,

五大栄養素 -ミネラルⅡ-

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -ミネラルⅠ-

前回のトピックでは、ミネラルの役割や過剰摂取と不足によるリスクについてご紹介しました。今回のトピックでは、ミネラルを多く含む食品や効率よく摂取するための食品(栄養素)の組み合わせをご紹介していきます


ミネラルを多く含む食品

ミネラルを多く含む代表的な食品には、魚介類・藻類・種実類・野菜・加工食品などがあります。ここでは多量ミネラルを多く含む食品の一部と、その摂取目安となる必要量をご紹介します¹⁾²⁾。
「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より改変

五大栄養素の中でも、ミネラルやビタミンは微量栄養素なので、各個人で必要量は変わってきます。「運動量」「生活環境」「年齢」そして「体成分」などが必要量に関わる要因です。年齢毎で定められている必要量を基準に、一人一人の生活習慣を考慮して、理想的な食事メニューを考えるようにしましょう。


ミネラルも豊富なスーパーフード ”ナッツ”

ナッツは、ミネラル・ビタミン・ヘルシーな脂質(不飽和脂肪酸)を含む栄養価の高い食品で、リン・カリウム・マグネシウムなどのミネラルの他にも、ビタミンB1・B2・B6・B9、食物繊維など様々な栄養素を豊富に含んでいます。中でもクルミは、必須脂肪酸のひとつであるα-リノレン酸を多く含んでいます¹⁾。α-リノレン酸は悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やすヘルシーな脂質として摂取したい栄養素です。一般に、加工された状態で販売されるナッツは健康的利点が小さく、砂糖などの影響でカロリーが高いものもあります。従って、加工されたナッツ類を買うときはカロリーや加工の種類を確認し、少量を摂取するようにしましょう。

ナッツの適度な摂取を推奨している、DASH(Dietary Approach to Stop Hypertension)食や地中海食は、血圧を下げ心機能を改善し、心血管疾患・糖尿病・がん・メタボリックシンドロームに関連する病気のリスク軽減に貢献すると報告されており、十分なエビデンスが存在する食事法です³⁾⁴⁾。DASH食ではナッツ類を1日あたり1カップ、地中海食では毎食ナッツ類を摂取することを推奨しています。


ミネラルも豊富な日本伝統のスーパーフード “味噌”

味噌はナトリウムが多い食品のイメージがありますが、主原料である大豆はとても栄養豊富な食品です。更に発酵することで栄養価も高まることから、日本伝統のスーパーフードとして様々な健康効果が実証されています⁵⁾。味噌はナトリウム以外にも、カリウム・マグネシウム・カルシウム・鉄・亜鉛などのミネラルの他、ビタミンB1・B2・B6・B12、ナイアシン・葉酸・食物繊維など、様々な栄養素を豊富に含む食品です。

毎日の食事で味噌汁を食べている人は多いと思いますが、順天堂大学医学部の小林弘幸教授は、味噌汁の健康効果をさらに高める「長生きみそ汁」を考案しています⁵⁾。ストレスの軽減効果を持つGABAが豊富な白みそ・抗酸化作用をするメラノイジンが豊富な赤みそ・解毒効果を持つケルセチンが豊富な玉ねぎ・余分な塩分の排出に役立つカリウムが豊富なりんご酢を掛け合わせた「長生きみそ玉」を使用して味噌汁を作り、具材としてワカメ・もずく・とろろ昆布・めかぶ・ひじきなど、ミネラルが豊富な海藻類も追加してみましょう。


ミネラルと相性の良い栄養素・悪い栄養素

ミネラルはビタミンとの相性が良いので、一緒に摂取することでさらに大きな力を発揮します⁶⁾。カルシウム・カリウム・鉄・亜鉛・セレンはビタミンCと相性が良く、カルシウムはビタミンD・ビタミンKとも仲良しです。ミネラル同士の中でも、カルシウムはマグネシウムとカリウム、カリウムはナトリウム、鉄は銅と相性が良いです。

一方で、栄養素には相性の悪い組み合わせが稀にあります。リンとカルシウムはそれぞれミネラルとして必要な栄養素ですが、リンを多く摂取するとカルシウムが吸収されにくくなり、骨に存在するカルシウムが血液に溶け出してしまうことがあります。現代の食事では加工食品など、食品添加物が入っている食品を食べることが多いため、リンの摂り過ぎに注意が必要です。リンとカルシウムは、1:1の割合で摂るようにしましょう。また、食物繊維も摂り過ぎるとマグネシウムとカルシウムを排出してしまうので、組み合わせが良いとは言えません。


終わりに

ここまでで、私たちが生きていくうえで必要不可欠な5種類の栄養素を『五大栄養素』として紹介しました。最近の栄養学では食べる順番も重要視されており、➀食物繊維が豊富な野菜 ➁タンパク質が豊富な魚肉類 ➂炭水化物を多く含む主食類 という順番で食べることで、血糖値の急激な上昇を抑えられます。血糖値をゆっくり上げる食べ方は、糖尿病のリスクを下げるだけでなくダイエットにも効果的です。5つの栄養素をバランス良く食事に取り入れて、それらを摂取する順番も工夫することで、栄養素それぞれの働きを最大限に活かしてください。

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -ミネラルⅠ-
 

参考文献
1. 正しく知れば体が変わる!栄養素の摂り方便利帳, 中村丁次 監修
2.「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 文部科学省
3.「地中海食の特徴」 公益財団法人長寿科学振興財団
4. 高血圧治療ガイドライン2019, 日本高血圧学会 発行
5. 医者が考案した「長生きみそ汁」, 小林弘幸 著
6. マンガでわかるまるごと栄養図鑑, 代居真知子 著, 五明紀春 監修

五大栄養素 -ミネラルⅠ-


五大栄養素として紹介する栄養素も、今回のミネラルで最後となりました。今まで連載で紹介したタンパク質・ビタミン・脂質・炭水化物に関しては、よく理解していただけたでしょうか。 五大栄養素とは、筋肉・内臓・皮膚・骨・血液など体の組織を作る大切な栄養素であるタンパク質、生命維持や身体活動の主要なエネルギーとなる脂質と炭水化物、そして体調管理・健康維持・人体の各機能を正しく維持する上でも欠かせないビタミンとミネラルを指します。五大栄養素は、それぞれ体内での役割が異なるため、どれか1つの栄養素を大量に取れば良いものでもなく、満遍なく摂取する必要があります。今回のトピックでは、体の調子を整える役割を持つミネラルについて詳しく勉強していきましょう。


ミネラルとは

ミネラルは体を構成する成分の約5~6%に過ぎませんが、体内で合成できない成分であり、とても重要な役割をする成分です。ミネラルの力がなければ健康な体を維持することも、動かすことさえもできません。また、ミネラルは吸収されにくいものや、他の成分によって吸収を妨げられるもの、体内に貯蔵できないものが多いため、常に食事からさまざまな種類のミネラルを補う必要があります。


地球上に存在するミネラルは、なんと約100種類もあります。そのうち、体に必要なミネラルは16種類で、中でも厚生労働省が摂取基準を定めているのは13種類です¹⁾。この13種類のミネラルは、体内に多く存在し1日あたりの目標摂取量が100mg以上の「多量ミネラル」と、100mg以下の「微量ミネラル」に分けられます。

ミネラルの主な働きは大きく分けて3つあります。
➀ 三大栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物)を助けて体の機能を正常に保つ
ミネラルは、三大栄養素を体内で分解したり、合成したりするのを助けます。また、基礎代謝・新陳代謝・エネルギー代謝を促し、体の各機能や組織が正常に保つように働いています。
➁ 全身を安定した状態に保つ
細胞の浸透圧や水分量、体液量、酸度・アルカリ度などの調整をする働きをします。他にも筋肉や神経の働きの調整を助けたり、体内を常に安定した状態に保つように作用したりします。
➂ 体の一部分を形成する
ミネラルのうち、カルシウム・マグネシウム・リンは骨や歯を形成しています。また、鉄は赤血球の成分として、銅はヘモグロビンの生成になくてはならない成分です。

ミネラルに関連するInBodyの測定項目は、「体成分分析」のミネラル量と「研究項目」の骨ミネラル量です。ミネラルの大半は骨に存在しており、InBodyではこれを骨ミネラル量で示します。そして、イオン状態で血液などに溶け込んでいる骨外ミネラルも含んだ全体のミネラルをミネラル量として、体成分学の観点からkg数値で提供しています。ミネラル量も骨ミネラル量も、除脂肪量との相関関係を利用して算出される項目です。つまり、「栄養評価」のミネラル量で不足にチェックが入っている場合は、筋肉量(除脂肪量)を増やして体全体の栄養状態を良くすることで、不足から良好にチェックが入るようになります。


ミネラル(ナトリウム・リン・カリウム)の過剰摂取によるリスク

日本人が特に摂り過ぎてしまうミネラルは、ナトリウムです。摂取すべき目標量は、食塩相当量に換算して約8gですが、実際の平均摂取量は約10gです。ナトリウムの摂り過ぎは高血圧症や脳卒中、生活習慣病のリスクを高めるので注意しましょう。

また、リンやカリウムの過剰摂取も腎臓に負担をかけるので、腎機能が低下している人は摂取に注意が必要です。リンは加工食品の食品添加物として含まれているので、知らないうちに摂り過ぎていることがあります。リンは骨や歯の原料ですが、カルシウムの2倍以上の量を摂取すると逆にカルシウムの吸収を抑制してしまうので、過剰摂取は骨量や骨密度の低下にも繋がってしまいます。また、腎機能が弱っている状態でカリウムを過剰摂取すると、不整脈や血圧低下などの症状を引き起こし、高カリウム血症になることがあります。

ナトリウム・リン・カリウムは通常の食事で不足することはないので、過剰に摂り過ぎないことを主に意識しましょう。


ミネラル(カルシウム・マグネシウム)の不足によるリスク


ミネラルの中でも、特に不足しがちなのがカルシウムです。1日あたりの必要量は650mg以上に定められていますが、過去約30年間で一度も摂取量が必要量を上回ったという調査報告はありません²⁾。慢性的なカルシウム不足は骨を脆くし、骨粗鬆症のリスクを高めます。また、カルシウムは全身筋肉の収縮を正常に保つ役割があるので、不足すると筋肉が痙攣したり神経系の障害が起こったりします。カルシウム不足が原因で骨から血液へカルシウムが過剰に溶け出すと、そのカルシウムが血管に沈着し動脈硬化や高血圧の原因にもなります。

マグネシウムも不足しがちなミネラルです。特に、男性は1日あたりの必要量が100mg以上(必要量の約1/3)も不足しています²⁾。慢性的にマグネシウムが不足すると、骨からマグネシウムが取り出されてしまいますが、その際にカルシウムも一緒に溶け出すため、骨粗鬆症のリスクが高まってしまいます。また、リンの過剰摂取でカルシウムとマグネシウムの吸収が妨げられ、マグネシウムが不足状態になると、吐き気・眠気・脱力感・食欲不振などの症状(低マグネシウム血症)を引き起こします。

ここまでで、ミネラルの働きや過剰摂取・不足によるリスクについて説明してきました。しかし、実際にミネラルを食事で補う・調整するとなると、どのような食品を選択してメニューに取り入れれば良いのでしょうか? 次回のトピックでは、ミネラルを多く含む食品や効率よく摂取するための食品(栄養素)の組み合わせについて具体的にご紹介します。

 

参考文献
1.「日本人の食事摂取基準(2020年版)」厚生労働省
2. 正しく知れば体が変わる!栄養素の摂り方便利帳, 中村丁次 監修

,

五大栄養素 -炭水化物Ⅱ-

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -炭水化物Ⅰ-


糖質過剰摂取の原因

朝はパン1枚にリンゴとフルーツジュース。昼はレタスサンドイッチと野菜ジュース。間食はドライフルーツにコンビニで買った缶コーヒー。夜はポテトサラダに果物。ダイエット目的で食事から炭水化物をなるべく抜こうとする人でよくある食習慣かもしれません。炭酸飲料を飲む代わりにフルーツジュースを選択することは一見糖質を避ける良い選択肢に見えるかもしれませんが、ここには隠れた糖質の罠があります。

➤飲み物の中の糖質

「甘い味」がする食品全般には糖質が含まれており、100%フルーツジュースも例外ではありません。果物にも果糖という糖質が入っており、飲み物として濃縮すると同量の果物に比べて果糖の摂取量が大きく増えてしまいます。更に、加工の過程で甘味を出すために異性化糖と言われるでんぷんを化学的に処理したシロップのような添加物が入ります。中にはブドウ糖50%以上の液糖や砂糖が混合されているものもあるので、意識せずに多量の糖質をとってしまう可能性があります。実際の研究でも、果汁100%のフルーツジュースを1日3杯以上飲む人は1杯未満しか飲まない人より糖尿病のリスクが高い¹⁾という結果も出ています。健康に良いと思って飲んでいたジュースが、かえって健康を損なうということにも繋がりかねません。

また、ミルクと砂糖が入っているコーヒーも糖質を多く含みます。特に砂糖は二糖類といい、単糖2つが結合されている糖類です。果糖やでんぷんは数十個の糖が結合しているため、分解して単糖類のブドウ糖に変換する過程に時間がかかり、血糖値の上昇も緩やかです。それに比べ、結合している数が少ない砂糖は分解にあまり時間がかからず、すぐブドウ糖に変換・吸収されるため血糖値を急上昇させます。血糖値の急上昇はインスリン分泌にも影響を及ぼし、殆どのブドウ糖が中性脂肪に変換されて体脂肪として蓄積されるので健康にはあまり良くない糖質の摂取方法と言えるでしょう。

➤食パン

穀物には炭水化物以外にもビタミンやミネラルなどの栄養素も入っています。しかし、精製される過程で多くの成分が失われます。コンビニでよく見かけるサンドイッチは食パンが使用されていますが、食パンは精製された小麦粉で作られており、食物繊維が多く取り除かれているので、精製されていない全粒粉で作られたパンより糖質の割合が高くなります。パンを焼いたことがある方は分かると思いますが、パンの製造過程には多量の砂糖とバターが使用されるため、糖質の量は更に増えます。また、小麦粉でできた食パンは食物繊維が少ないため腹持ちが悪く、すぐ空腹感を感じるようになるので間食を摂りたくなることも問題です。

他にも、果物は食物繊維やビタミンなどの栄養素も含まれているため、他の加工食品より健康的ではありますが、果糖が含まれています。そのため、食事の代わりとして果物をたくさん摂ることも糖質をたくさん摂る結果に繋がります。

このように、普段口にする食べ物の中には思っている以上に糖質を含んでいる食べ物が多々あります。そのため、糖質摂取量を見直すときは食べる量だけでなく、どんな食べ物や飲み物を選ぶかにも注意する必要があります。


賢い炭水化物の摂り方

では、正しく炭水化物を摂取するためには何に気を付ければ良いでしょうか。炭水化物を全く摂らないとなると選べる幅は非常に狭くなりますが、適切な摂取量についてそこまで難しく考える必要はありません。次の内容を考えながら選択しましょう。

➤加工の過程は少ないほど良い

お米は炭水化物が主栄養素の代表的な食材で、糖質であるでんぷんだけではなく、食物繊維・ビタミン・ミネラルも豊富です。しかし、白米は精製の過程で食物繊維をたくさん含んでいる糠(ぬか;白米を覆っている薄い茶色の膜)や胚芽が取り除かれるため、これらの栄養素が少なくなり、糖質がメインのものになってしまいます。逆に、玄米や麦などの雑穀は胚乳以外の部位も残っているため、穀物本来の栄養素があまり損なわれず、食物繊維の影響で満腹感も長続きします。

これはパンも同じで、材料となる小麦粉は小麦の胚乳部分を粉にしていることに対し、全粒粉は小麦の殻まで粉にしたものです。そのため、栄養素が殆ど取り除かれていない全粒粉で作ったパンは食物繊維が多く、消化・吸収に時間がかかるため血糖値がゆっくり上昇する効果を期待できます。ただ、全粒粉は加工が少ない分、食感が荒くなるのでご飯やパンに取り入れるときは白米または小麦粉と混合したほうが食感と栄養素のどちらも損なわれにくくなります。

果物や野菜も同じです。加工されたジュースを飲むより果物をそのまま摂取するか、手作りジュースの方が添加物による糖質摂取量を抑えることができます。

➤砂糖の代わりにオリゴ糖などの代用品を使う
料理の調味料として砂糖を入れなければならない場合がありますが、その時も砂糖の代わりに吸収されない糖類を入れることで味には影響なく糖質摂取量を抑えることができます。砂糖の代わりによく使用されるのがオリゴ糖です。

オリゴ糖は糖類に該当しますが、胃酸や消化酵素によって分解されない難消化性糖質であることが砂糖との違いです。普通の糖質は消化酵素によって分解され小腸で吸収されますが、オリゴ糖は分解されず大腸まで届き、大腸にあるビフィズス菌などの善玉菌の栄養源として分解されてやっとエネルギー源になります。そのため、小腸で吸収される糖類よりカロリーも低く、血糖値に及ぼす影響も少ないです。

➤間食でお菓子は避ける

食品にはGI値という概念があります²⁾。これは炭水化物が分解されて糖に変わるまでの速度を示している数値で、ブドウ糖を摂取した後の血糖上昇率を100として、ある食品を同量摂取した際の血糖上昇率をパーセントで表しています。GI値が高いとその分早く分解・吸収されて血糖値も急上昇します。特に、食後一定時間が過ぎると血糖値が下がり空腹感を感じるようになりますが、この時に血糖値が急に上がるとインスリンが大量分泌され、殆どが脂肪に変わってしまいます。従って、間食はなるべくGI値が低いものを選択し、血糖値の上昇を緩めることが大事です。

オーストラリアのシドニー大学ではGI値55以下の食品を低GI食品と定めていて、GI値が比較的低い間食としては牛乳・アーモンドなどのナッツ類・サツマイモ・バナナなどがあります。同じ芋類でもジャガイモはGI値が高いので注意が必要です。殆どの野菜はGI値が低いですが、野菜の種類によって異なるので気を付けましょう。特にナッツ類は食物繊維が豊富で、脂質の中でも健康に良い不飽和脂肪酸が多く含まれているので、間食として優れています。ナッツを間食として食べるときは砂糖などでコーティングされていないものを選び、適量を食べるように心掛けましょう。


大事なのは自分の適量を知ること

太る原因としてのイメージが強い炭水化物ですが、体にとってはなければ生命維持ができないほど重要な栄養素です。体は常にエネルギーを消費しているため、糖質を摂らなすぎると命の危険として捉え、消費エネルギーを減らそうとします。そのため、血糖値が下がると眠くなり、脳に届くエネルギーも少なくなるので集中力が切れてしまいます。また、命の危機と捉えたときにエネルギー源が入ってくると、体は同じ危険に備えるために入ってきたエネルギー源を可能な限り保存しておこうとします。そのため、適切な糖質摂取を行い、常に一定の糖質が体内にある状態をキープして体が飢餓状態に陥らないようにすることで、多くのエネルギーを溜め込みすぎないようにします。また、炭水化物の構成成分である食物繊維は腸内環境を整え、便通にも良い影響を及ぼすなど、炭水化物の働きは単なるエネルギー供給ではありません。どの栄養素自体も決して悪いものではありませんが、摂り過ぎは毒です。様々な栄養素をバランスよく、適量を摂取するよう心掛けて、健康を保ちましょう。

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -炭水化物Ⅰ-

 

参考文献
1. Isao Muraki, Fumiaki Imamura, et al., Fruit consumption and risk of type 2 diabetes: results from three prospective longitudinal cohort studies. BMJ 2013; 347
2.「Glycemic Index」The University of Sydney

五大栄養素 -炭水化物Ⅰ-

あけましておめでとうございます。新しい年を迎えた今、いかがお過ごしでしょうか。例年のように大勢が集まる忘年会は難しかったかもしれませんが、年末にはご家族でクリスマスケーキやチキン、揚げ物を添えた年越しそばを食べたり、年明けにはお節料理やお餅を食べたり、食に充実した年末年始であったのではないでしょうか。

ケーキ、揚げ物、そば、お餅。今回はこれらの共通点であり、私たちの食事で最も摂取する割合が大きい栄養素、炭水化物に関して話したいと思います。


炭水化物とは

炭水化物に関する誤解の一つとして「炭水化物=糖質」というものがあります。しかし、厳密にいうと炭水化物は糖質だけを示すものではありません。栄養学的な分類でいうと、炭水化物は糖質と食物繊維の総称です。糖質は消化酵素により分解されエネルギー源として使われることに対し、食物繊維は分解するための消化酵素を持っておらず、エネルギー源になりません(0kcal/g)。炭水化物のエネルギー量4kcal/gはほぼ糖質から算出されています。

厚生労働省では炭水化物摂取量を総エネルギー摂取量の50~65%としています。例えば、1日の総エネルギー摂取量が2,000kcalであれば、そのうち1,000~1,300kcalを炭水化物で摂るのが望ましいということになります。単純に計算すると炭水化物250~325gが必要です。参考までに、ご飯1杯(150g)に含まれている炭水化物の量は55.7gなので、三食でご飯を1杯ずつ食べたとしても1日に必要な炭水化物量を下回ってしまいます。しかし、炭水化物は米・小麦などの穀物、ジャガイモ・トウモロコシなどの野菜以外にも様々な食べ物に含まれているだけでなく、砂糖も糖質であることから、私たちは無意識のうちに炭水化物を摂取しています。次は代表的な食品の100gあたりの炭水化物含有量です¹⁾。
「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より改変

糖質はそれ自体の組成やどの食品に入っているかによって、単糖類・二糖類・多糖類に分類されます。糖質を構成する糖類の数を基準に、これ以上分解できないものが単糖類、単糖類2分子で構成されるものが二糖類、それ以上の単糖類で構成されているものが多糖類となります。代表的な単糖類はブドウ糖や果糖で、二糖類には乳糖、多糖類にはでんぷんやグリコーゲンが該当します。単糖類以外の糖質はいずれも分解され、最終的にはブドウ糖になりエネルギー源として活用されます。また、一部は肝臓や筋肉などに一時保管され、空腹時にも持続的にエネルギーを供給できるようにします。

一方、炭水化物を構成する成分の一つである食物繊維はエネルギー源としての役割は殆どないものの、小腸から大腸までを通過しながら様々な効果を発揮します。消化の過程で、ブドウ糖・アミノ酸・脂肪酸などの栄養素は小腸で吸収されますが、食物繊維が小腸にとどまることで栄養素の消化・吸収時間を延ばし、血糖値の上昇を抑えます。また、食物繊維は大腸にある腸内細菌の中でも善玉菌といわれるビフィズス菌や乳酸菌が繁殖しやすい環境を作り、腸内環境を整えます。更に、不溶性の食物繊維は便の量を増やし、大腸の粘膜壁を刺激することで便通を整える効果もあります。

このように、炭水化物は単なるカロリー源ではなく、体を維持し整える役割も担う重要な栄養素です。しかし、主要エネルギー源である糖質はその摂取量に注意する必要があります。


糖質の不足・過剰摂取による問題

炭水化物のエネルギー量の殆どが糖質のものであるため、ダイエットをしようと思う人は炭水化物を極力取らないようにすることが多いです。しかし、他の栄養素と同じく、炭水化物(特に糖質)の不足・過剰摂取はどちらも健康に問題を引き起こします。

➤不足による悪影響

糖質摂取量が減ると供給されるグルコースの量も減少するため、各臓器に十分なエネルギー源が供給されず、動きが鈍くなってしまいます。特に脳のエネルギー消費量は1日消費エネルギー量の約18%を占めており、成人の脳は1日約120gのブドウ糖を消費するとも言われる、エネルギー消費量が最も多い部位です。そのため、ブドウ糖の供給が足りなくなると脳の活動が鈍くなり、集中力・思考能力の低下につながります。また、脳は他の器官に指示を出す器官でもあるため、エネルギー不足によって脳の機能が鈍くなると各器官の動きに悪影響を及ぼして様々な障害の原因にもなります。参考までに手足の震えやめまいのような身体的な問題や、不安感・眠気・イライラ・倦怠感・うつなど精神的な問題も、糖質摂取量の極端な減少が原因の一つである低血糖症の症状です。

➤過剰摂取による悪影響

一方、糖質の過剰摂取も様々な健康問題の原因となります。最も代表的な問題として肥満や糖尿病が挙げられます。

糖質が多い食事を摂ると、血糖値が急上昇します。そうなると、体は急に増えたエネルギー源を処理するためにインスリンを大量に分泌します。インスリンの役割は血糖値を一定に保つことですが、ブドウ糖を細胞に取り込んで使用・保管することで血糖値を正常範囲内に維持します。そして、インスリンは脂肪細胞にもブドウ糖を取り込むことができます。体はエネルギー源を効率よく使うために、余った分は捨てずに体に貯めておき、必要になった際に取り出して使用します。肝臓・筋肉・脂肪は代表的なエネルギー保存先ですが、肝臓と筋肉にはブドウ糖を合成し、すぐに使えるグリコーゲンという形で少量保存されます。肝臓と筋肉に保存できず余った分はインスリンによって脂肪細胞に取り込まれ、長期保存できる形に変化します。そのため、糖質を過剰摂取すると体脂肪量が増加することになります。

糖尿病の発症もこの仕組みの延長です。インスリンは血糖値の上昇に合わせて分泌されます。つまり、血糖値が高くなるとより多くのインスリンが分泌されるということです。しかし、急に多量のインスリンが必要になると、インスリンを作る膵臓に負担がかかります。これが継続されると膵臓の機能が低下し、インスリンをうまく分泌できなくなります。そうなると、多くなった血糖を処理することができずに血糖値が高くなり、体で保管できなくなった糖が尿に混ざって出るくらいまで血糖値が上昇します。これが2型糖尿病です。

他にも過剰な糖質はタンパク質の糖化を招き、老化を促進するとされているAGEs(異常タンパク質)を生成します。また、糖質の吸収にはビタミンBが必要であるため、多量の糖質摂取はビタミンB欠乏を引き起こす恐れもあります。次回のトピックでは糖質過剰摂取の原因となる行動や摂り過ぎに注意すべき食品について、具体的にご紹介します。

 

参考文献
1.「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 文部科学省

,

五大栄養素 -脂質Ⅱ-

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -脂質Ⅰ-

前回のトピックでは脂質の推奨摂取量や体内での役割についてご紹介しました。今回はもう少し深く脂質について見ていきましょう。


脂質の過剰摂取による悪影響

皆さんがご存知のように、脂質の過剰摂取は肥満に繋がります。摂取した脂質のうち、体内で利用されずに余った分は皮下脂肪や内臓脂肪として体に溜まります。タンパク質や糖質の過剰摂取分も体脂肪として蓄積されますが、今回のトピックの前半でもご説明したように日本人の脂質摂取量は年々増加していること、エネルギー源の中で脂質は1gあたりのエネルギー量が最も多いことから、脂質は体脂肪量増加に寄与している割合が大きいです。体脂肪量のうち、皮下脂肪と内臓脂肪が約9割を占めており、残りの僅かな体脂肪量は血中などに存在します。皮下脂肪とは皮膚と筋肉の間にある脂肪を指し、内臓脂肪は内臓の周りにある脂肪を指します。これらの脂肪は、全身のあらゆるところ(特に下腹部・お尻・太もも・背中・二の腕・内臓周り)に存在する脂肪細胞に溜められたものです。体内で余った体脂肪はどんどん脂肪細胞に溜められ、体脂肪が溜め込めなくなると脂肪細胞の数を増やして更に溜め込もうとします。ダイエットや運動を行うと脂肪細胞の大きさを小さくすることはできますが、増えてしまった脂肪細胞が減ることはありません。

ここまで聞くと、脂肪細胞が悪者のように見えますが、溜め込んでいる体脂肪量が正常範囲内である脂肪細胞は実は、生活習慣病を防ぐ物質を放出し、私たちの体を守ってくれています¹⁾。放出されるレプチンは満腹中枢を刺激して食欲を抑制する効果があり、アディポネクチンは血圧や中性脂肪を下げる効果があります。しかし、細胞内に体脂肪を過剰に溜め込み膨れ上がった脂肪細胞は一転して、生活習慣病を招く悪い物質(PAI-1・TNF-α・IL-6など)を放出するようになります。タンパク質の一種であるPAI-1は血栓(血液の塊)を形成し、血液の流れを悪くします。サイトカインの一種であるTNF-αはインスリンの働きを妨げることで血糖値を上昇させ、IL-6は免疫機能を暴走させることでウイルスだけでなく健康な細胞まで攻撃するようになってしまいます。また、アディポネクチンの放出量が減ることで血圧や中性脂肪が上がってしまいます。そして、最終的に生活習慣病を発症してしまうのです。


脂質の不足による悪影響

一方、脂質の摂取不足は体にどのような悪影響があるのでしょうか。脂質が不足すると、体に必要な体脂肪量が確保できなくなります。保温機能がある体脂肪が少ないと、体温が維持されにくくなり体が冷えてしまいます。体温と免疫機能は密接な関わりがあり、体温低下は免疫力の低下に繋がります。

また、ホルモンバランスも乱れやすくなります。男性の場合、体脂肪率が低すぎると骨や筋肉の増加に関わるテストステロンの分泌量減少を引き起こし、女性の場合はホルモンバランスや月経周期に大きく影響します。女性ホルモンの分泌にはエネルギーが必要であり、普段蓄積されている体脂肪もエネルギー源として使用されます。しかし、体脂肪が少なすぎると、体脂肪から分泌されて脳のホルモン分泌信号にも影響を及ぼすレプチンの分泌量が減り、生理不順または無月経を引き起こします。InBodyでは成人女性における体脂肪率の標準範囲を18-28%としています。この標準範囲を下回ると個人差はありますが、約半数が月経不順に、10%以下ではほぼ100%無月経になってしまいます²⁾。正常な生理周期を保つためには最低22%以上が必要とされています³⁾。また、ホルモンバランスの乱れは骨密度にも影響するため、体脂肪率が低い女性アスリートは骨密度の低下によって疲労骨折が起こりやすくなります。

自分の体の体脂肪情報を確認せず闇雲に、「脂質を取らない」「夕食を食べない」といった偏りのあるダイエットを行った結果、脂質の不足が原因で体調不良に悩まされる方も少なくありません。InBodyでは体重の増減の内訳を確認することができます。体重が増えたとしても、体脂肪量が増加せず、主に筋肉量が増加しているなら良い体重増加と捉えることができます。一方、体重が減ったとしても、体脂肪量が維持されたまま筋肉量のみが減少しているなら悪い体重減少と捉えます。InBodyを定期的に測定することで、筋肉量や体脂肪量を加味した現在の体の状態を確認できます。


InBody結果用紙で表示される体脂肪量は測定・入力された体重から、測定された除脂肪量を差し引いた値になります。体重が正しく測定できなかった場合、その誤差のほとんどは体脂肪量の誤差として表れます。また、InBodyを測定する際、胃に残っている食べ物や、体内の便や尿などの排泄物は体脂肪量として算出されます。従って、正確に体脂肪量を測定するためには、食後最低2時間は時間を空け、測定前には必ずトイレを済ませることを推奨します。
※その他測定前の注意事項はインボディ公式YouTubeチャンネル「測定前の注意事項」の動画をご覧ください。

InBodyが独自に提供しているInBody点数(フィットネススコア)は筋肉量(厳密には除脂肪量)と体脂肪量から算出されています。筋肉量は標準値を超えると1kgあたり+1点されますが、体脂肪量は標準値から1kg増えても減っても-1点されます。体脂肪量の不足は体に悪影響を及ぼすため、私たちの体には適量な体脂肪が必要であるとInBodyは知っているからです。


脂質異常症

体内の脂質が過剰もしくは不足している状態が続くと脂質異常症と診断されます。日本動脈硬化学会では血液検査による診断基準を以下の通りとしています⁴⁾。脂質異常症そのものが何かしらの症状を起こすものではありませんが、脂質異常症によって動脈硬化が発生することで、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めてしまいます。また、血中の脂質が増加することで、胆のうに胆石(コレステロールの塊)が発生してしまうこともあります。
▲脂質異常症の診断基準(日本動脈硬化学会より引用・改変)

脂質異常症の主な原因は喫煙・食生活の乱れ・運動不足・糖尿病・睡眠不足などが挙げられます。これらの生活習慣や関連疾患が起因して血中脂質濃度が上昇してしまいます。また、脂質異常症には遺伝的な要因が絡んでいる場合もあります。先天的なLDLコレステロールの代謝異常によって、血中の脂質が増加してしまうことが原因です。脂質異常症を防ぐには食生活の改善と定期的な運動を行うことが大切です。


体脂肪量以外で確認する測定項目

脂質を適切に摂取できているかは体脂肪量以外のInBody測定項目でも確認することができます。

➤内臓脂肪レベル
業務用InBodyの一部機種では、内臓脂肪レベルを確認することができます。InBodyでは内臓脂肪を直接測定しておらず、インピーダンス値とCTとの相関から、あくまで参考値として算出しています。内臓脂肪レベルは内臓脂肪断面積の1桁数値を切り捨てた値を意味しており、内臓脂肪レベルが10以上(内臓脂肪断面積が100cm²以上)だと、内臓脂肪が多いと判断します。

➤腹囲・部位別周囲長
腹囲や各部位の周囲長からも確認することが可能です。InBodyは最初に体水分量を算出しますが、体水分量を求める際に、各部位を円柱として捉えることで、円柱の体積・長さ・断面積が求められるので、円柱の周囲長(つまり腹囲や各部位の周囲長)も推定できます。くびれの位置や凹凸間の差が大きい方では、実測値と乖離する場合があります。しかし、メジャーで測定した周囲長でも測定する人によっては誤差(ヒューマンエラー)が発生することもあるので、そういった誤差が含まれていない値として、継続的にモニタリングするにはInBodyの数値も便利です。
※InBodyの測定原理に関して、詳しくは「InBodyの技術」ページも併せてご覧ください


終わりに

ダイエットや食生活を見直す際によく間違いやすいのが「脂質=体脂肪=悪」という認識です。この誤解から、体脂肪を減らすためには脂質の摂取量を極端に減らすことを考えるようになり、その結果、逆に脂質の不足状態に陥り、体の不調を招くことも多いです。つまり、脂質は必要不可欠な栄養素であり、体には適量必要であることを是非覚えておいてください。

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -脂質Ⅰ-

 

参考文献
1.「e-ヘルスネット」 厚生労働省
2. 順天堂大学 女性スポーツ研究センター
3. Menses Requires Energy: A Review of How Disordered Eating, Excessive Exercise, and High Stress Lead to Menstrual Irregularities. Kimberly Huhmann, Clinical Therapeutics. 2020 Mar; 42(3): 401-407
4.「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」 日本動脈硬化学会

五大栄養素 -脂質Ⅰ-

五大栄養素シリーズも折り返しです。三大栄養素の一つでもある脂質は私たちが生きていく上で欠かせない栄養素です。それにも関わらず、脂質=肥満という強烈なイメージによって、他の五大栄養素と比べると、悪者にされることもしばしば…。ダイエットされている方、健康診断でメタボリックシンドローム(内臓脂肪型肥満症候群)の危険ありと判定されてしまった方など、普段から脂質の摂取量を気にされている方は多いと思います。特に12月は忘年会やクリスマスパーティなど、脂質の多い食生活になりがちです。

厚生労働省は大人が一日に必要な脂質の目標量を、男女共に総エネルギー摂取量のうち20-30%未満と定めています¹⁾。2018年の国立健康・栄養研究所の栄養摂取状況調査によると、総エネルギー摂取量のうち脂質由来のエネルギーは、男性27.6%、女性28.9%となっています²⁾。脂質の摂取量は少なくすればするほど良いというイメージがありますが、脂質も一定量必要な栄養素であり、不足してしまうと体に悪影響が出ます。脂質と上手く付き合っていくために、是非今回のトピックで脂質への理解を深めてください。


脂質とは


脂質は三大栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物)の中で、1gあたり9kcalと得られるエネルギー量が最も大きい栄養素です(タンパク質・炭水化物は4kcal/g)。厚生労働省は各栄養素から摂取するエネルギー量の比率の目標値を定めており、総エネルギー摂取量のうち、13-20%をタンパク質から、20-30%を脂質から、50-65%を糖質(炭水化物)から摂取することを推奨しています。よくダイエット本などで「PFCバランス」という言葉を目にすると思いますが、これはタンパク質(Protein)・脂質(Fat)・糖質(Carbohydrate)からそれぞれ摂取するエネルギー量の比率を表しています。ダイエットや筋トレを行うときは目標に合わせて、3つの栄養素の摂取量を調整しながら食事計画を立てるとより効果的とされています。

農林水産省による調査が開始されて以来、日本人の摂取エネルギー量の比率におけるタンパク質の割合は変わりませんが、脂質の割合は増え、糖質の割合は減る傾向にあります³⁾。この変化はファストフードや菓子類の普及、食事の欧米化などが理由に挙げられます。
▲「平成30年度食料需給表」より引用

人体における脂質の役割は様々です。例えば、脂質は細胞膜の主な構成成分です。細胞膜はイオンや有機化合物などの物質の出入りを制御していますが、細胞膜が健康でないと上手く制御されません。脂質はステロイドホルモン(性ホルモン、副腎皮質ホルモンなど)やビタミンDの前駆体(ある物質が生成される前段階の物質)でもあります。また、ビタミンの中には水ではなく脂質に溶けやすい脂溶性ビタミン(A・D・E・K)があり、脂質はこれらをはじめとする脂溶性物質の吸収を助ける働きがあります。他にも、脳・神経系の機能保持(大脳の主な構成要素)や肌・毛髪の健康維持、体温維持、臓器の保護なども脂質の役割です。これらの役割から、脂質が体に必要不可欠な栄養素であることが分かります。
※脂溶性ビタミンについてもう少し詳しく知りたい方はInBodyトピック「五大栄養素 -ビタミンI-」もご覧ください。


脂質の種類

脂質は主に飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸・多価不飽和脂肪酸の3つに分類されます。下の図を見ると、大人が最も多く摂取している脂肪酸は一価不飽和脂肪酸で、次いで飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸となっています。
▲「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より引用

体脂肪に変わりやすいと言われているのが飽和脂肪酸で、これは高LDLコレステロール血症をはじめとする生活習慣病や、心筋梗塞をはじめとする循環器疾患の主な危険因子の一つです。脂質全体の目標量の上限値は30%ですが、脂質に含まれる飽和脂肪酸の目標量は成人男女ともに総摂取エネルギー量の7%以下と定められています。尚、小児(~17歳)は発育に脂質が必要なため、目標量が10%以下と成人男女よりも多めに設定されています。
▲「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より引用

多価不飽和脂肪酸は必須栄養素のため、最低限必要な量を摂取する必要があります。脂質全体の目標量の下限値は成人男女ともに総摂取エネルギー量の20%と定めています。これは脂質に含まれる多価不飽和脂肪酸の必須量を基に設定されています。多価不飽和脂肪酸は更にn-3脂肪酸とn-6脂肪酸に分類されます。n-3脂肪酸は魚油に多く含まれるEPAとDHAなどが該当し、n-6脂肪酸は紅花油やグレープシードオイル、ひまわり油などの植物油に多く含まれています。


脂質を多く含む食品と脂質が少ない食品

次の表は脂質が多い代表的な食品と脂質が少ない代表的な食品の各100gあたりの含有量です⁴⁾。同じ牛肉や鶏肉でも部位によって含まれる脂質は大きく異なるので、脂質の少ない部位を選べばダイエット中でもお肉を食べることができます。

「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より改変

脂質はファストフードや菓子類を控えたり、食事内容に気を遣ったりすることで意識的に摂取量を調整できます。次回のトピックでは適切ではない脂質摂取によって体に出る影響をご紹介します。

 

参考文献
1.「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 厚生労働省
2.「栄養摂取状況調査」 国立健康・栄養研究所
3.「平成30年度食料需給表」 農林水産省
4.「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 文部科学省

 

五大栄養素 -ビタミンⅡ-

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -ビタミンⅠ-

前回のトピックではビタミンDの働きや、過剰摂取または不足による悪影響についてご紹介しました。今回のトピックでは食事以外でビタミンDを補う方法についてご紹介していきます。


食事以外でビタミンDを補う方法

➤日光浴

肌が紫外線を吸収すると、体内の化学反応によってビタミンDを生成することができます。前回のトピック「五大栄養素 -ビタミンⅠ-」でも説明したように、ビタミンDを食事だけで摂取すると不足しやすいため、環境省では軽めの日光浴を推奨しています。但し、紫外線の浴び過ぎは免疫機能の低下や皮膚がんなどのリスクを高めるため、日光浴をする時間には注意が必要です。

季節や地域によって推奨時間は異なりますが、7月の東京では1分、札幌では1分半程度、12月の東京では7分、札幌では12分程度の日光浴で1日に必要なビタミンDを生成することができます¹⁾。但し、これは1つの目安であり、時間帯・雲の量・日焼け止め・肌のメラニン含有量などがビタミンD生成に影響を及ぼすため、日光に当たっているからと言って常にビタミンDが生成されるわけではありません。また、日光浴は日向でなく、日陰や身体の一部に日光を当てる程度でも十分ですが、その場合は推奨時間よりも少し長めに時間をとる必要があります。


▲ 紫外線を当てる部位別のビタミンD合成に必要な日光浴時間

日光浴によるビタミンDの生成は体内で必要な量しか合成しないように調節されているため、体内のビタミンDが過剰になることはありません。従って、食事による平均的な摂取と適度な日光浴によって十分なビタミンDを体内に供給することができます。

➤サプリメント*

適度な食事と日光浴ができているのであれば、サプリメントに頼る必要はありませんが、ビタミンDを豊富に含む食品が苦手で摂取できなかったり、日中に外出する機会が減ったりしている人は、サプリメントで不足分を補うことができます。特に高齢者は加齢によって血中ビタミンD濃度が減少しやすい上に、屋外での活動量減少によって長期にわたりビタミンD不足状態に陥ると、骨粗鬆症や転倒のリスクが高まってしまいます。

しかし、高齢者にビタミンD(及びカルシウム)サプリメントを毎日摂取させると、12か月後には大腿四頭筋の筋力・姿勢制御・立ち上がり・歩行などの日常的な身体機能が改善されたとの報告があります²⁾。また、ビタミンDサプリメント単体による摂取よりも、カルシウムサプメントを併用した摂取の方が転倒の再発を減少させるとも言われています³⁾。高齢者の転倒はビタミンDサプリメントの摂取のみで改善されるわけではありませんが、これらの報告は、十分なビタミンD摂取は筋力と身体機能を改善させ、転倒を減少させる可能性があることを示しています。

*薬物療法中の方 や複数のサプリメントを服用中の方は効果を最大に発揮できないこともありますので、服用前は専門家とご相談ください。


ビタミンDの摂取・生成によるメリット

このように食事以外の方法でも体に必要なビタミンDを補うことができ、骨の健康を維持することができますが、ビタミンDは次のような働きもします。

➤筋肉量の減少を抑える

ビタミンDは筋肉のタンパク質を構成する必須アミノ酸の分解と筋肉を委縮させる因子 (転写因子FOXO1)の発現を抑え、筋委縮を改善させることができます⁴⁾。高齢者がサプリメントでビタミンDを1日100μg摂取すると、4ヶ月後に筋繊維が太くなったという報告があり⁵⁾、ビタミンD摂取は筋肉量の減少を抑制することができます。また、血中ビタミンD濃度は加齢に伴い減少するので、高齢者は 若い人よりもビタミンDの補充が重要になってきます。ロコモティブシンドローム*の予防を啓発する日本整形外科学会でも、筋肉や骨のために毎日摂取したい栄養素としてビタミンDを挙げています⁶⁾。

*ロコモティブシンドロームとは「立つ」「歩く」といった機能が低下している状態を表します。

➤免疫機能を調節する
ビタミンDは体内にウイルスや細菌が侵入してきた際に、過剰な免疫機能を抑えて、必要な免疫機能のみが働くように調節する役割があります。 血中ビタミンD濃度が低い人は呼吸器感染症のリスクが高いと言われており⁷⁾、免疫力の向上にはビタミンDが重要であることが分かります。特に今年は呼吸器感染症の1つに分類されるコロナウイルス(COVID-19)が流行していますが、その感染予防にビタミンD摂取が効果的であると報告している研究があります。しかし、それを否定する研究もあり、感染予防の効果有無は現在も議論されていますが、ビタミンDの摂取によって免疫力が高まることは明らかです。

➤血糖値を抑制する

インスリンは膵臓から分泌されるホルモンの一種で、血液中のブドウ糖をエネルギーに変換して、血糖値を一定に保つ役割があり、筋肉量が多い人ほど適切な量が分泌される傾向にあります⁸⁾。ビタミンDはこのインスリンの作用を改善させる働きがあります⁹⁾。更に、ビタミンDとカルシウムを一緒に摂取することで糖尿病の発症リスクを減少させるとの報告もあります¹⁰⁾。つまり、血中ビタミンD濃度を充足状態にすることは、糖尿病の予防にも繋がります。


終わりに

ビタミンDは健康な日々を過ごしていくために必要不可欠な栄養素の一つです。普段の食事で必要な量を摂取できているか振り返ってみて、もし不足しているようならビタミンDが豊富な食品を食事に取り入れたり、日光に当たる時間を増やしたりすることを心掛けてみてください。また、普段の生活でビタミンDの摂取や生成が十分でない人や、加齢に伴って血中ビタミンD濃度が低下してしまう高齢者は、サプリメントで不足分を補うのを検討してみるのはいかがでしょうか。

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -ビタミンⅠ-

 

参考文献
1.「紫外線環境保健マニュアル2020」 環境省
2. Effects of a long-term vitamin D and calcium supplementation on falls and parameters of muscle function in community-dwelling older individuals. M Pfeifer et al., Osteoporos Int. 2009 Feb;20(2):315-22
3. Effects of vitamin D and calcium supplementation on falls: a randomized controlled trial. Heike A Bischoff et al., J Bone Miner Res. 2003 Feb;18(2):343-51
4. ビタミンDによるサルコペニアの予防・改善の分岐基盤の分析. 亀井 康富, 乳の学術連合. 2018
5. A randomized study on the effect of vitamin D₃ supplementation on skeletal muscle morphology and vitamin D receptor concentration in older women. Lisa Ceglia et al., J Clin Endocrinol Metab. 2013 Dec;98(12):E1927-35
6.「食生活でロコモ対策」 日本整形外科学会 ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト
7. An association of serum vitamin D concentrations < 40 nmol/L with acute respiratory tract infection in young Finnish men. Ilkka Laaksi et al., m J Clin Nutr. 2007 Sep;86(3):714-7
8. Muscle mass and insulin sensitivity in postmenopausal women after 6-month exercise training. B K J Glouzon et al., Climacteric. 2015;18(6):846-51
9. The Effect of Improved Serum 25-Hydroxyvitamin D Status on Glycemic Control in Diabetic Patients: A Meta-Analysis. Naghmeh Mirhosseini et al., J Clin Endocrinol Metab. 2017 Sep 1;102(9):3097-3110
10. Calcium, vitamin D and dairy intake in relation to type 2 diabetes risk in a Japanese cohort. K Kirii et al., Diabetologia. 2009 Dec;52(12):2542-50

五大栄養素 -ビタミンⅠ-


五大栄養素の1つであるビタミンはエネルギー源や体をつくる成分ではありませんが、他の栄養素が体内で円滑に働くための潤滑油のような役割があり、健康を維持するためには必要不可欠な栄養素です。ビタミンは全部で13種類存在し、水に溶けやすい水溶性ビタミンと油脂に溶けやすい脂溶性ビタミンに分類され、それぞれの性質から体内に取り込まれるメカニズムが異なります。

水溶性ビタミンは血液などの体液に溶け込み、余分なものは尿として体外に排出されやすいため、大量に摂取しても体内に貯蔵されにくく過剰摂取の心配はありません。従って、体内で不足しないように、毎日数回に分けて摂取する必要があります。一方、脂溶性ビタミンは水に溶けにくく、主に脂肪組織や肝臓などに蓄積されやすい特徴があるため、過剰摂取すると蓄積過多となって体に害を及ぼしてしまう恐れがあります。今回のトピックでは、多くのビタミンの中でも骨の健康維持や免疫機能の向上に欠かせないビタミンDに焦点を当てていきます。


ビタミンDとは

ビタミンDは身体機能を正常に保つ働きをする脂溶性ビタミンに該当し、骨・ミネラル代謝の維持に必須な栄養素としてよく知られています。ビタミンDにはD2からD7まで6種類存在しますが、一般的に体内の生理的調節機能に高く作用するビタミンDはD2(エルゴカルシフェロール)とD3(コレカルシフェロール)です。この2種類は食品から摂取でき、体にとって重要な栄養素です。残りの4種類は殆ど食品に含まれておらず、体に及ぼす作用も低いです。

厚生労働省による1日の食事摂取基準は18歳以上の男女ともに8.5~100μg(ビタミンD2とD3の合計値)が推奨されています¹⁾。しかし、国民健康・栄養調査の報告では1日あたり男性6.9μg・女性6.3μgしか摂取できておらず、どちらも摂取量が基準を下回っている状況です²⁾。

ビタミンDはInBody結果用紙で表示される骨ミネラル量の改善に効果的な栄養成分です。 InBodyが測定する骨ミネラル量は除脂肪量に比例するという関係性に基づいて求めており、ビタミンDの摂取量がそのままInBody結果用紙の骨ミネラル量に反映されることはありませんが、除脂肪量の増加に伴って徐々に増加します。骨ミネラル量が標準範囲を下回っている場合は、ビタミンDの摂取量を増やしながら、除脂肪量の増加を心掛けてみてください。


ビタミンDの過剰摂取・不足による悪影響

既に説明した通り、脂溶性ビタミンであるビタミンDは 体内に蓄積されやすいため、過剰摂取は健康に問題を引き起こす恐れがあります。毎日大量のビタミンD(推奨量の約60~100倍)を数ヶ月間摂取し続けると、毒性が現れ、血中カルシウム濃度が過剰になり、血管・腎臓・肺・心臓に多量のカリウムが沈着します³⁾。初期症状として食欲不振・嘔吐・筋力低下・神経過敏・高血圧が起こりますが、重症化すると腎臓が損傷を受けて腎不全になる恐れもあります。


また、ビタミンDは健康な骨を維持するために必要なカルシウムとリンを小腸や腎臓で体内に吸収するのを助ける働きがあり、不足すると様々な骨へのリスクを高めます。小腸や腎臓で吸収されるはずのカルシウム量が減少し、低カルシウム血症になると、小児ではくる病(小児の骨軟化症)、成人(特に妊婦や授乳婦)では骨軟化症、骨量が低下している高齢者では骨粗鬆症を発症しやすくなります。日本内分泌学会では、血中ビタミンD濃度(血清25(OH)D濃度)からビタミンD欠乏症を判定する基準を次のように定めています⁴⁾。

充足状態: 30ng/ml以上
不足状態: 20ng/ml以上30ng/ml未満
欠乏症: 20ng/ml未満


ビタミンDを多く含む食品

ビタミンD2はきのこ類など植物性食品に多く含まれ、ビタミンD3は魚肉・魚類の肝臓・バター・卵黄など動物性食品に多く含まれます。ビタミンDは脂溶性のため、脂質を含む動物性食品の方が体内に吸収されやすいですが、植物性食品でも炒めたり、揚げたりして油と一緒に摂取すると吸収されやすくなります。次の表はビタミンDを多く含んでいる代表的な食品と100gあたりの含有量です。


「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より改変

このように、ビタミンDは食品から摂取することができますが、多くの人が体に必要なビタミンD摂取量を満たしてないのが現状です。では、ビタミンD不足を補うためには食事摂取量を増やす方法しかないのでしょうか。実は、食事以外の方法でもビタミンDを補うことができます。次のトピックでは食事以外でビタミンDを補う方法についてご紹介していきます。

 

参考文献
1.「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 厚生労働省
2.「平成30年国民健康・栄養調査報告」 厚生労働省
3.「ビタミンD」 MSDマニュアル家庭版
4. ビタミンD不足・欠乏の判定指針. 岡崎亮ら, 日本内分泌学会雑誌, 2017 Mar; 93

 

, ,

五大栄養素 -タンパク質Ⅱ-

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -タンパク質Ⅰ-

前回のトピックではタンパク質の役割や、過剰摂取と不足による悪影響についてご紹介しました。今回のトピックでは効率良くタンパク質を摂取する方法をご紹介していきます。


プロテインの種類と効果


プロテインは、加工の過程で脂肪分や炭水化物が取り除かれるため、タンパク質の含有量が高く、タンパク質をたくさん摂取するにはお勧めです。プロテインは牛乳が原料であるホエイプロテイン・カゼインプロテインや、大豆が原料であるソイプロテインなど、様々な種類があります。また、ビタミン・ミネラルを加えることで、タンパク質の吸収効率も高まるので、一緒に摂取するように心掛けましょう。使用目的に合わせて、最適なプロテインを選べるよう、まずはそれぞれの特徴についてご紹介します¹⁾²⁾。

➤ホエイプロテイン
ホエイプロテインは、牛乳に含まれるタンパク質の一種です。ヨーグルトの上澄みにできる液体のことをホエイ(乳清)といいますが、このホエイに含まれるタンパク質がホエイプロテインです。ホエイには他に、ミネラルや水溶性ビタミンが含まれています。

ホエイプロテインには筋肉成分の多くを占めるアミノ酸が含まれており、筋肉修復効果も高いので、トレーニングで強い肉体を手に入れたい方にお勧めです。トレーニング後、効率的に筋肉の回復を促すためにはできるだけ素早くタンパク質を補給することが必要です。ホエイプロテインは吸収がスムーズであることからトレーニング直後の補給にも最適です。筋トレだけではなく、マラソンなどの持久系スポーツ、格闘技・コンタクトスポーツ(ラグビー・アメフトなど)と、広い分野で強靭な体を作りたい方に適しています。ホエイプロテインの味は淡白で飲みやすく、体内への吸収速度はスムーズで胃腸がもたれにくいというメリットがありますが、他のプロテインと比べると価格が比較的高いところが難点です。しかし、種類によってはソイプロテインと混合したものや、プロテイン含有量を控えめにしたものなど、機能や価格面で工夫しているものが多く出回っています。また、ホエイプロテインはその製法によって、タンパク質含有量が異なってくる点も特徴です。

➀ WPC製法…Whey Protein Concentrate(濃縮乳清タンパク質)、濃縮膜処理法
原料になる乳清をフィルターで膜処理し、ろ過して得られた液体を濃縮する製法のため乳糖(ラクトース)が残りやすいです。乳糖不耐症(乳製品に含まれる乳糖を小腸で分解できず、腹痛や下痢を起こす)を持つ人にとっては、腹部膨満感(お腹が張ってごろごろする症状)の原因となる場合もありますが、乳清に含まれるビタミンやミネラルをできるだけ多く残すことができるというメリットがあります。タンパク質含有率が約80%の製品はこの製法で作られていることが多いようです。

➁ WPI製法…Whey Protein Isolate(分離乳清タンパク質)、イオン交換法
WPC製法で分離されたタンパク質をさらにイオン交換処理を施して不純物を取り除くため、高濃度のホエイタンパクが作られます。タンパク質含有率も約90%と高く、お腹の不調になりやすい乳糖の含有率も非常に低いため、日本人に多い乳糖不耐症の方にも適した製法といえます。精製度の高いホエイプロテインを実現するために比較的多くの工数が必要となり、価格は若干高めです。

➂ WPH製法…Whey Protein Hydrolysate(加水分解乳清タンパク質)
加水分解ペプチドとも呼ばれ、微生物に含まれる酵素などを使いWPCをペプチド状態(アミノ酸が十数個から数十個つながった状態)に分離したものです。ホエイ含有率が約95%と高くなり、価格も高めのものが多いですが、比較的少ない摂取量で筋タンパク質合成を促進させることができます。

ホエイプロテインは製法ごとに様々な特徴を持っています。自分にあった製法のプロテインを選んで、タンパク質を効率良く摂取しましょう。

➤カゼインプロテイン
ホエイプロテインと同じく牛乳から作られるのがカゼインプロテインです。主成分であるカゼインは生乳を構成するタンパク質の約80%を占めています。ホエイプロテインが水溶性で吸収が早いことに対し、カゼインプロテインは不溶性で固まりやすく、体への吸収速度がゆっくりであることが特徴です。ダイエット時の間食や運動をしない日のタンパク質補給、就寝前にお勧めです。カゼインプロテインは体への吸収速度がゆっくりであることから満腹感の持続が期待できます。

➤ソイプロテイン
ソイプロテインの原料は、その名の通り大豆のタンパク質部分だけを粉末にしたものです。タンパク質の比率を高め水分や糖質、脂肪を減らし植物性タンパク質を効率的に摂取できます。価格が比較的安いことも特徴の一つです。ソイプロテインはカゼインプロテインと同じく消化吸収速度がゆっくりのため、満腹感が持続しやすく、ダイエットや健康維持をしたい方にお勧めです。加えて、大豆に含まれるイソフラボンの効果で皮膚や骨の強化、血流改善が期待できます。また、イソフラボンは女性ホルモンと似た働きをするので、肌の張りを保つ効果や、女性らしい体のラインをキープすることにも役立ちます。一方で、溶かしたときに粉っぽくなってしまい飲みにくいこともあるため、少量のぬるま湯で溶いてダマにならないようにしてから水を加えるなど、飲みやすくする工夫が必要です。最近では、溶けやすく改良された商品も多く発売されています。


筋肉増強以外でのプロテイン活用法

「プロテイン=運動している人が摂取するもの」というイメージを抱く方が多いですが、あくまでプロテインは「高タンパク食品」です。食事でタンパク質摂取量が足りない方や、タンパク質を多く摂取する必要がある方は普段の食事にプロテインを組み合わせることで効率よくタンパク質を摂取することができます。プロテインを摂取した方が良い人は、アスリート以外にはどのような人が当てはまるのでしょうか?

➤成長期の子ども(ジュニアプロテイン)

子どもは基礎代謝量や活動エネルギー分だけでなく、発育に必要なエネルギーも摂取しなければならないため、栄養摂取が特に重要な時期です。どんなに栄養豊富なご飯を朝・昼・夕に食べたとしても、子どもなので1食で食べられる量には限界があります。食の細い子も中にはいるでしょう。栄養をたくさん摂りたいけれど摂れないという時には、普段の食事に合わせてジュニアプロテインを一緒に摂取することで不足しがちな栄養を補うことができます。また、ジュニアプロテインは一般的なプロテインとは異なり、タンパク質だけでなく鉄分やカルシウムなど子どもの成長に必要な成分が多く含まれています。例えば、朝ごはんに飲んでいる牛乳にプロテインを溶かして一緒に摂取するのはいかがでしょうか?

➤高齢者の筋力・カルシウムサポート

最近では、高齢者のフレイルが問題視されています。フレイルとは、高齢期に筋肉量・筋力の減少など生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、機能障害、要介護状態、死亡などの不幸な転機に陥りやすい状態とされ、生理的な加齢変化と機能障害、要介護状態の間にある状態を指します³⁾。筋肉量の減少は、フレイルを構成する原因の一つであり、筋肉量・筋力の減少を指すサルコペニアは多くの疾患と関連します。そこでフレイル予防の観点から2020年版の日本人の食事摂取基準⁴⁾では、65歳以上の総摂取エネルギー量に占めるべきタンパク質由来エネルギー量の下限値を前回(2015年版)の13%から15%に引き上げています。筋肉量の減少を防ぐために、運動の推奨は勿論ですが、栄養面からの予防策も必要になります。

例えば、70歳男性・身体活動レベルⅠ(自宅にいて、ほとんど外出しない)の方の推定エネルギー必要量は2,050kcal/日です(下表参照)。この方の推定エネルギー必要量のうち、タンパク質由来のエネルギー量は約308kcal/日になります。タンパク質1gあたりのエネルギー量は約4kcalなので、この方の推定エネルギー必要量を満たした食事メニューでは、タンパク質が約77g含まれるように構成を考える必要があります。食事量が多く取れない高齢者が十分なタンパク質を摂取するためには、食事面での栄養バランスを考えるだけでなく、プロテインなどの補助食品でタンパク質を補っていく必要があります。


「日本人の食事摂取基準2020」エネルギーより抜粋

➤妊婦や授乳期のお母さん

妊婦の方は、胎児及び胎盤などの発育に必要なタンパク質を摂取する必要があり、授乳期のお母さんは、自身に必要なタンパク質に加えて母乳分のタンパク質も摂取する必要があります。妊婦の場合、自身で必要なタンパク質に加えて、妊娠中期で+5g/日、妊娠後期で+25g/日のタンパク質摂取を推奨しています。また、授乳期では+20g/日の摂取を推奨しており、十分なタンパク質摂取が母親だけでなく、胎児・乳児の健康にも欠かせないことが分かります。


「日本人の食事摂取基準2020」タンパク質より抜粋


終わりに

普段、何気なく摂取しているタンパク質ですが、私たちの体に必要な量を摂取できているでしょうか? 同じ年齢・性別の方でも、体格や運動習慣の違いによって必要なタンパク質摂取量は変わってきます。そのため、自分に必要なタンパク質量を把握し、足りない分はプロテインなどの補助食品を上手く組み合わせながら食事メニューを考えてみましょう。

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -タンパク質Ⅰ-

 

参考文献
1.「ホエイ、カゼイン、ソイってなに?プロテインの種類について」 グリコ
2.「かんたん、わかる!プロテインの教科書」 森永製菓
3. 日本サルコペニア・フレイル学会
4.「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 文部科学省

 

五大栄養素 -タンパク質Ⅰ-

五大栄養素とはどれを指しているでしょうか? 様々な栄養素の中で、私たちが生きていく上で欠かせない成分は糖質・脂質・タンパク質・ビタミン・ミネラルの5つがあり、中でも糖質・脂質・タンパク質の3つを三大栄養素と称します。三大栄養素はエネルギー源として生命維持や身体活動に用いられるため、摂取できない状況が続けば、呼吸など最も基本的な生命維持活動すら難しくなってしまいます。また、それぞれ体内での役割が異なるため、どれか1つの栄養素を大量に取れば良いものでもなく、満遍なく摂取する必要があります。


厚生労働省は、大人が一日に必要なタンパク質量を男性65g、女性50gと定めています¹⁾。定期的に運動を行っている方やスポーツ選手は、より多くのタンパク質が必要だと言われています。現代の日本人は食事で十分なタンパク質量を摂取できていると報告されていますが²⁾、体型や生活様式によって、必要なタンパク質量は十人十色です。タンパク質と聞くとまず思い浮かべるのは筋肉だと思いますが、それ以外にも血液・内臓・皮膚など体のあらゆる器官を構成する主要な成分でもあります。今回のトピックでは、私たちの体づくりに大きく関与しているタンパク質について勉強していきましょう。


タンパク質とは


タンパク質¹⁾は、人間だけでなく生物において重要な構成成分の一つです。私たちの体の約60%は水で構成されていますが、その次に多いのがタンパク質であり、15~20%を占めています。その働きは多岐に渡り、酵素やホルモンとして代謝を調節、生命活動に必要な物質輸送に関与し、あるときは抗体として生体防御にあたります。タンパク質を構成しているアミノ酸は、タンパク質合成の素材であるだけでなく、神経伝達物質やビタミン、その他の重要な生理活性物質の前駆体でもあります。

タンパク質は多くのアミノ酸が結合している集合体です。この集合体はそのまま体内に吸収することはできないため、摂取したタンパク質をアミノ酸に分解してから吸収します。タンパク質を構成しているアミノ酸は全部で20種類あり、体内で合成できる非必須アミノ酸と、体内では合成できず食べ物から摂取しなければいけない必須アミノ酸に分かれます。アミノ酸の状態で体内に吸収された後、20種類のアミノ酸の組み合わせ方を変えて再合成することで、筋肉・血液・内臓・骨・皮膚・髪・爪などの体の部位の主要成分となる他、ホルモン・抗体・脂肪などの材料にもなります。

体内のタンパク質は常に合成と分解を同時に繰り返し、動的平衡状態を保ちながら、毎日少しずつ作り替えられています。その速度は各器官によって異なり、小腸の上皮細胞だと約1日で作り替えられますが、骨や毛髪だと何年もかかります。作り替えられた各器官のタンパク質はアミノ酸に分解され、その一部は尿として体外に排出されてしまいます。つまり、人間はタンパク質を常に食事から補給し続けなければなりません。

InBody結果用紙で表示されるタンパク質量は、体細胞が主に水分とタンパク質で構成されていることから、水分量との相関を考慮して算出しています。そのため、タンパク質を100g摂取するとInBody結果用紙のタンパク質量がそのまま100g増えることはなく、筋肉量の増加や体細胞の増加に伴ってタンパク質量も少しずつ増加していきます。


タンパク質の過剰摂取・不足による悪影響

タンパク質の過剰摂取は消化・吸収・分解の過程で各臓器に対して、過度な負担を掛けてしまいます。タンパク質を吸収するためには、一旦アミノ酸に分解する必要があるため、多く摂取しすぎてしまうと消化や吸収に時間が掛かり、消化器に負担が掛かります。お肉をたくさん食べた次の日にまだお肉がお腹に残っているように感じるのはそのためです。アミノ酸を分解するとアンモニアが生成されますが、アンモニアは毒性が強く、体内の血中アンモニア濃度が高まると最悪の場合、死に直結します。肝臓では有害なアンモニアを無害な尿素に分解しますが、多量のアンモニアを尿素に分解することが続くと、肝臓に過度な負担が掛かり、機能低下を招く恐れがあります。更に、腎臓では血中の尿素濃度が高くなりすぎないように排泄が行われるため、尿素の量が増えると肝臓のみならず腎臓にも負担が掛かってしまいます。

また、タンパク質の過剰摂取は肥満に繋がります。吸収されたアミノ酸は肝臓に運ばれますが、ここで過剰に摂取されたタンパク質はアミノ酸に分解された後、糖質に再合成されて、最終的に中性脂肪になるためです。

一方、タンパク質の不足も、体全般の機能を低下させ、体調不良を引き起こしてしまいます。特に、食事量の減少や咀嚼力の低下により、十分なタンパク質を摂取することが難しくなる高齢者のタンパク質不足には注意が必要です。タンパク質の摂取がうまくできない高齢者は筋肉量が減少し、身体機能も低下することで転倒や骨折のリスクが高まり、老化が進む原因となります。


タンパク質を多く含む食品

タンパク質は動物性タンパク質と植物性タンパク質に大別されます。次の表はタンパク質を多く含んでいる代表的な食品と100gあたりの含有量です³⁾。


「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より改変

タンパク質は卵や肉、魚のような動物由来の食品や、穀物・豆などの植物由来の食品から摂取することができます。しかし、これらの食品だけでタンパク質をたくさん摂取しようとすると、前者からは脂肪分を、後者からは炭水化物を必要以上に摂取してしまいます。脂肪や炭水化物の過剰摂取はカロリー過多状態につながり、余ったカロリーは体脂肪として蓄積される結果となります。

では、余分な体脂肪を増やすことなく、タンパク質をたくさん摂取するためにはどうすれば良いのでしょうか。次回のトピックでは効率良くタンパク質を摂取する方法をご紹介していきます。

 

参考文献
1.「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 厚生労働省
2.「栄養摂取状況調査」 国立健康・栄養研究所
3.「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 文部科学省