?

プロバイオティクス(probiotics)は1989年、イギリスの微生物学者Fullerによって「腸内フローラのバランスを改善することにより人に有益な作用をもたらす生きた微生物」と定義されたもので、現在では「十分量を摂取したとき、宿主に有益な効果を与える微生物」という定義も広く受け入れられています。また、これらの微生物を含む食品をプロバイオティクスと称することもあります。代表的な種類は乳酸菌やビフィズス菌が挙げられますが、乳酸菌類の中でも科学的に証明できる次の条件を満たす特定の菌株に限ってプロバイオティクスと呼びます。

<プロバイオティクスの条件> ¹⁾
・安全性が保証されている
・もともと宿主の腸内フローラの一員である
・胃液、胆汁などに耐えて生きたまま腸に到達できる
・下部消化管で増殖可能である
・宿主に対して明らかな有用効果を発揮できる
・食品などの形態で有効な菌数が維持できる
・安価かつ容易に取り扱える

コンビニなどで販売されているヨーグルトや乳酸菌飲料の中で、特定保健用食品(トクホ)とされているものは殆どプロバイオティクスに該当します。

一方、プレバイオティクスはプロバイオティクスより少し後に現れた概念で、1994年にGibsonとRoberfroidによって「大腸内の特定細菌の増殖及び活性を選択的に変化させることにより、宿主に有利な影響を与え、宿主の健康を改善する難消化性食品成分」と定義されました。この定義から分かるようにプレバイオティクスは菌株ではなく、特定の菌株を増殖・活性化させる食品成分を指し、最もよく使用される成分は難消化性オリゴ糖類とプロピオン酸菌による乳清発酵物です。また、プロバイオティクスと同様、次のような条件を満たすものをプレバイオティクスと呼びます。

<プレバイオティクスの条件> ¹⁾
・消化管上部で加水分解、吸収されない
・大腸に共生する一種または限定された数の有益な細菌の選択的な基質であり、それらの細菌の増殖を促進し、または代謝を活性化する
・大腸の腸内細菌叢(フローラ)を健康的な構成に都合のいいように改変できる
・宿主の健康に有益な全身的な効果を誘導する

これらの条件からわかるように、プレバイオティクスは腸内にある善玉菌に働きかけることで腸内環境を改善させます。更に、プロバイオティクスとプレバイオティクスの定義からわかるように、この2つは一緒に摂取することでお互いの効果を高めることができます。つまり、どれほど多くのプロバイオティクスの食品を摂取しても、菌株の増殖・活性化がうまくできないと腸内環境は改善されにくく、逆にプレバイオティクスだけ多く摂取しても、元々の菌株の数が少ないと増殖促進効果が現れるまで長く時間がかかってしまいます。


プロバイオティクスとプレバイオティクスの効果

プロバイオティクスは便秘や下痢症など老廃物排出作用の改善、乳糖不耐症の改善はもちろん、免疫機能の改善による感染防御、発がん抑制、炎症性腸炎の予防などのアレルギー抑制効果が報告されています。アレルギーは、免疫細胞が病原体ではない成分を病原体として認識して過剰反応することで発生します。腸は多種多様な細菌が存在する器官であるため体内に存在する免疫細胞の7割以上が配置されており、アレルギー反応と密接な関係を持つ臓器です。そのため、腸内環境の改善は過剰に反応して抗原を排出する免疫細胞(2型ヘルパーT細胞: 寄生虫排除などに重要な役割をする免疫細胞で、過剰反応するとアレルギー反応を引き起こす)の働きを抑え、他の免疫細胞(1型ヘルパーT細胞: 病原菌などを殺傷する機能を持つ免疫細胞で、過剰反応すると自己免疫疾患を引き起こす)を活性化させることができ、アレルギー症状を和らげるとされています。

また、長年の研究の中でプロバイオティクスには抗肥満効果があることも報告されています。腸内フローラのバランスが整うと代謝機能の改善や中性脂肪の吸収抑制などに加え、肥満と密接な関係を持つ2型糖尿病の予防にも効果的とされています²⁾。

一方、プレバイオティクスは消化器上部で分解・吸収されずそのまま腸に届き、腸内細菌によって発酵される特徴があり、発酵の結果として短鎖脂肪酸(short-chain fatty acid)と乳酸が生産されます。この短鎖脂肪酸は大腸に吸収され、大腸上皮細胞のエネルギー源として使用されるだけではなく、様々な効果をもたらします¹⁾³⁾。短鎖脂肪酸には酢酸、プロピオン酸や酪酸などがあり、細かい効果は少しずつ違いますが、どれも腸内のpHを下げて酸性状態を維持することに役立ちます。このとき腸内のpHは菌の増殖と密接な関係にあります。具体的に言うと、動物性タンパク質などが多くなり腸内のpHがアルカリ性に傾くと悪玉菌が増え、オリゴ糖や食物繊維が多くなると腸内のpHが酸性に傾き、善玉菌が増殖しやすくなります。

つまり、プレバイオティクスを摂ることで短鎖脂肪酸の生産が増えて腸内の酸性状態が維持されると、善玉菌の増加に伴って腸内環境が改善されます。また、プレバイオティクスは大腸粘膜細胞の主要エネルギー源でもあるため、粘膜分泌を促進させて腸内免疫力を向上させたり、エネルギー代謝を調整することで肥満や糖尿病などの代謝性疾患を予防したりするなど、善玉菌の増殖を促す以上の効果も示されています。


プロバイオティクスとプレバイオティクスの摂り方

腸内フローラのバランスを維持することが、慢性疾患はもちろん、うつ病などの精神疾患の改善にも繋がるとされる中、様々なプロバイオティクス及びプレバイオティクス商品が販売されています。市販の商品からもプロバイオティクスやプレバイオティクスを摂れますが、腸内環境の改善は長期的かつ持続的に行うことが大事です。プロバイオティクスの乳酸菌やビフィズス菌は発酵食品によく含まれており、ヨーグルトやチーズ、納豆、漬物、発酵バターなどから摂取できます。

一方、プレバイオティクスは聞き慣れた言葉に変えると「オリゴ糖」や「食物繊維」です。難消化性オリゴ糖は消化酵素によって分解されないため、小腸で吸収・消化されず大腸に届き、善玉菌によって発酵され短鎖脂肪酸として吸収されます。オリゴ糖が多く含まれている食品には大豆、アスパラガス、玉ねぎ、キャベツ、バナナなどがあります。
※その他にも食物繊維(プレバイオティクス)に関する詳しい内容と代表的な食品については「五大栄養素番外編 -食物繊維Ⅰ-」をご覧ください。

普段から、これらの食品を摂取するよう心掛けることで自然と両者を摂ることができます。近年では、プロバイオティクスとプレバイオティクスを一緒に摂取することをシンバイオティクス(synbiotics)と呼び、更に高い相乗効果が期待できます。難しく考える必要はなく、バナナヨーグルトやおくら納豆のようにプロバイオティクスの食品とプレバイオティクスの食品を一緒に混ぜて食べることでシンバイオティクスになります。


腸内環境の改善に重要な要素

腸内フローラを整えるためには食習慣の改善が第一とされている反面、ストレスや疲労、睡眠不足などによる自律神経の乱れは腸内環境を悪化させる要因です。そのため、適切なプロバイオティクス及びプレバイオティクスの摂取とストレス管理、適切な睡眠による疲労回復など、健康管理の基本が腸内環境を改善させる最も効果的な方法となるでしょう。「腸活」という言葉が生まれるほど腸内環境改善の重要性が話題になっている今、善玉菌を育てる生活習慣を作ってより健康的な生活を送られてみるのはいかがでしょうか。

 

参考文献
1. 公益財団法人腸内細菌学会
2. 清水 秀憲ら, 腸内細菌由来短鎖脂肪酸における宿主エネルギー代謝機能制御. Glycative Stress Research 2019; 6 (3): 181-191
3. 宇佐美 眞ら, 多様な酪酸投与とその効果. 甲南女子大学研究紀要Ⅱ 第 13 号(2019 年 3 月)

, ,

今さら聞けない、体組成計のあれこれ: 測定値の理解を深めるためのQ&A

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「今さら聞けない、体組成計のあれこれ: 正しい測定方法


測定時の注意事項を守って測定しても、得られた測定結果に疑問を抱くこともあるかと思います。今回は、測定結果に関するよくある質問をまとめてご説明します。


Q. InBodyと他社の体組成計で測った体脂肪率が違います

体脂肪率とは、体脂肪量を体重で割った値で、体重に対して体脂肪量が占める割合を表しています。メーカーによって測定される体脂肪率が異なる理由をお話しする前に、まず体組成計における体脂肪量の求め方について簡単にご説明します。全ての体組成計は手や足の電極から体に微弱な電流を流し、最初に体水分量を求めます。それを基に筋肉量や除脂肪量(体脂肪以外の量)を求め、最後に体重から除脂肪量を差し引いて体脂肪量を求めるため、体脂肪量の変化は「除脂肪量(体水分量)の変化」もしくは「体重の変化」があった時に見られます。これを踏まえて、InBodyと他の体組成計で測定される体脂肪率が異なる理由をご説明します。

➀測定タイプの違い
InBodyと比較している体組成計は両脚で乗る測定タイプでしょうか? それとも両脚で乗って、手で電極を握る測定タイプでしょうか? 前者の場合、電流は下半身にしか流れず、体幹や腕の筋肉量、全身の体脂肪量などは下半身の結果に基づいて推定されます。例えば、下半身の筋肉量が多い方が脚だけ測定するタイプを使用すると、体幹や腕の筋肉量も脚と同じくらい多いと見積もられ、全身の筋肉量は実際よりも過大評価されます。一方で、下半身と比べて上半身の筋肉量が多い方が同じ測定タイプの体組成計を使用すると、全身の筋肉量は実際よりも過小評価されます。そして、体脂肪量は体重から除脂肪量を差し引いて求めるため、筋肉量(除脂肪量)が正しく測定できないと体脂肪量も正確に求めることができません。

筋肉の発達度合いは部位毎に異なり、更に個人差もあるため、体の一部だけを測定した情報から全身の体成分を推定するのではなく、各部位を個別に測定する必要があります。その点、InBodyは業務用・家庭用共に、全身を四肢と体幹に区分して測定しています(家庭用のInBody Dialの測定結果は、全身情報のみが提供されます)。
※詳しくはInBodyトピック「BIA技術の限界と克服 Part1: 技術の黎明」もご覧ください。

➁測定値算出方法の違い(統計補正の有無)
測定タイプがInBodyと同じであっても、他の体組成計とInBodyは大きく違う特徴があります。それは統計データで測定値を補正している点です。これを統計補正と呼びます。


統計補正とは、入力した年齢・性別・人種などを考慮した固定値を体成分の算出式に組み込むことです。InBody以外の体組成計は殆ど、この統計補正を使用しています。例として、若者は高齢者より筋肉量が多い、男性は女性より筋肉量が多いなどの統計データが体成分の算出式に組み込まれているため、同一人物を測定しているにも関わらず、機器に入力する年齢・性別情報を変えたり、測定モード(アスリートモードなど)を変えたりするだけで結果が変わってしまいます。このように、統計補正を使うと算出された体成分は一般的な傾向と似たような値として算出され、測定者の本来の体成分が100%反映されなくなってしまいます。統計補正を使用している体組成計かどうか判別する方法は、年齢・性別情報を変えたり、測定モードを変えて連続で測定し、体成分が変化するか確認してください。同一人物で何も変化していないのに筋肉量が増減することに違和感を覚えると思います。

統計補正は一般的な体型の方の測定精度を高めることを目的に取り入れられた技術であるため、一般健常者のデータを用いることが多いです。しかし、同じ年齢・性別の方でも体成分が全く同じ人はおらず、統計データによる補正はかえって誤差として測定結果に影響を及ぼしてしまいます。更に、統計補正は入力した情報によって測定値がある程度固定されてしまうので、筋肉量や体脂肪量の変化を敏感に追うことが難しくなります。

一方、InBodyは統計補正を使用しておらず、電流を流した際に測定される電気抵抗値(インピーダンス)・身長・体重の3つの情報のみで測定値を算出しているので、測定者のありのままの体成分を知ることができ、僅かな体成分の変化も敏感に追うことができます。

➂着衣量の設定
使用された体組成計は着衣量を設定できるものでしょうか? 業務用InBodyは事前に着衣量を設定することができ、自動的に測定体重から設定した重さが差し引かれます。しかし、この設定ができない体組成計を使用したり、着衣量以上の上着や装飾品を身に着けていたりすると、その分体重が重くなり、その差は体脂肪量として反映されます。正確に体脂肪量や体脂肪率を測定したい場合は、着衣量を考慮してできるだけ身軽な状態で体重を測定することをお勧めします。


Q. InBodyはメジャーを使わずに、どうやって腹部や腕の周囲長を測定していますか?


InBodyは電気抵抗値(インピーダンス)と身長から体水分量を算出しますが、これを詳しく説明すると、入力した身長を基に四肢・体幹の長さを求め、身体の各部位をそれぞれ凹凸のない均等な円柱と見立て、その体積(体水分量)を計算します。この過程で得られた円柱の円周を基に周囲長を算出しています。しかし、各部位のくびれの位置は個人差があり、インピーダンスだけではその位置を特定できないため、メジャーによる実測値とInBodyの推定値が一致しない方もいます。但し、メジャーによる実測は測る人によってメジャーを当てる位置や力の入れ具合が異なるので、値にバラつきが出る可能性があります(ヒューマンエラー)。しかし、InBodyの周囲長はインピーダンスという人為的に変えられない値から算出しているため、数値の変化をモニタリングする形で活用できます。


Q. 筋力がアップしたのに、筋肉量が増えません

確かに、筋力と筋肉量はある程度の相関がありますが、変化が同時に現れるわけではありません。筋力は比較的短期間の筋トレでも効果が期待できて変化もすぐ現れますが、筋肉量は十分な栄養摂取によって筋肉の重さを増やす必要があるため、どうしても変化が現れるまで時間がかかります。運動を始めて間もない頃は筋力と筋肉量の変化の違いに違和感を覚えるかもしれませんが、運動と食事管理を継続することでどちらも増加させることができます。


Q. 一日のどの時間帯に測定した方がいいですか?

体内の水分は常に循環しているため、朝・昼・夜それぞれの測定値が変化するのは当たり前です。また、午後になると体水分は重力の影響で下半身に移動する傾向があるため、測定は比較的水分分布が一様である時間帯の朝~午前中が望ましいです。

最も重要なことは毎回の測定条件をできる限り揃えることです。例えば、初回のInBody測定が夕方だった場合、次回以降も同じ時間帯に測定することで筋肉量や体脂肪量の増減をより正しく確認することができます。もし、次回の測定を午前中や昼食後などに変えてしまった場合、筋肉量や体脂肪量の変化が水分分布の変動や直前の食事の影響によるものか、運動の成果によるものかの判断が難しくなってしまいます。

何気なく測定することが多い体組成計ですが、普段の運動や食事管理の成果を正しく確認できるよう、今回のトピックを是非参考にしてみてください。

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「今さら聞けない、体組成計のあれこれ: 正しい測定方法

, ,

今さら聞けない、体組成計のあれこれ: 正しい測定方法


多くの方が新生活を始める春は、何か新しいことを始めるのに適した時期でもあります。心機一転してジムに入会したり、ウォーキングやランニングを始めたりする方も多いでしょう。運動を習慣づけるとき、体成分を測定して自分の努力を確認するのはモチベーション維持に役立ちます。最近は、体組成計が一家に1台あることも珍しくなく、自宅で気軽に筋肉量や体脂肪量を測定することができるようになりました。

業務用InBodyも家庭用体組成計も、測定方法は同じ生体電気インピーダンス分析(BIA)法を採用しており、体内に微弱な電流を流すことで体成分を求めています。そのため、測定方法が正しくないと、体成分の変化を正確に追うことは難しくなります。今回はInBodyを含む全ての体組成計で共通する、測定に関する注意事項をお話しします。ご自身の体の変化を正しく確認するために、是非参考にしてください。


測定してはいけない方

心臓ペースメーカーのような植え込み型医療機器、もしくは生体情報モニタのような生命維持に必要な医療機器を装着されている方は測定しないでください。BIA法を用いる体組成計は測定中に微弱な電流を体内に流しているため、体内の機器が何らかの影響を受ける恐れがあります。また、心電図など生体情報のモニタリング中に測定すると、電流が生体信号と一緒に拾われるのでモニタの波形が一時的に乱れてしまいます。BIA法で使用する電流は人体に対する安全性が証明されており、長年活用されているにも関わらず全世界で1件の医療事故も報告されていない極めて安全な測定方法です。そのため、間違って上記のような方を測定してしまったとしても慌てることはなく、様子を見ていただき次回からは測定しないようにしてください。


測定前の注意事項

InBodyをはじめとする全ての体組成計は最初に体水分量を測定し、それを基に筋肉量や体脂肪量を算出しています。そのため、常に体内で循環している体水分量を正確に測定することが、他の測定値の精度に直結します。正確に測定するためには、測定前の注意事項を守っていただくことがとても重要で、InBodyの公式YouTubeチャンネル内の動画でもご紹介しています。

ここでは、動画内で挙げている注意事項をいくつかピックアップしてご紹介します。
➤立位で測定する場合は5分くらい起立してください
長時間横になっていたり、座ったりした状態から測定を行う直前に立ち上がると、体内の水分が重力の影響で下半身に移動します。姿勢を変えた直後の水分移動は平常時よりも激しく、測定値に影響を及ぼしてしまうため、水分の移動が落ち着くまで5~10分ほどの安静時間を取ってから測定します。

➤運動後・シャワーや風呂後の測定を控えてください
運動や風呂などで体温が上がると血流が良くなり、安静状態の体水分に比べて体水分の移動が激しくなり、測定値に影響を及ぼします。正確な測定結果を得るためには、血流が落ち着いた状態(運動前・シャワーや風呂前)での測定を心がけましょう。

➤測定前は食事を控えて、トイレを済ませてください
電流が流れない位置に存在する水分は、水分として測定されないため筋肉量には影響しませんが、重さは体重に影響を及ぼすので、体脂肪量として測定されます。消化器官に残っている飲食物、体内に残っている便や尿、妊婦さんのお腹の中の胎児や羊水などがこれに該当します。そのため、測定前はできる限り胃腸や膀胱内を空っぽの状態にすることで体脂肪量をより正確に把握できます。また、食事直後は消化器官の動きが活発になることで測定値が影響を受ける可能性があるため、食後に測定する際は消化器官の動きが安定するまで最低2~3時間空けて測定するようにしましょう。
※妊婦さんの測定データについてはトピック「妊娠中の体成分モニタリング」をご参照ください。

➤皮膚が乾燥している場合はウェットティッシュで拭いてください
電極と接触する掌や足裏などが乾燥していると、体内に電流がうまく流れず、測定が正しく行われない可能性があります。その場合、ウェットティッシュで電極が触れる部分の肌を十分に湿らせてください。使用するウェットティッシュはアルコール成分を含まないものを選んでください。アルコール成分は揮発性が高いので、かえって皮膚を乾燥させてしまいます。


測定中の注意事項


今まで測定前の注意事項についてご説明しましたが、測定中にもいくつか注意すべき点があります。ここからは測定時及び測定中に注意する内容をご紹介します。

➤正確な身長を入力してください
身長は体水分の算出に必要不可欠な情報です。BIA法では体内に電流を流した際に発生する電気抵抗値(インピーダンス)と入力した身長から体水分を算出するため、正しい身長を入力しないと全ての測定値が不正確になります。

➤正しい測定姿勢を取ってください
測定中は下図のような姿勢を維持してください(機種によって測定姿勢は異なります)。特に、腕と体幹、太もも同士が接しないように気を付けてください。電流は短い距離を流れようとする性質があるため、接触している部分があると電流の経路が変わってしまい、測定値が影響を受ける可能性があります。筋肉がとても発達している方でどうしても太もも同士が触れ合う場合は、厚手のタオルのような絶縁体を挟むことで接触による影響を防止することができます。

➤測定中に動いたり、喋ったり、笑わないでください
測定中はほんの僅かな体の動きが電流の流れを乱し、測定値に影響を及ぼす可能性があります。しかし、喋らない・笑わないは意識できますが、くしゃみや咳を我慢することは難しいため、もし測定中に起こってしまった場合は再測定することをお勧めします。

普段の測定で注意していただいている項目もあったかと思いますが、今回のトピックを機にこれらの注意事項を守れていたか是非見直してみてください。実際に全ての注意事項を守ることは難しいかもしれませんが、できるだけ多くの項目を守ることで測定の精度を高めることができます。

, ,

五大栄養素番外編 -食物繊維Ⅱ-

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -食物繊維Ⅰ-

前回のトピックでは食物繊維とは何かを中心にご紹介しました。今回のトピックでは様々な種類の食物繊維が持つ効果についてご紹介します。


食物繊維の種類によって健康にもたらす効果は異なる

前回のトピックでも説明した通り、食物繊維は大きく水溶性と不溶性に分類され、それぞれで健康に及ぼす効果は異なります。

➤ 水溶性食物繊維は体脂肪量の蓄積を防ぐ
水溶性食物繊維は体脂肪量を減らすのに効果的であると言われています。2014年にオーストラリアで行われた研究によると、水溶性食物繊維は腸内フローラ(腸内細菌の総称)のバランスを改善させることでインスリン感受性を改善します¹⁾。インスリン感受性とは、血糖値を一定に保とうとするインスリンの働きが正常に作用しているかの程度を示します。インスリン感受性が低いと、インスリンの分泌量が正常にも関わらず、インスリンの効果が十分に発揮できていない状態を意味します。インスリン感受性を改善させ、インスリンの働きを正常にすることで、余分な糖を体脂肪量として体内に蓄積することを防ぐため、体脂肪量の増加を抑えることができます。
また、2017年にアメリカで発表された研究によると、水溶性食物繊維は血糖コントロールを改善させたり、LDLコレステロール値を低下させたりする大きな効果を示しましたが、それが不溶性食物繊維では示されませんでした²⁾。つまり、LDLコレステロール値を下げて血糖値とインスリン感受性を正常にするためには、水溶性食物繊維の摂取がおすすめです。

➤ 不溶性食物繊維は慢性便秘を防ぐ
よく便秘解消のためには食物繊維の摂取が有益であると聞いたことはありませんか? しかし、全ての食物繊維がそのような効果を示すわけではありません。2012年にシンガポールで発表された研究では、特発性便秘(原因不明の便秘)とそれに関連する症状は、大きい・粗い形状の不溶性食物繊維がより効果的であると報告しています³⁾。また、同研究ではそれらの症状に対して水溶性食物繊維は効果的ではなく、むしろ、摂取を止めたり、控えたりすることで軽減できると結論付けています。ただ、前回のトピックでもご紹介したように、不溶性食物繊維のは便秘を悪化させるので、あくまでも適量摂取を心掛けてください。

このように、同じ食物繊維でも水溶性と不溶性は異なる効果を持つため、どちらもバランス良く摂取することが大切です。


レジスタントスターチ

レジスタントスターチ(難消化性デンプン)は食物繊維の一種で、食事に取り入れたほうが良いのではないかと最近になって注目されています。通常のデンプンは小腸で消化・吸収されますが、レジスタントスターチは小腸で消化・吸収されずに大腸まで到達し、コレステロールを排出して血中コレステロールを低下させたり、蠕動(ぜんどう)運動を活発にして便通を改善させたりする、水溶性と不溶性の食物繊維両方の働きをします。

また、レジスタントスターチには大腸がんの発症率を低下させる働きがあると言われています。2013年に日本で発表された研究では、レジスタントスターチは大腸内にとって有害な物質の生成を抑制して、大腸内環境を改善させる効果があると報告されています⁴⁾。大腸がんは食事との関連性が良く言及されていますが、レジスタントスターチをバランス良く摂取することで大腸がんの予防に役立ちます。

レジスタントスターチはデンプン質を豊富に含む白米・トウモロコシ・ジャガイモ・インゲン豆・大麦・全粒小麦などに含まれています。レジスタントスターチは加熱すると減少し、冷やすと増える特質を持つため、調理後に冷やしてから食べると効率よく摂取できます。例えば、お寿司・冷やしうどん・冷製スープやパスタなどの料理が挙げられます。また、冷やしたレジスタントスターチを再加熱すると含有量は減少してしまいますが、常温に戻す程度では減ることがありません。


終わりに

腸内フローラと健康に関する様々な研究が進むと共に、腸活という言葉も出るほど食物繊維への関心は高まり、腸内環境の改善に必須不可欠であると認識されるようになりました。また、食物繊維はエネルギー源としての役割はないものの、血糖値の上昇を抑えたり、便通を良くしたりなど様々な効果を持っている、健康維持に欠かせない栄養素として位置付けられています。

残念なことに、近年は食事の欧米化が進んだ影響で十分な食物繊維摂取量を確保できていません。意識的に食物繊維を含む様々な食品を食生活に取り入れて摂取量を増やしていく必要があります。食物繊維を摂取する手段としてサプリメントも挙げられますが、サプリメントは過剰摂取になりやすかったり、体調や体質によってはお腹が緩くなったりするため、可能な範囲で食品から摂取することを心掛けましょう。

最後に栄養バランスの良い食事を効率よく取るためには、タンパク質・ビタミン・脂質・炭水化物・ミネラル・食物繊維などの特定の栄養素だけを摂取するのではなく、全ての栄養素を満遍なく摂取する必要があります。各栄養素の組み合わせによっては相乗効果が生まれることもあり、体が必要としない栄養素はないからです。バランスが取れた食事と健康は密接に関係していることを忘れないでください。

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -食物繊維Ⅰ-

 

参考文献
1. S Carnahan et al., Prebiotics in obesity. Panminerva Med. 2014 Jun;56(2):165-75.
2. Johnson W.McRorieJr.et al., Understanding the Physics of Functional Fibers in the Gastrointestinal Tract: An Evidence-Based Approach to Resolving Enduring Misconceptions about Insoluble and Soluble Fiber. J Acad Nutr Diet. 2017 Feb;117(2):251-264.
3. Tetsuya Otani et al., Stopping or reducing dietary fiber intake reduces constipation and its associated symptoms. Int J Cancer. 2006 Sep 15;119(6):1475-80
4. 早川 享志, 健康増進に寄与するルミナコイドとしてのレジスタントスターチの働き. 日本醸造協会誌. 2013; 108(7):483-493

 

,

五大栄養素番外編 -食物繊維Ⅰ-

昨年から五大栄養素を順番にご紹介してきましたが、今回は番外編として食物繊維についてお話しします。これまで食物繊維は殆どエネルギーを持たず(0kcal/g)、人間の体内に存在する消化酵素では消化できない食べ物のカスだと考えられていました。しかし、現在は健康において重要な役割を果たす、第六の栄養素として注目されています。今回のトピックでは、この食物繊維が私たちの健康に及ぼす影響を確認してみましょう。


食物繊維とは

食物繊維は大きく水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に分類されますが、どちらも体内に吸収されないためエネルギー源になりません。どちらの食物繊維も発酵性の特徴を持っており、大腸内で発酵・分解が行われると、ビフィズス菌などが増加して腸内環境を改善します。

ネバネバ・サラサラした食感が特徴的な水溶性食物繊維は水に溶けやすく、溶けるとゼリー状に変化し、粘着性や吸着性の特徴を持ちます。粘着性は胃腸内での栄養素の吸収速度を緩やかにして、食後血糖値の上昇を抑えたり、満腹感を持続させたりします。吸着性はコレステロールを体外に排出して、血中コレステロール値を低下させます。不溶性食物繊維より水溶性食物繊維の方がより発酵性に優れています。

一方、ボソボソ・ザラザラした食感が特徴的な不溶性食物繊維は水に溶けにくいですが、水分を吸収して大きく膨らむことで腸を刺激し、蠕動(ぜんどう)運動を活発にするため便通を良くします。不溶性食物繊維の繊維状・ハチの巣状・ヘチマ状のような形状はよく噛まないと飲み込みにくいため、食べ過ぎを防いだり、あごの発育を促進して歯並びを良くしたりします。

厚生労働省による食物繊維の一日摂取基準は成人(18歳以上)男性で20g以上、女性で17g以上と定められています¹⁾。しかし、下図の日本人における食物繊維の平均摂取量の推移から、1952年までは現在の摂取基準を上回っていたものの、食生活の欧米化で肉や乳製品の摂取量が増えたことにより、現在では食物繊維の摂取量が不足していることが分かります²⁾³⁾⁴⁾。国民健康・栄養調査によると、近年の一日あたりの摂取量は一日摂取基準に比べ、男性で約5.3g、女性で約2.9g下回っていると報告されています⁴⁾。


食物繊維の過剰摂取・不足による影響

上述の通り、通常の食事では食物繊維の摂取量が不足気味なため、様々な方法を用いて食物繊維を食事に取り入れる必要があります。しかし、水溶性食物繊維を摂り過ぎてしまうと下痢や軟便になりやすく、もともと便秘状態で腸の動きが低下している人が不溶性食物繊維を摂り過ぎてしまうと、便が膨らむことで便秘をより悪化させてしまうこともあります。また、サプリメントなど健康食品による食物繊維の過剰摂取は、お腹を緩くさせたり、鉄・カルシウム・マグネシウム・亜鉛などのミネラルの吸収を妨げてミネラル欠乏症の原因となる場合もあります。

一方、食物繊維の摂取不足は腸内環境を悪化させて便秘になりやすく、痔や大腸がんのリスクを高めます。また、便秘で老廃物が排出されず体内に蓄積され続けると、肌の正常なターンオーバーの妨げとなり肌荒れを起こしやすくします。更に、食物繊維には血糖値の上昇を緩やかにする働きがあるので、摂取量が足りないと食後の血糖値が急上昇しやすくなり、肥満や糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めます。


食物繊維が豊富な食品

食物繊維は植物性食品である穀類・野菜類・きのこ類・果物類・豆類・海草類などに含まれており、殆どの食品は水溶性と不溶性両方の食物繊維を含んでいます。次の表は食物繊維を多く含む代表的な食品と100gあたりの含有量です。
「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より改変
※海藻類の食物繊維は水溶性または不溶性に区別することができないため総量のみ示しています。

上記のように、食物繊維は色々な植物性食品に多く含まれているため、栄養バランスを考慮して同じ食品からではなく、色々な食品から食物繊維を摂取するように意識しましょう。また、食物繊維の摂取方法は次のことを参考にするのも良いでしょう。

➤ 野菜類は熱を加える
野菜類は生で食すよりも、茹でたり炒めたりして摂取することをおすすめします。なぜなら、野菜に熱を加え体積を減らすことで同じ100gでも含まれる食物繊維の量が多くなるため、摂取量を増やしやすいからです。

➤ 炭水化物は食物繊維が豊富な食品と組み合わせて摂取する
ご飯・麺・パンなど炭水化物(糖質)を多く含む穀物は血糖値を急激に上昇させやすいです。しかし、食物繊維は血糖値の上昇を抑える働きをするため、ご飯に昆布や豆を混ぜたり、パスタの具にきのこ類や野菜をたくさん入れたりするなど工夫して一緒に摂取することで、血糖値の急上昇を抑える効果を得られます。

➤ 主食には食物繊維が豊富な穀物を選択する
お米を食物繊維の多い玄米・胚芽米(お米の約5倍と約2.2倍)に、小麦粉を全粒粉(小麦粉の約1.8倍)などに変えることで、穀物自体からも食物繊維を多く摂取することができます。

➤ コレステロールを多く含む食品と食物繊維を一緒に摂取する
コレステロールは肉・卵・魚卵・レバーなどの内臓類に多く含まれる脂質の一種です。このコレステロールから合成される胆汁酸は、油っぽい食事をした際に体内に油を吸収しやすくしてしまいます。食物繊維は消化器官内の胆汁酸を便として排出させる働きがあるため、コレステロールが含まれる食品にプラスして摂取することで、余分な脂質の吸収を防ぐことができます。

それでは、食物繊維は私たちの健康にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。次のトピックでは、食物繊維の種類によってもたらされる健康への効果を中心にお話します。

 

参考文献
1.「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 厚生労働省
2. 日本人の食物繊維摂取量と糖尿病発症の時系列分析. 原島恵美子 et al., 日本家政学会誌. 1994 May; 45(12):1079-87
3. Shigeyuki Nakaji et al., Trends in dietary fiber intake in Japan over the last century. Eur J Nutr. 2002 Oct;41(5):222-7.
4.「平成22-30年度国民健康・栄養調査報告」 厚生労働省

, ,

五大栄養素 -ミネラルⅡ-

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -ミネラルⅠ-

前回のトピックでは、ミネラルの役割や過剰摂取と不足によるリスクについてご紹介しました。今回のトピックでは、ミネラルを多く含む食品や効率よく摂取するための食品(栄養素)の組み合わせをご紹介していきます


ミネラルを多く含む食品

ミネラルを多く含む代表的な食品には、魚介類・藻類・種実類・野菜・加工食品などがあります。ここでは多量ミネラルを多く含む食品の一部と、その摂取目安となる必要量をご紹介します¹⁾²⁾。
「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より改変

五大栄養素の中でも、ミネラルやビタミンは微量栄養素なので、各個人で必要量は変わってきます。「運動量」「生活環境」「年齢」そして「体成分」などが必要量に関わる要因です。年齢毎で定められている必要量を基準に、一人一人の生活習慣を考慮して、理想的な食事メニューを考えるようにしましょう。


ミネラルも豊富なスーパーフード ”ナッツ”

ナッツは、ミネラル・ビタミン・ヘルシーな脂質(不飽和脂肪酸)を含む栄養価の高い食品で、リン・カリウム・マグネシウムなどのミネラルの他にも、ビタミンB1・B2・B6・B9、食物繊維など様々な栄養素を豊富に含んでいます。中でもクルミは、必須脂肪酸のひとつであるα-リノレン酸を多く含んでいます¹⁾。α-リノレン酸は悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やすヘルシーな脂質として摂取したい栄養素です。一般に、加工された状態で販売されるナッツは健康的利点が小さく、砂糖などの影響でカロリーが高いものもあります。従って、加工されたナッツ類を買うときはカロリーや加工の種類を確認し、少量を摂取するようにしましょう。

ナッツの適度な摂取を推奨している、DASH(Dietary Approach to Stop Hypertension)食や地中海食は、血圧を下げ心機能を改善し、心血管疾患・糖尿病・がん・メタボリックシンドロームに関連する病気のリスク軽減に貢献すると報告されており、十分なエビデンスが存在する食事法です³⁾⁴⁾。DASH食ではナッツ類を1日あたり1カップ、地中海食では毎食ナッツ類を摂取することを推奨しています。


ミネラルも豊富な日本伝統のスーパーフード “味噌”

味噌はナトリウムが多い食品のイメージがありますが、主原料である大豆はとても栄養豊富な食品です。更に発酵することで栄養価も高まることから、日本伝統のスーパーフードとして様々な健康効果が実証されています⁵⁾。味噌はナトリウム以外にも、カリウム・マグネシウム・カルシウム・鉄・亜鉛などのミネラルの他、ビタミンB1・B2・B6・B12、ナイアシン・葉酸・食物繊維など、様々な栄養素を豊富に含む食品です。

毎日の食事で味噌汁を食べている人は多いと思いますが、順天堂大学医学部の小林弘幸教授は、味噌汁の健康効果をさらに高める「長生きみそ汁」を考案しています⁵⁾。ストレスの軽減効果を持つGABAが豊富な白みそ・抗酸化作用をするメラノイジンが豊富な赤みそ・解毒効果を持つケルセチンが豊富な玉ねぎ・余分な塩分の排出に役立つカリウムが豊富なりんご酢を掛け合わせた「長生きみそ玉」を使用して味噌汁を作り、具材としてワカメ・もずく・とろろ昆布・めかぶ・ひじきなど、ミネラルが豊富な海藻類も追加してみましょう。


ミネラルと相性の良い栄養素・悪い栄養素

ミネラルはビタミンとの相性が良いので、一緒に摂取することでさらに大きな力を発揮します⁶⁾。カルシウム・カリウム・鉄・亜鉛・セレンはビタミンCと相性が良く、カルシウムはビタミンD・ビタミンKとも仲良しです。ミネラル同士の中でも、カルシウムはマグネシウムとカリウム、カリウムはナトリウム、鉄は銅と相性が良いです。

一方で、栄養素には相性の悪い組み合わせが稀にあります。リンとカルシウムはそれぞれミネラルとして必要な栄養素ですが、リンを多く摂取するとカルシウムが吸収されにくくなり、骨に存在するカルシウムが血液に溶け出してしまうことがあります。現代の食事では加工食品など、食品添加物が入っている食品を食べることが多いため、リンの摂り過ぎに注意が必要です。リンとカルシウムは、1:1の割合で摂るようにしましょう。また、食物繊維も摂り過ぎるとマグネシウムとカルシウムを排出してしまうので、組み合わせが良いとは言えません。


終わりに

ここまでで、私たちが生きていくうえで必要不可欠な5種類の栄養素を『五大栄養素』として紹介しました。最近の栄養学では食べる順番も重要視されており、➀食物繊維が豊富な野菜 ➁タンパク質が豊富な魚肉類 ➂炭水化物を多く含む主食類 という順番で食べることで、血糖値の急激な上昇を抑えられます。血糖値をゆっくり上げる食べ方は、糖尿病のリスクを下げるだけでなくダイエットにも効果的です。5つの栄養素をバランス良く食事に取り入れて、それらを摂取する順番も工夫することで、栄養素それぞれの働きを最大限に活かしてください。

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -ミネラルⅠ-
 

参考文献
1. 正しく知れば体が変わる!栄養素の摂り方便利帳, 中村丁次 監修
2.「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 文部科学省
3.「地中海食の特徴」 公益財団法人長寿科学振興財団
4. 高血圧治療ガイドライン2019, 日本高血圧学会 発行
5. 医者が考案した「長生きみそ汁」, 小林弘幸 著
6. マンガでわかるまるごと栄養図鑑, 代居真知子 著, 五明紀春 監修

,

五大栄養素 -ミネラルⅠ-


五大栄養素として紹介する栄養素も、今回のミネラルで最後となりました。今まで連載で紹介したタンパク質・ビタミン・脂質・炭水化物に関しては、よく理解していただけたでしょうか。 五大栄養素とは、筋肉・内臓・皮膚・骨・血液など体の組織を作る大切な栄養素であるタンパク質、生命維持や身体活動の主要なエネルギーとなる脂質と炭水化物、そして体調管理・健康維持・人体の各機能を正しく維持する上でも欠かせないビタミンとミネラルを指します。五大栄養素は、それぞれ体内での役割が異なるため、どれか1つの栄養素を大量に取れば良いものでもなく、満遍なく摂取する必要があります。今回のトピックでは、体の調子を整える役割を持つミネラルについて詳しく勉強していきましょう。


ミネラルとは

ミネラルは体を構成する成分の約5~6%に過ぎませんが、体内で合成できない成分であり、とても重要な役割をする成分です。ミネラルの力がなければ健康な体を維持することも、動かすことさえもできません。また、ミネラルは吸収されにくいものや、他の成分によって吸収を妨げられるもの、体内に貯蔵できないものが多いため、常に食事からさまざまな種類のミネラルを補う必要があります。


地球上に存在するミネラルは、なんと約100種類もあります。そのうち、体に必要なミネラルは16種類で、中でも厚生労働省が摂取基準を定めているのは13種類です¹⁾。この13種類のミネラルは、体内に多く存在し1日あたりの目標摂取量が100mg以上の「多量ミネラル」と、100mg以下の「微量ミネラル」に分けられます。

ミネラルの主な働きは大きく分けて3つあります。
➀ 三大栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物)を助けて体の機能を正常に保つ
ミネラルは、三大栄養素を体内で分解したり、合成したりするのを助けます。また、基礎代謝・新陳代謝・エネルギー代謝を促し、体の各機能や組織が正常に保つように働いています。
➁ 全身を安定した状態に保つ
細胞の浸透圧や水分量、体液量、酸度・アルカリ度などの調整をする働きをします。他にも筋肉や神経の働きの調整を助けたり、体内を常に安定した状態に保つように作用したりします。
➂ 体の一部分を形成する
ミネラルのうち、カルシウム・マグネシウム・リンは骨や歯を形成しています。また、鉄は赤血球の成分として、銅はヘモグロビンの生成になくてはならない成分です。

ミネラルに関連するInBodyの測定項目は、「体成分分析」のミネラル量と「研究項目」の骨ミネラル量です。ミネラルの大半は骨に存在しており、InBodyではこれを骨ミネラル量で示します。そして、イオン状態で血液などに溶け込んでいる骨外ミネラルも含んだ全体のミネラルをミネラル量として、体成分学の観点からkg数値で提供しています。ミネラル量も骨ミネラル量も、除脂肪量との相関関係を利用して算出される項目です。つまり、「栄養評価」のミネラル量で不足にチェックが入っている場合は、筋肉量(除脂肪量)を増やして体全体の栄養状態を良くすることで、不足から良好にチェックが入るようになります。


ミネラル(ナトリウム・リン・カリウム)の過剰摂取によるリスク

日本人が特に摂り過ぎてしまうミネラルは、ナトリウムです。摂取すべき目標量は、食塩相当量に換算して約8gですが、実際の平均摂取量は約10gです。ナトリウムの摂り過ぎは高血圧症や脳卒中、生活習慣病のリスクを高めるので注意しましょう。

また、リンやカリウムの過剰摂取も腎臓に負担をかけるので、腎機能が低下している人は摂取に注意が必要です。リンは加工食品の食品添加物として含まれているので、知らないうちに摂り過ぎていることがあります。リンは骨や歯の原料ですが、カルシウムの2倍以上の量を摂取すると逆にカルシウムの吸収を抑制してしまうので、過剰摂取は骨量や骨密度の低下にも繋がってしまいます。また、腎機能が弱っている状態でカリウムを過剰摂取すると、不整脈や血圧低下などの症状を引き起こし、高カリウム血症になることがあります。

ナトリウム・リン・カリウムは通常の食事で不足することはないので、過剰に摂り過ぎないことを主に意識しましょう。


ミネラル(カルシウム・マグネシウム)の不足によるリスク


ミネラルの中でも、特に不足しがちなのがカルシウムです。1日あたりの必要量は650mg以上に定められていますが、過去約30年間で一度も摂取量が必要量を上回ったという調査報告はありません²⁾。慢性的なカルシウム不足は骨を脆くし、骨粗鬆症のリスクを高めます。また、カルシウムは全身筋肉の収縮を正常に保つ役割があるので、不足すると筋肉が痙攣したり神経系の障害が起こったりします。カルシウム不足が原因で骨から血液へカルシウムが過剰に溶け出すと、そのカルシウムが血管に沈着し動脈硬化や高血圧の原因にもなります。

マグネシウムも不足しがちなミネラルです。特に、男性は1日あたりの必要量が100mg以上(必要量の約1/3)も不足しています²⁾。慢性的にマグネシウムが不足すると、骨からマグネシウムが取り出されてしまいますが、その際にカルシウムも一緒に溶け出すため、骨粗鬆症のリスクが高まってしまいます。また、リンの過剰摂取でカルシウムとマグネシウムの吸収が妨げられ、マグネシウムが不足状態になると、吐き気・眠気・脱力感・食欲不振などの症状(低マグネシウム血症)を引き起こします。

ここまでで、ミネラルの働きや過剰摂取・不足によるリスクについて説明してきました。しかし、実際にミネラルを食事で補う・調整するとなると、どのような食品を選択してメニューに取り入れれば良いのでしょうか? 次回のトピックでは、ミネラルを多く含む食品や効率よく摂取するための食品(栄養素)の組み合わせについて具体的にご紹介します。

 

参考文献
1.「日本人の食事摂取基準(2020年版)」厚生労働省
2. 正しく知れば体が変わる!栄養素の摂り方便利帳, 中村丁次 監修

, ,

五大栄養素 -炭水化物Ⅱ-

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -炭水化物Ⅰ-


糖質過剰摂取の原因

朝はパン1枚にリンゴとフルーツジュース。昼はレタスサンドイッチと野菜ジュース。間食はドライフルーツにコンビニで買った缶コーヒー。夜はポテトサラダに果物。ダイエット目的で食事から炭水化物をなるべく抜こうとする人でよくある食習慣かもしれません。炭酸飲料を飲む代わりにフルーツジュースを選択することは一見糖質を避ける良い選択肢に見えるかもしれませんが、ここには隠れた糖質の罠があります。

➤飲み物の中の糖質

「甘い味」がする食品全般には糖質が含まれており、100%フルーツジュースも例外ではありません。果物にも果糖という糖質が入っており、飲み物として濃縮すると同量の果物に比べて果糖の摂取量が大きく増えてしまいます。更に、加工の過程で甘味を出すために異性化糖と言われるでんぷんを化学的に処理したシロップのような添加物が入ります。中にはブドウ糖50%以上の液糖や砂糖が混合されているものもあるので、意識せずに多量の糖質をとってしまう可能性があります。実際の研究でも、果汁100%のフルーツジュースを1日3杯以上飲む人は1杯未満しか飲まない人より糖尿病のリスクが高い¹⁾という結果も出ています。健康に良いと思って飲んでいたジュースが、かえって健康を損なうということにも繋がりかねません。

また、ミルクと砂糖が入っているコーヒーも糖質を多く含みます。特に砂糖は二糖類といい、単糖2つが結合されている糖類です。果糖やでんぷんは数十個の糖が結合しているため、分解して単糖類のブドウ糖に変換する過程に時間がかかり、血糖値の上昇も緩やかです。それに比べ、結合している数が少ない砂糖は分解にあまり時間がかからず、すぐブドウ糖に変換・吸収されるため血糖値を急上昇させます。血糖値の急上昇はインスリン分泌にも影響を及ぼし、殆どのブドウ糖が中性脂肪に変換されて体脂肪として蓄積されるので健康にはあまり良くない糖質の摂取方法と言えるでしょう。

➤食パン

穀物には炭水化物以外にもビタミンやミネラルなどの栄養素も入っています。しかし、精製される過程で多くの成分が失われます。コンビニでよく見かけるサンドイッチは食パンが使用されていますが、食パンは精製された小麦粉で作られており、食物繊維が多く取り除かれているので、精製されていない全粒粉で作られたパンより糖質の割合が高くなります。パンを焼いたことがある方は分かると思いますが、パンの製造過程には多量の砂糖とバターが使用されるため、糖質の量は更に増えます。また、小麦粉でできた食パンは食物繊維が少ないため腹持ちが悪く、すぐ空腹感を感じるようになるので間食を摂りたくなることも問題です。

他にも、果物は食物繊維やビタミンなどの栄養素も含まれているため、他の加工食品より健康的ではありますが、果糖が含まれています。そのため、食事の代わりとして果物をたくさん摂ることも糖質をたくさん摂る結果に繋がります。

このように、普段口にする食べ物の中には思っている以上に糖質を含んでいる食べ物が多々あります。そのため、糖質摂取量を見直すときは食べる量だけでなく、どんな食べ物や飲み物を選ぶかにも注意する必要があります。


賢い炭水化物の摂り方

では、正しく炭水化物を摂取するためには何に気を付ければ良いでしょうか。炭水化物を全く摂らないとなると選べる幅は非常に狭くなりますが、適切な摂取量についてそこまで難しく考える必要はありません。次の内容を考えながら選択しましょう。

➤加工の過程は少ないほど良い

お米は炭水化物が主栄養素の代表的な食材で、糖質であるでんぷんだけではなく、食物繊維・ビタミン・ミネラルも豊富です。しかし、白米は精製の過程で食物繊維をたくさん含んでいる糠(ぬか;白米を覆っている薄い茶色の膜)や胚芽が取り除かれるため、これらの栄養素が少なくなり、糖質がメインのものになってしまいます。逆に、玄米や麦などの雑穀は胚乳以外の部位も残っているため、穀物本来の栄養素があまり損なわれず、食物繊維の影響で満腹感も長続きします。

これはパンも同じで、材料となる小麦粉は小麦の胚乳部分を粉にしていることに対し、全粒粉は小麦の殻まで粉にしたものです。そのため、栄養素が殆ど取り除かれていない全粒粉で作ったパンは食物繊維が多く、消化・吸収に時間がかかるため血糖値がゆっくり上昇する効果を期待できます。ただ、全粒粉は加工が少ない分、食感が荒くなるのでご飯やパンに取り入れるときは白米または小麦粉と混合したほうが食感と栄養素のどちらも損なわれにくくなります。

果物や野菜も同じです。加工されたジュースを飲むより果物をそのまま摂取するか、手作りジュースの方が添加物による糖質摂取量を抑えることができます。

➤砂糖の代わりにオリゴ糖などの代用品を使う
料理の調味料として砂糖を入れなければならない場合がありますが、その時も砂糖の代わりに吸収されない糖類を入れることで味には影響なく糖質摂取量を抑えることができます。砂糖の代わりによく使用されるのがオリゴ糖です。

オリゴ糖は糖類に該当しますが、胃酸や消化酵素によって分解されない難消化性糖質であることが砂糖との違いです。普通の糖質は消化酵素によって分解され小腸で吸収されますが、オリゴ糖は分解されず大腸まで届き、大腸にあるビフィズス菌などの善玉菌の栄養源として分解されてやっとエネルギー源になります。そのため、小腸で吸収される糖類よりカロリーも低く、血糖値に及ぼす影響も少ないです。

➤間食でお菓子は避ける

食品にはGI値という概念があります²⁾。これは炭水化物が分解されて糖に変わるまでの速度を示している数値で、ブドウ糖を摂取した後の血糖上昇率を100として、ある食品を同量摂取した際の血糖上昇率をパーセントで表しています。GI値が高いとその分早く分解・吸収されて血糖値も急上昇します。特に、食後一定時間が過ぎると血糖値が下がり空腹感を感じるようになりますが、この時に血糖値が急に上がるとインスリンが大量分泌され、殆どが脂肪に変わってしまいます。従って、間食はなるべくGI値が低いものを選択し、血糖値の上昇を緩めることが大事です。

オーストラリアのシドニー大学ではGI値55以下の食品を低GI食品と定めていて、GI値が比較的低い間食としては牛乳・アーモンドなどのナッツ類・サツマイモ・バナナなどがあります。同じ芋類でもジャガイモはGI値が高いので注意が必要です。殆どの野菜はGI値が低いですが、野菜の種類によって異なるので気を付けましょう。特にナッツ類は食物繊維が豊富で、脂質の中でも健康に良い不飽和脂肪酸が多く含まれているので、間食として優れています。ナッツを間食として食べるときは砂糖などでコーティングされていないものを選び、適量を食べるように心掛けましょう。


大事なのは自分の適量を知ること

太る原因としてのイメージが強い炭水化物ですが、体にとってはなければ生命維持ができないほど重要な栄養素です。体は常にエネルギーを消費しているため、糖質を摂らなすぎると命の危険として捉え、消費エネルギーを減らそうとします。そのため、血糖値が下がると眠くなり、脳に届くエネルギーも少なくなるので集中力が切れてしまいます。また、命の危機と捉えたときにエネルギー源が入ってくると、体は同じ危険に備えるために入ってきたエネルギー源を可能な限り保存しておこうとします。そのため、適切な糖質摂取を行い、常に一定の糖質が体内にある状態をキープして体が飢餓状態に陥らないようにすることで、多くのエネルギーを溜め込みすぎないようにします。また、炭水化物の構成成分である食物繊維は腸内環境を整え、便通にも良い影響を及ぼすなど、炭水化物の働きは単なるエネルギー供給ではありません。どの栄養素自体も決して悪いものではありませんが、摂り過ぎは毒です。様々な栄養素をバランスよく、適量を摂取するよう心掛けて、健康を保ちましょう。

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -炭水化物Ⅰ-

 

参考文献
1. Isao Muraki et al., Fruit consumption and risk of type 2 diabetes: results from three prospective longitudinal cohort studies. BMJ 2013; 347
2.「Glycemic Index」The University of Sydney