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障害者スポーツ文化センター: ラポール上大岡 -健康づくりを障害者の日常生活に定着させる-

機種モデル:InBody S10

ラポール上大岡は障害者のスポーツ・文化・レクリエーション振興の中核拠点として、2020年1月に神奈川県横浜市港南区に開所されました。社会福祉法人横浜市リハビリテーション事業団が「リハビリテーションサービスの向上」、「豊かな人生への支援」、「共生社会実現への取り組み」を基本理念に、障害者の利用優先施設として運営しています。1992年から港北区に開所されている横浜ラポールと一緒に、横浜市の障害者スポーツ文化活動に関する多様な事業やプロラムを展開して障害者の社会参加を支援しています。また、ラポール施設の利用案内やイベント等の情報はホームページ “ラポール for Smile” から発信しています。


専門職チームによるアプローチ

ラポール上大岡では障害のある方(18歳以上)を対象に、看護師・ソーシャルワーカー・栄養士・体育指導員の専門職チームがそれぞれ生活・栄養・運動の観点からサポートする “健康増進プログラム” を実施しています。


障害や身体状況に合わせたプログラムの提供

プログラムへ参加する際に健康状態等に不安がある方には健康づくり相談をご案内しています。内容としては、身長・体重・腹囲の身体計測、InBodyによる体成分測定、血圧測定を行います。次に、それらの情報と運動歴の聞き取りから、目的に応じた内容のプログラムへの参加を提案します。

提案するプログラムの一つである健康増進プログラムでは体力維持・増進、脂肪燃焼、生活習慣病予防等個人の目的に合わせて健康づくりを支援しており、運動面では体育指導員によるサポートを受けることができます。1回90分の運動指導では血圧測定・体調確認、はまちゃん体操(座位編)※1、個別トレーニング、ストレッチを実施しており、週1~2回の参加が推奨されています。その中の個別トレーニングは有酸素運動と筋トレで構成されており、体育指導員が障害及び身体状況に合わせたトレーニングメニューを作成しています。
※1 はまちゃん体操(座位編): 高齢者の身体機能改善・向上を目的に制作された体操で、座位編は椅子に座ったまま行える体操

▲ 榊原 久子さん

看護師の榊原 久子さんは、2020年12月から健康づくり相談の中で利用者の健康状態や服薬状況を確認し、必要に応じて地域の関係機関に診療情報の提供を依頼しています。また、健康増進プログラムでは生活指導を担当しています。

▲ 金子 秀子さん

ソーシャルワーカーの金子 秀子さんも、2020年11月から健康増進プログラムの生活面で利用者を支援しています。健康づくり相談に同席して生活面の支援が必要な方に病院や施設を紹介する一方で、地域の関係施設から紹介された方を受け入れる等、仲介の役割を担っています。他にもラポール上大岡の地域支援事業に携わっており、地域の障害者が利用する通所施設やグループを利用者と一緒に見学したり、定期的に訪問して利用者の様子を確認したりしています。

▲ 渡邉 芽さん

管理栄養士の渡邉 芽さんは栄養相談を担当しています。利用者の食事内容を本人や家族から聞き取り、目的に合わせて食事改善の助言をしています。渡邉さんは2015年から社会福祉法人横浜市リハビリテーション事業団に所属して横浜総合リハビリテーションセンターに勤務していました。勤務3年目の2018年、横浜ラポールに栄養士を配置することになった際に大学でスポーツ栄養学を学んでいたことから、兼務で利用者の栄養相談に携わるようになりました。その後、2020年1月のラポール上大岡開所に合わせて専任で異動してきました。

渡邉さん:
「横浜ラポールで栄養士の配置は初めてでしたので、当初はどのように栄養相談を実施していけばよいか迷いました。実際に利用者とお会いすると、運動を頑張っているにも関わらず効果が上がらない方も多く、栄養面からのアプローチの必要性を強く感じ、体育指導員と相談しながら栄養相談の形をつくっていきました。」

▲ 熊谷 俊介さん

体育指導員の熊谷 俊介さんは健康増進プログラムの中で運動指導を担当しています。利用者の属性や各種測定結果等の情報を基に個別トレーニングのメニューを作成して指導しています。熊谷さんは2012年から横浜ラポールの体育指導員として8年間、現在のような運動指導に携わっていました。そして、渡邉さんと同じく2020年1月にラポール上大岡に異動してきました。
▲ 主観的運動強度を確認しながら個別トレーニングに励む利用者

熊谷さん:
「例えば、肢体不自由の方は血圧を下げる降圧薬を服薬していることが多く、内部機能障害の方は心臓に高い負荷をかけられない等、利用者によっては心拍数を参考に運動を処方するのが難しい場合もあります。そのような方の有酸素運動には、主観的運動強度で『ややきつい』 と感じる程度のニコニコペース(笑顔を保って運動できるくらいゆっくりとしたペース)で10~20分間のリカベントバイク(上半身を固定しながらバイクを漕ぐ運動)を取り入れています。筋トレは動かせる肢体によってチェストプレスやシーステッドロー等のマシンを使用して2~3セット行います。一方、視覚・聴覚・知的・精神障害の方の有酸素運動には推定最大酸素摂取量50%程度の10~20分間のアップライトバイク(体をまっすぐに保ちながらバイクを漕ぐ運動)等を取り入れ、筋トレは体積が大きい筋肉を使うレッグプレスやチェストプレス等のマシンを使用して2~3セット行います。」

一方、栄養相談では栄養指導ソフトを使用し、一日の食事内容から摂取カロリーや栄養素のバランスをチェック、これまでの体重変化・排便状況・血液データも一緒に確認しながら、摂取カロリーと栄養素の過不足について助言します。
▲ 栄養相談の様子

渡邉さん:
「糖尿病・高血圧等の疾患を考慮し、必要な栄養素を確保しながら利用者の目標を達成できる最善案を提案するように心掛けています。特に肢体不自由の方の総消費カロリーは一般の方と同じように算出できないこともあるので予測することが難しいです。そのため、概ね体重とInBodyの基礎代謝量等を参考にし、筋肉量や体脂肪量の変化を見て食事量を調整しています。一方、精神・発達障害の方には伝え方の配慮として、具体的な数値を示しながら説明するようにしています。InBodyは見た目では分からない身体の変化を数値で可視化できるので、指導や説得の材料として活用しています。」


▲ 体成分の変化が一目で分かる体成分履歴


健康増進プログラムの効果

健康増進プログラムの効果は3ヶ月を目安に体成分・体力測定の項目で評価します。体成分測定には、立位・座位・仰臥位から測定姿勢を選択できるInBody S10を使用しています。利用者の中には腕の麻痺の影響で手電極を握れない方や、車椅子で立位測定を維持できない方がおり、手電極を握っての立位測定は難しいです。そのため、ラポール上大岡ではInBody S10の座位姿勢で、主にクリップ型の電極を手指・足首に装着して測定を行っています。
▲ InBody S10による体成分測定(座位姿勢)

榊原さん:
「利用者の中には脳卒中の後遺症で障害が残る方がいます。脳卒中は生活習慣病が要因で発症することもあるので、根本的な原因である生活習慣病を運動と食事で改善する必要があります。現状を知るという意味ではInBodyの測定結果は利用者を納得させることができ、自分の身体に興味を持っていただくのに効果的です。」

また、体力測定は障害及び身体状況に合わせて行います。肢体不自由や内部機能障害の方は握力(kg)、反復横移動(回)、10m歩行時間(秒)、6分間歩行距離(m)を測定し、視覚・聴覚・知的・精神障害の方は握力(kg)、長座体前屈(cm)、上体起こし(回)、エルゴメーターで推定最大酸素摂取量(ml/kg/分)を測定します。

これまで(2021年7月時点)延べ110名の身体・知的・精神障害の方が健康増進プログラムを利用しています。利用者のプログラム前後の体成分を比較すると、筋肉量は維持される中で体重・体脂肪量・体脂肪率はそれぞれ平均1.3kg、1.4kg、1.2%減少しており、プログラムを通して利用者の体成分を改善させることができています。

※棒グラフは取材を基に再現したイメージグラフです。

▲ 健康増進プログラムにおける体成分の変化

健康増進プログラムは病院やリハビリテーション施設から退院された方が日常生活の中に運動習慣を定着させることも目的としており、結果によっては通常3ヶ月のプログラムを継続することもあります。そのため、プログラムを卒業した利用者は運動が習慣となり、施設のトレーニング室や集団プログラムを利用するためにラポール上大岡に通い続けたり、自宅近くのジムに通ったりしています。

熊谷さん:
「最重度知的障害の方とのコミュニケーションは難しいときがあります。しかし、長期間の付き合いの中で徐々に意思疎通ができるようになる事例もあるので、障害の特性も考慮しながらプログラムの継続有無を判断します。
また、InBodyの測定結果を通して得られた気づきもありました。知的障害の方は散歩等で下半身を動かしますが、意識して上半身を鍛えることがなく、上半身と体幹の筋肉量が少ない傾向があります。そのような方の個別トレーニングには上半身の運動を意識的に加えるようにしています。」


終わりに

障害のある方は一般の方に比べて健康管理が難しいだけではなく、健康への意識も低い傾向があります。病院やリハビリテーション施設では医療従事者による栄養指導・リハビリ等を受けることができますが、退院して自宅や地域に戻った後の日常生活では自身で健康管理を行う必要があります。ラポール上大岡の健康増進プログラムでは障害のある方が自分の身体や健康に興味を持つきっかけを作り、日常生活に食事への配慮や定期的な運動を定着させるサポートをしています。

その一方で、横浜市内には障害のある方が約17万人以上おり※2、全員の健康づくりをラポール上大岡だけで引き受けることは現実的に難しいです。そのため、ラポール上大岡は施設で得られた知見を地域の関連施設へ共有することで、障害のある方の健康づくりに貢献したいと考え、健康増進プログラムの効果に関するデータ等を関連学会で発表しています。今後は障害種別のデータを蓄積し、健康増進プログラムにおける障害種別の課題を見つけることを検討しています。
※2『第4期横浜市障害者プラン』より引用

「障害」の表記は横浜市の方針に従っています。

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第一生命グループ 女子陸上競技部 -選手の主体性を引き出す育成方法-

機種モデル:InBody570

第一生命グループ女子陸上競技部は東京都・世田谷区にホームグラウンドを持つ、主に実業団の陸上長距離で活躍する陸上チームです。1990年に創設されたこのチームは、実業団の女子駅伝における日本一を決める大会の全日本実業団対抗女子駅伝競走大会(クイーンズ駅伝)で過去に2回優勝したことがあります。2020年東京オリンピック女子マラソンの強化コーチを務めた山下 佐知子監督のもと、「一人前の陸上選手に、そして一人前の社会人になろう! 」を指針に日本を代表するランナーの育成に力を入れています。2021年7月時点で平均年齢20歳の若い選手が11名所属しており、これからの活躍も期待できるチームです。


選手が掲げる目標に導く存在

▲ 林田 あやさん

管理栄養士の林田 あやさんはチームの専属栄養士として、選手の練習内容に合わせた献立作りを担当しています。林田さんは2000年シドニーオリンピックでマラソンの高橋 尚子選手が金メダルを獲得した際、そのチームで貢献した管理栄養士の存在を知り、管理栄養士として陸上長距離に関わりたいと考えるようになりました。中学・高校では陸上部に所属し、大学は管理栄養士の資格を取得するために、関東学院大学に進学しました。大学ではマネージャーとして男子陸上競技部に所属し、学部で学んだことを活かして選手に試合前や暑い時期の食事摂取に関するアドバイスをしていました。卒業後は保育園や帝京科学大学の柔道部に勤務し、献立作成から発注・調理までを担当、2018年に現在のチームに専属管理栄養士として就任して、今年で4年目を迎えます。
▲ 左から田中 智美コーチ、原田 紋里選手、古川 結美選手、櫻川 響晶選手、木村 亮太コーチ

コーチである田中 智美さんと木村 亮太さんは、監督が作成した練習メニューの指導の他、ウエイトトレーニングの立案・走る技術の指導・メンタルケアなど、多岐に渡って選手をサポートしています。元長距離選手の田中コーチは2010年に第一生命グループに入社し、2016年リオデジャネイロオリンピックに女子マラソンの代表選手として出場しました。2019年に選手を引退した後、一般社員として広報部で勤務しながらアドバイザーとして競技の指導にも携わり、2021年4月からコーチに就任しました。木村コーチは学生時代に東京国際大学男子駅伝部のマネージャーとしてチームに貢献し、卒業後は陸上競技のコーチングに関して専門性を高めるため筑波大学大学院に進学しました。体育学の修士学位を取得後、田中コーチと同時期の2021年4月に陸上競技部のコーチとして就任しました。現在は監督を始めとして、ゼネラルマネージャー・マネージャー・コンディショニングトレーナー・アドバイザーなど8名のスタッフが選手を支えています。


体重だけに依存しないコンディショニング

陸上長距離は特に体重が競技パフォーマンスへ直結すると言われており、体重のみでコンディションを管理する選手が多いです。以前は第一生命グループも選手のコンディションを体重と体脂肪率で評価していました。しかし、より長い距離を走るためには練習の質や負荷を高める必要があり、それに耐えるための身体には筋肉量が不可欠であるという考えをきっかけに、業務用の体成分分析装置を導入することになりました。この時、選手にもっと正確な測定値を提供したいという思いから、精度が高く他の競技でも使用されているInBodyを採択し、2019年11月にInBody570を導入しました。

林田さん:
「InBodyは柔道部の栄養管理を担当していた時から使用しており、これも一つのきっかけとなりました。また、他の競技チームに所属している管理栄養士もInBodyを使用している方が多く、信頼性が高い印象がありました。」

田中コーチ:
「私の選手時代にはコンディショニングの指標が体重と体脂肪率しかありませんでした。怪我やシーズンオフ後は減量を目指し、減量し過ぎた時は食事量を増やすことで増量していました。しかし、当時を振り返るとその増量は体脂肪量が増えていただけで、パフォーマンスにプラスになっていたとは思えません。走っていて身体が重いと感じていました。もし、その時InBodyがあったら、体重の増減がどの体成分の変化によるものか気づくことができたのではないかと思います。私のような経験から、チーム内でも体重の増減に拘るのではなく、筋肉量を増やす意識が広まりつつあります。但し、選手全員がそのような意識を持っているわけではないので、選手には自分の身体の変化をInBody測定で実感してもらい、徐々にその意識を改めながら身体づくりをして欲しいです。」

木村コーチ:
「InBody測定によって、体重の増減だけでは把握できない体成分の変化を知ることができます。女性選手は月経周期によるホルモンバランスの影響で男性選手より体重の変化が大きいですが、特に陸上選手はその変化に敏感になり過ぎて精神疾患を抱えてしまう恐れもあります。そのようなことにならないためにも、体重の増減のみでコンディションの良し悪しを判断するのではなく、筋肉量や体脂肪量などの詳細なデータを身体づくりの指標とすることで、具体的な改善策を立案することができます。そのため、体重の変化のみでコンディションを判断しないためにも体成分測定は必要です。」


練習に耐える身体をつくる食事

選手の朝・昼・夕の食事は林田さんが献立を作成し、給食委託会社が調理しています。選手は試合に向けて体重・体成分・血液状態などの目標値を設定しており、林田さんは選手が目標値に到達するまでの身体の整え方を食事面からサポートしています。献立を考える時は練習内容だけでなく、体重・筋肉量・体脂肪量の3項目も参考にしています。

▲ 選手の食事風景

林田さん:
「女子長距離選手は体重が増えないように、主食のごはん量を減らして体重調整をする傾向があります。運動によるエネルギー消費量に対して摂取エネルギー量が不足すると、女性アスリートの三主徴の1つである低エナジー・アベイラビリティに繋がりやすく、無月経や疲労骨折のリスクも高まります。そのため、摂取エネルギー量が不足しないためにも、必要な量のごはんを食べるよう選手に伝えるだけでなく、お米以外の食品(イモ類や麺類などの糖質)を増やすことで補っています。また、食事内容に筋肉の材料であるタンパク質を増やす時は、肉類・魚類・大豆製品など動物性・植物性タンパク質をバランス良く取り入れるだけでなく、一緒に脂質を摂り過ぎないために、脂質の少ない部位を使うように工夫しています。例えば、鶏肉のもも肉をささみやむね肉(皮なし)に、豚肉のロースをもも肉に変えるなどです。更に、チーム全体で体脂肪量の増加傾向が見られたら、低脂質の食事に変更することもあります。」

選手はコンディショニングのために毎日体重・体温・脈拍を記録しており、体重変化に合わせて食事量を調節することがあります。この時、林田さんは食事内容をどのように変更・調節するのかを選手と話し合いながら確認します。

林田さん:
「前日の食事の影響で増えた体重をエネルギー源のごはんを抜いて調整する選手がいます。しかし、その増加分は食べ物の重さで、胃腸内に残っているだけです。トレーニングや食事の全体量を調整すれば1週間単位で元に戻すことが出来ます。安易に走るために必要なエネルギーを抜いてしまうのは、疲労回復を遅らせるだけではなく場合によっては怪我に繋がってしまうことも周知しています。一方、間食の頻度が多いために食事量を調節する選手もいます。しかし、練習に耐える身体をつくるためには三食の食事を摂ることは必要不可欠なので、食事量は調節せずに間食をご褒美として食べてもらうなど頻度を減らせるように選手と一緒に改善方法を考えます。適切な食事管理は選手自身が実践して学習することが必要であり、個別に身体づくり・必要な栄養素・食事量を指導しています。体成分を測定することで客観的に身体の中身を把握できることはサポートをする上で貴重なデータになります。」


最高のパフォーマンスを発揮するための身体づくり

選手の練習内容は体成分測定・血液検査・骨密度検査の結果を参考に決定します。InBodyは合宿前後や試合前日、新人選手はデータ収集も兼ねて1~2週間に1回、体重減少が見られる選手は1ヶ月に1回など、定期的に測定しています。目標とする体重・体成分・血液状態などは、測定結果を基に毎月設定し、各々の課題に沿ってトレーニングの負荷や種類を調整しています。実際に2名の選手は絶対的な筋肉量の少なさに課題を抱えており、2021年4月より筋肉量の増加を目的としてウエイトトーニングを導入しました。そのトレーニング効果はInBodyで確認しており、結果的に2名とも体成分の改善が見られました。

➤ A選手のケース (専門: 1500m、3000m、5000m)
A選手:
「怪我の回復直後にウエイトトレーニングを頑張った時期がありましたが、InBodyで筋肉量の増加を確認することができました。この時は、以前怪我をした時と比べて円滑に競技に復帰することができました。」

➤ B選手のケース (専門: 1500m、3000m)
B選手:
「私は入社当時から筋肉量が少なく、それが怪我に繋がりました。怪我後に導入した新しいウエイトトレーニングで体成分だけでなく、走りの安定性も改善させることができました。現在も筋肉量の増加を目標に、食事やトレーニングを調節しています。」

木村コーチ:
「長距離走においては、一概に筋肉量があれば良いというわけではありませんが、まだ身体が未成熟で絶対的な筋肉量の少なさに課題を抱えている女子選手が一定数いるというのも事実です。今回のケースでは筋肉量増加という目標に沿った結果に結びつきましたが、一番の収穫は選手自身がトレーニングによって自分の身体の変化を実感することができたことです。トレーニングに手応えを感じた選手は、私達指導者に言われなくても、自ら考えてトレーニングに向き合うようになりました。このように身体の変化を可視化することは選手のトレーニングへの意欲を向上させ、主体性を育むのに効果的だと感じています。」

また、InBodyの測定結果を蓄積することで得られる気づきもありました。

木村コーチ:
「シーズンオフからオンまでの体成分をモニタリングして気づいたことがあります。ある選手は冬季の鍛錬期に十分なトレーニングを積んでシーズンを迎えました。しかし、シーズン中は試合スケジュールとの兼ね合いで十分なトレーニング時間を確保することができなかった影響からか、徐々に筋肉量が減少する過程が観察されました。常に良いコンディションを維持しながらシーズンを乗り切ることは難しいですが、どのようなトレーニングプログラムを組めば目標の試合に向けて良いコンディションのピークを持っていけるのか、改めて考えるきっかけとなりました。今は鍛錬期・試合準備期・試合期などの期分けごとに筋肉量を増やすことや維持することなど、目的を明確化してウエイトトレーニングの負荷を調整しています。」


選手にとってのInBodyの存在

実際にInBodyをコンディショニングに活用されている3名の選手から、InBodyに関してコメントをいただきました。
▲ 古川 結美選手

古川選手:
「過去に整骨院でInBodyを測定したことはありましたが、当時は体成分を意識した練習はしていませんでした。しかし、現在は監督やコーチらの指導の影響もあり、自分のコンディショニングにInBodyを活用するようになりました。」

▲ 櫻川 響晶選手

櫻川選手:
「私は中でも部位別情報の項目を活用しています。InBodyは部位別の筋肉量が分かるので、下肢筋肉量で左右差が見られた場合はウエイトトレーニングで筋肉量が少ない方の脚を集中的に鍛えるようにしています。」

▲ 下肢筋肉量の左右差を確認

▲ 原田 紋里選手

原田選手:
「自分でもInBodyを定期的に測定することでパフォーマンスが良い時の体成分が何となく分かってきました。今後はベストな状態の体成分を目指して怪我をしない身体づくりをしていきたいです。身体づくりに必要な食事面では、食事を一度にたくさん摂取できないので、小分けにして食べるなど上手く栄養を摂るための工夫をしています。」

更に、チームでは蓄積した測定結果を利用し、パフォーマンスと体成分を関連させた指標づくりの検討も試みています。そのような指標が完成すれば指導者の指導内容に対する説得力は増し、選手は自身のコンディショニングにおける目標として活用することができます。


これからの選手育成

今回ご紹介した選手3名は7月に開催された大会で自己ベストを更新しました。
チームとして11月に開催されるクイーンズ駅伝で上位入賞することを目標に日々練習に励んでいます。今後もInBodyを活用しながらトラック・マラソンで日本を代表する選手を育成し、世界の舞台へ挑戦する選手を輩出したいと考えています。

林田さん:
「選手の目標達成に向けて、体成分結果を基に栄養面の課題をクリアできるように選手一人一人に合った栄養サポートをしたいです。そして日本を代表するような選手になってもらえたら嬉しいです。また、中学・高校の女子ジュニア選手は無月経や疲労骨折、貧血などの問題が取り上げられることがありますが、食事の改善で予防することができます。このような現状を打開するため、チームが取り組んでいる体成分管理や食事内容を公開し、一つのロールモデルとして陸上界に発信していきたいと考えています。」

田中・木村コーチ:
「実業団チームですので目標に向けて結果を出すことはもちろんですが、合わせて人材育成の面でも力を入れていきたいです。私達のチーム方針である ”一人前の陸上選手に、そして一人前の社会人になろう!” にあるように、陸上選手としてだけではなく、一人の社会人として社会に価値を提供できる人材を育成することが、私達コーチ・スタッフのミッションだと考えています。日頃の練習でも、全てを指導者に言われたことしかできない受動的にこなすだけの選手ではなく、自分に必要なものを指導者やInBodyを活用しながら、自主的に考え、自立してコンディショニングができる選手を育成することを指導の軸として置き、そこから社会に通用する人材を育成したいです。」

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神戸労災病院 -フレイル外来の必要性-

機種モデル:InBody720

独立行政法人労働者健康安全機構 神戸労災病院は兵庫県神戸市にある総合病院です。労災病院は働く人々の生活を医療の面から支えるという理念を掲げ、治療・リハビリテーション・職場復帰に至るまで、一貫して高度な専門的医療を提供している他、疾患予防・定期健診などの健康増進活動にも取り組んでいます。

神戸労災病院では、2020年2月から関西圏初となる「フレイル外来」を設置しています。「フレイル」とは日本老年医学会が提唱した用語で、英語の「frailty(フレイルティ=虚弱)」に由来します。高齢期に生理的予備能力が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害・要介護状態・死亡などの転帰に陥りやすい状態です。筋力低下によって動作の俊敏性が失われて転倒のリスクが高まるなどの身体的問題のみならず、認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題もフレイルの概念に含まれます¹⁾。また、フレイルは要介護になる一歩手前の状態を指すため、状態が悪化して要介護にならないように予防・改善していく必要があります。特に最近はコロナ禍の影響で高齢者の閉じこもり・活動量の低下によるフレイル増加が懸念されています。


実習で出会った、病院の管理栄養士

▲ 久永 文さん

栄養管理室・室長の久永 文さんは管理栄養士として各診療科の患者に向けた栄養相談を行いながら、フレイル外来に携わっています。

「実家が飲食店を経営している影響で元々食に興味があり、料理することが好きでした。栄養士の資格を取るために短大へ進学し、卒業後は実家の飲食店を手伝おうと考えていました。しかし、短大の実習で病院に行ったときに食を通して人の健康を担う職業があることを知り、私でも人を救える仕事があることに感動し、そこから病院の管理栄養士を目指すようになりました。」

久永さんは短大卒業後、病院や老人保健施設、健診バスの同行など様々なフィールドを経験し、現職に至ります。
「老人保健施設では高齢者の摂食嚥下、健診バスでは公衆衛生について学ぶことができました。健診バスの同行では健診に来られた方に対して、当日の測定結果をもとに食事面からフィードバックを行っていました。1日に100人近くを測定する中で、多くの測定結果から瞬時にその方の特徴を見抜く必要があり、たくさんのデータから必要な情報を読み取る力はこの時に培われたと思います。」

当時の病院の管理栄養士と言えば、病院内の厨房で慌ただしく病院食を作り、患者と直接言葉を交わすことはほとんどありませんでした。しかし、NSTという考えが広まってチーム医療が発展してからは、管理栄養士も厨房を出て、糖尿病チームや心臓リハビリテーションチームなどに所属することが当たり前になってきました。現在、神戸労災病院には管理栄養士が4名在籍しており、それぞれ複数の病棟やチームを担当しています。


InBodyの導入で発展するチーム医療

▲ 栄養相談室に設置されているInBody720

神戸労災病院は2007年にInBody720を導入、現在は2台の機器を運用しています。InBodyは主に栄養相談や人間ドックで使用されていますが、それだけに留まらず、様々な診療科の患者も測定しています。そのため、月の測定件数は2台合わせて500件を超えることもあり、病院全体にInBody測定が定着しています。

「InBody導入前の栄養相談では、患者さんの評価指標として体重のみを使用していました。しかし、体重のみを使用した栄養相談では体成分の何が変わって体重が変化したかまでは分からず、限界を感じていました。院内のチーム医療が進んで心臓リハビリテーションチームに管理栄養士が正式に加入することになった際、筋肉量や体脂肪量から治療効果を評価できる良い機器はないか探していました。同時期に、系列病院からInBodyが移設されたのがちょうど良いタイミングだったと思います。そこで、私たちから浮腫や筋肉量を評価できるInBodyを使ってみてはどうかとチームに提案しました。InBodyは測定時に痛みがなくて患者に負担がかからない検査なので、評価指標として取り入れやすかったです。」

現在は心臓リハビリテーションだけでなく、院長先生もInBody測定を奨励していることから、禁忌事項であるペースメーカーを埋め込まれている方、妊婦の方※、立位測定が難しい車いすの方を除く患者全員を測定する流れになりつつあります。例えば、心不全で入院される方は➀予定入院時もしくは入院当日➁退院前➂退院後から1回目の外来受診時、の計3回は必ず測定し、退院した後も継続して測定を行います。また、神戸労災病院の人間ドックには、InBody測定が必須項目として組み込まれています。
※妊婦を測定することは可能ですが、担当医師と体調を相談した上で測定する必要があります。

栄養相談室では現在、外来患者・入院患者合わせて約600名に栄養相談を行っています。
「先生が患者さんに栄養相談を処方する場合は、InBody測定を必ずセットにしてくださっています。私たちがInBody測定と栄養相談を行った後は、測定結果用紙とフィードバック内容を先生へ報告する流れになっています。特に循環器の先生はInBodyの結果を参考にしておられ、結果があることで患者さんへの説明がしやすくなるようです。」


全国でも数少ないフレイル外来の開設

2020年2月に開設されたフレイル外来は全国でもまだ数が少なく、神戸労災病院の当科は関西圏初となります。フレイル外来では医師や管理栄養士などの多職種チームが診察やフレイル予防の指導にあたっています。

「フレイル外来の構想は元々あり、以前からサルコペニアに注目して学会などで発表を続けていました。2018年頃から厚生労働省がフレイルについて喚起するようになって当院でもサルコペニアからフレイルにシフトしていくようになりました。フレイルが新聞などで大々的に言われるようになって、フレイル外来の必要性が高まっていると感じ、副院長先生とフレイル外来の開設を検討したのが始まりです。フレイル外来は機能評価や運動処方が必要になるので整形やリハビリが主体になることが多いですが、当院では循環器が主体となって運営しています。」

現在、毎週火・木曜日の午後にフレイル外来を設け、1日に初診2名と再診2名の診察を行っています。コロナ禍の影響で受診人数は予想より伸びていませんが、それでも開設から1年余りで約70名の方が受診しています。初診では「医師の診察」「理学療法士による運動機能評価(10m歩行・TUGテスト・5回椅子立ち上がりテスト・開眼片脚立位など)」「管理栄養士によるInBody計測・握力・オーラルフレイル・栄養相談」を行います。そして、初診から3ヶ月後に管理栄養士が電話で栄養相談を行い、初診から6ヶ月後に医師が病院で診察、この2つのサイクルを継続します。受診者は主に70代の高齢者が多く、約7割が女性です。神戸市近辺から受診される方が多いですが中には大阪から通う方もいます。

「NHKのニュースやパンフレットなどでフレイル外来を知って、受診される方が多いです。地域連携も進めているので、かかりつけの先生から紹介していただくことも増えています。ご家族がご両親・祖父母のことを心配して一緒に受診されたり、旦那さんが奥さんのことを心配してご夫婦で受診されたりするケースもあります。健康志向が高い方は自分から受診されますが、自分がどれくらい弱っているかを知ることはどうしても抵抗があるので、身近な家族から受診を勧めてもらうことが多いです。フレイルは病気の1歩手前の状態です。病院は病気になってから治療を始めることが一般的ですが、その1歩手前の状態から介入していくことで、疾患予防や病気になった時の予後改善に繋がります。私たちは厚生労働省が管轄する ”働く人のための病院” なので、働く人がご両親の介護を理由に離職することを防ぐ必要があります。実際、ご両親の介護による離職率は上がっています。ご両親が病気をせず元気に過ごすことで、お子さんも安心して働くことができます。そういった面で、労災病院にフレイル外来があることの重要性を感じています。」


フレイルチェックとInBody結果用紙の説明

▲ 後期高齢者の質問表(厚生労働省「高齢者の特性を踏まえた保健事業ガイドライン第2版」より引用)

▲ オーラルフレイルのスクリーニング問診表(神奈川県「オーラルフレイルチェック メディカルスタッフが用いるプログラム」より引用)

「栄養相談では、厚生労働省が出しているフレイルチェックシートと神奈川県で発表されているオーラルフレイルチェックシートを使用しています。たくさん質問してしまうと高齢者の方も混乱してしまうので、簡潔に回答できるこれらのシートを使用しています。例えば、オーラルフレイルはお口の健康が低下している状態で、栄養のある食事を咀嚼することが難しくなってフレイルを助長しかねません。そのため、危険性が示された方は先生が歯科医の受診を勧めたり、摂食嚥下に関する指導を行ったりします。また、骨粗鬆症の疑いがある方は院内の骨粗鬆症外来の受診を勧めます。更に、フレイル外来での診断内容(生化学検査、InBody測定結果、栄養・運動評価、骨密度など)をかかりつけの先生へ共有し、フレイルの予防や改善に一緒に取り組んで行くこともあります。」

栄養相談ではInBody結果用紙の説明も行います。受診される方の多くは下肢筋肉量が少なく、転倒のリスクが高くなっているため、特に部位別筋肉量のバランスについて説明します。一方で、立ち上がるときに腕で体を支える・階段で手すりを持つなど腕を使うことが多いせいか、上肢筋肉量は比較的多いのが特徴です。部位別筋肉量のバランスが悪い方は、理学療法士による運動機能評価でも結果が悪い傾向にあります。また、体脂肪率が高い方も多いので、タンパク質を摂らずにお菓子や果物ばかりを食べていないかも確認します。筋肉量の減少と体脂肪率の増加はフレイルの悪化に繋がるので、食事内容の変更や脂肪になりやすい食品などを一緒に説明します。加えて、ECW/TBWの数値を見ながら浮腫の程度も評価します。

「ECW/TBWが標準範囲の0.400を超えていて既往歴から浮腫の疑いがある場合は、浮腫を加味したアドバイスとして、浮腫に繋がりやすい食べ物や体の冷えを予防する方法なども説明しています。浮腫における血液循環や筋肉のポンプ作用については先生や理学療法士さんから説明してもらいます。」


栄養介入による実例紹介

栄養相談でのアドバイスによって、体成分が改善された実例をご紹介します。

ケース➀ 低栄養による極端な痩せ型の72歳女性

※実際の結果用紙とは一部異なります。

初診時、体重34.0kg、BMI13.8と低栄養による極端な痩せ型でした。3年後の測定結果では、依然痩せ型ではありますが体重が1.9kg増加しています。骨格筋量と体脂肪量の変化を確認すると、骨格筋量+2.7kg・体脂肪量-2.2kgと理想的に変化していることが分かります。

「聞き取り調査より、この方はベジタリアンであることが分かりました。食事は1日2食で、主なタンパク源は大豆製品、金時豆や小豆など炭水化物も多く含む食品でした。そこで豆乳ヨーグルトにきなこを入れて、少量ずつ・複数回に分けて摂っていただくことを提案しました。」

▲ 上:初診の結果用紙、下:3年後の結果用紙

細胞内外の水分バランスを表すECW/TBWは、浮腫起因の細胞外水分量の増加によって水分バランスが崩れて高くなりますが、加齢や低栄養によって筋肉量が減少しても、細胞内水分量の減少によって高くなる場合があります。この女性は浮腫+筋肉量の減少によって、ECW/TBWがより一層高くなっています。しかし、3年後の測定結果を見ると全身ECW/TBWが0.425→0.407に低下しており、水分バランスの崩れが治療や栄養介入の効果によって改善していることが確認できます。
※ECW/TBWについては、トピック「体水分均衡の特徴と重要性」もご参照ください。

▲ 左:初診の結果用紙、右:3年後の結果用紙

ケース➁ 肥満の43歳男性

※実際の結果用紙とは一部異なります。

標準体重(68.1kg)※だけで判断すると過体重と判断されます。しかし、体脂肪量だけでなく、骨格筋量も多い方なので、この方の適正体重は約87kgであることが分かります(結果用紙右下「体重調節」)。筋肉量を維持しつつ、体脂肪量を落としていく指導を行っていった結果、約8ヶ月で-9.6kgの減量に成功しました。骨格筋量と体脂肪量の変化を確認すると、骨格筋量-1.7kg・体脂肪量-6.7kgとなっており、体脂肪量を中心に減量できていることが分かります。

「学生時代はスポーツマンだったそうです。社会人になってから運動量は減少しましたが食事量は変わっていなかったため、肥満に繋がってしまいました。炭酸飲料やジュース、コーヒーなどを好み、毎日飲んでいました。飲料分だけで1日180g相当の砂糖を摂っていることになります。そこで、カロリーゼロの飲料に変更することをお願いしました。また、元々の骨格筋量は多いので、簡単な体操やストレッチをお勧めしました。」

肥満の方は受診してから6ヶ月が継続・離脱の転機と言われており、減量を頑張っていても6ヶ月を超えると1人ではどうしても減量を諦めてしまうことが多いです。従って、定期的な受診を促してフォローを続けることで、継続して減量に取り組むことができます。
※InBodyの標準体重=身長(m)×身長(m)×BMI(男性22/女性21)


▲ 上:初診の結果用紙、下:8ヶ月後の結果用紙

「体重が変わっていないからといって、頑張った効果がなかったとは言い切れません。例えば、筋肉量が1kg増加して体脂肪量が1kg減少していたのなら、トータルの体重が変化していなくても十分効果があったと言えます。定期的にInBodyを測定して数値の推移を確認することは、先生や私たちが治療の効果を確認する目的もありますが、一番の目的は患者さんが自分の体の変化をご自身で確認することです。InBodyは患者さんと数値の変化に対する感情を共有できる関係づくりにも役立っています。」


終わりに

▲ 栄養相談室の皆様

「私は『栄養指導』という言葉があまり好きではなく、できる限り『栄養相談』という言葉を使うようにしています。指導ではなく悩み事を聞く、相談を気軽にできる立場でありたいという想いがあるからです。『栄養指導』だと、来られる方のハードルが高くなって、厳しいことを言われてしまうのではないかと心配される方が少なからずいらっしゃると思います。そして、栄養相談は検査当日に受けていただくのが大事だと思います。検査結果を聞いて自分の体に危機感を覚えているうちに栄養相談を受けていただくと、健康意識がより一層高まります。『今日はなんで栄養相談がないのですか?』『栄養相談を入れてください!』と、逆に患者さんからご指名をいただくことも多いです。それだけ患者さん自身が栄養面について積極的に考えてくださっていると、私たちもとてもやりがいを感じます。」
取材中にも、外来に来られていた方が少し話をするためにふらっと栄養相談室に立ち寄られたシーンがあり、普段から気軽に相談できる温かい雰囲気作りをされていることが伺えました。

「体力が落ちたとお悩みの高齢者の方がいらっしゃいましたら、悩まずにフレイル外来を受診してほしいです。最初は自分の評価を聞いて落ち込むかもしれませんが、フレイルは1回受診するだけで解決する問題ではないので、継続して受診していただきたいです。定年後の第二の生活を豊かに過ごせるよう、少しでも気になる症状があれば受診してほしいと思っています。最近は社会的フレイルにも注目が集まっているので、お話しに来てくれることが社会的フレイルの予防にも繋がればと思います。」

現在、フレイル外来での全検査項目とそれについての評価やアドバイスを記載したフレイル外来の総合評価シートを作成しています。これによってチーム全体で患者にアプローチできるようになり、受診された方にも測定結果が理解しやすくなります。また、コロナ禍が収まったら、食事をしながら栄養や運動の話を聞いてもらうランチョンセミナーも検討されています。更に、フレイル外来をセンター化しフレイル入院も予定しています。

「今後はがんや化学療法にも関わっていきたいと考えています。投薬治療中の副作用に対して、こういったものだったら食べやすいなど、少しでも栄養を摂れるようにアドバイスができたらと思います。悪液質と骨格筋量の関係や、腸内環境改善による自己免疫の向上などにも興味があります。これから栄養介入は勿論、治療やリハビリの効果をInBodyで測定・精査することで、管理栄養士が活躍できる場が更に広がってくれると嬉しいです。」

 

参考文献
1. 日本老年医学会, 「フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント」

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ゆうき内科・スポーツ内科 -ぜひ知ってほしいスポーツ内科疾患-

機種モデル:InBody470

ゆうき内科・スポーツ内科は大阪府枚方市にあるクリニックです。患者様から「丁寧にお聞きすること」をモットーに、2019年12月に開院されました。本院には一般内科だけでなく、診療科では珍しい「スポーツ内科」があります。スポーツ内科とは、運動・スポーツにより生じる内科的な問題の予防・治療を行う分野です。アスリートや日頃運動を行っている方が抱える内科的な問題を解決し、コンディショニングやパフォーマンス向上に繋げ、長く競技を続けられるようサポートしています。院長の田中 祐貴先生は日本では数少ないスポーツ内科医です。


スポーツ内科との出会い

田中先生:
「スポーツ内科との出会いは神戸大学医学部5年生での総合内科の実習でした。開業医のクリニックに振り分けられて実習を行うのですが、たまたま配属された賀来医院(兵庫県神戸市)の院長が当時は大変珍しいスポーツ内科を診ておられました。アスリート特有の貧血や喘息などの不調を訴える選手がたくさん受診されていて、待ち時間は2時間を超えることも多い、とても頼りにされている先生でした。今もそうですが、スポーツと医学という言葉を聞いて真っ先に思い浮かべるのは整形外科だと思いますし、私も当時はそう思っていました。中学から卓球やランニングに取り組んでいたこともあり、大好きなスポーツと絡めながら仕事ができないかと漠然とした思いがあったため、その実習先でスポーツ内科の存在を初めて知ったときは大きな衝撃を受けました。」

約35年前からスポーツ内科の診察を始められた賀来先生は、国立スポーツ科学センターでセンター長を務められていた川原貴先生と共に、スポーツ内科医の第一人者として知られています。スポーツ貧血やマラソン選手に関連する論文や血液検査データなどの引用元を見てみると、賀来先生の名前を見つけることが出来ます。

▲ 田中 祐貴先生

田中先生は賀来先生から受けた大きなインスピレーションが脳裏に残りながらも、一旦は元々専攻していた腎臓内科の道に進みました。医学部卒業後、一般内科・腎臓内科で5年勤務していましたがスポーツ内科への思いが断ち切れず、スポーツ内科を専門に取り組むため、大久保病院や京都九条病院、東朋病院などでスポーツ内科医として経験を積み、2019年12月にゆうき内科・スポーツ内科を開院しました。

田中先生:
「例えば、喘息持ちの子どもが『部活をやりたい』と受診した際、スポーツ内科的な観点を持たない先生は、喘息を理由に運動を禁止してしまうケースがあります。しかし、現代の医学では重症な喘息でない限り、吸入などの治療で喘息症状をうまくコントロールしながら運動をした方が健全な成長・発育に繋がるというエビデンスもあり、スポーツ内科的な観点を持っている場合はしっかりサポートしながら、大好きな運動を続けさせてあげられます。」


スポーツ内科における診察内容

▲ 待合室に設置されているInBody470とBSM370(自動身長体重計)

田中先生は以前勤務していた病院のスポーツ内科でもInBodyを活用したことがあり、ゆうき内科・スポーツ内科の開院時にInBody470とBSM370を導入しました。

田中先生:
「開業するならInBodyは必須だと思っていました。アスリートは、自身の体成分を確認した上でどんな体を目指すのか目標設定が必要です。当院のスポーツ内科では、部活動に励む中高生や大学生、実業団アスリートをよく診ています。種目はサッカーや競泳、バスケ、バレー、テニスなど様々ですが、陸上長距離が圧倒的に多いです。特に陸上選手は生身の体で勝負するので、体成分や貧血の有無が競技成績に直結します。今まで走れていたペースで走ることができない、ライバルに差をつけられるようになったといったパフォーマンスの低下が現れ、選手自身が自分の不調に気付き来院されることが多いです。」

ゆうき内科・スポーツ内科では待合室にInBodyを設置しており、受診に来られた方は無料で測定できます。基本的にはスタッフが測定補助につきます。月に100~150名の方が “より良い身体やコンディション向上を目指して” ”フレイル予防のために” “生活習慣病改善のために” など、様々な目的で測定を行っています。

▲ メディカルチェックの3コース

また、スポーツ内科で行っているチームサポートのメディカルチェックは、3つのプランが用意されています。特徴的なのは、全てのプランにInBody測定と血液検査が組み込まれている点です。

田中先生:
「チーム単位で選手のサポートを行う場合、InBody測定と血液検査を行うことで、コストを抑えながら、とても多くの情報を得ることができます。InBodyは針を体に刺す必要もなく、測定時間も長くかからず、非医療従事者でも簡単に測定介助できることから、とても手軽な検査の一つである上に、高い精度で体成分を測定できるので、検査からInBodyは外せません。スポーツ内科医の間でもInBodyは必須であるという共通認識があります。また、スポーツ内科を受診するアスリートは陸上の長距離選手をはじめとした持久系の選手が多く、スポーツ内科疾患で最も多いスポーツ貧血が主な問題として現れます。スポーツ貧血は息切れや動悸などの貧血症状から見つかることが多いですが、無症状で発症するケースもあるので血液検査によってヘモグロビンやフェリチンを確認する必要があります。」

田中先生:
「ある強豪高校陸上部には年3回InBody測定と血液検査を出張で実施しています。検査の結果、貧血など何かしらの問題が見つかった選手は当院に通院してもらい、定期的にフォローします。その成果かは分かりませんが、昨年11月の女子駅伝大会で大阪2位まで躍進しました。InBody測定や血液検査の結果から自分の体の状態を知ることで、コンディショニングやパフォーマンス向上に対する高い意識付けができた結果だと思います。」

他の強豪高校からもチームサポートの依頼が増えています。ゆうき内科・スポーツ内科ではInBodyを2ヶ月に1回測定するように推奨していますが、大学生や実業団レベルで自分の体をもっと細かく知りたいと希望する選手には、毎月InBody測定と血液検査を行うこともあります。


代表的なスポーツ内科疾患

スポーツ医学と聞くとスポーツ整形外科を思い浮かべることが多いと思いますが、実際には内科的な要因でアスリート・運動愛好家が何らかの不調を抱えていることは珍しくありません。ここに「スポーツ内科」の出番があります。日本スポーツ内科学会で紹介されている主なスポーツ内科疾患は次の4つです。

➤スポーツ貧血
スポーツ内科で最も多い疾患です。スポーツ貧血の有無は血中のヘモグロビン値を確認します。その原因はいくつかに分かれますが、一番多いのが体内の鉄分が不足して発症する鉄欠乏性の貧血です。一方、鉄分の摂取量は足りていても、運動で消費したエネルギーに対して食事から摂取したエネルギーが不足すると起こる貧血もあります。この場合は血液検査の結果とスポーツ栄養士による食事内容の評価を組み合わせて確認するため、スポーツ内科とスポーツ栄養には密接な関わりが必要となります。スポーツ栄養士はInBodyで測定した除脂肪量なども加味した上で、その方に必要な摂取エネルギーを算出します。また、最近注目されているのが亜鉛欠乏性の貧血で、大学生以上の陸上長距離選手に多く見られます。貧血=鉄不足と決めつけて安易に鉄剤を投与してしまうと、鉄過剰が発生し悪影響を及ぼしてしまうこともあります。スポーツ内科とスポーツ栄養の両方からアプローチすることで、スポーツ貧血の原因を特定し、各個人に適した治療方針を立てることが重要です。

➤気管支喘息・運動誘発性喘息
喘息といえば夜間や早朝に慢性的な咳が続くのをイメージする人も多いかもしれませんが、普段は咳が出ず、運動すると咳が止まらなくなるアスリート・運動愛好家もいます。これが運動誘発性喘息です。エルゴメーターによる喘息運動負荷試験を行うことで運動誘発性喘息の有無や程度を確認します。日頃の練習内容や競技レベルなどを加味して、治療方法を選択します。

▲ 喘息運動負荷試験の様子

➤女性アスリートの3主徴(エネルギー不足・無月経・骨粗鬆症)
無月経は女性アスリートに一番多い問題です。InBodyで測定したBMI・体脂肪率は無月経の重要な評価項目になります。問診内容や体成分データ、血中のエストロゲン値などから現状を把握し治療方針を決定します。エストロゲンは骨を強くする働きもあるので、エストロゲンの減少は月経不順・無月経・骨粗鬆症・疲労骨折などのリスクを高めます。女性アスリートの3主徴の治療にはエネルギー不足の改善が必要不可欠のため、消費エネルギーと摂取エネルギーのバランスがしっかり取れているのか確認します。その上で、女性ホルモンが足りていない場合は女性ホルモン補充療法を行うこともあります。適切な栄養管理が行われていれば、多くの場合、スポーツ内科疾患を含む体の不調を予防することが出来ます。

➤オーバートレーニング症候群
通常、運動を行って疲労が溜まるとパフォーマンスは低下しますが、適切な休息を取ると超回復が起こり、競技力は向上します。しかし、体が十分回復する前に更に運動を行うと、回復が追い付かずにパフォーマンスはどんどん低下してしまいます。この状態をオーバートレーニング症候群と言い、長期間のハードトレーニング・トレーニングにおけるパフォーマンスの低下・日常生活での疲労症状の3つに該当する人はオーバートレーニング症候群を疑うきっかけになります。疲労症状としては、倦怠感・息切れ・微熱などの様々な身体症状や、不眠・焦りなどの精神症状が見られます。選手や指導者の中にはオーバートレーニング症候群を知らない方もいます。パフォーマンス低下の焦りから、自分がオーバートレーニング症候群かどうか分からないまま更に追い込んでトレーニングをしてしまい、悪循環に陥る場合もあります。

田中先生:
「アスリートが内科的な要因で不調に陥る可能性があることや、スポーツ内科疾患として、貧血や無月経、オーバートレーニング症候群などがあることを啓発する必要があります。通常の怪我は痛みを伴うので病院で治療を受けることを考えますが、貧血や無月経などのスポーツ内科疾患は痛みなどのわかりやすい症状がないことが多いです。痛みがないのに自身の不調を感じたとき、スポーツ内科を受診しようという考えが広まるような活動をしたいと思います。」


日本スポーツ内科学会の設立

スポーツ内科の知名度を上げるために、田中先生は2019年3月に日本スポーツ内科学会を立ち上げました。【スポーツ整形】【スポーツ栄養】といった言葉が世間に広まっていく一方で、スポーツ内科という言葉はなかなか浸透していません。

田中先生:
「スポーツ整形学会もスポーツ栄養学会も既に存在しているにも関わらず、なぜスポーツ内科の学会がないのかという話が挙がりました。学会が出来るとそこに興味のある先生が集まり、情報交換や啓発活動がより活発になります。そこで、有志を募って学会を立ち上げました。今はコロナ禍もあり、活動が思うようにできていませんが、スポーツ内科の啓発活動・スポーツ内科医のネットワーク構築・多職種連携(栄養士・トレーナーなど)を目標にしています。」

コロナ禍以前は、全国でスポーツ内科を周知するための講演会を毎月行っており、学会会員数も少しずつ増えています。

田中先生:
「スポーツ内科の看板を掲げずにスポーツ内科疾患を診ている先生もいらっしゃるかもしれませんが、スポーツ内科を専門として活動されている先生は、実は全国に10名ほどしかいません。当面の目標は各都道府県にスポーツ内科医を1人配置する体制作りです。合宿先や遠征先での環境変化による喘息の悪化が起きるケースがあるため、現地のスポーツ内科医と連携を取り、どこへ行っても適切な医療を受けられるような体制を作れたらと考えています。」


スポーツ栄養とは

▲ 山本 尚代さん

スポーツ内科疾患の治療に欠かせないのがスポーツ栄養による食事サポートです。ゆうき内科・スポーツ内科には管理栄養士が2名在籍しており、その1人の山本 尚代さんはスポーツ栄養相談を担当しています。山本さんは同志社女子大学在籍時からInBodyを使用しており、InBodyの細かい項目まで精通しています。管理栄養士にはそれぞれ得意分野があり、糖尿病に強い方、高齢者に強い方、食育に強い方がいますが、山本さんはアスリートの栄養サポートに強いスポーツ栄養士です。

山本さん:
「元々、予防栄養の分野に興味があり、スポーツ栄養にも関われたらと考えていました。学生時代はInBodyを用いて、大学ボート部の栄養サポートをしていました。大学卒業後、病院、Bリーグのチーム食堂での管理栄養士業務を経て、現在は当院の常駐スポーツ栄養士として勤務する傍ら、個人的に依頼をいただくアスリートの栄養サポートなども行っております。」

ゆうき内科・スポーツ内科では、スポーツ内科を受診された方へスポーツ栄養相談も併せて受診することを推奨しています。田中先生の診察と普段の食事内容のヒアリングなどを基に、山本さんが一人一人に合わせた栄養相談を行っており、一般内科でも生活習慣病の方や高齢者の方への栄養相談を行っています。一般内科とスポーツ内科で合わせて毎月40~50名の方が栄養相談に来られます。

▲ カウンセリング風景

スポーツ栄養相談を受けるのは、部活動に参加している学生や実業団の選手が多いです。最近は熱心な市民ランナーの方々からの栄養相談も増えています。InBodyの測定結果や普段食べている食事、練習量、生活リズムなどをヒアリングして、その人に適した食事・生活習慣のアドバイスを行います。その人の代謝能力や1回に食べられる量なども関わってくるので、食事を小分けにしたり、間食を追加したりするなど、本人が実践しやすいアドバイスを心掛けています。

山本さん:
「栄養相談を行う際、InBodyの結果用紙で一番使用するのは各項目の履歴です。体重・筋肉量・体脂肪率がどのように変化しているか経過を確認していただくことが大事だと思います。2回目以降の受診の方は各測定値のおおよその変動が予想できるので、これらの変化に対して、本人がどう思っているか聞くようにしています。例えば、筋肉量が減った場合、先日怪我をして練習量が減ってしまったからと理由が分かればいいのですが、本人に思い当たる理由がないときは一緒にその期間の食事内容・運動量・生活環境などを振り返り、見直します。また、結果用紙の体水分量・タンパク質量・ミネラル量は実際に食べた栄養素を意味するものではなく、バランスの良い食事・適切な運動・十分な休息などの生活習慣すべてが影響していると説明するようにしています。学生の場合、保護者の方と来院されることが多く、ご家庭での食事管理は保護者の方の協力が必須のため、一緒に栄養相談を受けていただきます。ただ、「食べる」という行為は本人の意思が必要不可欠で、また将来的にも自ら考え選択できる選手が強くなるだろうとの考えから、保護者の方に頼り過ぎないよう本人に目的・目標のためにどう行動すべきなのか考えてもらう時間にできるよう心掛けています。」


▲ 結果用紙下部の体成分履歴に表示される直近8件のデータ

山本さん:
「肥満の方は体質改善のモチベーションを維持していただくためにも、私から田中先生へ次回の受診タイミングを提案することもあります。以前、体幹体脂肪量が200%以上と標準範囲を大きく上回る方が栄養相談を受けてくださいましたが、その方は3ヶ月間ほどで体幹体脂肪量を標準範囲内の120%(InBodyの体脂肪量の標準範囲は80~160%)まで落としていました。健康習慣の取り組みを続けられただけでなく、結果が客観的な数値でも確認でき喜んでいらっしゃいました。」

これまで田中先生が一緒に仕事をされてきたスポーツ内科医や管理栄養士、スタッフの方々は定期的な体成分測定の重要性を理解しています。InBodyの測定データと血液検査など様々な情報を組み合わせて総合的に判断することがより良いサポートに繋がると認識しています。


終わりに

田中先生は、スポーツ内科とスポーツ栄養、スポーツ整形、婦人科との連携を理想とされています。

田中先生:
「例えば、普段から無月経の女性アスリートが疲労骨折してスポーツ整形の受診に来ると、まずは怪我の程度や手術の必要性、今後のリハビリの計画などを確認します。しかし、疲労骨折の根本的な原因は体脂肪量の過度な不足による女性ホルモンの減少、無月経である場合は少なくありません。つまり、スポーツ整形の受診だけではなく、スポーツ内科や婦人科的な血液検査・診察、スポーツ栄養的なエネルギー摂取量の評価なども不可欠と言えます。一つの病院の中にこれらの診療科がすべて揃い、そこで治療を完結できるようにすることが私の最終的な理想です。スポーツ整形を受診しに来た女性アスリートに対しては、月経の有無やエネルギー不足が怪我の背景にあるのではないかと疑う視点を持っていただければ良いのですが、そこまでの視点を持っている医師は大変少ないです。スポーツ内科では、疲労骨折をはじめとした怪我が起きないように予防介入することも重要です。まずはスポーツ整形やスポーツ内科、婦人科が適切に連携をとって、アスリートを一緒にサポートできる関係を築けたらと考えています。」

▲ 田中先生の思い描く理想の連携像

山本さん:
「瞬時に体成分を測定できることは、栄養相談を行う上でとても心強いです。アスリートの中にはチームの決め事として体重制限を課されている選手もいて、体重が増えたことをとても気にする方が多いですが、InBodyでは何が増えて体重が増加したのか確認することができます。中高生は身長が伸びて体が完成してくる時期なので、それも踏まえて栄養相談を行っていかなければなりません。
トップアスリートが食事を気にすることは当たり前になっていますが、これはスポーツを行う人全員に生涯の健康のためにも意識していただきたいです。当院では、スポーツを行う人であれば誰でもサポートできる体制を整えていますので、何かあれば是非私たちに相談してほしいと思います。」

田中先生:
「私は『自分の体を知ること』が大事だと考えています。InBodyは自分の体を知って目標とする体を意識し、スポーツ内科的なコンディション改善に取り組むための良いツールです。私が講演を行う時には必ず、『自分の体に興味を持つこと』を伝えています。それが自己管理能力にも繋がりますし、これからもっと上を目指すのであれば、必要不可欠な能力になります。また、スポーツに限らず、これからの人生にきっと役立つと思います。」

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ルネサンス -健康経営の推進における提案とサポート-

機種モデル:InBody430

株式会社ルネサンスは全国展開の総合型スポーツクラブを中核に、自治体や法人を対象とした健康づくり支援・介護リハビリ支援・海外市場への参画など様々な事業を展開する会社です。特に健康づくり支援では、全国の企業・健康保険組合・共済組合を対象に、健康経営の実践を支援しています。創業当時からTHP(トータルヘルスプロモーション)の支援として企業向けの体力測定などの健康支援事業を立ち上げ、現在ではヘルスケア事業として1,300社を超える企業のニーズに応じて出張プログラム・イベントの開催や、健康経営の課題解決・健康経営推進者養成研修などを行っています。

ルネサンスは企業理念である“生きがい創造企業”のもと各事業を推進しており、その実現には従業員の心身の健康が前提となる考えから従業員の健康づくりも積極的に取り組んでいます。このような取り組みが認められ、ルネサンスは経済産業省と日本健康会議が共同で選定する「健康経営優良法人(ホワイト500)」に4年連続表彰されています。
▲ 健康経営優良法人(ホワイト500)


目線を合わせた健康づくり支援

▲ 関 芙美子さん

健康経営推進部 健康経営ソリューションチームに所属している関 芙美子さんは、企業・健康保険組合・共済組合などの健康づくり支援に従事しています。2007年に株式会社ルネサンスに入社した関さんは、最初はスポーツクラブのフロント部門に配属されましたが、入社当時から保有していた管理栄養士の資格を活かし、パーソナルトレーニングで食事指導を行っていました。その後、2010年にヘルスケア企画部に異動し、特定保健指導業務の推進やヘルスケア事業関連のプログラム発展に努めてきました。現在は市場のニーズに合わせて、企業・健康保険組合・共済組合を対象に健康経営のプランニングや健康づくりの実行支援を行っています。また、関さんは管理栄養士以外に、第一種衛生管理者・健康経営アドバイザー・健康マスター普及認定講師の資格を保有しており、これらの知識を駆使して企業のニーズを超える健康づくりの提案を行っています。

※第一種衛生管理者: 常時50名以上の労働者が働く事業場の衛生管理者が持つ資格
※健康経営アドバイザー: 健康経営の必要性を普及させて実施する推進者
※健康マスター・普及認定講師: 健康に関する幅広い知識を活用し、地域や企業向けに「健康を語る講師」として活動できる資格

「健康づくり支援では従業員の健康管理に携わる方を相手に、最適なプランを提案する必要があります。その際、相手と同じような資格や、健康経営に特化した知識を持つことで、相手の立場から本当に必要としているプランを案内することができます。」


無関心層に対する健康意識の向上

経済産業省が推進している健康経営は、健康経営銘柄や健康経営優良法人認定制度などが創設されてから年々関心が高まっています。このような現状の中、健康づくり支援では各法人が抱える様々な健康課題の中でも主に生活習慣病・メンタルヘルス・労働災害に特化したプログラムを提供しています。プログラムは➀メタボ予防・身体機能改善・メンタル強化・安全衛生などを目的とする気軽な運動実技、➁メタボリックシンドローム・メンタルヘルス・働き方などに関するセミナー、➂身体機能・血液循環・ストレスなどを調べる測定、の3つのカテゴリーが用意されており、各カテゴリーのプログラムを組み合わせることで更に健康管理の効果を高めることができます。また、運動実技とセミナーはオン・オフラインどちらでも開催でき、企業の要望に合わせて提供しています。
▲ リラックスできるヨガの実技運動

測定プログラムの中にはInBodyによる体成分測定があります。ルネサンスは2002年9月から据え置き型のInBody3.2を導入していましたが、ヘルスケア事業は訪問指導が必要とされるため持ち運び可能な機器の導入が必要でした。そして、運搬の安全性及び測定の正確性の条件に最も適した装置を検討した結果、2010年4月にInBody430を導入し、現在は計10台を運用しながら全国各地で測定会を行っています。

「InBodyは無関心層の健康意識を高めることに長けています。健康診断は、受診回数が年1回しかなく結果の通知まで時間がかかります。一方、InBodyはその場で結果が確認でき行動変化を促しやすい上に、測定方法も簡単なので誰でも気軽に参加できます。また、健診では見えない従業員の身体状況をデータで捉えることができ、健康経営の打ち手を決めるためにInBody測定を導入し、経年変化を捉えるために毎年実施している企業も多々あります。」

▲ InBody測定の様子

InBody測定プログラムは、数値で身体状態が分かり、数値や嗜好をもとに専門スタッフから栄養・運動関連のアドバイスをもらえるため、健康意識に対する気づきや動機づけに効果的です。特に、InBody430の「骨格筋・脂肪」や「体型チェック」結果は視覚的に分かりやすく、参加者の関心が高い項目です。

▲ 骨格筋・脂肪は体重に対する筋肉と脂肪のバランスを評価


▲ 体型チェックはBMIと体脂肪率を組み合わせて体型を評価


健康経営推進のための豊富なサポート

健康づくり支援の1つにスポーツクラブ ルネサンスの法人会員契約制度があります。全国に100クラブ以上を展開しているので、会員は職場や自宅に近いクラブなど自由に選べる便利さと、自分の利用頻度やライフスタイルに合わせてクラブの利用プランを選択・変更できるため、利用継続しやすい特徴があります。加えて、法人は利用料金の補助もでき、従業員の健康づくりを更に推進することが可能です。

対象となる法人の従業員はスポーツクラブ ルネサンスにお得な価格で通いながら、充実したサポートを受けられます。スポーツクラブ ルネサンスの入会時には、各施設に設置されているInBodyで筋肉量・体脂肪量などを測定し、その結果を基にカウンセリングを行います。その後も利用者の希望に応じて1ヶ月間隔の測定及びカウンセリングを実施しており、トレーニングの効果を数値で確認できるのでモチベーションもあがり継続していける環境が整っています。

日常の食生活や運動に関する支援はトレーナーからのみではなく、スポーツクラブ会員が無料で使用できるアプリ「カロママ プラス」からも受けることができます。「メタボ対策」「低栄養対策」「ほどよく筋肉&引き締め」など9つの課題別コースから選択し、毎日の食事・運動・ヘルスデータを記録することで、AI管理栄養士のアドバイスがもらえます。

「ルネサンスはホスピタリティマインド(心からのおもてなし)を何よりも大切に考えており、ホスピタリティを啓発するスタッフは、NPO法人日本ホスピタリティ推進協会で認定されたホスピタリティ・コーディネーターによる教育を受けます。そのため、ルネサンスのスポーツクラブにはホスピタリティマインドを持って一人一人の会員に寄り添えるスタッフが多く在籍し、運動習慣がない人でも安心して始められ、続けていけるサポート体制を整えています。」

▲ スポーツクラブ ルネサンスのスタッフがアプリ「カロママ プラス」を使用して説明している様子

こうした従業員自らの健康づくりを支援する他に、法人向けの健康づくり支援では、従業員の健康リテラシーを高め、健康づくりの実践のきっかけを作り、日々の生活での健康づくりを支援して継続する、という一連のサービスを提供しています。例えば、セルフケアによる健康管理を実現させたい企業に対しては、食事を含む日々の健康状態を可視化できるアプリ「カロママ プラス」を提供し、セルフケアを浸透させる環境づくりを手助けしてきました。アプリに入力されたデータは、利用者本人の健康づくりだけでなく、従業員の食事内容・歩数・運動状況などの生活習慣の動向を把握し、健康経営の施策に役立てることができます。また、メタボ対象者の削減に取り組む企業に対しては、食事・睡眠・運動のセミナーを開催し、受講後はスポーツクラブのパーソナルトレーニングで運動を支援してきました。このように多様なサービスを組み合わせ、具体的な健康行動を体験・実行してもらうことで、各企業の課題を解決していけることが、ルネサンスが健康経営のパートナーとして選ばれ続ける理由です。


企業理念の実現に向けた成長

最近はコロナウイルスの影響で在宅勤務が推奨されるようになり、運動不足による体重増加やメンタル不調の健康課題による問い合わせが増えています。このような現状の中で、健康づくり支援はコロナ禍でも対応できる仕組みを早くから取り入れていました。従来、セミナーや運動実技プログラムはオフラインで行われていましたが、受講形態をオン・オフラインの両方から選択できるようにし、オフラインのプログラムを安全に開催するために感染対策のガイドラインも作成しています。他にも、オンデマンド・YouTube・スポーツクラブ会員向けアプリ「Myルネサンス」でオフィスエクササイズ・ストレッチ・スポーツクラブでのレッスン動画の配信や、自宅でスポーツクラブのレッスンにリアルタイムで参加できるオンラインライブストリームなど、遠隔でできるサービスの幅を広げており、社会の情勢やニーズの変化に適応するサービスを発展させています。

「プログラムの終了後には毎回アンケートを行っており、“短時間のカウンセリングでも健康意識が変化した” “良い点を褒めてくれるのでやる気に繋がった” などのお声をいただくと嬉しい気持ちになります。」


InBodyを活用した新たな仕組み作りを今後の課題の一つに挙げています。
「以前グループインタビューを実施した際、InBodyは利用者から好評をいただいていることがわかりました。体の中身の可視化は見たくない現実ではありますが、やはり健康管理の動機づけに役立つ万能なツールだと感じました。健康づくり支援においてInBodyは従業員の健康改善に寄与しており、測定者自身のモチベーション向上に繋がっています。今後はそれに加えて、測定をしていない従業員も巻き込んで全体のモチベーションに働きかけるような仕組み作りを検討しています。」

「現在、ルネサンスはスポーツクラブの運営を核としている会社ですが、様々な事業の取り組みを通して社会課題を解決する “スポーツと健康のソリューションカンパニー” を目指しています。今後も企業理念の実現に向けて、より多くの人たちが健康で幸せな人生を送っていただけるようお手伝いを続けていきたいと考えています。」

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紀の川市役所:後編 -フレイル予防における市役所でのInBody活用-

機種モデル:InBody470

この取材の前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「紀の川市役所 前編


コロナだからこそ始まった、高齢者の社会参加へのサポート

コロナウイルスの影響を鑑みて、2020年の集会所での活動は4~6月の3ヶ月間、自粛を要請せざるを得ませんでした。7月から順次再開していますが、集会所によっては自粛を継続しているところもあり、現在も約20ヶ所で活動を休止しています。コロナ禍で活動が制限される中、自宅に籠りがちな高齢者へどうやってアプローチすべきか考えた結果、自宅でできる体操の動画を新たに作成することになりました。

田村さん:
「元々、40分ほどのてくてく体操を理学療法士がサポートしながら地域の皆様に行っていただくことが前提だったので、一般向けの動画を作成することは考えていませんでした。しかし、コロナ禍で体操活動の自粛をお願いせざるを得ない状況になり、家に閉じこもっている方に対して何かできることはないかと考えた際、理学療法士に提案されたのが『おうちでてくてく体操』でした。従来のてくてく体操は40分くらい動き続ける内容なので、自宅で1人だけで行うのは難しいです。どうにかして少しの時間でも気軽に楽しく運動してほしいという思いがありました。」

和歌山県と地元テレビ局(テレビ和歌山)の協力を受けて撮影された「おうちでてくてく体操」の映像は、2020年5月から7月末まで平日午後0:54~0:58の間に、県内で放映されました。作成された動画は紀の川市のYouTubeチャンネルでも見ることができますが、DVDや紹介冊子の提供依頼も多く寄せられています。

大井さん:
「コロナ禍では、どうしても生活が不活発になり、運動しない方が増えてしまいます。そういった方に対して、運動するきっかけ作りをしたかったです。例えば、NHKでも体操番組は毎日流れていますが、午前中にNHK、お昼に私たちの体操、また夕方にNHK、といったように運動を行うきっかけを増やすことが大切だと思いました。また、昨年より全国でも珍しい理学療法士と行政の関わりをYouTubeで紹介していたこともあり、今回もYouTubeを活用してみようという流れになりました。」

▲紀の川市のYouTubeチャンネルで公開されている「おうちでてくてく体操」

大井さん:
「毎週参加していたてくてく体操に愛着を持っていた方々が、コロナをきっかけに活動できなくなったことで、健康被害や、私たち関係者から『ほったらかされているんじゃないか』と孤独や先行きの不安を感じた方がとても多かったようです。テレビ放映を行うことで『1人じゃないよ』」『私たちは気にかけているよ』という私たちの想いが伝わり、とても嬉しかったと、再開後の自主運動グループでたくさん声をいただきました。また、自分たちが普段やっている体操がテレビで放映されてとても誇らしかったという声もいただきました。コロナ禍で活動が難しい時期ではありましたが、新しく体操を作って良かったと思います。」

また、コロナ禍で閉じこもりがちとなっている方の外出のきっかけを作る取り組みとして、2020年9月から始めたのが移動カフェ「ひなたぼっこ」です。

▲ 移動カフェ「ひなたぼっこ」で集まって談笑、後ろの軽トラックで買い物ができます

コロナ禍の中、民間のバス会社から移動スーパーを始めるにあたり、地域のために何か貢献できることはないかと市役所に相談が寄せられました。生活支援に関するアンケートでも『見守り・声かけを強化してほしい』という声が多く、検討を重ね、お楽しみ要素でカフェを、生活のご支援でお買い物のできる集い場事業を企画しました。また、コーヒーなどの飲料は無償で提供いただけることとなり、包括連携協定を締結しました。身近な地域から短時間ですが、人が集い、見守りや声かけに繋がっています。市役所に寄せられる民間事業者や市民の声に耳を傾けて、点と点を繋ぎ合わせることでニーズをしっかりと具現化できることがわかった取り組みと言えます。この移動カフェは、てくてく体操に参加されている方もそうでない方も交流や買い物目的で集まり、そこで新しい繋がりも生まれています。

田村さん:
「ご近所さんのはずなのに、『久しぶりやね~』と話している姿を見て、不思議な感じがしました。体操を行っている集会所でも、移動カフェという違う形で回ることでまた別のコミュニティが生まれると感じました。今回のコロナ禍を機に、体操だけがフレイル予防に繋がるわけではないと実感しました。最近は身体的なフレイルだけでなく、精神的なフレイルである『社会的フレイル』も問題になっています。これからも幅広い事業に取り組み、ご高齢の方の『社会参加』を第一に考えていきたいです。コロナの逆風を追い風に変えていけたらと思います。」

大井さん:
「体操は分かりやすい事業ですが押し売りになってはいけません。いくら体操が体に良くても無理やりでは逆効果になってしまいます。体操を求めていない方はサロンや移動カフェに社会参加してもらうことで、十分健康づくりができるかなと思います。最近、ご近所付き合いが希薄になっていると言われていますが、社会参加を機に声を掛け合うようになった、前よりも携帯電話で連絡を取り合うようになったという声もあります。」

今後は、体操拠点のないところで移動カフェを開設した際に理学療法士を派遣し、「最近ご飯があんまり食べられなくて・・・」「先週から少しだけ腰が痛くて・・・」など、病院にわざわざ通うほどではない相談事を近所の集会所で聞いてもらえるような事業もできないか、思索しています。

田村さん:
「コロナ自粛の3ヶ月間という短いようで長い期間が高齢者に与えた影響はとても大きかったようで、身体機能や生活機能低下が見られる方も出てきています。地域包括支援センターには、そういった報告が増え始め、少しでも高齢者の機能低下を防ぐためには、スピード感を持って在宅支援を行うことが必要だと感じました。様々なイベントの中止や休止はやむを得ませんが、代わりに何ができるのか模索することは、現在どの自治体でも抱えている課題だと思います。私たちは地域を応援するスタンスを常に持ちつつ、さまざまなところからの声に耳を傾け続けることで、自然と市民の皆様に必要な事業が生まれてくると思っています。」


「市民が市民を支える」フレイルサポーター

東京大学高齢社会総合研究機構(IOG)の飯島 勝矢教授が打ち出したフレイルプロジェクトは、市民ボランティアとして活躍する「フレイルサポーター」が支えています。フレイルの確認は、それまでの研究をもとにフレイルチェック項目を作成し、下腿周囲長測定や簡単な質問に答えてもらうなど、フレイルサポーターが約2 時間かけてフレイルのリスクを調べます。

フレイルサポーターに参加するためには、フレイルサポーター養成講座を受講する必要があります。市の広報などでフレイルサポーターに興味を持った市民の皆様が、講座でフレイルとは何か? から予防のための運動・栄養のことを勉強します。現在、紀の川市内では約80名の方がフレイルサポーターとして活動しており、集会所で行われる年1回のフレイルチェックにスタッフとして参加しています。元気なサポーターさんを見て、刺激を受ける方も少なくありません。
▲ フレイルチェック項目の一つである指輪っか測定

田村さん:
「市役所に勤務している理学療法士だけでなく、病院や介護事業所の理学療法士、作業療法士も活動に参加いただきサポートしてもらっています。そのおかげで各集会所には年に3~4回理学療法士や作業療法士が訪問できていますが、毎週訪問することはできません。サポーターさんにフレイルチェックを行ってもらうことで、より参加者の健康意識が高い状態をキープできていると実感しています。」

大井さん:
「参加者の中には、理学療法士など専門職の人からフレイルや栄養について言われることに抵抗を持つ方もいます。特に栄養については、私たちから食事や水分摂取のアドバイスをしても、『先生たちは若いからご飯いっぱい食べられるんやで』と話を流されてしまいます。しかし、同じことを同年代の知り合いに言われると自分ごととして捉えやすくなり、説得力があるようです。フレイルサポーターの皆さんはとても意欲的な方が多く、フレイルチェックや栄養について分かりやすく説明された紙芝居もしてくれます。そして、何よりもフレイルサポーターに参加すること自体がその方自身のフレイル予防に繋がり、社会参加の一環にもなります。また、フレイルサポーターがいる集会所はフレイル予防意識が高まります。自主運動グループを立ち上げても、モチベーションを保てず活動しなくなってしまっては元も子もありません。フレイルサポーターの皆さんの協力もあって、モチベーションが高い状態で活動を継続できています。」

▲ フレイルサポーターによるフレイルチェックの様子


活動宣言ノート「マイプラン」の発行

2016年から介護予防事業を周知するため、「マイプラン」というパンフレットを作成しています。自主運動グループの一覧だけでなく、てくてく体操を取り入れているデイサービス施設、自宅で行える手軽な運動、フレイルチェック、食事アドバイスなども掲載しています。

岡本さん:
「マイプランでは、歯の健康についても取り上げています。自主運動グループに参加されている方でとても元気な90代の方がいらっしゃいます。定期的な運動を行われていますが、何よりも歯がしっかりしていて、入れ歯ではなくすべて自分の歯で食事をされることに驚きます。他の元気な高齢者も歯が健康な方が多く、逆にやせ細った方や元気のない方はお口に課題を抱える方が多いです。フレイル予防には歯の健康状態=オーラルフレイルも気にかけなければなりません。」

田村さん:
「InBodyで測定した筋肉量やSMIの低下の原因を見ていくと、運動不足だけでなく、タンパク質摂取量の低下も見られることから栄養不足も要因として浮かび上がり、更にヒアリングしていくと、歯の健康状態が良くないため、十分な栄養が取れていないことが分かってきました。入れ歯や咀嚼力の低下はお肉など、硬い食べ物を噛み切ることを難しくさせます。近年、『オーラルフレイル』や『口腔機能低下症』が注目されていますが、紀の川市のフレイルチェックの結果を見ると、参加者の約2人に1人がお口の健康に問題を抱えていることが分かり、『お口』と『栄養』が紀の川市の今後の課題であると感じています。」

紀の川市ではオーラルフレイル対策として、地域の歯科医師との連携を企画しています。既存のフレイルチェックに加え、オーラルフレイルチェックも取り入れることで、オーラルフレイルのリスクがある方に対して地域の歯科医院の受診を勧めようと検討しています。その際、InBodyの結果用紙やヒアリングの内容なども地域の歯科医師へ共有する予定です。

田村さん:
「InBodyの測定結果からサルコペニアの評価と原因を探り、その原因に詳しい専門職の方に引き継ぐ流れを作るなど、理学療法士だけじゃなく、様々な専門職の方に協力していただきたいと考えています。InBodyは多職種をつなぎ合わせる『ボンド』だと捉えており、InBodyを通じて様々な分野の方を巻き込みたいと思います。色々な人や物をつなぎ合わせるところは、InBodyと市役所で通じるものがあると感じています。」


市内の事業所・医療機関との連携体制

紀の川市内の事業所でもてくてく体操を取り入れており、自宅から通える場所にてくてく体操がない場合は、事業所の利用を検討する場合もあります。病気やケガで入院した方が退院する際、病院から自主運動グループを案内してもらうことで、高齢介護課に「リハビリ目的で参加したいので体操をしている近くの集会所を教えてほしい」という問い合わせが入ります。地域包括支援センターのケアマネージャーが担当している高齢者に自主運動グループを勧めることもあります。このように、市役所から自主運動グループを発信するのではなく、身近な病院やケアマネージャーから案内してもらい、自主運動グループに誘導しやすい体制を今後もより一層強化していきたいと思います。また、自主運動グループの参加者が近所の知り合いを連れて来てくれることも多く、口コミで広がっていくことで1回きりの参加でなく、継続的に参加してくれるようになります。

田村さん:
「最初は市役所がイベントや介護予防教室を実施するなど、主体的に事業を推進していましたが、市役所はあくまで、環境作り・サポート体制作りのきっかけを提供することが大事だと思っています。」

▲ 口コミで広がるてくてく体操

その一方で、自主運動グループに参加されていた方が病気やケガによって入院する際、病院から市役所に問い合わせが入ることで、それまで集めていたInBodyや体力測定のデータを病院へ提供します。病院は入院するまでのデータを加味して、その方に合う治療方法を選択しやすくなり、健康な状態での数値を知ることで治療の目標を立てることができます。

大井さん:
「例えば、脳梗塞で入院した方の入院1ヶ月後や退院時のデータは論文でたくさん紹介されています。しかし、そのデータはあくまで平均値でしかなく、患者個人のデータではありません。地域でのデータは、患者の入院前データを見ることで患者の状態が把握しやすくなり、治療のゴールも設定できるため、病院で勤務している側からすると、とてもありがたい情報です。私の勤務先である貴志川リハビリテーション病院や他の提携している病院にもInBodyがあるので、入院中もInBodyのデータを取り続けることができて、退院後はまた地域でInBodyや体力測定のデータが蓄積されていきます。このように、各個人のデータを病院や地域で継続的に集めることができる体制を作ることは、地域全体で高齢者を支えることに繋がります。今後も更に病院や介護施設との連携を深めていきたいと思います。」


終わりに

紀の川市の取り組みは他の自治体からも注目度が高く、取り組み内容についての問い合わせが多く寄せられています。フレイルチェック事業に関しては、既に20ヶ所以上の自治体が視察に来ており、現在はコロナのため視察は休止していますが、フレイルチェックについての電話問い合わせは今でも尽きることはありません。

大井さん:
「現在、InBodyをはじめとした5年分の測定データを分析しています。今後、フレイルチェック活動が順次再開できたら、InBody2台をフル稼働して測定を行い、コロナ前後での体成分や健康状態の変化も見ていきたいと考えています。InBodyで測定を始めて感じたことは、とにかく定期的な測定を続けることが大切だと思いました。ただ1回測っただけでは何も始まらず、継続して測って数値の変化を確認して初めて活用できるものだと思います。健康のためを思えば、一生測り続けるべきです。」

田村さん:
「介護予防事業のためにInBodyの導入を考えている行政の方は是非とも、地域の病院やクリニックなど専門職の方の力を借り、地域の方々の状態像を把握すべきです。また、フレイルのことを知らずに、さまざまな計画や企画を立案することはできないと思います。私はInBodyをきっかけとして、フレイルやサルコペニアに興味を持ち、知ることができてとてもよかったと思っています。そして、今取り組んでいるすべての事業は市役所だけの力ではなく、これまで携わっていただいた専門職や市民の皆さんのおかげで成り立っていると思います。これからも皆さんの知恵やお力を借りながら、市民の皆様のためにできることを模索し続けたいと思います。」

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紀の川市役所:前編 -フレイル予防における市役所でのInBody活用-

機種モデル:InBody470

紀の川市は和歌山県北部に位置する人口約6万人の自治体です。2005年に近隣の5つの町が合併して誕生しました。農業が盛んで、1年を通して四季折々の農産品を楽しむことができ、特に桃や苺、柿などの果物が有名です。紀の川市は、「フレイル予防推進のまち」として、福祉部高齢介護課が市民のフレイル予防に取り組んでいます。

▲ 左から田村 隆明さん、大井 裕幸さん、岡本 淳さん

高齢介護課総合事業班副主任の田村 隆明さんは市役所の介護予防事業を担当しています。貴志川リハビリテーション病院の理学療法士である大井 裕幸さんと岡本 淳さんは紀の川市役所の高齢介護課で勤務しています。大井さんは2019年4月から、岡本さんは2020年4月から介護予防事業に携わっています。病院の専門職の方が市役所の事業に携わっているのは全国でもとても珍しいです。紀の川市内には、地域の皆さんが主体的に実施する体操活動拠点が約120ヶ所あり、各公民館や集会所を回り、InBody測定やその結果を活用してフレイル予防のアドバイスを行うなど、地域活動をサポートしています。


「紀の川 歩 (てくてく) 体操」 市役所と病院が連携した介護予防事業

2014年夏から市役所と病院が連携した介護予防事業がモデル的に始まりました。紀の川市では、2004年から介護予防教室として和歌山県と和歌山大学が共同開発した「わかやまシニアエクササイズ」に取り組んでいました。地域の高齢化に伴い、もっと身近な場所で運動活動がしたいとの要望もあり、貴志川リハビリテーション病院理学療法士の監修で、ご当地体操「紀の川 歩 (てくてく) 体操」(以下てくてく体操)が考案されました。翌年2015年9月からは市民が最寄りの集会所に集まって、週1回定期的に運動を行う場が立ち上がり始め、てくてく体操を収録したDVDは、各拠点に配布され、皆さん楽しく元気に活動されています。市内88ヶ所の集会所に、市民が自主的に集まり、毎週てくてく体操を行っています。参加人数の合計は約1,000名となっています。

▲ 集会所での体操風景

2016年9月から貴志川リハビリテーション病院の理学療法士1名が、市役所の高齢介護課に勤務する形で介護予防事業をサポートしています。そして、2019年4月からは事業拡大を目的に、理学療法士2名が勤務するようになりました。

田村さん:
「お恥ずかしい限りですが、貴志川リハビリテーション病院からお話をいただくまでは、PT(理学療法士)やOT(作業療法士)、ST(言語聴覚士)という職業自体知りませんでした。このお話のおかげで私自身もリハビリ専門職についてたくさん勉強させてもらいました。定期的に運動を行うだけでなく体力や筋肉量の測定も行って評価する方が良いという意見をいただき、年に一回測定することになりました。」

大井さん:
「当時、日本理学療法士協会は介護予防の取り組みとして、地域で活躍できる理学療法士を増やすよう呼びかけていました。貴志川リハビリテーション病院は社会医療法人のため、地域の介護予防事業を市役所と一緒に取り組むことは自然な流れでした。」

最初は、貴志川リハビリテーション病院で使用しているInBody770を、各集会所に運んで筋肉量などを測定していました。しかし、InBody770は専用ケースを含めると重量が70kg近くあり、大人の男性2人でも持ち運びにとても苦労します。拠点数も増えるにつれ、測定の度に病院から借り続けるのも現実的でなく市役所で購入した方が良いと考え、2018年4月には、持ち運びに便利な1台目のInBody470、2020年7月に2台目のInBody470が導入されました。

大井さん:
「私たち理学療法士の多くは病院や介護施設に勤務しており、行政に関わる理学療法士はほんの一握りです。病院では患者さんと1対1で関わりますが、行政では理学療法士ひとりに対し、一度に多くの方と関わります。また、病院に来られる方は病状によって『もっと早くリハビリ専門職が関わっていれば…』と思うこともあり、要介護や要支援状態となる前段階であるフレイル(加齢による虚弱化)の予防がどれだけ大切か、日々の活動の中で痛感しています。ポピュレーションアプローチに携われることは、私の理学療法士人生の中でもとても貴重な経験になっています。」

岡本さん:
「行政に関わる前は訪問リハビリに携わっていました。訪問リハビリを行う在宅患者さんは外出が難しいこともあります。4月から行政に関わるようになって、元気な方と入院・訪問リハビリが必要な方の中間にいる、フレイルの方に対するアプローチを日々学んでいます。病院や訪問リハビリで関わる患者さんはリハビリを行って直接的に治療します。しかし、今関わっている地域の方々は現時点で何かしらの病気やケガがあるわけではないので、直接的な治療ではなく、間接的な治療=健康への意識改革をしていく必要があります。」

田村さん:
「市の職員がフレイル予防に関する啓発を行うことは可能ですが、理学療法士をはじめとした専門職の方からの言葉は説得力が全然違います。参加される方も専門職の話をとても熱心に聞かれます。健康を維持するためには、専門職とともに健康への”意識”を高めてもらう必要があると思います。」


介護予防事業内容


現在、紀の川市にはてくてく体操とわかやまシニアエクササイズが共存しており、それぞれ異なる特徴があります。「紀の川 歩 (てくてく) 体操」は地域高齢者向けに理学療法士が専門職の視点から、効果の出やすい体操を構成しています。てくてく体操は3つの強度を用意しており、40~60分程度で構成されています。また、わかやまシニアエクササイズより運動強度は弱いです。体操の実施場所は、自宅から徒歩15分圏内程度で歩いて参加できる集会所で開催されています。これに対し、わかやまシニアエクササイズは踏み台昇降などアクティブな動きが多く、小学校区単位にある公民館で実施されています。運営の方向性も異なり、てくてく体操は理学療法士によるサポート、わかやまシニアエクササイズは健康運動指導士によりサポートしています。

このような違いから、てくてく体操は膝や腰に痛みのある高齢者でも参加できるリハビリとして、わかやまシニアエクササイズは元気な高齢者のアクティビティとして、対象者の明確化をしています。中には、どちらの自主運動グループにも参加されている方もいます。地域の集会所等でてくてく体操が行われていない場合は、新たに自主運動グループが立ち上がるよう、リーダーさんや区長を通じて働きかけています。

田村さん:
「同じ高齢者でも、65~74歳(前期高齢者)と75歳以上(後期高齢者)では筋肉量に大きな差が見られます。てくてく体操は運動強度が低めに作られているので、70代80代の方でも積極的に参加できる体操になっています。わかやまシニアエクササイズの開始から約10年後にてくてく体操が開始されたので、活動に参加される方々もその分高齢化しています。最近では、免許返納も話題になっていますし、車で公民館に行くことが困難な方も増えてきています。自宅から歩いて15分圏内くらいに活動拠点があることが理想です。現在、市内でてくてく体操が行われている集会所は80ヶ所以上で、車での移動が難しい方でも最寄りの集会所で自主運動グループに参加し、理学療法士からアドバイスをもらうことができます。紀の川市は公共交通機関も少ないため、身近な距離での支援を求めている市民の皆様の声を反映しています。地域の皆様に対して、選択肢を増やし、幅広いニーズに応えていくことが私たちの役目だと思います。」

▲ 集会所一覧マップ
青:わかやまシニアエクササイズ活動拠点、緑:てくてく体操活動拠点、ピンク:サロン活動拠点。青が点在しており、緑が密集していることが分かります。

てくてく体操に参加されている方の中には既に膝の痛みを抱えている方もいるので、個々人の状態や体力レベルに合わせてアドバイスを行う必要があります。集会所ではてくてく体操だけでなく、年1回の体力測定会も行っており、握力・5m歩行速度(通常・最大)・5回立ち座りテスト・TUGテスト・タンデム立位保持(開眼・閉眼)を測定します。

岡本さん:
「病院では血液検査などで多くのデータを集めていますが、地域に出るとデータが全くない状態から始めるため、限られた時間の中でどうやって瞬時にデータを集めるかがカギになります。InBody470は約15秒というとても短い測定時間で筋肉量や体脂肪量など多くのデータを安全に集めることができるため、とても重宝しています。InBody測定に加えて、握力や立ち上がりテストなどの体力測定のデータをもとに参加者へアドバイスを行います。」

大井さん:
「InBodyの測定結果で特に強調して説明する項目は4つあります。➀体水分量です。そもそもの水分量が少ない方が多いです。水分量が少ないと筋肉量は少なく、動くためのエネルギーが不足し、筋肉も増えてこないと伝えます。次に➁タンパク質量・ミネラル量などの栄養評価を説明します。➀➁で水分と栄養摂取の大切さを説明します。栄養評価で不足にチェックが入っている方へは運動だけでなく食事のアドバイスも行います。次に➂体重・筋肉量・体脂肪量の3本棒グラフを見ます。大体の方が標準体重C型もしくは肥満C型(筋肉量と体脂肪量のバランスが悪い)です。痩せている方は低体重のI型が多いですね。そして、最後に➃SMIを見てサルコペニアの評価を行います。測定結果はもちろんですが、個人的には測定時のInBodyに乗るときの動作も結構大事だと思っています。体重測定部は10cmほどの高さがありますが、その高さをスッと上がることができているか、支持台を持った状態なら乗れるのか、それとも横から支えてあげないと乗れないのかなど、動作1つでさえもその方の状態を知るためには大切な情報です。限られた時間で多いところだと30人近くの方を一気に測定しないといけないので、短時間でも情報は多い方がいいですね。」

▲ 測定風景とInBody470結果用紙

田村さん:
「市民の皆様の健康意識はもちろんですが、ヘルスリテラシーを高めることも重要だと思っています。最近はテレビで健康に関する話題がよく取り上げられていますが、それを見て自分の生活を改めようと思う人は少ないです。InBody測定によって、自分の状態が数値化され、それをもとに理学療法士が説明を行うことで健康問題は他人事ではなくなり、関心を持って行動力も高くなります。市役所の職員でも数値の説明はできますが、そこからどうやって生活を改善していくのか、何に気を付ければいいのかまでは説明できません。行政に理学療法士が関わるからこそInBodyをよく活用できていると思います。」

ヘルスリテラシーの高まりは参加者の質問内容から確認できます。最初は運動や食事内容についての簡単な質問ですが、時には理学療法士さえもビックリするような鋭い質問をされる方もいます。自分の健康状態と向き合うことが、健康への意識を高める何よりのきっかけである証拠と言えます。また、派遣されるリハビリ専門職は大井さんと岡本さんだけでなく、地域の病院や介護事業所の理学療法士、作業療法士にも活動をサポートしてもらい、一緒に集会所を訪問しています。他愛もない世間話から健康づくりに関する相談などを行っていく中で、理学療法士や作業療法士との関係を深めていきます。

大井さん:
「病院の理学療法士に対して、忙しいのではないかと質問や相談を遠慮する方も少なくないと思います。身近な地域でなんでも相談できる理学療法士や作業療法士がいることはとても心強いと言われます。てくてく体操の指導を行うときも、なるべく『先生』と『患者』といった固い関係になって壁を感じないよう、円になって体操をするなど、和気あいあいとできるよう意識しています。地元の集会所では、参加者が友人や近所の方も誘って一緒に参加できるため親しみやすく、皆さん下の名前で呼び合うほどコミュニティが出来上がっているので、閉じこもりの改善や『見守り』の強化という面での効果もとても大きいと思います。」


自主運動グループ参加者の声

▲ 「てくてく」「フレイルチェック」に関するアンケート調査票

2020年に参加者約1,000名のうち548名を対象にてくてく体操等の満足度アンケートを行いました。結果として、てくてく体操等の内容や理学療法士によるサポート、フレイルチェックについて、多くの参加者からとても満足しているとの回答が得られ、参加者の約85%にフレイルが周知できていることが分かりました。特にフレイル予防で大切な健康づくりへの意識について、参加者の90%以上が「高くなった」と答えています。てくてく体操等に参加して得られた効果として最も回答が多かったのが「友人や仲間が増えた(69.0%)」で、次に「元気が出た(49.5%)」「外出する機会が増えた(44.1%)」と続き、精神的な効果を感じた方がとても多く、参加者の社会参加を促せていることが確認できました。また、身体的な効果として、「歩いたり立ったりするのが楽になった(39.3%)」「膝や腰の痛みが減った(32.6%)」「躓きや転倒が減った(31.5%)」などの回答がありました。

田村さん:
「参加者への介入頻度はとても重要です。介入回数が少ないと健康への意識が低下し、運動を継続しなくなります。自主的に運動を行っているグループは紀の川市以外にも数多くありますが、介入回数が少ないとグループ自体が自然消滅してしまうといったことも聞いています。一方、介入頻度が多すぎると、参加者は理学療法士がいなければ体操活動ができなくなってしまうといった意見もあります。理学療法士の介入頻度について、回答者の82%が『ちょうどよい』と答えています。」

後編では介護予防事業について更に詳しくご紹介します。コロナ禍での活動の変化についても伺っています。

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春日部第一薬局 -漢方・自然療法による健康相談-

機種モデル:InBody770


1977年に埼玉県春日部市に開局された春日部第一薬局は、漢方薬や自然薬を取り扱う地域密着型の専門店・相談薬局です。幅広い年代を対象に、主にダイエット・子宝・アトピーなどの皮膚病に関する相談を行っており、一人一人の体質に合わせた漢方・サプリメント・健康食品を処方しています。40年以上に渡る豊富な知識や経験による実力が評価され、「漢方・相談」「子宝」「アトピー」の3部門で、2015年から6年間連続で全国実力薬局100選に選ばれています。その評判から、地元の方だけでなく全国各地や海外から一時帰国している方まで、世界各地からお客様が来店されています。

▲ 全国実力薬局100選は全国5万5千軒以上の薬局の中で高い実績をあげている薬局を各分野別に100社ずつ選定


継続して実践できる提案


▲ 関口 恭子先生(左)、矢野間 克成先生(右)

管理栄養士である関口 恭子先生は主に食事指導を担当しています。健康な体は食事から作られるため、全ての相談において体質に適した食事のアドバイスを行っています。関口先生は大学で栄養学を学び、栄養士の資格を取得しましたが、大学卒業後はアパレル関係の会社に就職しました。しかし、外見だけではなく、内面からの美しさも大切と考えるようになり、国家資格の管理栄養士を取得して2005年から春日部第一薬局で働き始めました。その後、取り扱っている商品をお客様に合わせて幅広く提案するために、医薬品登録販売者、日本臨床栄養協会認定のNR・サプリメントアドバイザー(健康食品に関する適切な情報を提供)、生活習慣病アドバイザー、ダイエットカウンセラーの資格を取得しました。

関口先生:
「一人ひとりの体質に合わせて体に合う食材・合わない食材を伝えていますが、重要なのはその人がどれだけ実践できるかだと思います。食事は毎日摂るものであり、生活スタイルによっては実践できないこともあります。基本的な栄養バランスや体質を考慮した食事内容をお伝えした上で、その方が実践できるベストな方法を相談しながら一緒に探すように心掛けています。」

主にダイエット相談を担当している矢野間 克成先生は、2011年から春日部第一薬局で働いています。それ以前はお笑い芸人として5年程活動していました。しかし、2011年に起こった東日本大震災の甚大な被害を目の当たりにして、人の死や親孝行について考えるようになり、両親が経営している春日部第一薬局に戻ることを決意しました。その後、矢野間先生は医薬品登録販売者と漢方ダイエットカウンセラーの資格を取得し、これまでに1,500人以上のダイエット相談を担当してきました。

矢野間先生:
「ダイエットは一生涯続くことなので、モチベーションを維持させることがとても重要です。結果が出ている方はモチベーションが下がることはないので問題ありませんが、結果が出にくい方は特に、モチベーションを維持していただく為にも我々のサポートが必要になってきます。そのような方へは、問題点を一緒に探すことも重要ですが、小さな変化でも見つけ出して褒めてあげることを心掛けています。小さな変化を見つけるにはInBodyが役立っていますし、お客様の改善点を褒めるトーク力はお笑い芸人時代の経験が役立っています。お客様が焦らず楽しくダイエットできるようなカウンセリングを心掛けています。」


カウンセリングに役立つツール


▲ ダイエット相談におけるカウンセリングの様子

春日部第一薬局で販売している商品は、体に良いものならメーカーやブランドを問わずに厳選されたものです。

関口先生:
「新しい商品を導入する際は、必ず該当商品の情報を徹底的に調べてから仕入れており、これは創業当初から変わらない方針です。主にダイエット相談で活用している体成分分析装置を導入したときも同様に、“良い機器にこだわって正確な情報を伝えたい” という思いがありました。」

春日部第一薬局は20年前からダイエット相談を受けており、その当時は他社の体成分分析装置を使用していました。しかし、2005年頃に春日部第一薬局の代表である矢野間 道明先生が、主に病院で導入されている医療機器の体成分分析装置があると知人から紹介を受けたのが、InBodyを導入するきっかけとなりました。話を聞いた矢野間先生はInBodyの精度に関する情報を収集し吟味した結果、これだけ高精度で体成分を測定できる機器は他にないと考え、当時の最新型であったInBody720を導入しました。現在は2014年に後継機として発売されたInBody770が使用されています。


▲ ダイエット相談で使用されているグラフ化体重日記

ダイエット相談では、起床後(トイレ前)・朝食直後・夕食直後・就寝直前の体重と、3食の食事内容を初回の相談時に渡された用紙に記入する、グラフ化体重日記を任意で記録してもらっています。これは体重の変動を意識してもらうためのものでありますが、体重の変化を見るだけでは体の中で起きた変化が分からないので、ここでInBodyを測定してその変化を確認します。


一人一人に合わせた指導


▲ 左: 過体重肥満型 右: 標準体重肥満型(隠れ肥満)

ダイエット相談の初回カウンセリングでは、先ずInBodyを測定して現在の筋肉量、体脂肪量、体型評価を基に目標を決めます。筋肉量と体脂肪量が多い過体重肥満型に該当した方(上図左)は、体脂肪量を月にどれくらいのペースで減少させるかを決めます。また、体脂肪量の割合が多い標準体重の隠れ肥満型に該当した方(上図右)は体脂肪量の減少だけではなく、筋肉量の増加も目指します。1ヶ月目は週に1回、若しくは10日に1回通ってもらい、2ヶ月目以降は2週に1回通ってもらいます。来店時は毎回InBody測定を行い、前回と今回の測定結果を比較して体成分の変化を確認するようにします。

矢野間先生:
「例えば、2週間で筋肉量を維持しながら体脂肪量が減少している方は、順調に体脂肪量が改善しているため、服薬や食事を継続するように伝えています。その一方で、体脂肪量はそのままで筋肉量が増加して体重が増えている方は、筋肉量は維持しながら体脂肪量を減らせる処方と一緒に食事指導のアドバイスを行っています。また、変化が停滞している方に関しては、前回の測定結果と比較するとモチベーションが下がりやすいので、1~2ヶ月前か初回測定時の結果と比較することで長期にわたって改善されている点を探して伝えています。」

このようにInBodyで測定した体成分結果の変化から処方する漢方や食事指導を変えています。女性ホルモンの状態を整えて食欲をコントロールしたり、冷え性・むくみ・貧血などの悩みを改善させたりする漢方や、筋肉量が少ない高齢者には筋肉量の増加を促す漢方などを数種類組み合わせて処方します。勿論、処方するのは漢方だけではなく、サプリメントや健康食品が含まれることもあり、年代や体質に合わせたもの、美容やアンチエイジングなどの要望に合わせたものを選択して提供します。

矢野間先生:
「ダイエットを始めて何回か通われ、1週間や10日程度の測定結果を比較すると、体脂肪量は変わらずに体重と筋肉量が減少している変化を見ることがあります。しかし、筋肉量は短期間では減少しないため、InBodyが測定する筋肉量の主な構成成分である水分が減少したことを説明し、筋肉量が減少したわけではなく、むくみが改善したことをお伝えします。InBodyはこのようなむくみを発見することができるので、お客様も説明に納得していただけます。」

※棒グラフは取材を基に再現したイメージグラフです。

▲ むくみが改善すると、体内の余分な水分が減少するため、筋肉量だけではなく細胞外水分比も低下

むくみとは筋肉組織に余分な水分が溜まった状態を指します。筋肉量は体の水分を含んで構成されているため、むくみのある人がInBodyで測定すると実際よりも多い筋肉量が計測され、体の水分バランスを示す細胞外水分比(ECW/TBW)は血漿や間質液などの細胞外水分量が多くなる形で高くなります。むくみを改善する漢方などで体内の余分な水分が減少してむくみが改善すると、筋肉組織の余分な水分は減少して、むくみがあるときよりも筋肉量は少なく計測されます。筋肉量だけを見ると、筋肉が減ってしまったように見えますが、これは筋肉量の減少ではなく、筋肉から余分な水分がなくなったことを意味し、水分バランスが改善することで細胞外水分比も低くなります。つまり、筋肉量と細胞外水分比を一緒に見ることで、むくみの改善度を評価することができます。

また、食事指導では記録してもらった内容に対して栄養バランスだけではなく、体質に合った食事のアドバイスを行っています。例えば、生トマトは体を冷やす食材であり、夏の時期に摂取する食材としては適していますが、冷え性の方が冬場に摂取し過ぎてしまうと余計に体を冷やすことにもなります。また、皮膚病でトマトが合わない方もいるため、食材の説明も疾患や悩みに合わせて行っています。

▲ 体型評価における「痩せ」の評価

矢野間先生:
「ダイエット相談に来られる方の中には主観的に太っていると思い込み、より痩せたいという拒食症に近い状態になっている方もいます。そのような方は、InBodyの体型評価で “痩せ” と評価されますが、この項目を説明することで、現状を自覚していただけます。”太っている自分は綺麗じゃない” という考えが強いので、体重減少ではない体重増加を目指す逆ダイエットに抵抗を持つ人もいますが、適切な食事を摂って綺麗に健康を維持できるように指導をします。」


体重減量だけでないダイエット相談

ダイエットにおいて目標とした体重まで減量することはもちろん重要なことです。実際に、春日部第一薬局でダイエット相談を行った方の中には、約1年で30kgの減量に成功し、良い結婚相手と出会うことができたなど、ダイエットで人生が変わった方もいます。ホームページYouTubeではダイエット相談の体験談が公開されています。

一方、春日部第一薬局のダイエット相談には体重減量だけではなく、健康維持や美容・アンチエイジングを目的に来店される方もいます。体重減少だけではなく、維持や管理もダイエットだと気づかせてくれた60代女性のお話を伺いました。

矢野間先生:
「その女性は目標としていた体重減量10kgのうち、6kgしか減量できませんでしたが、ずっとここに通い続けてくれていました。当時はダイエット相談を始めてから2~3年目で、結果を出すカウンセリングや指導ができていないと考え、申し訳ない気持ちもあったのでそろそろダイエットを止めませんかと声を掛けました。しかし、その女性は相談のために来店して話をすることが習慣になっており、体重減少だけではなく維持や管理のために来ていると言いました。その言葉を聞いて、ただ体重を落とすことが重要ではなく、その人に適したペースでダイエットを進められるようにアドバイスをすることが、本来の薬局における健康相談のカウンセリングだと気づきました。それ以来、ダイエット相談では期間を設けておらず、本人が納得するまで通い続けてもらっています。」

中には6~7年通い続ける常連の方もおり、痩せるだけではなく美容やアンチエイジングを目的とした商品を購入されることがあります。春日部第一薬局で商品を購入された方は、無料でInBodyを測定することができ、商品を購入しなくても有料(1回1000円)で測定サービスを受けられます。継続的に測定される方も多く、健康管理の習慣づけができています。また、春日部第一薬局が「InBody測定ができる施設」に公開されて以来、InBody測定を目的に来店される方も増えました。


▲ 産後ダイエット相談を目的に来店された、赤ちゃん連れのお母さんがInBody測定をしている様子

最近は関口先生がご自身の出産経験を活かして、産後ダイエット・ケアや育児・食事相談なども行っています。

関口先生:
「最近の産後の女性は育児をしながら働いている人も多いため、体調が優れない中でも無理していることがとても多いです。そんな女性の頑張っている姿を応援したいという思いから産後ダイエットの相談などを始めました。産後は体脂肪量が減少しにくい体質に変わったり、育児・仕事などで運動する時間を確保できなかったりしますが、漢方の処方や食事指導をすることで、本格的に相談を始めてから1ヶ月間で4.8kgの減量に成功した方もいます。」


身近な存在を目指す漢方薬局

春日部第一薬局に来店されるきっかけはホームページ経由が多いですが、知人の紹介やSNSの口コミを経由して来店される方もおり、昔よりも漢方が身近になってきています。

関口先生:
「病院で診てもらうほどではない不調な時に、気軽に相談できる場となり、漢方を選択肢の1つとして考えていただければ嬉しいです。また、近年では予防医学が重視されており、私たちのような漢方薬局がお役に立てると思っています。事実、食事の大切さなどの健康に関する情報はインターネットから簡単に知ることができますが、中には古い情報や間違った情報も混じっているので、最新の正確な情報は専門家から聞くことが一番確実です。そのため、これからは人々の役に立つような正しい情報を専門家の立場として、春日部第一薬局に通っていただいている方だけでなくホームページやSNSからも発信していきたいです。」

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BODY ARCHI(ボディアーキ) -セルフエステによる理想の体質づくり-

機種モデル:InBody470

▲ BODY ARCHI 渋谷桜丘店の店内

BODY ARCHIは札幌・東京・神奈川・埼玉・名古屋・大阪エリアで計20店舗(2020年10月時点)を運営している、「エステ」と「ジム」を共存させた新感覚の定額制セルフエステスタジオです。一般のエステサロンは資格を持つエステティシャンによって施術が行われるため、価格が高く気軽に通えない印象がありますが、セルフエステは自分自身でエステマシンを利用して好きな部位を施術できるので、リーズナブルな価格とともに気軽に通えるのがメリットです。BODY ARCHIは全店舗が完全個室制になっており、各個室には最先端エステマシン「フォースカッター」が導入されています。フォースカッターは1台4役の多機能・高技術(Wラジオ波、EMS/吸引、ポレーション、LED)を搭載したエステマシンです。BODY ARCHIはこのエステマシンをセルフエステ用にカスタマイズしており、初めての方でも個室に配置されているタブレット端末でエステマシンの操作方法を動画で確認して、利用することができます。


▲ 各個室に置かれているタブレット端末でエステマシンの効果的な使用法を確認

また、エステの効果を高めるためのホームケアとしてシリカウォーター・サプリ・化粧品の物販だけでなく、個人のお悩みに合わせたホームエクササイズの動画もYouTubeで定期的に配信しています。このように、BODY ARCHIはリーズナブルな価格で女性共通の悩みである「ボディメイク」「健康」「美容」を、日常生活も含めてトータルでサポートすることを目指しています。単純なダイエットだけではなく、美肌作りを目的に来店されています。


『自分らしさ』を追求する


▲ 嶋田 美緒さん

2020年10月1日に株式会社ボディアーキ・ジャパンの取締役に就任された嶋田 美緒さんは、主に社内の人材育成に携わっています。それ以前はグループ会社の株式会社ネクシィーズグループで、社長室に在籍し、社長秘書として12年間活躍してきました。秘書の業務では、様々な企業の経営者と接するだけでなく、人材育成など組織マネジメントに関わることも多かったことから、現職の人材育成担当として抜擢されました。現在、BODY ARCHIは2年間で20店舗の展開など順調な成長を遂げていますが、更なる事業拡大のためには店長やエリアマネージャーなどの経営人材が必要です。嶋田さんはそのような人材を育成する役割を担っています。

「大学は芸術学部デザイン工芸学科に在籍し、芸術や美術を学びながら美術の教職や学芸員の資格を取得してきました。その当時から『美しさとは何だろう?』と考えており、自分の中で ”心が動くかどうか” という答えに至りました。これは美容やファッションにおいても同じことが言え、”流行にとらわれない自分らしさ”が素敵な女性像だと考え、自分らしさを持つようになりました。このような私の人間性とBODY ARCHI事業のコンセプトである “私の自信は、私自身でつくる。” が合致しており、セルフエステ事業を始めると聞いたときは興奮しました。女性初の役員としても事業に関わることができるので、事業を通して女性が活躍して輝く社会を作っていきたいと考えています。」


体の変化を数値化する


▲ 最先端のエステマシン「フォースカッター」

エステマシン「フォースカッター」は、顔・二の腕・お腹周り・太ももなど気になる部位の理想的なボディメイクだけではなく、使用する特殊ヘッドを付け替えることで、冷え性や肩こりなどの悩みを改善させることもできます。他社ではプロのエステティシャンが施術を行った部位を触ったりすることでエステの効果を測っていますが、BODY ARCHIはセルフエステのため、会員自身が各個室に置いてあるメジャーで各部位の周囲長を測定して体の変化を確かめます。メジャーは簡易的な効果測定方法ですが、毎回の測定位置を固定させないと測定の再現性が低くなり、正確な数値の変化を調べることが難しくなります。そこで、体の変化をより敏感に実感してもらうためにもメジャー以外の測定ツールが必要となり、2019年7月にInBody470第1号機を渋谷桜丘店に設置しました。現在は全店舗にInBodyが導入されています。


▲ InBody470の結果用紙とInBodyアプリ画面

「筋肉量・体脂肪量・栄養評価の数値化は説得力があり、自身の体の変化を自覚させてくれます。InBody測定は手順が簡単なため、お客様には月に2回セルフで測定するように推奨しています。初回を除いて、測定結果は基本的に印刷しておらず、会員が測定後に本体に表示されるQRコードを読み取りInBodyアプリで管理しています。そのため、予約を管理するBODY ARCHI会員専用アプリからInBody測定結果が確認でき、会員専用アプリの利便性をアピールすることにも役立っています。また、InBodyの結果用紙やアプリ画面のレイアウトはスタイリッシュで視覚的に分かりやすいです。」

 


▲ 初回無料体験時のInBody測定の様子

BODY ARCHIの初回無料体験でも、InBody測定を行います。まずはInBody測定で、見た目では分からない体の中身を体成分で把握し、個人に合った目標を設定します。例えば、体重・筋肉量・体脂肪量から体験者の体型を評価することができ、エステマシンのヘッドを当てる部位や使用するヘッドの種類の参考にすることができます。


▲ 体重は標準的だが、体重を占める筋肉量の割合が少なく体脂肪量の割合が多い隠れ肥満体型のC型

「一番の理想は体重・筋肉量・体脂肪量の棒グラフの先端を繋げた形がD型になることです。この形がC型の方は体脂肪量を減らすだけではリバウンドや体調の悪化に繋がるため、筋肉量も増やす必要があることを説明します。また、ヒアリングでお腹周りが気になる場合は内臓脂肪を燃焼させる効果のあるWラジオ波のヘッドを使用し、筋肉量を増やしたい場合はEMSのヘッドを使用するようになど、目的にあったマシンの使い方をアドバイスしています。」


▲ 内臓脂肪を燃焼する効果があるWラジオ波


理想的な体型・体調・美しさをつくる

さらに、BODY ARCHIではボディメイクチャレンジというキャンペーンを開催し、見た目の体の変化や美しさを客観的にも評価しています。これは季節ごとに顔・二の腕・お腹・太ももからテーマを一つ設けて、会員がその部位の周囲長と写真を投稿すると、BODY ARCHIが一番美しく変化している人を審査して表彰するという催しです。BODY ARCHIはセルフエステであるからこそ、会員に体の変化を自覚させて、理想の体型になるためのモチベーションを維持させる工夫に取り組んでいます。その結果、会員の月間来店回数は1人当たり約4回(週1回ペース)を記録しており、セルフエステの習慣づけに成功しています。

エステマシン「フォースカッター」は体脂肪だけではなく、筋肉にもアプローチすることができます。EMSヘッドは電気を利用して、普段使わない筋肉に直接アプローチすることで筋肉量の増加を促します。筋肉量の増加は肩こりを改善させたり、基礎代謝が上がることで太りにくい体質へと変えたりします。また、筋肉量の増加は肌質を改善させる効果もあります。体中に張り巡らされている毛細血管は筋肉によって支えられており、皮膚組織にも存在します。毛細血管は体内の老廃物の排出や肌のターンオーバーに関与しているため、筋肉量の増加は健康的な毛細血管を形成し、皮膚のしわ・しみ・たるみを改善させると言われています。

「私自身がフルマラソンを走っているために、筋肉量の増加はメリットしかないと感じていますが、会員の中には筋肉が増えると、男性のような筋肉質の体型になるのではないかと懸念している方が多いです。その都度、肩こりを改善させるなどのメリットをお伝えしていますが、現在は新感覚のセルフエステを体験して堪能してもらう段階で、全会員をサポートできていない部分があります。これから徐々にサポートできる体制を整えながら、BODY ARCHIでできることを会員にどんどん発信していきたいです。」


▲ 遺伝子解析サービス

また、BODY ARCHIは日常生活からサポートするために、遺伝子解析サービスを提供しています。これは口内の粘膜細胞を採取してDNAを調べることで、一生涯変わらない自分本来の体質や遺伝子リスクを知ることができます。体質型遺伝子は8タイプに分類され、その結果から栄養学情報と照合させた100兆パターンにも及ぶ組み合わせの中から、自分に適した健康アドバイスが提供されます。最大70ページにもわたる情報量の中には、自分に適したエステマシンの施術方法だけでなく、体質的に太りやすい食材や理想的な食事・運動も記載されています。この情報を元に、生活スタイルを改善していくことで、より効率的に理想的な体型・体調・美しさに近づくことができます。


終わりに

BODY ARCHIは2020年12月までに東京エリアで2店舗、福岡エリアで1店舗の開設を予定しており、2021年12月までに55店舗、2022年12月までに100店舗の開設を計画しています。

「BODY ARCHIは定額制のセルフエステ・初心者でも簡単に操作できるエステマシン・InBody測定・遺伝子解析サービスなど、他社にはない設備とサービスを整えているため、どの年代においても女性が根本的に持っている願望に寄り添うことができます。今のBODY ARCHIは女性が自分らしく美しく輝くためのお手伝いをすることで、『あると便利なサービス・会社』という存在になってきました。これからは人材育成にも力を入れ、女性が活躍できる社会づくりに貢献しながら、BODY ARCHIを『なくてはならないサービス・会社』という存在に成長させたいと考えています。」

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順天堂大学 -ロコモプロジェクトから”筋活”を啓発-

機種モデル:InBody730

順天堂大学は現在、ロコモティブシンドローム(運動器症候群; 以下ロコモ)を予防・改善するための研究開発に取り組んでいます。ロコモとは骨、関節、筋肉など運動器の衰えが原因で、「立つ」「歩く」といった移動機能が低下している状態のことを指します。この研究開発はセンター・オブ・イノベーション(Center of Innovation; 以下COI)プログラムの中で、立命館大学および順天堂大学が進めている「運動の生活カルチャー化により活力ある未来をつくるアクティブ・フォー・オール拠点」プロジェクトの一つです。順天堂大学は2014年から本格的に参画し、ロコモの発症予防と進展予防の2つを事業化する取り組みを始めました。
※COIプログラム: 10年後の目指すべき社会像を見据えたビジョン主導型のチャレンジ・ハイリスクな研究開発を最長9年間支援することを目的に、文部科学省が2013年から開始


研究者としての道のり


▲ 沢田 秀司先生

COIプロジェクト室の博士研究員である沢田 秀司先生は、早稲田大学大学院先進理工学研究科で博士(生命科学)の学位を取得しています。本プロジェクトには2017年5月から参加し、主にロコモ予防に適した運動プログラムの開発に従事してきました。また、健康運動指導士や日本陸上競技連盟公認ジュニアコーチ(日本スポーツ協会公認陸上競技コーチ1)の立場として、医療機関や民間企業、学校などでも運動・トレーニングプログラムの作成や運動指導を行ってきました。

「中学生の頃から陸上競技に携わっており、トレーニングを通して人として成長できることを経験してきました。大学院修了後は、患者さんの状態の改善に直接関わることができる医療現場での仕事を経験したいと考え、民間の医療機関に就職しました。大学や大学院では疫学研究や基礎研究を経験してきたので、今後応用研究に取り組むためには現場で経験を積むことも必要であると考えたのもあります。しかし、就職後も学会活動を続けていましたが、民間の医療機関に勤めながら研究活動を継続することはとても大変だと感じていました。その頃に参加した学会で、学生時代に面識のあった順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科の町田 修一教授と再会し、COIプロジェクトでの取組内容を紹介していただきました。非常に関心のある内容であり、やはり研究を続けたいという思いが根底にあったため、研究活動に専念できる環境は魅力的に思いました。その後、研究員募集の縁にも恵まれ、博士研究員として採用していただける運びとなりました。これまで周りの先生方に研究者として育ててもらったからこそできる仕事をしたいと考えており、影響力のあるアカデミックの立場から情報を発信できることは、自分の使命を果たすことに繋がるのではないかと考えています。」


手探りの状態で始まった運動プログラムの開発


▲「ロコモ度テスト」ツールである、2ステップテスト用マットと立ち上がりテスト用ボックス

ロコモ予防の運動プログラム開発は2014年から進められてきましたが、当時はロコモ予防に効果的な運動について、具体的なプログラムは確立されていませんでした。従って、様々な試行錯誤を重ねながら、効果的な運動の内容に関する検討が行われ、沢田先生が博士研究員として着任された2017年には、運動プログラムの骨組みはある程度定まっていました。その後は、プログラムの有用性を更に検討することを目的に、行政機関などとも連携し、運動教室を開催してきました。そのようにして確立されたのが、“ロコモ予防運動プログラム”です。このプログラムは、自体重やゴムチューブを用いて行う筋力トレーニングを中心とし、漸増的に運動負荷を上げていく12週間の運動プログラムとなっています。最初は4種類のトレーニングから開始し、ゆとりのあるセット数や休憩時間を設けていますが、徐々にトレーニングの種類やセット数を増やし、最終的には9種類のトレーニングを15回×3セット行います。

また、運動の効果を評価するために、筋力や身体機能、ロコモ度、体成分などの評価を目的とする体力測定も行っており、その評価にInBodyも活用しています。こうした体力測定は、運動教室の卒業生や地域在住の一般の方などを対象として現在も定期的に開催しており、これまでに1,000人以上のデータが蓄積されています。参加者には体力測定の実施後に、大学独自で作成したフィードバックレポートを渡しています。

▲ 順天堂大学オリジナルのフィードバックレポート


運動プログラムの評価指標

「InBody730の結果は情報量が多く、短時間で全ての項目を参加者に伝えきれないので、一般的に馴染みのある体重や筋肉量、体脂肪率の数値だけをピックアップしています。勿論、研究においては部位別筋肉量やSMI、細胞内外水分量なども活用し、解析しています。」

▲ Asian Working Group for Sarcopenia(AWGS, 2019)によるサルコペニア診断基準のSMIカットオフ値は、男性: 7.0kg/m²、女性: 5.7kg/m²で、サルコペニア(筋肉減少症)の評価指数としてよく活用される

「12週間の運動プログラムに参加していただいたことで、30秒椅子立ち上がりテストや大腿四頭筋の筋厚がそれぞれ約10%改善するなど、身体機能や体成分に効果が表れることを確認してきました。こうした客観的なデータで示される結果に加え、参加者からは『前より身体が動くようになり、生活しやすくなった』など主観的な好評をいただいています。一方、InBodyで評価する筋肉量は殆ど変わらない事例が多いですが、60~70代を中心とする参加者達が12週間筋肉量を維持できていること自体が良い結果であるため、体成分においても良い影響を及ぼしていると言えます。運動の成果や継続の必要性を把握する上で、体成分の評価はとても重要だと考えています。今後は筋肉量の補正方法や測定によって得られるデータの解析方法を工夫するなど、最適な評価指標を確立し、体成分の変化についてより詳細に確認したいと思っています。」

※履歴グラフは取材を基に再現したイメージグラフです。

▲ 筋肉量は50代前後から加齢に伴って減少傾向にあるが、12週間の運動教室は60~70代を中心とする参加者の筋肉量を維持させる。
※参照した統計調査は「Age-dependent changes in skeletal muscle mass and visceral fat area in Japanese adults from 40 to 79 years-of-age」

「秋頃に始めて冬に終了するという形で運動教室を実施することが多いですが、その場合はInBody測定時の気温によって水分均衡が影響を受け、筋肉量に変化を与えてしまう可能性もあります。コントロール群を設けて比較するなどし、気温の影響を排除することも視野に入れる必要があると考えています。」

▲ 筋肉量は化学的に体水分とタンパク質の融合体であるので、体水分量の減少は筋肉量の減少に繋がる

12週間の運動教室は参加者から好評だったため、千葉県印西市にある順天堂大学さくらキャンパス周辺の印西市・酒々井町・富里市・成田市などの市町村と連携し、行政との連携事業としても開催されるようになりました。その他にも、神奈川県にある介護サービス付き高齢者向け住宅でも監修した運動教室が開催されるようになるなど、様々なところで高齢者の方が体を動かすことに興味・関心を持つきっかけを提供しています。


ロコモ予防事業の成果

ロコモ予防事業は、運動機能の改善を図る運動プログラムの開発だけでなく、一例としてロコモの評価や運動誘導に関するアプリ開発にも携わっています。

➤ ロコモニタープラス (iOS専用)
日本整形外科学会が提唱する3つのロコモ度テスト(ロコモ25、2ステップテスト、立ち上がりテスト)をアプリ上で簡単に実施することができ、1日の歩数や座っている時間などの活動データを24時間自動で測定・モニタリングすることも可能です。また、これらのデータを分析し、個人に最適な健康改善プログラムを提案するだけでなく、生活アドバイスや腰痛・膝痛の予防に関するコンテンツまで、幅広い内容を提供します。このアプリは順天堂大学が弘前大学・立命館大学・筑波大学・京都大学と共同開発し、2018年に正式リリースされました。

➤ Biosignal Art (2020年8月28日現在、PCおよびAndroidのChrome専用)
トレーニングをより正しくより楽しく実施し、コロナ禍の中でも健康を維持してほしいという思いから、順天堂大学(運動監修)・立命館大学(運動解析技術開発)・東京藝術大学(音楽監修)が共同開発したウェブアプリです。カメラで使用者のトレーニング動作をチェックし、正しい動作をしたときと間違った動作をしたときの違いが音楽で表現されるような仕組みとなっているため、改善点に気づき易く、適切な動作で運動を行うサポートをしてくれます。

他にも、2020年度には「筋肉量や筋力を向上させるための活動=”筋活”」の重要性や具体的な取り組みに関する情報を発信するため、『順大さくら“筋活”講座』のホームページを開設し、オンライン公開講座も開始しました。


▲ 運動教室の参加者に超高齢社会における様々な健康問題を説明中

「特に今年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行したために、外出の自粛が多くなることで運動不足の状態が続き、ロコモに陥る方が増えてしまうと想定されます。それを予防するため、我々が開発してきた運動プログラムの映像とガイドブックを公開しており、ホームページで無料の会員登録をすれば誰でも利用することができます。これまでは対面式の教室を通して運動指導をしてきましたが、1つの教室で対応できる人数には制限がありました。しかし、この機会にオンラインでの運動指導法が確立できれば、色々な地域に我々の運動プログラムの裾野を広め、より多くの方々に運動の機会を提供することができます。将来的には、健康運動指導士などの運動指導者の方々にも、このプログラムを活用していただけたらと考えています。」


ロコモ予防に留まらない “筋活”

ロコモ予防において重要なことは、運動不足が自分の体に及ぼしてしまう悪影響を理解することです。

「運動はすぐに効果を実感できるわけではなく、また運動不足の影響もすぐに体に現れるわけではありません。時間をかけて徐々に変化するため、長期間運動しない状態が続いてしまうと、気付かない内に身体機能が落ち、ロコモに陥ってしまいます。このような運動不足をどうしたら防げるのかを考えたとき、運動することの重要性と必要性を理解してもらうまで、根気よくサポートすることが大切だと思いました。また、ロコモは若い世代も軽視できる問題ではなく、若い頃から体を動かさない状態が続くと、高齢期よりも前の段階でロコモになってしまいます。 “勉強や仕事ができても、体を思うように動かせないと健康も保てず、興味のあることにも挑戦できない人生になってしまう” ということを、若い世代にも伝えたいです。そして、この運動不足の解消は、何歳であっても手遅れということはありません。運動や筋力トレーニングも勉強と同じで、今からでも始めれば、現状より改善することができます。そうした努力がもたらす成果に気付き、運動を生活の一部として認識してもらえるよう、ロコモ予防の事業に全力を尽くしていきたいです。また、これまでCOIプロジェクトではロコモに焦点を当てていましたが、今後はより広い定義で “筋活” の重要性を伝えていく必要があると考えています。」

沢田先生は、運動が健康に必要であると理解しているからこそ、また身体機能を高めることの重要性を理解しているからこそ、2009年11月3日に「1日最低5kmは走る」という目標を掲げ、今日に至るまで3952日間、1日も欠かすことなく継続しています(2020年8月28日現在)。

「運動が体に作用するメカニズムは未だ明確になっていない部分が多いため、今後も研究者の立場として、解明に向けて貢献していきたいと考えています。また、運動指導者の立場としては、運動に対して興味・関心を持つ人を増やしていきたいと考えています。残念ながら、運動する上での目標を掲げたとしても、それに向かって適切な運動を継続できている人は少ないのが現状です。こうした問題を解決するためにも、エビデンスに基づいた情報を発信し続けていきたいです。」